【増席予定あり】ろう者と聴者が遭遇する舞台作品「黙るな 動け 呼吸しろ」9月1日(月)10:00よりチケット申込開始!

東京文化会館

東京藝術大学 日比野克彦学長 総合監修
ろう者と聴者のアーティストが互いに交流し、そのプロセスをベースに
創り出されていくオリジナルストーリーを上演

ろう者と聴者が遭遇する舞台作品「黙るな 動け 呼吸しろ」のチケット申込を9月1日(月)10:00より開始することが決定したので、お知らせいたします。
「黙るな 動け 呼吸しろ」は、いよいよこの秋、東京で開催される世界陸上、デフリンピックの文化プログラムとして、2023年からろう者と聴者が協働しながら創作を進めています。
本作には、手話を言語とする《霧のまち》と日本語を言語とする《百層》という2つのまちが登場します。2つのまちの住人は、お互い相手の言語が分かりません。観客のみなさんも登場人物同様、「分からない」状態から、お互いを知ろうとだんだんコミュニケーションが生まれていく過程を客席でお楽しみください。

公演概要

【タイトル】
TOKYO FORWARD 2025文化プログラム
ろう者と聴者が遭遇する舞台作品「黙るな 動け 呼吸しろ」

【公演日時】
2025年11月29日(土)15:00 開場14:00(14:45~プレトーク)

【会場】
東京文化会館 大ホール(東京都台東区上野公園5-45)

【出演】

阿部藍子、飯塚大周、池田百花、石田迪子、板橋廉平、植田愛、宇戸田千晴、大橋悠太、奥村泰人、小野花音、小野里満子、菊地研、倉島聡、近藤辰哉、佐藤萌以、佐野和海、髙栁あゆみ、角田莉沙、成塚元香、林醍醐味、本間智恵美、三橋絡、村田裕子、萌文、八百谷梨江、ニコラス・ユヤマ、吉田美幸、レオ、西脇将伍

【スタッフ】
総合監修:日比野克彦 構成・演出:牧原依里 演出:島地保武 ドラマトゥルク:雫境、長島確
ステージング・ディレクター:中村蓉 オンガク・クリエイションスタッフ:西脇将伍
音楽監修:福中冬子 舞台美術:原田愛 照明:木藤歩 音楽:小野龍一、井川丹 音響:中原楽 舞台映像:栗山聡之 衣裳:武田久美子 ヘアメイク:るう 演出助手:田代英忠、中村未希、山田朋佳、舞台監督:山口英峰

【ストーリー】
まわりを霧に囲まれたまち。建国記念日の式典が行われている。そこへ1人の男が迷い込んでくる。
霧を抜けて別のまちからやって来たのだ。
この《霧のまち》は、浮遊し移動するまちである。音という概念がない世界で、言語は身体だ。
独自の文化が発達し、あらゆるものがこのまちの住人に便利なようにできている。
長い年月のなかで周期的に「もうひとつのまち」に近づくが、霧に遮られ、互いに知らない。
迷い込んできた男は、「オンガク」を伴う式典の様子に見とれる。
やがて住人3人と親しくなり、このまちで暮らすようになる。
2年が過ぎ、男は3人を「もうひとつのまち」へ誘う。
そのまちの名は《百層》。一極集中が進み切った超高層巨大都市である。音の文化が発達し、言語も音声である。
一方で、人口過密ゆえに騒音問題が深刻化し、極度に静寂が求められている。
2年ぶりに戻った男は、3人にまちを案内する。
《百層》のさまざまな住人との出会いを通して、やがて4人はコンサートに参加することになる……

公式サイト:https://duk-tokyoforward2025.jp/
公式YouTube :https://www.youtube.com/@duk-tokyoforward2025/
公式Instagram: https://www.instagram.com/duk_tokyoforward2025/

【主催】
東京都、公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京、国立大学法人東京藝術大学

 

チケット申込

【チケット】
全席指定・無料(要事前申込・先着順)
申込受付後公演1週間前までに、メールまたはハガキにて座席番号をご連絡します。

【申込方法】 
9月1日(月)10:00より下記いずれかの方法でお申込ください。
①申込フォーム  https://pro.form-mailer.jp/fms/6b38097f334471
②往復ハガキ 申込締切:10月31日(金)消印有効
住所、氏名、電話番号など連絡先、希望する鑑賞サポート(ろう者観劇エリア、字幕、ヒアリングループ、音声ガイド)を記入の上、以下までご送付ください。
送付先:〒108-0073 東京都港区三田1-4-1  住友不動産麻布十番ビル4階
㈱ライツアパートメント内 「黙るな 動け 呼吸しろ」公演事務局
団体(10名以上)での観劇をご希望の方は公演事務局までお問い合わせください。

※好評につき予定枚数終了。
増席を検討しており、申込の再開について10月上旬までに公式サイトで案内予定とのことですので、発表をお待ちください。

※未就学児の入場はご遠慮ください。
※1階席前方は舞台上の手話が見えやすい ろう者観劇エリアです。
一部のシーンで大きな音が鳴ります。ご希望の方には会場で耳栓をお渡しします。
詳細は公式サイトにてご確認ください。

 

【鑑賞サポート】
字幕(音声言語のセリフを字幕として表示。手話のセリフの字幕サポートはありません。)
本公演では、無料アプリ「HELLO! Theater(ハローシアター)」を使った字幕サポートをご利用いただけます。
詳しくは、こちらのURLをご覧ください。 https://www.hellotheater.info/
ヒアリングループ(要予約・先着順・定員あり・座席エリア限定)
音声ガイド(要予約・先着順・定員あり)
舞台の様子や出演者の動きなど、視覚情報を音声情報でお伝えします。
フリーエリア
客席内には、一時的に席を移動したい場合や上演中自席に戻りづらい時に座れるフリーエリアがあります。
ロビー休憩スペース
上演中に休憩が必要になった場合、ロビーで休憩できます。
託児サービス(要予約・有料・定員あり)
イベント託児・マザーズ:(0120-788-222) 11月21日(金)17:00締切。
〇車いす、補助犬をお連れでご来場の方、その他のサポートが必要な方は事前に公演事務局までお問い合わせください。

 

【会場地図・アクセス】
東京文化会館(東京都台東区上野公園5-45)
JR上野駅 公園改札から徒歩約1分
東京メトロ上野駅 7番出口から徒歩約5分
京成上野駅 正面口改札から徒歩約7分
※東京文化会館にはお客様専用駐車場はございません。近隣の有料駐車場をご利用ください。

 

【公益財団法人東京都歴史文化財団】プレスリリースより


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東京・上野公園┃100種200株以上のダリアが秋の庭園を彩る『上野東照宮ぼたん苑 特別祭典 ダリア綾なす秋の園』 2025年9月20日(土)~11月3日(月)開催

上野東照宮

和傘を庇にして咲く花姿多彩なダリア。

徳川家康公・徳川吉宗公・徳川慶喜公を祀る神社として建立された上野東照宮(東京台東区 上野公園内)では、2025年9月20日(土)~11月3日(月)の間、『上野東照宮ぼたん苑 特別祭典 ダリア綾なす秋の園』を開催し、100種200株以上のダリアが秋を彩ります。暑さが和らぐ10月中旬頃に一番の見頃を迎えると予想されます。
2016年より開催した本催事は今年で10回目の開催を迎えます。

開催期間中は毎日の開花情報をInstagramで発信しています。
公式Instagram:https://www.instagram.com/utbotanen_official/

 

■多様な花色や花容を持つダリアが100種200株以上
ダリアはメキシコ原産のキク科の球根植物で、日本へは江戸時代に伝来しボタンに似ていることから「天竺牡丹(テンジクボタン)」という和名がついています。
様々な花容を持ち、色鮮やかに咲き誇るダリアの花々をどうぞごゆっくりお楽しみ下さい。

浮気心

・濃紅・桃・白が気まぐれに交じり咲く珍しい花色の品種

 

黒蝶

・黒味を帯びた濃赤色でダリア人気に火をつけた品種。

 

メアリーエベリン

・均一に並んだ花弁の内側に小さい花弁が重なる品種。

 

■『旧寛永寺 五重塔』をはじめとする本格的な江戸建築とぼたん
苑内では旧寛永寺五重塔や東照宮の参道に並ぶ石灯籠とあわせた江戸風情の中、和傘を庇にして咲くダリアを楽しめます。

昨年の様子
ダリアと五重塔


■他にも写真撮影スポットが充実!
ダリア等の花々と一緒に、季節に合わせた展示や寄せ植え、盆栽などをご用意しています。

季節のしつらえ
水に浮かべたダリア

 

■ダリアと共に咲く花達
苑内にはダリアの他にワレモコウやフジバカマ、コスモスなど季節の草花が開花し、様々な見どころが満載です。

ワレモコウ
フジバカマ
コスモス

 

■上野東照宮ぼたん苑 特別祭典 ダリア綾なす秋の園 開催概要
会期期間:2025年9月20日(土)~11月3日(月・祝)※期間中無休
開苑時間:9:30~16:30(入苑締切)
入 苑 料 :大人(中学生以上)800円、会期入苑券2,000円、小学生以下無料
主 催 :一般社団法人 上野観光連盟 後援:台東区
住 所 :〒110-0007 東京都台東区上野公園9-88
TEL :03-3822-3575(ぼたん苑)
アクセス:JR上野駅 公園口より徒歩5分
京成電鉄京成上野駅 池之端口より徒歩5分
東京メトロ根津駅 2番出口より徒歩10分

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■上野東照宮ぼたん苑
上野東照宮ぼたん苑は、徳川家康公を御祭神とする上野東照宮の敷地内に、1980年4月、日中友好を記念し開苑しました。回遊形式の日本庭園に植栽されたぼたんは現在、春は110品種500株、冬は40品種160株が栽培されています。
東京都心にありながら緑豊かな上野で、江戸風情に身を委ねながら、ごゆっくりとぼたんをご観賞ください。

住 所 :〒110-0007 東京都台東区上野公園9-88
TEL  :03-3822-3575(ぼたん苑)
アクセス:JR上野駅 公園口より徒歩5分
京成電鉄京成上野駅 池之端口より徒歩5分
東京メトロ根津駅 2番出口より徒歩10分
公式HP:https://uenobotanen.com/
公式Instagram:https://www.instagram.com/utbotanen_official/

 

【東照宮】プレスリリースより


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【東京都美術館】「つくるよろこび 生きるためのDIY」取材レポート。自分なりのDIY精神を育むきっかけに。

東京都美術館
展示風景、ダンヒル&オブライエン《「イロハ」を鑑賞するための手段と装置――またいろは》2025年

誰もがもつ創造性に目を向け、自分なりの方法で「よりよく生きる」ことを考える、DIY(Do It Yourself / 自分でやってみる)をテーマにした展覧会「つくるよろこび 生きるためのDIY」が東京都美術館で開催中です。会期は2025年7月24日(木)から10月8日(水)まで。

出品作家たちがレクチャーを行った報道内覧会の様子をレポートします。

■出品作家(展示順/敬称略):若木くるみ、瀬尾夏美、野口健吾、ダンヒル&オブライエン、久村卓、伊藤聡宏設計考作所、スタジオメガネ建築設計事務所

展示風景

 

DIYとは、目の前の問題を自身の創意工夫で解決していくアプローチです。本展では、DIYをより良く生きるための方法であると同時に、不便や困難を乗り越えるための手段であると捉えながら、その過程にある気づきや達成感といった「つくるよろこび」に着目。DIYの手法や考え方に関心を寄せる5組の現代作家と2組の建築家の作品を紹介し、自分なりの方法と感覚を頼りにつくるDIYの在り方や、生きることと密接につながるアートの存在について考えを促す内容になっています。

会場は全4章構成です。第1章「みることから始まるDIY」では、DIYの始まりである「みる」ことに創造の契機を見出し、文房具や台所用品、空き缶、家具といった身の回りの物を彫版として再利用する版画家・若木くるみさん(1985-)の作品を展示。

展示風景
展示風景、左は若木くるみ《CANベルスープ》2024年

生漆のチューブで魚のひらきを象った「チューブのひらき」シリーズは、職人たちが高価な生漆を最後まで使い切るためにチューブを開く様子から着想を得たもの。チューブ特有の質感が凹凸や照りを表現しており、“魚拓”には不思議な趣きがあります。こうした実験的な行為により、ありふれた日用品に新しいイメージや意味を立ち上げるとともに、創造の面白さを誰もが親しみやすいユーモラスな形で提示しています。

左から若木くるみ《のどぐろ》、《アジのひらき》、《ヒラメのひらき》2024年
若木くるみ《タワマン》2025年

天井まで届く《タワマン》(2025)は、若木さんが初めて独り暮らしを始めてから20年以上使い続けてきた冷蔵庫を版とした作品。いよいよ冷蔵庫が寿命を迎えようとしたタイミングで、「版画にすることで、自分で息の根を止めようと決心して」、本展に利用したと話します。

アイデアの出発点となったのは、冷蔵庫に貼りつけたドイツ人画家パウル・クレーの展覧会のチケットとのこと。チケット自体も作品の中に取り入れながら、音楽的な感性による詩情豊かな色彩の世界が魅力のクレー作品に通じる、キュビズム的なタワーマンションを出現させています。

若木くるみ《さいごの版さん》2025年
左から若木くるみ《わたくしのわたくしによるわたくしのメタの版画》2025年、《顔拓》2018年

 

第2章「失って、立ち上げていくDIY」では、自然災害や経済的困難により多くのものを失った人々が、新たに暮らしを立ち上げていく営みに眼差しを向ける、瀬尾夏美さんと野口健吾さんの作品を取り上げています。

東京出身の瀬尾夏美さん(1988-)は、東日本大震災後に東北へ移住し、災禍とともに生きる人々の言葉や風景の変化を記録しながら多彩な作品制作を行うアーティストで、本展ではドローイングや絵画を中心に空間を構成。

冒頭に展示された《輪っか》(2011)は震災当日の夜に描かれたものですが、「きのうと同じような線になったこと」が腑に落ちなかったそう。そこから「本当の現場に行って切実に描くべきものはなんなのか」を、地域の人々とかかわりあう中で考えてきたと語りました。

瀬尾夏美《輪っか》2011年
展示風景
展示風景、左は瀬尾夏美《うつくしい場所》2015年

2015年、岩手県陸前高田の復興にかかる嵩上げ工事によって新しい地面が作られていく過程で、慣れ親しんだ山が削られ、町跡が埋め立てられていく様子を目の当たりにし、物語の必要性を感じたという瀬尾さん。本章では、地面の下にいるかつてのまちの人々と新しいまちの人々がつながる、2031年の陸前高田を書いた物語「二重のまち」にまつわるドローイングの数々も紹介されています。

瀬尾夏美《二重のまち》2015年
左から瀬尾夏美《地底に咲く》《とおくにつづく》2015年

こうした「二重のまち」のイメージは、能登半島地震の被災地をはじめ、災禍を経験したさまざまな場所を旅するたび、人や土地と不意につながり、互いの経験や思考を話し合う対話の時間を生み出しているとのこと。不可逆な変化の中で、語られなくなっていく記憶や想いの居場所を作り、それを別の誰かが受け取り、暮らしの支えとしていく。小さな共同体の人々がつなぐ営みの可能性を、さびしさに寄り添うような言葉とともに鑑賞者に伝えています。

展示風景

写真家・野口健吾さん(1984-)は、川辺や公園で独自の生活空間を構築する人々を訪ね歩いて撮影した「庵の人々」シリーズを展示。廃材やブルーシートなどのブリコラージュで形作られた“庵”には、経済的な理由で住まう人もいれば、自ら好んでその暮らしを続ける人もいて、その意匠や様相も多種多様です。しかしいずれも、さまざまな創意工夫や創造の断片が見出され、ストレートかつ切実な「生きるためのDIY」の精神と彼らの逞しさを感じさせます。

野口健吾《庵の人々 茨城県取手市》2014年

10年にわたる取材の中で、幾度も同じ場所を訪ねているという野口さん。展示の中にも同じ構図で一人の男性と“庵”にフォーカスし、その変化を記録したシリーズが存在します。

野口健吾《庵の人々 東京都渋谷区》2011年、2013年、2014年、2015年

「次に訪ねたら全然変わっていなかった方、逆に老いてきたなっていう方もいれば、同じ庵でもヤドカリのように人が住み変わっているということもあります。あるいは、DIYで自分の暮らしを作り上げたけれど、台風で一瞬のうちに吹き飛ばされてしまうこともあります。都市の片隅でそうした人の営みが行われています。庵はあくまでも、その日暮らし、仮の宿です。作品を見て、『住まいとはいったいなんなのか』というところも考えていただければと思います」(野口さん)

上から野口健吾《庵の人々 大阪府大阪市淀川区》2016年、《庵の人々 大阪府大阪市淀川区 台風21号後》2018年

 

第3章「DIYでつくる、かたちとかかわり」では、彫刻的なアプローチをベースに、立ち上げた「かたち」から人や社会との新たな「かかわり」が生まれるプロセスを重視した多様な表現活動を展開する、ダンヒル&オブライエン久村卓さんを紹介。

ロンドンを拠点とするダンヒル&オブライエンは、協働の難しさと可能性を創造の糧に、独自の装置を作ったり、パフォーマンスや他者との共同作業を取り入れたりしながら作品を生み出すアーティスト・ユニットです。出展作品はすべて本展のために準備された新作。東京都美術館所蔵の野外彫刻である、「いろは歌」を題材にした最上壽之の《イロハニホヘトチリヌルヲワカヨタレソツネ・・・・・・ン》と出会い、かたちと言葉の関係性に感銘を受けたことが新作プロジェクトの出発点になったといいます。(※同作は無料で鑑賞可能です)

そこからイギリスと日本で、芸術家、科学者、音楽家、作家などさまざまなバックグラウンドをもつ参加者をのべ100人以上集め、野外彫刻について描写したテキストをもとに粘土を造形するワークショップを実施。遠隔的な「対話」を通じた粘土作品はすべてデータ化され、3Dプリントを経て会場で「かたちの図書館」として立ち上げています。

「かたちの図書館」の展示、ダンヒル&オブライエン《「イロハ」を鑑賞するための手段と装置──またいろは》2025年
「かたちの図書館」の展示、ダンヒル&オブライエン《「イロハ」を鑑賞するための手段と装置──またいろは》2025年

さらに、これらのデータをマッシュアップし、集合体としての3Dマケット(模型)を作成。19世紀に彫刻の拡大複製に用いられたパンタグラフを設置し、3Dマケットを野外彫刻とほぼ同じ大きさまで拡大した大型インスタレーション《「イロハ」を鑑賞するための手段と装置──またいろは》(2025)が完成しました。

ダンヒル&オブライエン《「イロハ」を鑑賞するための手段と装置──またいろは》2025年

なお、台座に見える部分は、ロンドンにあるダンヒル&オブライエンのスタジオを原寸大で模したものです。これを二人は台座であり、制作の場であり、ホームのような空間としての「実践のためのいかだ」と表現。展示では、スタジオ型「いかだ」の上にパンタグラフを置き、彫刻をつくるための複雑なツールとして機能させています。

多摩美術大学彫刻学科出身の久村卓さん(1977-)は、制度的な枠組みを行き来しながら移ろいやすい美術の価値を問いかけているアーティストです。展示にはいわゆる彫刻らしい彫刻というものがありません。本人の形容するところの「厳しい体育会系なところがある」アカデミックな彫刻から、いかにして距離を取るかを模索した結果、心身に負荷をかけない軽さを重視した素材や、美術の周縁に位置するDIY的、あるいは手芸的な技法を採用するようになったといいます。

久村さんが主に手掛けているのは、台座や額縁、展示空間といったパレルゴン(作品を成立させるための構造的な要素)です。

久村卓《PLUS_Ralph Lauren_yellow striped shirts》2025年

たとえば、「着られる彫刻」である《PLUS_Ralph Lauren_yellow striped shirts》(2025)は、ラルフ・ローレンの古着を素材とした作品。胸元のロゴマークに台座を刺繍して彫刻に仕立てたものですが、それだけでは手芸的な領域を出ないと考えた久村さんは、刺繍を額装することで絵画的に演出。加えて、回転台の上に心棒を作ってシャツを乗せることでトルソーのように見せ、廃材を再利用した階段状の台座を設置するという4重のレイヤーを用いることでアート性を強調しています。

久村卓《PLUS_Ralph Lauren_yellow striped shirts》2025年

廃校から譲り受けたハードルや工事現場で用いられたA型バリケードを素材とした「One Point Structure」シリーズは、台座部分をベンチ風にすることで、来場者が彫刻とは気づかず座ってしまうような仕立てになっています。じっくり鑑賞を楽しんでほしい反面、座って休める場所が少ない傾向にある美術館のジレンマを解消する手段であるとのこと。

展示風景、手前は久村卓《One Point Structure 7》2022-2024年

バーカウンターのようなスペース《織物Bar at 東京都美術館》(2025)は、美術館に長く滞在するためのコミュニケーションを生成する場として制作されたもの。ここでは毎週金曜日、バーでお酒を選ぶように好きな織糸や布をオーダーし、オリジナルの織物をつくれるイベントが開催されます。(※要事前予約)

久村卓《織物Bar at 東京都美術館》2025年

織糸は手芸糸メーカーの提供品や古着を割いたものなどさまざま。中には東京都美術館で過去に開催された展覧会のカーテンだったものも含まれるとの話があり、それらが経験してきた記憶に思いを馳せながら自身の手で織り込む、本展らしい豊かな経験が期待できそうです。

 

第4章「DIYステーション──自分でやってみよう!」は、第3章までで見てきたDIYに通じる多様なアプローチや創意工夫を参照点としながら、来場者が展示内容を反芻し、あらためてDIYについて考えるためのプラットフォームとなっています。

展示風景

空間設計は伊藤聡宏設計考作所スタジオメガネ建築設計事務所の2組の建築家チームが手掛けたもので、テーマは「観察と考察」。その象徴として空間中央では、DIY精神の視点から、産業革命のカウンターとして現れたアーツアンドクラフツ運動を起点とする歴史的な活動を建築家チームでまとめた「DIY年表」を掲示しています。

DIY年表

その周囲では、出品作家の制作手法やアプローチを体験できるコーナーや、DIYや作家に関する資料展示を展開。たとえば、ダンヒル&オブライエンは「彫刻作品に触れてみたい」という来場者の思いに応える形で、箱の中に手を入れ、中にある彫刻を手で観察できる仕掛けを制作しています。

展示風景

一般市民からなる展覧会ファシリテーター「つくるん」の案内に従って、一人が箱の中にある彫刻の特徴を説明し、もう一人が説明をもとに絵を起こすという作業を交互に行いましたが、それぞれが注目する質感や形状のポイント、表現する言葉によって、同じ彫刻でもまったく異なる絵が生まれる過程は非常に楽しいものでした。

そのほかにも、廃材であった柱材に若木くるみさんが版を彫り、来場者がフロッタージュ(凹凸のある物に紙を乗せ、鉛筆などでこすって模様を写し取る技法)で作品にするコーナーなど、つくること・話すこと・考えることを促す展示の数々が用意されています。本展を通じて、来場者が自分の中のやってみたいこと、何か心にひっかかっていること、解決したいこと、さまざまな衝動と感情に出会うことが、オリジナルのDIYの芽生えにつながるのかもしれません。

「つくるよろこび 生きるためのDIY」概要

会期 2025年7月24日(木)~10月8日(水)
会場 東京都美術館 ギャラリーA・B・C
開室時間 9:30~17:30、金曜日は9:30~20:00 ※入室は閉室の30分前まで
休室日 月曜日、9月16日(火)
※ただし、8月11日(月・祝)、9月15日(月・祝)、9月22日(月)は開室
観覧料(税込) 一般 1,100円 / 大学生・専門学校生 700円 / 65歳以上 800円/ 18歳以下、高校生以下無料

※身体障害者手帳・愛の手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・被爆者健康手帳をお持ちの方とその付添いの方(1名まで)は無料。
※18歳以下の方、高校生、大学生、専門学校生、65歳以上の方、各種お手帳をお持ちの方は、いずれも証明できるものをご提示ください。
※事前予約は不要。ただし、混雑時に入場制限を行う場合があります。
そのほか、詳細は展覧会公式サイトでご確認ください。

主催 東京都美術館(公益財団法人東京都歴史文化財団)
お問い合わせ 03-3823-6921
展覧会公式サイト https://www.tobikan.jp/diy/

※記事の内容は取材時点のものです。最新情報は展覧会公式サイト等でご確認ください。


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【国立西洋美術館】「スウェーデン国立美術館 素描コレクション展―ルネサンスからバロックまで」取材レポート。巨匠たちの臨場感ある筆致を堪能する

国立西洋美術館
コルネリス・フィッセル《眠る犬》スウェーデン国立美術館蔵

世界最高峰の素描コレクションを誇るスウェーデン国立美術館より、デューラーやルーベンスなど約80点の名品を選りすぐって紹介する展覧会「スウェーデン国立美術館 素描コレクション展―ルネサンスからバロックまで」が、国立西洋美術館[東京・上野公園]で開催されています。会期は2025年7月1日から9月28日まで。

「スウェーデン国立美術館 素描コレクション展―ルネサンスからバロックまで」展示風景、国立西洋美術館、2025年

スウェーデンの首都ストックホルムにあるスウェーデン国立美術館は、同国王家が収集した美術品を基盤にする、ヨーロッパで最も古い美術館のうちの一つ。中世から現在に至る美術、工芸、デザインなど幅広いコレクションを所蔵していますが、中でも素描コレクションは質、量ともに世界屈指のものと評されています。

素描(デッサン、ドローイング)は、ペンや木炭、チョークなどを用いて対象の輪郭、質感、明暗などを表現した線描中心の平面作品を指します。アイデアを素早く描きとめるため、技術を磨くためと、素描の制作目的はさまざまですが、とくに絵画や彫刻などの構想を練るプロセスと結びつく場合が多いことから、16-17世紀の文筆家たちは素描をあらゆる造形の基本と捉え、高く評価していました。

作家の思考や手の痕跡が直接的に感じられるほか、慎重な筆運びが求められる本制作では鳴りを潜めてしまう勢いといったものも見てとれるなど、まるで創造の場に立ち会っているような親密な距離感を味わえることが、素描作品の大きな魅力となっています。

本展は、ルネサンスからバロックまでの素描作品の特色と魅力を伝えるもの。スウェーデン国立美術館の素描コレクションから借用した81点の名品、および国立西洋美術館の関連作品3点、計84点を紹介しています。

なお、素描は温湿度の変化や光、振動の影響を非常に受けやすいメディアです。海外の美術館の所蔵作品が、これほどの規模でまとめて日本の展覧会でお披露目されるのは、本展が初めてのことであるそう。

「素描とは何か」を伝える導入部 。
「スウェーデン国立美術館 素描コレクション展―ルネサンスからバロックまで」展示風景、国立西洋美術館、2025年
素描に用いられる画材についても詳しく解説されている。
「スウェーデン国立美術館 素描コレクション展―ルネサンスからバロックまで」展示風景、国立西洋美術館、2025年

 

会場は4章構成で、イタリア、フランス、ドイツ、ネーデルラントという制作地域別に紹介しています。第1章は、ルネサンス、マニエリスム、バロックと燦然と輝く美術の中心地であり続けたイタリアがテーマ。

ジョヴァンニ・ダ・ウーディネ《空飛ぶ雀》スウェーデン国立美術館蔵
手前はフェデリコ・バロッチ《後ろから見た男性の頭部》スウェーデン国立美術館蔵
フェデリコ・ツッカリ《聖母被昇天》スウェーデン国立美術館蔵
ドメニコ・ティントレット(本名ドメニコ・ロブスティ)《ウイルギニアの死》スウェーデン国立美術館蔵

注目したいのは、マニエリスム期に画家たちの関心の低下を被った自然観察が再び重視されはじめた16世紀末頃から、後のバロック美術に繋がる重要な役割を果たしたカラッチ一族の作品です。

アンニーバレ・カラッチ《頭を反らし目を閉じた仰向けの若い男性の裸体習作》スウェーデン国立美術館蔵

カラッチ一族は1582年に故郷ボローニャに設立した私的な美術アカデミーで、古典彫刻の模写や郊外での風景や庶民のスケッチといった、独自の美術教育を行っていました。特に力を入れていたのが裸体素描で、ときには解剖学に基づいて人体構造の理解に努めたといいます。赤チョークで描かれたアンニーバレ・カラッチの《頭を反らし目を閉じた仰向けの若い男性の裸体習作》は、そうした人物素描の好例です。

また、《画家ルドヴィーコ・カルディ、通称チゴリの肖像》(c.1604-09)は、まさに素描を制作中の仲間の画家を描きとめた肖像素描であり、本展のアイコンにもなっています。

アンニーバレ・カラッチ《画家ルドヴィーコ・カルディ、通称チゴリの肖像》1604-09年頃、スウェーデン国立美術館蔵

 

フランスをテーマにした第2章では、パリ南東方フォンテーヌブローの宮廷に招聘されたイタリア画家たちによる風変わりな舞台衣装のデザインを皮切りに、ジャック・ベランジュやジャック・カロといったロレーヌ地方が輩出した個性的な版画家たち、フランス・バロック期を牽引した画家たちの作品などが並びます。

フランチェスコ・プリマティッチョ周辺《白鳥の騎士》スウェーデン国立美術館蔵
ニコロ・デッラバーテに帰属《蛙男》スウェーデン国立美術館蔵

優れた素描家でもあったカロの展示では、聖人アントニウスにまつわる伝説を描いた《聖アントニウスの誘惑》の下絵素描と、それに基づく版画(c.1635)を併置しています。

ジャック・カロ《聖アントニウスの誘惑》スウェーデン国立美術館蔵
ジャック・カロ《聖アントニウスの誘惑(第二作)》1635年頃、国立西洋美術館蔵

細密な調整で線描に動勢をもたせながら自然な遠近感を表現する版画の技術、バラエティー豊かな悪魔のビジュアル、パニック・ムービーを切り取ったかのような躍動感など、それぞれ単体で鑑賞しても見ごたえは十分です。

しかし、版画では悪魔と戦うアントニウスが勇ましく十字架を振りかざしている一方で、素描では尻もちをついて劣勢に追い込まれているほか、構図の左右を縁取る岩の有無など、両作では細部にさまざまな違いがあることがわかります。比較することで、画家が何にこだわって作品を発展させていったのか、構成要素の取捨選択の効果などにも思いが巡るでしょう。

シャルル・ル・ブラン派《ヴェルサイユ宮殿の噴水のためのデザイン》スウェーデン国立美術館蔵

また、同章ではスウェーデン国立美術館の素描コレクションの基礎を築いた建築家ニコデムス・テッシンが、自邸の天井装飾として制作させた優美なデザイン素描についても触れています。

ルネ・ショヴォー《テッシン邸大広間の天井のためのデザイン》スウェーデン国立美術館蔵

 

第3章は16世紀を中心としたドイツ(厳密には、スイス、オーストリア等を含むドイツ語圏地域)に焦点を当てており、ハイライトはマティアス・グリューネヴァルト、アルブレヒト・デューラー、ハンス・バルドゥング・グリーンら、ドイツ・ルネサンスを代表する3人の巨匠の頭部習作と肖像素描です。

マティアス・グリューネヴァルト(本名マティス・ゴットハルト・ ナイトハルト)《髭のない老人の頭部》スウェーデン国立美術館蔵
ハンス・バルドゥング・グリーン《下から見た若い男性の頭部》スウェーデン国立美術館蔵

「黒線で描けないものはない」と評されたデューラーの《三編みの若い女性の肖像》(1515)は、素描でありながら、それ自体が独立したモニュメンタルな芸術作品として仕上げられています。顔の各部や凹凸、肌の質感が細緻な線でデリケートに描かれている一方、髪やリボン、衣服がより太く濃い線の束で描かれている点が興味深く、自然と像主の造詣に意識が向くテクニックとも見ることができるでしょう。

アルブレヒト・デューラー《三編みの若い女性の肖像》1515年、スウェーデン国立美術館蔵

 

17世紀を中心としたネーデルラント(現在のベルギー、オランダにあたる地域)の展開を追う第4章冒頭では、光の映り込む淡い瞳が印象的なリュカス・ファン・レイデンの《若い男性の肖像》(1521)が鑑賞できます。ネーデルラントでは15世紀初頭に油彩技法が急速に発展しましたが、イタリアと比較すると紙の普及が遅れたこともあり、素描に関しては16世紀初頭以前の作品があまり残っていません。そうした意味で本作は貴重な作例といえます。

リュカス・ファン・レイデン《若い男性の肖像》1521年、スウェーデン国立美術館蔵

政治的、宗教的動乱から16世紀末にオランダとフランドルに南北分断されたネーデルラントですが、動乱が落ち着いたフランドル側で芸術復興の中心にいたのがペーテル・パウル・ルーベンスでした。ルーベンスは工房に寄せられた大量の注文をさばくため、大勢の弟子や助手たちにも作業を分担させて絵画制作に当たりましたが、その体制を支えたのが周到に用意された準備素描であったといいます。

ペーテル・パウル・ルーベンス《アランデル伯爵の家臣、ロビン》1620年、スウェーデン国立美術館蔵

《アランデル伯爵の家臣、ロビン》(1620)を見ると、余白にモデルとなった人物の着ている服の素材や色についての詳細なメモがルーベンス自身の手で描き込まれており、素描がどのように活用されていたのかを想像させます。

ヤン・ブリューゲル(父)《旅人と牛飼いのいる森林地帯》1608-11年頃、スウェーデン国立美術館蔵

経済的繁栄に支えられ、絵画制作が未曽有の活況を呈したオランダ側では、宗教画像の礼拝を禁じるプロテスタント国家であったことや、絵の購買層である市民たちが身近で親しみやすい画題を好んだことから、風景、風俗、静物、動物などのジャンルが発展を遂げます。他方で、キリスト教の物語を描くことにこだわり続けた画家たちも存在し、その筆頭がレンブラント・ファン・レインでした。

レンブラント・ファン・レイン《キリスト捕縛》スウェーデン国立美術館蔵

ゲッセマネの園でユダの裏切りにより逮捕されるキリストを描いた《キリスト捕縛》は簡素な印象ですが、レンブラントの代名詞である光と闇の効果が生かされています。緊迫した場面に荘厳さや神々しさ、あるいは自分の運命を受け入れるキリストの精神の気高さが表現され、小品ながら目を引くものがありました。

手前はヘンドリク・ホルツィウス《自画像》1590-91年頃、スウェーデン国立美術館蔵
コルネリス・フィッセル《眠る犬》スウェーデン国立美術館蔵

展示の終わりには、警戒心を解いて眠る姿が愛らしいコルネリス・フィッセルの《眠る犬》があります。うっすら開いた瞼、腹部の柔らかな毛並みなど、細部まで徹底した観察にもとづいて描かれており、優しい色合いは作家の犬にそそぐ温かな視線を感じさせます。本作をモチーフとしたオリジナルグッズも販売されていましたので、会場に足を運んだ際はぜひお見逃しなく。

 

「スウェーデン国立美術館 素描コレクション展―ルネサンスからバロックまで」概要

会場 国立西洋美術館[東京・上野公園]
会期 2025年7月1日(火)~9月28日(日)
開館時間 9:30 〜 17:30(金・土曜日は20:00まで)
※入館は閉館の30分前まで
休館日 月曜日、7月22日(火)、9月16日(火)
※ただし、7月21日(月・祝)、8月11日(月・祝)、8月12日(火)、9月15日(月・祝)、9月22日(月)は開館
観覧料(税込) 詳細は公式チケットページをご確認ください。
主催 国立西洋美術館、読売新聞社
問い合わせ 050-5541-8600(ハローダイヤル)
展覧会公式サイト https://drawings2025.jp

※記事の内容は取材時点のものです。最新情報は展覧会公式サイト等でご確認ください。


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東京・上野公園で野外ジャズフェス!「Jazz is fun! IQASKY Concert 2025」9月21日(日)開催

水上音楽堂(上野恩賜公園野外ステージ)
Jazz is fun! IQASKY Concert 2025

豪華ミュージシャン×アートパフォーマンスのジャズライブイベント!世代を超えて音楽を楽しむ秋の野外ジャズフェスティバル。

ジャズフェス「Jazz is fun! IQASKY Concert 2025」が9月21日(日)に東京 上野恩賜公園・野外ステージにて開催されます(主催:IQASKY Concert 2025実行委員会)。 ブラサキ2+1、HOKEY & HOLY(宝亀克寿&堀尾和孝)など豪華出演者が集結! スペシャルゲストありライブドローイングありの、大人から子供まで世代を越えて楽しめるジャズライブイベントです。


2025年9月21日(日)、上野恩賜公園・野外ステージ(水上音楽堂)にて、ジャズフェスティバル「Jazz is fun! IQASKY Concert 2025」を開催いたします。
初開催となる本イベントでは、ジャズの楽しさを誰でも気軽に体感できる“遊び心あふれる”プログラムをご用意。 本格的なスウィングを響かせる「ブラサキ2+1(BLOODEST SAXOPHONE)」をはじめ、関東ジャズシーンの注目バンド「The Dixie Railroders」「Traxbone Rize Sextet」「HOKEY & HOLY(宝亀克寿&堀尾和孝)」などが出演します。

さらに、スペシャルゲストとして91歳、現役ピアノ弾き語りのホキ徳田さんを迎え、ソウルフルなステージをお届け。ライブドローイングアーティスト・早乙女道春氏による即興アートパフォーマンスも行われ、音と絵がシンクロする唯一無二の時間を創出します。
会場は都心にありながら自然に囲まれた上野恩賜公園・野外ステージ。自由席でゆったりとした雰囲気の中、家族連れや学生、ジャズビギナーも気軽に楽しめる内容です。
秋の空の下、誰もがジャズの魅力に触れられる1日。ご来場をお待ちしております!

 

■出演者紹介

ブラサキ2+1(BLOODEST SAXOPHONE)

ブラサキ2+1(BLOODEST SAXOPHONE)

世界を股にかけて活躍するジャンプ・バンド「BLOODEST SAXOPHONE」の小編成ユニット「ブラサキ2」。今回は上野ヴァージョンとしてバリトン・スターも参加。様々なパーティーを沸かせてきたアコースティック・サウンドをお楽しみに。

The Dixie Railroaders

The Dixie Railroaders

Trumpet & leader伊藤亮がNew YorkやNew Orleansで影響を受けたダンサブルでホットなジャズを表現するとっても楽しいショーバンド。デキシー、スウィング、モダンジャズ、ラテン、昭和歌謡と幅広いレパートリーを持つ。

Traxbone Rize Sextet

Traxbone Rize Sextet

Asax・Tp・TbとギタートリオのSextet。美しいハーモニーとグルーブ感、澄んだ音を目指して、日々研究を重ねている。東京・横浜を中心にイベントやライブハウスでの演奏の他、今年は長野ツアー4Daysを行った。斑尾ジャズフェスティバル2025「瀬川昌久賞」受賞。

HOKEY & HOLY(宝亀克寿&堀尾和孝)

HOKEY & HOLY(宝亀克寿&堀尾和孝)

アニメ『ワンピース』のジンベイ役や『スラムダンク』の安西先生役をはじめ、50以上のアニメ作品に出演してきた声優・宝亀克寿と、国内外のアーティストのプロデュースを多数手がけるギタリスト堀尾和孝による音楽ユニット。宝亀克寿の声で聴くジャズの名曲。

ホキ徳田

ホキ徳田(スペシャルゲスト)

東京・上野出身のピアニストであり、歌手・女優。3歳からピアノを始め、カナダに留学後、1958年に「スリーバブルス」でデビュー。91歳今なお現役の、“モダン”を体現する表現者。文豪ヘンリー・ミラーの8人目の妻としても知られる。

早乙女道春

早乙女道春(ライブ・ドローイング)

雑誌「Popeye」や「MEN’S CLUB」「BRUTUS」「GQ」などの装画やあまたのCDジャケットを手がける。2015年には「BOTTEGA VENETA」の広告ビジュアルも制作。ジャズ・ミュージシャンの絵を描かせたら当代随一。 今回の本イベントのメインビジュアルのイラストも手がける。

 

■ポイント

1.豪華ラインナップ:
ブラサキ2+1(BLOODEST SAXOPHONE)、The Dixie Railroders、
Traxbone Rize Sextet 、HOKEY & HOLY(宝亀克寿&堀尾和孝)ほか実力者揃い!

2.音楽界のレジェンド出演:
キャリア67年・91歳現役のピアノ弾き語り、ホキ徳田による生演奏

3.芸術の秋!アートと音楽のコラボ:
その場のグルーブごと描き出す早乙女道春のライブドローイング。現地購入も可能

4.開放感あふれるロケーション:
秋の上野恩賜公園・野外ステージで雨の心配なく自然に包まれながら音楽を堪能

5.誰でも楽しめる:
自由席&出入り自由の手頃なチケット料金で、家族連れ・学生・ビギナーも気軽に参加可能
小学生以下無料!

 

■イベント概要

* タイトル:Jazz is fun! IQASKY Concert 2025
* 日時:2025年9月21日(日) 開場14:00/開演15:00/終演予定19:00
* 会場:上野恩賜公園 野外ステージ(水上音楽堂)
* アクセス:JR「上野駅」公園口より徒歩7分
* チケット:一般 3,000円(税込)/学生 1,000円(税込)※自由席
* チケット販売:e+(イープラス)https://eplus.jp/sf/detail/4354920001-P0030001
* 公式サイト:https://iqasky.com/2025/
* 主催:IQASKY Concert 2025実行委員会
* 企画・運営: 株式会社アチュー・ワークス / WaikikiRecord
* お問い合わせ:eventstama@outlook.jp

■公式Instagram:https://www.instagram.com/iqasky_official/
■公式X:https://x.com/iqasky_official
d167721-1-15a523c7b22425875e72d52a67e208cc.pdf

IQASKY Concert 2025

 

【株式会社アチュー・ワークス】プレスリリースより


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青春わっしょい!巨大な藝祭御輿と藝大サンバが今年も上野のまちにやってきます!

東京藝術大学の学園祭(藝祭)と上野のまちの商店街がコラボレーション!9月7日(日)12:00から堂々開催!

今年のキービジュアル

藝祭が上野のまちにやってくる!

上野六丁目商店街連合会(上野さくら通り商店街、御徒町駅前通り商店会、上野御徒町中央通り会、上野昭栄会、上野駅前一番街商店会、ユースロード上野通り会)は藝祭実行委員会の協力のもと、2025年9月7日(日)に上野の六丁目商店街にて「藝祭2025 x 上野まち祭り」を開催いたします。

地元の商店街と東京藝術大学の学生が交流をしながら、若さと文化芸術の力を活用し上野界隈の魅力をふんだんに詰め込んだスペシャル地域イベントです。


※昨年の開催の様子

9月7日(日)12:00〜13:00に挙行される藝祭御輿渡御は、藝祭名物の巨大御輿と藝大サンバ部の藝大サンバパーティー、さらには上野商店街の商店主たちが加わり一際華やかな渡御となります。開催期間中にはまちで使えるお得な千円くじの配布も行います。

【Webページ】 https://www.uenomachifes-geisai.com/

藝祭御輿昨年の授賞式の様子。東京藝術大学の美術学部と音楽学部の学生が協力し、4つの御輿を制作します。その中の一基のみが商店街で渡御をすることができます。

 
藝祭御輿

授賞式の様子

知る人ぞ知る藝祭御輿がまちへやってきます。東京藝術大学の1年生が学科ごとにわかれ、ひと夏をかけて制作する御輿はまさに汗と涙の結晶と言っても過言ではありません。まちの中でみる御輿のスケールの巨大さに度肝を抜かれます!

巨大な藝祭御輿がゲートを通る様は圧巻!必見です

商店街のゲートを通る際には歓声が上がりました

 
今年はどの御輿?

御輿とともにデザインされる法被も見どころです!​9月5日(金)、藝祭初日の審査にて上野六丁目商店街連合会賞を受賞した科の御輿が商店街を渡御します。今年はどの御輿が受賞するのでしょうか?

日本画×工芸×邦楽×楽理チーム

出現するは、太平と調和をもたらす神獣
──「麒麟」

晩夏の風が空をわたり、陽が地を照らす頃。

争いが静まり、心がひとつに重なるとき──

その神獣は静かに舞い降りる。

彫刻×先端芸術表現×音楽環境創造×ピアノ×管楽 チーム

🏮祭と夢幻🏮

光がにじむ夜の路地 水面に映る提灯と金魚の舞

ゆらりゆらりと泳ぐその鰭は祭の熱に溶けてゆき

幻の世界へと誘う

デザイン×芸術学×作曲×弦楽 チーム

たまゆら、

一瞬の揺らぎに魂を燃やせ

通り抜けるだけの道に意味はない

積み上げたものを背に、未来へ跳ねる

ひっくり返す、覚悟があるか

油画×建築×声楽×打楽×オルガン×古楽×指揮 チーム

辿り着かない一瞬を追い求めて悠久の時をさまよう私たち。

大樹の如く成熟せよ。

苔の生すまで。

 

藝大サンバパーティー

藝大サンバ部の演奏でまちが元気に!

年々人気が高まっているもうひとつの名物、それが藝大サンバパーティー!藝祭のサンバパレードの歴史は古く、実は浅草のサンバパレードの源流にもなっています。若き藝大生たちのほとばしるパッションがまちを熱く盛り上げます!各所で行われる陣形を組んだ演奏をお見逃しなく!数々の打楽器の種類にもご注目ください!

藝祭御輿とサンバ部の演奏でまちを練り歩きます

 

千円くじ、先着10,000名の大盤振る舞い!

美味しいグルメから楽しいショッピングまで催期中使えるお得な千円くじを配布します!当たるかハズレるか!六丁目商店街でお買い物やお食事をして、楽しい『くじ』をひこう!1000円の大当たりを引かれた方は、ぜひ参加店舗にてご提示ください!当たりくじは商品券として使用できます。

※対象店舗でお買い物やお食事をされた先着10,000名様に配布いたします

千円くじあたり商品券使用上の注意
・使用可能期間:2024年 9 月 5日(金) 〜 21 日(日)
・複製や転売はできません。
・他の割引と併用できない場合があります。
・店舗によっては特定の商品やサービスにのみ適用される場合があります。
・利用は店舗を想定しております。オンライン販売については各店舗にご確認ください。
・その他、具体的な商品券の利用に際しては、各店舗にご確認ください。

 

千円くじ取り扱い店舗紹介(配布・商品券使用可能店舗)

肉の大山】
創業1932年 上野アメ横「肉の大山」。長年の経験と実績を生かし、高品質でリーズナブルな価格の食肉を提供しております。
住所:〒110-0005 東京都台東区上野6丁目13−2

HAIR W0RK’S YAGI】
代々受け継いだ髪結の技術と粋な気品を兼ね備えた下町の兄貴が営む理容院です。賑わいある上野御徒町中央通りにあるおしゃれな床屋さんです。温かな笑顔でお待ちしております!
住所 :東京都台東区上野6-2-14 喜久屋ビル 2階

Fit’s & FRESH】
国内外で人気のブランドを取り扱っておりますアメカジショップです。 また、和柄スカジャンのラインナップは一見の価値ありです!
住所:台東区上野6-10-23

【上野藪そば】
舌の肥えた四代の店主たちが. 伝統の味を継承し続けて130余年、明るくゆったりとした純和風の店内で、せいろそばや温かいうどん・そばの他、板わさと天ぷらなどのつまみを提供します。
住所:〒110-0005 東京都台東区上野6丁目9−16
電話:03-3831-4728

FREAK MARKET アメ横プラザ店】
和風のデザインを刺繍した衣類を中心とした和柄衣類専門店です。 人気のリバーシブルスカジャンの品揃えは一見の価値ありです!
住所 :台東区上野6-10-7アメ横プラザ31.32号
電話 :03-3833-2700

焼肉上野太昌園 上野駅前店】
上野駅からすぐ、太昌園上野駅前店はカジュアルなお店です。いつまでも皆様に愛され信頼される店作りを心掛け吟味された素材のご提供とサービスの充実はもちろん安心と安全のお届けと楽しいひとときをお約束させていただきます。
住所:台東区上野6-13-1フォーラム味ビル2・3階
電話:03-3832-5324

立飲みカドクラ】
上野駅から徒歩1分!連日大盛況の立ち飲み居酒屋です。系列に焼肉太昌園がある為、肉料理が美味い!安い!料理1品150円~、ドリンク250円~。店内奥に座れるVIPROOM もあります。当日ご予約大歓迎☆皆様のご来店をお待ちしております♪
住所 :台東区上野6-13-1フォーラム味ビル1F
電話 :03-3832-5335

イタリアンバール イルカドッチョ】
焼肉太昌園の系列店舗である、イタリアンバールイルカドッチョは肉料理がおすすめです。上野でイタリアンなら、イルカドッチョへ
住所:台東区上野6-13-1フォーラム味ビル地下1階
電話:03-3832-5444

【上野マルイ】
住所:台東区上野6-15-1上野マルイ9F
9F 全店舗

 

 

●開催概要●
イベント名称:「藝祭2025 x 上野まち祭り」
開催期間:2025年9月7日(日)
開催場所:上野六丁目商店街
ホームページ: https://www.uenomachifes-geisai.com/
主催:上野六丁目商店街連合会(上野さくら通り商店街、御徒町駅前通り商店会、上野御徒町中央通り会、上野昭栄会、上野駅前一番街商店会、ユースロード上野通り会)
後援:台東区
協力:藝祭実行委員会2025

 

上野六丁目商店街連合会について】
団体名:上野六丁目商店街連合会(上野さくら通り商店街、御徒町駅前通り商店会、上野御徒町中央通り会、上野昭栄会、上野駅前一番街商店会、ユースロード上野通り会)
所在地:〒110-0005 東京都台東区上野6丁目13−2
会長:渡邉恭司
事業内容: 地域の商店会をとりまとめ、商店街の活性化を目指す
・イベントの企画と運営
・商店街の魅力を向上
・商店主の支援と連携
・商店主や店舗の運営者に対して、経営相談や情報提供、研修などの支援を行う
・商店同士の連携や協力を促進し、地域全体の発展を支える

 

【上野六丁目商店街連合会】プレスリリースより


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【取材レポート】「氷河期展 〜人類が見た4万年前の世界〜」が国立科学博物館で開催中。絶滅・生存の命運を分けた氷河期の謎に探る旅へ

国立科学博物館

「氷河期」と聞けば、現代とは全く異なる、氷や雪や覆われた過酷な世界をイメージする人もいるでしょう。しかし、学問的には、氷河期は陸地を覆う厚い氷の塊である氷床が、大陸規模で広く存在する時代を指します。

寒冷で氷床が大きく成長する時代である「氷期」と、比較的温暖で氷床が後退する「間氷期」を約10万年周期で交互にくり返しているため、氷河期が常に寒い時代というわけではありません。連日酷暑に悩まされている私たちが暮らす2025年も、グリーンランドや南極に氷床が存在する「間氷期」のさなか、つまり氷河期に属していると知ると、少しだけ見え方が変わってくるのではないでしょうか。

現在、国立科学博物館で開催されている特別展「氷河期展 〜人類が見た4万年前の世界〜」(会期:2025年7月12日~10月13日)は、最終氷期に当たる4万年前後の地球の姿に焦点を当てた展覧会。

日本初公開となるネアンデルタール人とクロマニョン人の実物の頭骨をはじめ、絶滅動物の骨格標本や生態復元模型、考古資料の展示などを通じて、現代とは全く異なる環境で生きた人類と動物の暮らしや環境の変化を、最新の科学的知見と迫力ある展示で紹介する内容になっています。

「氷河期展」入り口

本展の監修を務めた国⽴科学博物館⻑・篠⽥謙⼀さんは、報道内覧会で次のように述べています。

「世界には80億の人類が住んでいますが、実はすべてホモ・サピエンスという1種類の生物です。かつてヨーロッパやアジアには別の⼈類がいましたが、1万2000年前にはホモ・サピエンスのみになりました。私たちの祖先が6万年前にアフリカを出た後、どんな⼈類や動物と出会っていたのか。滅んでしまった動物たちはどこに住み、どんな姿をしていたのかを体験していただくことが本展の大きな趣旨になります。これまでの私たちの旅について思いを馳せていただくとともに、地球温暖化で環境が変わっていく中で、私たちはどのように生きていくべきかを考えるきっかけにしていただければ幸いです」

ナガマンモス(生体復元模型、骨格標本)、ライス・エンゲルホルン博物館所蔵

会場では、ドイツのライス・エンゲルホルン博物館が所蔵する、数千年前までシベリアやアラスカの島で生き残っていたというケナガマンモスの威容が来場者をお出迎え。本展の目玉の一つであり、迫力に目を奪われるところですが、その手前でさりげなく展示されている「槍の刺し傷のついたホラアナライオンの肋骨」も忘れずにチェックしたい一品です。

槍の刺し傷のついたホラアナライオンの肋骨[実物]、マンモス博物館ジーグスドルフ所蔵
本品はドイツ南部で発掘された4万8000年前の肋骨化石。現生のライオンの近縁であるホラアナライオンは、壁画や彫刻でも多く登場しており、ネアンデルタール人やホモ・サピエンス(クロマニョン人)の身近な狩猟対象だったことが分かっています。槍の刺し跡が、極寒の氷期で闊歩する動物と私たち人類の祖先が対峙し、たくましく生きていたことを示す、本展の幕開けにふさわしいロマンあふれる展示といえるでしょう。

3~2万年前の最寒冷期をピークに、ユーラシア大陸の高緯度地域では寒冷化とともに広大なステップ・ツンドラ(寒冷な草原と永久凍土地帯)が形成されます。この環境で繁栄したのがケナガマンモス、ホラアナライオン、ケサイ、ステップパイソンなどの草原棲のマンモス動物群であり、さらに間氷期から森林で生き伸びたギガンテウスオオツノジカやホラアナグマ、その他多くの現生種が入り混じって、最終氷期の巨大動物群「メガファウナ」となりました。

展示風景、左はギガンテウスオオツノジカ(生態復元模型、全身骨格)、ライス・エンゲルホルン博物館所蔵

「第1章氷河期 ヨーロッパの動物」は、そうしたメガファウナの化石や全身骨格標本、生体復元模型を展示し、絶滅種と現生種、その生態を解説しつつ盛衰の謎について迫る構成です。寒さに耐えるための立派な体躯と長い体毛をもつ動物たちの姿からは、当時の環境の厳しさが想像されます。

ステップパイソン(頭骨化石[実物])、ライス・エンゲルホルン博物館所蔵
ホラアナグマ(生態復元模型、全身骨格)、ライス・エンゲルホルン博物館所蔵
ケサイ(生態復元模型、全身骨格)、ライス・エンゲルホルン博物館所蔵

まるで布を被っているかのような長い毛皮と大きな蹄が特徴のジャコウウシは、マンモス動物群の生き残りでヤギ亜科の一種。2万年前以降、突如始まった温暖化によってステップ・ツンドラが縮小し、寒冷地適応した種や草原棲の種が次々に姿を消していった中で、ジャコウウシやホッキョクギツネなどは北極圏に生息域を移せたことで、今も細々と生存しています。

左からジャコウウシ(剥製)、サイガ(生態復元模型)、ライス・エンゲルホルン博物館所蔵

クロマニョン人の祖先は約30万年前にアフリカで誕生し、約6万年前にユーラシア大陸に広がっていきました。当時、ヨーロッパにはネアンデルタール人という別の人類が暮らしていましたが、約4万年前になると姿を消してしまいます。

ネアンデルタール人の復元模型、パリ国立自然史博物館 ©2019 Sculpture ELISABETH DAYNES, France
クロマニョン人の復元模型、パリ国立自然史博物館 @2025 Sculpture ELISABETH DAYNES, France

がっしりした体格と強靭な筋肉をもっていたネアンデルタール人。比較的ほっそりした体格に長い手足をもっていたクロマニョン人。一見、過酷な氷期の生存に適しているのは前者のように思えますが、両者の命運を分けたものはなんだったのか。その謎を石器や装飾品などの考古遺物とともにひも解く「第2章 ネアンデルタール人とクロマニョン人」では、同時代を生きた二つの人類の“世界一有名な頭骨”とも言われる「ラ・フェラシー1号」「クロマニョン1号」の実物を日本初公開。

展示風景、左から2点目 ラ・フェラシー1号(ネアンデルタール人)© MNHN パリ国立自然史博物館
左から3点目 クロマニョン1号(クロマニョン人) © MNHN – JCDomenech パリ国立自然史博物館

「ラ・フェラシー1号」は1909年にフランスのラ・フェラシー岩陰遺跡で発見された、4万5000年前~4万3000年前頃のネアンデルタール人のほぼ完全な全身骨格として出土。「クロマニョン1号」は、同じくフランスのクロマニョン岩陰から道路工事の際に発見されたもので、2万8000年前~2万7000年前頃のおそらく男性であると考えられています。展示された頭骨を一見するだけでも頭蓋の長さ、頬骨の広さ、眉骨の隆起具合に大きな違いが見つけられるなど、両者の姿を実物で比較できる贅沢な機会といえそうです。

ラ・フェラシー1号(ネアンデルタール人) © MNHN パリ国立自然史博物館
クロマニョン1号(クロマニョン人) © MNHN – JCDomenech パリ国立自然史博物館

なお、地面に体を曲げた状態で発見された、「ラ・フェラシー1号」をきっかけに、クロマニョン人と比較して、従来野蛮で文化的に劣っていると見なされていたネアンデルタール人に、死者を埋葬する習慣があったことが証明されていったといいます。

展示風景

第2章と第3章をつなぐ通路では、素人には嬉しい氷河期の基礎知識を解説する映像展示や、動物の毛や歯の化石に触れるコーナーが置かれています。ケナガマンモスやオーロックスの歯の個性的な輪郭をなぞりながら、どんなものを食べていたのか、なぜその形状になったのかを想像してみるのも楽しいでしょう。

「第三章 氷河期の日本列島」では、約3万8000年前までには日本にわたってきたと考えられる人類の暮らしや、当時を生きた日本三大絶減動物であるナウマンゾウ、ヤベオオツノジカ、ハナイズミモリウシなどの動物たちの様子について紹介しています。

展示風景、手前はナウマンゾウ(全身骨格[レプリカ])、栃木県立博物館所蔵 /(右切歯、左下顎第3大臼歯、右大腿骨の化石[実物])、野尻湖ナウマンゾウ博物館所蔵
港川人[実物]、東京大学総合研究博物館所蔵
最終氷期、特に寒冷化の著しかった7万年~2万年前においては、氷床・氷河の発達で地球上の大部分の水分が固定されたため、海水準が60m以上低下していた日本列島。北海道はユーラシア大陸と繋がり、本州・四国・九州は古本州島と呼ばれる巨大な島を形成するなど、今とは大きく様相が異なっていたといいます。そうした日本列島の南北に広がった多様な環境を背景に、現生人類は豊かな地域性を獲得していきました。

後期旧石器時代中葉における古本州島の石器の地域性を紹介する比較展示では、岩手、大阪、鹿児島にある遺跡から発掘された品々が並んでいますが、特に目を引いたのは大阪の翠鳥園遺跡から出土した石刃です。

国府型ナイフ形石器と瀬戸内技法の接合資料[実物]、羽曳野市教育委員会所蔵
瀬戸内地方では、世界中で使われる石刃とは異なり、石を打ち割る際の打撃点から末広がりに翼のごとく広がる、不思議な形状の剥片を量産する技術「瀬戸内技法」が発達。この瀬戸内技法で製作された槍先から、「国府型ナイフ形石器」と呼ばれる特徴的な石器が作られました。その発生理由については明らかになっていませんが、世界的にも珍しい技術であったようです。

第2会場では「氷期・間氷期サイクルと植生」の展示が続き、ハート形をしているかわいい(?)花粉化石の拡大模型があるなど、最後まで見どころの多い展覧会でした。

展示風景、左は寒冷期の花粉(ゴヨウマツ)の拡大模型、滋賀県立琵琶湖博物館所蔵
報道内覧会に登壇したアンバサダーのあばれる君

本展のアンバサダーを務める歴史好きのタレント・あばれる君も、「入り口から出口まで丁寧に見ていくと、理科の授業50時間分くらいの濃厚な学びがあるんじゃないでしょうか」「捨てるところ一切なし! すべてが見どころ!」と大絶賛。

「夏休みの自由研究や学びにもいいですね。地球は今さまざまな課題を抱えていますが、厳しい時代を生き抜いた氷河期の動物たちの姿は、我々、現代にも通じるものがあるのではないかと考えます」と熱弁しながら、「私のとっても楽しいナレーション・解説付きで見ていただくと、学び・分かりやすさも100倍でございます」と、自身が担当した音声ガイドをアピールしました。

特別展「氷河期展 〜人類が見た4万年前の世界〜」の開催は、10月13日(月・祝)までとなっています。

特別展「氷河期展 〜人類が見た4万年前の世界〜」概要

会場 国立科学博物館(東京・上野公園)
会期 2025年7月12日(土)~10月13日(月・祝)
開館時間 9:00 ~17:00(入場は16:30まで)
夜間開館 8月8日(金)~17日(日)および10月10日(金)~13日(月・祝)は19時閉館(入場は18時30分まで)。
※常設展示は8月9日(土)~15日(金)は18時まで。それ以外の期間、常設展示は17時まで(入場は各閉館時間の30分前まで)。
休館日 9月1日(月)、8日(月)、16日(火)、22日(月)、29日(月)
チケット ⼀般/⼤学⽣ 2,300円 、⼩中⾼⽣ 600円

※未就学児は無料。
※障害者⼿帳をお持ちの⽅とその介護者1名は無料。
※学⽣証、各種証明書をお持ちの⽅は、ご⼊場の際にご提⽰ください。
その他、詳細は公式HPでご確認ください。

主催 国立科学博物館、TBS、TBSグロウディア、東京新聞
お問い合わせ 050-5541-8600(ハローダイヤル)
展覧会公式HP https://hyogakiten.jp/

※記事の内容は取材日時点のものです。最新の情報は展覧会公式HP等でご確認ください。

 

記事提供:ココシル上野


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