【国立科学博物館】特別展「鳥」取材レポート。600点以上の標本が大集合、ゲノム解析による最新研究から鳥の魅力に迫る

国立科学博物館
展示風景

陸上脊椎動物の中で最も多い約1万1000種に分かれ、大空や大地、水中、そして極地まで、地球上のさまざまな環境で繁栄している鳥類。日本における鳥の分類は、日本鳥学会が出版する『日本鳥類目録』に準拠していますが、近年、急速に進展するゲノム解析により明らかになった進化の歴史や系統を踏まえ、今年の9月、12年ぶりに改訂されました。

現在、東京・上野の国立科学博物館で開催中の特別展「鳥 ~ゲノム解析が解き明かす新しい鳥類の系統~」(~2025年2月24日まで)では、最新のゲノム系統による分類に基づきながら、世界の鳥の驚くべき生態など多様な魅力を解説。展示される鳥の標本は600点を超える、国立科学博物館史上かつてない規模感で、初心者から鳥マニア、熱心なバードウォッチャーまで幅広く楽しむことができる内容になっています。

会場入り口では、鳥の「美しさ」と「かわいらしさ」を象徴するような2羽がお出迎え。左からインドクジャク(キジ目)本剥製標本、国立科学博物館蔵 /エナガ(亜種シマエナガ、スズメ目)本剥製標本、国立科学博物館蔵
展示風景

本展の総合監修を務めた西海功さん(国立科学博物館 動物研究部研究主幹)は、開幕に先立って行われた報道内覧会にて、本展開催の意義について次のように話しました。

「鳥は生態系ピラミッドの中で多様な役割を果たしています。たとえば花蜜食の鳥は花粉媒介に、種子食の鳥は種子散布に関係します。巣穴を掘ることができるキツツキは、ムササビやフクロウなど、自分で巣穴を空けられないさまざまな生き物に生息場所を提供し、生物多様性を豊かにしています。そうした鳥たちの中には、近年数を減らしているものも多く、絶滅に瀕しているものも存在します。『鳥』展を開催し、よりいっそう鳥を知り、鳥に馴染んでいただくことは、地球環境を考えていくうえで非常に重要なことだと考えています」

西海さんによれば、鳥は動物の中でも、とくに環境の影響を受けやすいそう。人類活動によってこれまで起きた絶滅は、控えめに見積もっても1,430種に及ぶと推定されており、これは12%の種が絶滅したことを意味します。本展でも序章として、まず「絶滅」をテーマにしたコーナーが設けられており、「何をおいても、鳥をとり巻く現状を知ってほしい」という監修者たちの強い思いが感じられます。

鳥の絶滅に関するコーナーでは、1920年に対馬で採集された雌雄を最期に絶滅した大型キツツキのキタタキなどを展示。
多様に進化した鳥の翼の比較展示。捕食者から急いで逃れるのに適した翼、長距離移動に適した翼など、ひと口に翼といっても、比べてみるとその違いは歴然。
化石骨格標本などの資料から、現生鳥類に至る進化の過程についても解説されています。/デイノニクス 化石骨格標本(レプリカ)、国立科学博物館蔵

およそ2600万年前に生きていた、翼開長が7mにも達する史上最大の飛翔できる鳥「ペラゴルニス・サンデルシ」の実物大生体復元モデルの展示は、本展の見どころの一つ。

ペラゴルニス・サンデルシ 実物大生体復元モデル、国立科学博物館蔵
同上。ペリカンやアホウドリなどの海鳥を思わせる骨格をしていますが、最新の学説ではキジカモ類に属する説が有力なのだとか。

本モデルの監修者である對比地孝亘さん(国立科学博物館 地学研究部研究主幹)は、「現状わかっている範囲で、史上最大の空を飛んでいた鳥ということで。鳥のもつ可能性というか、この体の構造から、どこまでの大きさであれば飛べるのかなど、化石から知られるような形の多様性、形の限界の部分を探ってみたいということもあって、復元に挑戦しました」と思いを語っています。

サイチョウ目の展示。アカサイチョウやギンガオサイチョウなど、くちばしの上の犀角(カスク)と呼ばれる突起が個性的な鳥が多数。

本展の一番の魅力は、やはりその標本のボリュームでしょう。

西海さんによれば、国立科学博物館が所蔵する約3,000点の標本から、とくに見栄えが良いものを厳選したそう。国内では唯一の鳥専門博物館である「我孫子市鳥の博物館」や姫路博物館などの協力も得て展示される、600点以上におよぶ古今東西の鳥たちの標本群は圧巻の一言。「一生分の鳥が見られる⁉」とは本展のキャッチコピーですが、目安として、400種以上の鳥を観察できればバードウォッチャーとしてかなりの経験者といわれるとか。

近年、その愛らしさで人気が高まっているキーウィの姿も。/コマダラキーウィ(キーウィ目)本剥製標本、国立科学博物館蔵
ニューギニア島に分布する体重約2.5kgの世界最大のハト・オウギバトは、レースのような冠羽がまるでクジャクのよう。/オウギバト(ハト目)本剥製標本、国立科学博物館蔵
ガラパゴス諸島に生息し、食物に応じて異なるくちばしの形や体の大きさに進化したダーウィンフィンチ類の、上質なバードカービングがズラリ。

かわいい鳥、個性的な鳥、珍しい鳥。この種類の豊富さであれば、どのような鳥が目当てであっても、間違いなく楽しめるはずです。

「ペンギン大集合」のコーナー

会場は分類学上の「目」ごとにレイアウトされており、なかでも注目してほしいのはペンギン目の展示、「ペンギン大集合」のコーナーです。

ペンギン目の現生種18種のうち11種、15体の標本を展示。ヒナを見守るコウテイペンギンなど、ポーズそのものが個性的な標本がある一方で、何かに興味を引かれたように同じ方向を見つめるケープペンギンとマゼランペンギンのグループなど、配置に物語を感じるものもあります。一つの光景としてまとまりがあり、まるで動物園のような雰囲気が漂っています。

オオウミガラス(チドリ目)本剥製標本、国立科学博物館蔵

見た目はペンギンに似ているけれど系統は全く異なる、チドリ目のオオウミガラスがさりげなく混じっているのも、間違い探しのようで面白いところ。ペンギンの分布は南半球に限定されますが、北極でもオオウミガラスのようなペンギンに似た飛べない鳥が収斂進化(※)していったといいます。

(※)…魚類のサメとほ乳類のイルカ、鳥類の翼とほ乳類のコウモリの翼のように、系統の大きく異なる生物が同じ環境に置かれた際、似たような形質や機能を獲得すること。

オオトウゾクカモメ(チドリ目)本剥製標本、国立科学博物館蔵

「ペンギン大集合」のコーナーの上空に目を向けると、ペンギンの卵やヒナを狙う捕食者であるオオトウゾクカモメが羽を広げ、まさにペンギンたちを狙っている様子。吊り展示は見逃しがちなので、会場では360度、視線を巡らせてみることをおすすめします。

コンドルやオオワシなど、タカ目の標本が顔をそろえる、凛々しさが極まった一角。

また、ゲノム解析による系統研究が本展の骨子となっていますが、展示ではその象徴的な成果として、「目」の大分類にハヤブサ目が立てられたことを紹介。ハヤブサ類は、主に形態の違いを指標とした従来の分類ではタカ目ハヤブサ科とされ、これまでほとんど疑問視されませんでしたが、じつはタカよりも、系統的にはインコ目やスズメ目に近いことが判明したのです。

ハヤブサ(ハヤブサ目)本剥製標本、国立科学博物館蔵
インコ目の展示

なお、ダチョウ目からスズメ目まで44ある「目」ですが、ほぼ全世界に分布しているスズメ目は6,700種余りがいる一方で、アマゾン流域に固有のツメバケイ目は、なんとツメバケイ1種のみと、種数と分布範囲に大きな幅があります。

この1目1種の珍鳥は樹上性で飛翔力が低く、鳥では唯一、木の葉を主食とするユニークな生態をしています。パワフルに空を飛んで獲物を狩る肉食の猛禽類とは正反対なイメージですが、系統的には、このツメバケイ目を通して猛禽類のタカ目やフクロウ目などが生まれた可能性が示唆されているとか。

ツメバケイ(ツメバケイ目)本剥製標本、国立科学博物館蔵

基本的に鳥の「目」は、分岐した年代がほぼそろっており、小惑星の衝突による恐竜の大絶滅があった6600万年前から5000万年前頃までに分岐したグループが「目」となっています。ツメバケイ目は5000万年以上も分岐せず、ただ1種で生き残ってきたのか、1種を残して絶滅してしまったのかは不明ですが、なんともミステリアスな存在です。

国鳥のキジは、これまでユーラシア大陸に生息するコウライキジの亜種とされてましたが、ゲノム解析の結果、日本国有種だと判明。名実ともに「日本の鳥」に。/キジ(亜種シマキジ、キジ目)本剥製標本、国立科学博物館蔵

動物の図解イラストで人気のクリエイター・ぬまがさワタリさんが寄稿している「鳥のひみつ」コーナーも必見です。

同コーナーは、「カッコウの托卵で宿主は滅びないのか?」「鳥にもある“方言”や“言葉”」など23のテーマを設け、最新研究の成果を豆知識的に紹介するもの。ぬまがさワタリさんのイラストは、クスッと笑ってしまうようなユーモアで来場者の理解をサポートしています。

「鳥のひみつ」コーナー、「なわばりを張る損とトク」の展示
「鳥のひみつ」コーナー、「ヒマラヤを越える鳥」の展示

監修者の一人である濱尾章二さん(国立科学博物館 動物研究部研究主幹)は、「本展では、鳥と人との世界の見え方の違いを強調したかった」と話し、同コーナーの「ハトが教えてくれる鳥の“心”」の展示について触れました。

「鳥のひみつ」コーナー、「ハトが教えてくれる鳥の“心”」の展示

そこで紹介されていたのは、日本画と西洋画を区別する訓練を受けたハトに、元の絵を1,024分割してバラバラに配置を入れ替えたスクランブル画を見せるという実験結果です。元の絵が日本画か西洋画か、人にとっては判断することが困難ですが、ハトは初めて見る絵でも容易に区別がついたそう。

「人間は全体を見て特徴を捉えるのが得意で、ハトは細かいところを馬鹿正直にというか、いちいち細かく見て覚える。そういう認知の仕方をしています。つまり、世界の捉え方が違うということです。これは鳩が賢い、賢くないということではなく、ホモサピエンスと鳥とは認知の仕方が違うんだ、違う世界を見ているんだというのがわかるお話です」(濱尾さん)

また、濱尾さんは、鳥のオスとメスの意外なつがい関係に関する展示についても言及しました。「おしどり夫婦」という言葉もあるように、鳥は一夫一妻のつがい関係を結んで、仲良く子育てをするイメージを持っている人もいるでしょう。しかし、たとえばキジ類のオスはつがい関係のメスとの間に子ができると、巣作りや抱卵、子育て、そしてつがいの絆も放棄して、次々に他のメスへ求愛することから、一夫多妻制(あるいは乱婚)であるといわれています。

キジ(キジ目)メス(手前)オス(奥)本剥製標本、国立科学博物館蔵

人間の常識では、「子育てもせずに女を渡り歩くなんて」と眉をしかめたくなる生態ですが、実際はヒナの成熟が早く、子育ては1羽でも事足りるそう。厳しい自然の中で、より多くの子を残すために、それぞれの個体が進化した結果だと濱尾さんは話します。

オーストラリアに分布するセアカオーストラリアムシクイは、実に50%のヒナがつがい外交尾によって生まれるそう。/セアカオーストラリアムシクイ(スズメ目)本剥製標本、国立科学博物館蔵

「このように、我々がもっているイメージ、人間がこう思うから、鳥もこう思うんじゃないかなっていうようなことは、意外と当たっていません。鳥は、厳しい進化の淘汰圧の中で、より多くの子を残すためのあらゆる性質を身に付けてきました。ですので、これは人に結びつけて考えちゃいけないんだなと。本当の鳥の姿を知って、それを愛でるなり、保全を考えていくなりしなければいけないんだな、という想いをもって、このような展示を作っております」(濱尾さん)

ゲノム解析により、従来、私たちが抱いていたイメージとは違った姿が見えてきた鳥たち。彼らがどんな生態的特徴をもち、どんな生活をして、生態系の中でどのような役割を果たしているのか。それを知った私たちは、あらためて彼らにどんな魅力を見出すのか。本展は、ゲノム時代における鳥のイメージのアップデートにうってつけの機会となるでしょう。

 

特別展「鳥 ~ゲノム解析が解き明かす新しい鳥類の系統~」概要

会期 2024年11月2日(土)~2025年2月24日(月・休)
会場 国立科学博物館(東京・上野公園)
開館時間 9:00〜17:00(入場は16:30まで)
休館日 月曜日、11月5日(火)、12月28日(土)~1月1日(水)、1月14日(火)
※ただし、11月4日(月・休)、12月23日(月)、1月13日(月・祝)、2月17日(月)、2月24日(月・休)は開館。
※会期等は変更になる場合がございます。
入場料(税込) 一般・大学生 2,100円、小・中・高校生 600円
※未就学児は無料。
※障害者手帳をお持ちの方とその介護者1名は無料。
※学生証、各種証明書をお持ちの方は、入場の際にご提示ください。
主催 国立科学博物館、日本経済新聞社、BSテレビ東京
お問い合わせ 050-5541-8600(ハローダイヤル)
展覧会公式サイト https://toriten.exhn.jp/

※記事の内容は取材日時点のものです。最新の情報は展覧会公式サイト等でご確認ください。


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【国立科学博物館】企画展「貝類展:人はなぜ貝に魅せられるのか」開催のお知らせ

国立科学博物館
企画展「貝類展:人はなぜ貝に魅せられるのか」ポスター

国立科学博物館は、2024(令和6)年11月26日(火)から2025(令和7)年3月2日(日)までの期間、下記のとおり、企画展「貝類展:人はなぜ貝に魅せられるのか」を開催いたします。
【詳細URL:https://www.kahaku.go.jp/event/2024/11shells/

貝類は食料としてだけではなく、装飾品などの素材として、人類の生活を支えてきました。そして現代においても、さまざまな形で人々の生活や文化を彩り続けています。貝類の持つ生物学的な特性や多様性は、古代より私たちを魅了してきたのです。本展では、その奥深いシェル・ワールドのエッセンスを紹介します。

 

・開催概要

企画展「貝類展:人はなぜ貝に魅せられるのか」

【開 催 場 所】国立科学博物館(東京・上野公園) 日本館1階 企画展示室及び中央ホール

【開 催 期 間】2024(令和6)年11月26日(火)~2025(令和7)年3月2日(日)

【開 館 時 間】9時~17時 ※入館は閉館時刻の30分前まで

【休 館 日】月曜日(月曜日が祝日の場合は火曜日)、12月28日(土)~1月1日(水・祝)
※ただし12月23日(月)、2月17日(月)は開館

【入 館 料】一般・大学生:630円(団体510円)、高校生以下および65歳以上:無料
※本展は常設展示入館料のみでご覧いただけます ※団体は20名以上
※入館方法の詳細等については、当館ホームページをご覧ください
https://www.kahaku.go.jp/

【主   催】国立科学博物館

【協   力】赤星直忠博士文化財資料館、浦河町立郷土博物館、鹿児島県立埋蔵文化財センター、きしわだ自然資料館、東京大学総合研究博物館、鳥羽市立海の博物館、豊橋市自然史博物館、萩博物館、目黒寄生虫館、横須賀市自然・人文博物館

 

・展示紹介

序章 貝類の世界
貝類とは、無脊椎動物の一群である軟体動物の中で、炭酸カルシウムの殻をもったものを指すことが一般的ですが、広い意味では貝殻をもたないものも含みます。地球上に繫栄する貝類は、どのように誕生し、発展してきたのか。ここではまず貝類の進化の道筋をみていくとともに、その驚くべきサイズの多様性についても紹介します。

ミジンワダチガイ(所蔵:国立科学博物館)
Pelecyogyra fezouataensis(所蔵:国立科学博物館)

第1章 貝類の多様性の成り立ち
地球上に10 万種以上存在するといわれる軟体動物は、体のおおまかなつくり(体制)だけでなく、生息環境や生態、貝殻の形態など、さまざまな面で著しく多様性に富んでいます。貝殻を失う方向に進化した貝類もあります。ここでは、まず軟体動物の全体像を示し、そしてさまざまな角度から多様性とその要因についてみていきます。

メオトヤドリニナ(写真:国立科学博物館)
マボロシハマグリ(画像:国立科学博物館)
ハリナガリンボウ(画像:国立科学博物館)

第2章 人類と貝類の長い関わりー先史時代~現代
人類と貝類の関わりは先史時代から今日に至るまで続いています。食料が乏しい時期には、貝類は人類の生活を支える安定した食料となっていました。一方、貝殻も利器、装飾品などの素材として利用されてきました。さらには神事や遊びなどの文化にも関わるようになるなど、単なる天然物を超えた存在となっています。

貝輪(ゴホウラ)(所蔵:国立科学博物館)
貝合わせ(ハマグリ)(所蔵:国立科学博物館)

第3章 人類と貝類の深い関わりー貝に魅せられた人たち
現代における究極の人類と貝類の関わりは、貝殻のコレクションといえるでしょう。標本化が容易で、長い年月にわたって保存が可能な貝類は、生物コレクションの代表的なものとして多くの人たちを惹きつけてきました。ある地域の種をすべて集めることを目指したり、特定の分類群に専念したり、関わり方はさまざまです。

アダンソンオキナエビス(画像:国立科学博物館)
ウミノサカエイモ(画像:国立科学博物館)

第4章 貝類とこれからも長く関わり続けるために
人類と貝類には長くて深い関わりがありました。そして現在、状況は大きく変わりつつあります。たくましく地球上で発展してきた貝類も、近年の環境の改変や地球規模の変動の影響を受けています。食をはじめとした人との関わりにも変化がみられます。ここでは、現在の状況を把握し、未来に思いを巡らせます。

ますほの小貝(チドリマスオ)(写真:国立科学博物館)

 

・本展監修者

動物研究部 海生無脊椎動物研究グループ 研究主幹
長谷川 和範(はせがわ かずのり)

専門分野は腹足類(巻貝)の分類学。物心ついた頃から、貝は私の心の中で大きな存在でした。その魅力を改めて見つめ直そうというのが、今回の企画展の出発点です。研究対象や食材としての魅力はわかりやすいものの、掌の中で貝を愛でる時の幸福感を説明するのはやはり困難です。生物の適応進化の産物が、なぜこれほど心をとらえるのか、その謎は深まるばかりです。

地学研究部 環境変動史研究グループ 研究主幹
芳賀 拓真(はが たくま)

専門分野は貝を用いた進化古生物学、軟体動物学。なぜ魅せられるのか。貝歴38年になっても未だわかりません。強いて言えば、想像を超えた形の多様さでしょうか。貝を見れば脊髄反射的?に手がでるし、夢の中で「煌びやかな夢の貝」を採集しています。でも、凄く惹かれるのはチシマガイやイジケガイ。あのなんとも言えない形に、求めている答えがありそうです。

人類研究部 人類史研究グループ 研究員
森田 航(もりた わたる)

専門分野は歯の人類学。人類学を研究する者にとって貝の大きな魅力の一つは、日本の酸性土壌から縄文人のような貴重な古人骨資料を守ってくれることです。後世の子孫に自身の姿や生活がタイムカプセルのように伝わることを期待していたわけでは無いかもしれませんが、貝に囲まれて死後埋葬されることを望むほどに縄文人も貝に魅了されていたのではと想像しています。

動物研究部 海生無脊椎動物研究グループ グループ長
齋藤 寛(さいとう ひろし)

専門分野は軟体動物(主に有棘類)の分類学。子供の頃、近所の路地の植木棚に、風雨にさらされて白っぽくなったサザエやアワビの貝殻が置かれていたことを覚えています。私の経験を基にするのは根拠薄弱ですが、そんなありふれた貝の、しかも色彩の乏しい貝殻を覚えているということを考えると、ひとを魅了する最大の要因はその形ではないかと思えてきます。

地学研究部 環境変動史研究グループ グループ長
重田 康成(しげた やすなり)

専門分野はアンモナイト学。大自然の中、地層をハンマーでたたくと、美しい螺旋をもつアンモナイトが顔をのぞかせます。タイムカプセルを開けた瞬間です。なかには虹色に輝くアンモナイトもあります。はるか昔に絶滅したアンモナイトは私に何を語ってくれるのか、そのワクワク感がたまらない。

 

【文化庁】プレスリリースより

記事提供:ココシル上野


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【国立科学博物館】国立科学博物館フルバーチャル企画展「高山植物」 開催!~バーチャル登山から保全まで~

国立科学博物館

独立行政法人国立科学博物館は、来る11月18日(月)より、オンライン上のバーチャルリアリティ(VR)空間で体験できるフルバーチャル企画展「高山植物」を開催いたします。
本展では、夏山を彩る美しい高山植物たちを、季節を問わず巡ることができるバーチャル体験により紹介します。舞台は北アルプス白馬岳。いつでも登ることのできる「バーチャル白馬岳」をVR空間に再現しました。登山者の視点で山の景観や地形を楽しみながら、標高や地形とともに変化する高山植物をVR空間上で体験できる初のコンテンツとなります。バーチャル白馬岳は、登山経験のない方でも気軽にお楽しみいただけます。また、高山生態系に迫る危機や、それを打開するための博物館の取り組みとして、高山植物を自生地の外で栽培し保全する活動を紹介するコンテンツも後日公開いたします。
本展は上野本館で開催した企画展「高山植物~高嶺の花たちの多様性と生命のつながり」ともテーマを共有し、高山植物について、展示室だけでなくオンライン上でも体験できる取組となっております。

 

・バーチャル企画展の開催経緯

国立科学博物館では、近年発展しているデジタル技術を活用し、いつでもどこでも展示を観覧できる「おうちで体験!かはくVR」を2020年より公開しています。さらに2023年からは実空間の展示とは異なる「バーチャル展示室」をオンライン上に設置し、「たんけんひろば コンパスVR」や「電子楽器の創造展」などフルバーチャルコンテンツを公開してきました。

今回は、上野本館で本年開催した企画展「高山植物~高嶺の花たちの多様性と生命のつながり」とテーマを共有し、これまでのVR技術の蓄積を活かして、容易には見に行けないことも多い高山植物について、いつでもどこでも見て、楽しく学べる内容としました。実在する北アルプス白馬岳の主要地点をドローン空撮から3Dモデルで再現し、展示室内とは異なる登山者視点にて景観や地形を体験しながら、高山植物の多様な姿を楽しめます。標高や地形によって変化する高山植物の魅力だけでなく、その置かれた危機的状況についても紹介します。高山生態系に危機が迫っているからこそ、それを打開するための博物館の取り組みも存在します。特に、高山植物を自生地の外で栽培し保全する域外保全の活動について知っていただけます。小さく美しい植物たちを通して、生物多様性など、様々な環境問題を知っていただく端緒としていただければ幸いです。

 

・開催概要

【 主  催 】独立行政法人国立科学博物館
【 会  期 】令和6年11月18日(月)~以降常設

【公開スケジュール】
令和6年11月18日(月)    :「第1章 バーチャル白馬岳」の大雪渓上部(秋道)シーンを公開
令和6年11月29日(金)(予定):「第1章 バーチャル白馬岳」のお花畑、頂上宿舎~白馬山荘、白馬岳頂上、旭岳方面の4シーンを公開
令和6年12月(予定)    :「第2章 高山生態系の危機と保全」を公開

【 料  金 】無料
【 監  修 】村井良徳(国立科学博物館 植物研究部 多様性解析・保全グループ 研究主幹)
【 協  力 】市立大町山岳博物館、白馬五竜高山植物園、北海道大学植物園
【 展示場所 】国立科学博物館バーチャル展示室
https://www.kahaku.go.jp/3dmuseum/alpineplants/
【視聴可能機器】PC(ウェブブラウザ)、スマートフォン、タブレット、VRゴーグルなど

 

・展示構成

【第1章 バーチャル白馬岳】

高山植物の宝庫である北アルプス白馬岳を、ドローン映像や360度映像から作成した3DモデルによりVR空間に再現しました。冒頭、猿倉・白馬尻の映像から始まり、大雪渓上部(秋道)、お花畑、頂上宿舎~白馬山荘、白馬岳頂上、旭岳方面と5地点からなる「バーチャル白馬岳」を登りながら、標高や地形によって変化する高山植物の多様性を体験できます。

バーチャル白馬岳の大雪渓上部(秋道)シーン
高山植物解説

【第2章 高山生態系の危機と保全】

美しい高山植物は危機的状況にもあります。そして、保全の取り組みも進んでいます。自生地の外で保全されている高山植物や、高山植物と関連の深い動物を紹介し、高山植物を守ることが、植物の保全だけではなく、環境全体の多様性保全につながることを紹介します。そして、博物館がこうした生態系の保全へどのように貢献しているのか、保全と関連する「生きている標本」(リビングコレクション)についても焦点をあてて紹介します。

第2章の空間イメージ(開発中の画像)
第2章で紹介する絶滅危惧種のイメージ(開発中の画像)

・バーチャルガイドツアー

第1章 バーチャル白馬岳を会場として、本展監修者である村井良徳研究主幹によるバーチャルガイドツアーを開催予定です。本展をより深く楽しむことのできるツアーとして準備を進めており、詳細は決定次第改めてお知らせいたします。

 

【文化庁】プレスリリースより

記事提供:ココシル上野


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正倉院宝物の魅力を全く異なる新しいアプローチで「感じる」「楽しむ」『正倉院「THE SHOW」-感じる。いま、ここにある奇跡-』 大阪・東京にて開催決定!

上野の森美術館

❖大阪会場/大阪歴史博物館 2025年6月開幕予定
❖東京会場/上野の森美術館 2025年9月開幕予定

 

まったく新しい「正倉院体験」が幕を開ける

世界的に希少な品々が約1300年の時を経てなお良好な状態で伝えられている「正倉院」とその「宝物」の奇跡を、これまでとは全く異なる新しいアプローチで「感じる」「楽しむ」展覧会が、宮内庁正倉院事務所全面監修のもと、大阪・関西万博を機にスタートします。
最新のデジタル制御による映像・音楽・照明と、宮内庁正倉院事務所が研究・製作を進めてきた「再現模造」の数々(現代の名工達が宝物本来の姿を精巧に再現した作品群)のコラボレーションで、正倉院の世界の新たな感じ方・楽しみ方をご提案します。
また、“今”活躍する様々な分野のアーティストが正倉院の美や歴史をテーマに手掛ける新作もご紹介します。
会場内は、フォトスポットに限らず写真撮影およびSNS投稿が可能。気鋭のクリエーター陣による言葉・音楽・空間演出により、正倉院の世界に没入できる、まさにショーとしての華々しさに彩られた展示イベントです。

 

【本展のみどころ】
❖紡がれてきた「想い」に触れる
正倉院の宝物は約1300年の間、地上で、人々の手によって守り伝えられてきた、世界的にみても稀有な存在です。 これらを守ってきた人々の手には“残したい”という想いが込められており、その想いが時代を超えて紡がれてきたからこそ、正倉院という奇跡がいま在るといえます。本展では、光明皇后の想いから紡がれてきた様々な「想い」に触れていきます。

❖3Dデジタルデータで宝物の世界を深く味わう
正倉院事務所では、宝物の正確な情報を後世に残すため、最新のテクノロジーを用いて360度から宝物のスキャンを行い、高精細な3Dデジタルデータを取得する取り組みが行われています。 3Dデジタルデータに演出を施した展示により、宝物の細部や質感をよりリアルに紹介し、正倉院宝物の世界をこれまで以上に深く味わっていただきます。

❖再現模造×最新のデジタル技術で新たな鑑賞体験を
細心の注意を払って管理をしていても、文化財は時間の経過と共に劣化します。そこで、宮内庁正倉院事務所では、宝物の素材・構造・技法を忠実に再現して本来の姿を甦らせることを目的に、再現模造の製作を行っています。再現模造からは、宝物が高度な技術を駆使し、精緻に作られていることがよくわかります。本展では最新のデジタル制御による映像・音楽・照明との組み合わせで再現模造を展示することにより、新たな鑑賞体験を提供します。

❖現代アーティストとのコラボレーション
現代でも⾊褪せることのない正倉院宝物の美が、アーティストとのコラボレーションにより、新たな魅力を創出します。幅広いジャンルで活躍する現代アーティストが、正倉院にインスピレーションを受けて作品を制作・展示。詳細は、順次公開してまいります。

 

【ごあいさつ】
この度、<正倉院「THE SHOW」>が開催の運びとなりました。奈良、東大寺旧境内にある正倉院は、9000件もの宝物を1300年近く地上で守り伝えた、まさに“奇跡の宝庫”です。毎年秋には正倉院展が開かれていますが、今回は、この実物の観覧とは異なるアプローチ、すなわち最新のデジタル技術を駆使した手法で、皆様が体験したことのない、宝物の楽しみ方を提案させていただきます。宝物の価値をより深く味わい、皇室のかけがえのなさや伝来を支えた人々の想いなどにも触れていただく機会になれば幸いです。 (宮内庁正倉院事務所長 飯田剛彦)

 

【開催概要】
展覧会名:正倉院「THE SHOW」-感じる。いま、ここにある奇跡-
会期・会場:大阪会場/大阪歴史博物館 2025年6月開幕予定
東京会場/上野の森美術館 2025年9月開幕予定
主催:正倉院「THE SHOW」実行委員会
監修:宮内庁正倉院事務所
公式ウェブサイト: https://shosoin-the-show.jp
※詳細は2025年4月頃公式ウェブサイト等にてお知らせいたします。

 

【正倉院「THE SHOW」広報事務局】プレスリリースより

記事提供:ココシル上野


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