https://www.culture.city.taito.lg.jp/ja/taito_kuchosho
「大佛師 松本明慶工房 仏像彫刻展 ~運慶の流れをくむ心と技~」
松坂屋上野店
2025年6月4日(水)→6月10日(火)10時~18時30分 ※最終日は17時閉場(入場は閉場の30分前まで)/松坂屋上野店 6階催事場 ※入場無料
松坂屋上野店では6/4(水)~10(火)、6階催事場にて「大佛師 松本明慶工房 仏像彫刻展」を初開催いたします。運慶・快慶の流れをくむ佛師であり、「現代の大佛師」と呼ばれる松本明慶氏が造りあげた、息をのむほど精緻を極めた魂宿る木彫り仏像三百余体を一堂に集め、展示・販売いたします。

大佛師 松本明慶
1945年京都生まれ。1962年の17歳から佛師を志して63年。現在は京都大原野において、日々みほとけのお姿を彫り続け、艱難辛苦をかかえた現代を生きる人々の光明となれと打ち込まれています。また、2024年大本山増上寺の開宗850年御忌大会において徳川家康公像及び厨子制作安置など、ますますご活躍されています。
作品の一例
毘沙門天
(楠/截金/7寸/総高42.0cm)

普賢菩薩
(楠/截金/半跏3寸/総高34.0cm)

大黒天 (ねずみ付)
(楠/3寸2分/総高20.0cm)

十一面千手観音菩薩
(白檀/座2寸5分/総高27.0cm)

白衣観音菩薩
(桧葉/彩色/6寸/総高37.0cm)
[浄土宗] 阿弥陀如来
(楠/5寸/総高30.0cm)

不動明王
(沈香/プラチナ截金/2寸5分/総高13.0cm)

鬼 (魂)
(桜/2寸5分/総高23.0cm)

童観音 (カエル付)
(白檀/1寸1分/総高12.0cm)

香合仏
香合とはお香を入れる器で、その内側に御仏が刻み込まれたもの。生まれ年の干支に因んだ守護仏や信仰している仏様など、小さくて携帯に便利な香合仏は、お守りとしてお持ちいただけます。
香合仏 普賢菩薩
(白檀/截金/直径6.0cm)

香合仏 大日如来
(白檀/截金/直径6.0cm)

※期間中、松本明慶工房スタッフが常駐し、展示品のほか、特別注文も承ります。
※古い仏像の修理、修復のお見積もりやご相談を無料にて承ります。
『大佛師 松本明慶工房 仏像彫刻展 ~運慶の流れをくむ心と技~』
会 期: 2025年6月4日(水)→10日(火)
会 場: 松坂屋上野店 6階催事場 入場料:無料
営 業 時 間: 10時~18時30分 ※最終日は17時閉場 ※入場は閉場の30分前まで
特設ページ: https://www.matsuzakaya.co.jp/ueno/topics/250604_matsumotomyokei.html
【株式会社大丸松坂屋百貨店】プレスリリースより
記事提供:ココシル上野
2.令和7年5月11日~21日に開催された「生誕100年 朝倉響子展」の取材レポートを公開しました!
【上野の森美術館】「生誕100年 朝倉響子展」取材レポート。洗練された女性像を中心に選りすぐりの12点を紹介
台東区立朝倉彫塑館

現代具象彫刻を代表する芸術家・朝倉響子(1925-2016)の生誕100年を記念した個展「生誕100年 朝倉響子展」が、2025年5月11日(日)から 5月21日(水) までの期間、上野の森美術館ギャラリーで開催されました。入場無料。
朝倉響子は、明治から昭和にかけて日本の彫刻界をけん引し、優れた自然主義的写実表現で知られる彫刻家・朝倉文夫の次女。
父が主宰する朝倉彫塑塾で彫刻を学び、1942年に第5回新文展で初入選を果たします。日展で特選を重ね、1952年には26歳の若さで最年少かつ初の女性審査員となるも、男性社会やさまざまなしがらみから決別するように日展を脱退。その後は自由な立場から、洗練された都会的な女性像を数多く生み出し、自身の様式を確立します。晩年まで第一線で精力的に活動し、2016年に90歳でこの世を去りました。
本展は、没後に遺族から台東区に寄贈された作品群の中から選りすぐりの12点、主に1970年以降にブロンズで制作された作品を紹介。朝倉響子の生誕100年という節目にあたり、作家の魅力をあらためて知ってもらおうと企画されたものです。なお、上野の森美術館ギャラリーは、生前の朝倉響子が最後に個展を開催した会場でもあります。


本展を案内してくださった朝倉彫塑館(※)の主任研究員・戸張泰子さんによると、朝倉響子は作品のモデルに並々ならぬこだわりを持っていたそうで、ときには選定に数年かけたこともあったとか。眼鏡にかなった人物の多くは外国人やハーフの若い女性で、小顔で手足が長い、スタイリッシュな体型をしているのが特徴です。
(※)…朝倉文夫が台東区谷中に構えたアトリエ兼住居であり、朝倉響子もそこで父から彫刻の基礎を学びました。現在は美術館として一般公開されています。

精悍な顔立ちに引き込まれる《ツキー》は、シリーズで3点を展示。全身像の1点はダンスをしているのか、不思議な姿勢をとり、その研ぎ澄まされたプロポーションの美しさを遺憾なく伝えています。躍動感のある独特の構えに見られる、張りつめた下半身と弛緩する両腕という対称的な筋肉の表現や、つま先立ちを叶えるバランス感覚などに、彫刻家の確かな技量が感じられます。

大きな帽子を目深に被ったエレガントな《帽子》は、朝倉響子が特に気に入っていたと思われる作品のひとつ。正面からは表情が窺えませんが、胸のあたりで開かれた美しい手の表情が作品へ魅力的に華を添えており、鑑賞する目線の高さや角度を変えると印象も多彩に変化します。

戸張さんによれば、おおよそ本作以降、こうした手の表現が朝倉響子作品のアクセントになっていったのではないかとのこと。
「彫刻家の佐藤忠良は“確かに手という奴は、目立ちたがり屋で、こっちがちょっと気を許すと、一人歩きのおしゃべりをして俗な彫刻になってしまうのである。”と書いています。しかしながら、《帽子》などに見られる手の表現を効果的に用いた響子作品においては、作品に対峙する私たちと対話するような時間と空間を生みだしているように感じます」

会場でひときわ目を引いたのは、朝倉響子作品には珍しい男性像であり、歌手の布施明氏をモデルにした《F》(後に《憩う》に改題)です。忙しく活動する青年歌手が少しの空き時間にテラスで休憩している姿をイメージした作品で、1979年に第7回長野市野外彫刻賞を受賞。黒い台から足の一部がはみ出しているのは、リラックスしている心のイメージを示そうとした彫刻家の意図であるとのこと。

余談ですが、朝倉響子作品は日本全国のパブリック・スペースに数多く点在し、本作も長野県長野市の城山公園に設置されています。《憩う》というタイトルがピッタリの緑広がるのどかなロケーションで、石の台座から地面につま先を伸ばし、まるでピクニック中であるかのようにのびのびとくつろぐ姿は、鑑賞者の精神にも余裕を与えてくれそうです。

会場の一番奥には、本展のメインビジュアルにも選ばれた《リサ》が展示されていました。女性の自然な立ち姿を彫刻作品に昇華したもので、その特長は360度、どの角度から見ても“隙がない”ことだと話す戸張さん。
「多くの場合、作品に正面があるといいますか、作品と対峙すると、彫刻家が見せたいのはこの面だな、というのがあります。響子先生の場合は、作品をどの角度から見てもポーズが決まっている。人間にもあるような隙が響子作品にはないんです。それに気づかせてくれるのが本作です。彫刻というものが響子先生にとってどのような存在なのか、その答えのひとつが提示されている作品なのかなと考えています」

また、戸張さんは本作の足元にも注目してほしいと話しました。
足2本で立たせて彫刻を成立させることは、実はかなり技量が必要なのだそうです。よく、足元の地面まで作品と一体化した彫刻作品を目にすることがあるかと思います。あれは“地余(じあま)”といって、作品の重心を調整する重りのような役割も果たします。
「ある彫刻家の話では、“地余”を設けるとバランスが調整しやすいらしいのですが、本作にはそれがない。難しいことをさらりとやってのけているのが響子先生のすごいところですね。本作は粘土で作った原型から石膏で型を取り、ブロンズを流し込んで仕上げています。人間と同じように立たせ、粘土でかたちやバランスをとって完成に至るためには、人体研究が不可欠です。そうした過程を想像すると、スタイリッシュな響子作品は、観察眼と卓越した技術力の上に成り立っていることがわかると思います」
作品全体を見渡すと、それなりに制作から年代が経過していますが、まったく女性像に古さを感じないことに驚きます。正しく芸術作品として永遠性を獲得するに至った理由の一つには、肉体美を生かしながらシンプルにまとめられたファッションを挙げてもいいでしょう。ジーンズのポケットに指を入れ、凛とした表情を浮かべつつも、かっこつけ過ぎてはいない。自然体で自由な女性像は、まだまだ男性中心だった芸術界で、父の庇護から離れて奮闘した朝倉響子の姿と重なるようにも感じます。

最後に戸張さんは、朝倉響子作品の魅力について次のような見解を示しました。
「朝倉文夫先生の作品は高い位置に設置されがちで、見上げて鑑賞する作品が多いです。反対に、響子先生の作品は見る者と同じ高さに設置されることが多いですね。空間と作品が一体化して、そこに私たちも溶け込んでいくような気安さ、距離感の近さがある。それが大きな魅力となっているから、今でも屋外のパブリック・スペースに先生の作品が設置され、人々に親しまれているのだと思います」
一種の清涼剤のように、街の風景に爽やかな風を吹かせる朝倉響子の彫刻群。本展を見逃してしまったという方も、ぜひ都内にも多数点在する朝倉響子作品を探して、その溌剌とした雰囲気と普遍的な美しさに触れてみてください。
なお、朝倉彫塑館では2025年9月13日(土)から12月14日(日)の期間、特別展として「生誕100年 ASAKURA Kyoko」の開催が決定しています。同館において初めて朝倉文夫と響子の父娘が創り出す彫刻空間が現出するとのことで、詳細は朝倉彫塑館公式HPをご覧ください。
【参考】過去の展覧会の記事を公開しています。
朝倉文夫没後60年特別展「ワンダフル猫ライフ 朝倉文夫と猫、ときどき犬」
(会期:2024年9月14日(土)~12月24日(火))
「生誕100年 朝倉響子展」概要
会場 | 上野の森美術館ギャラリー |
会期 | 2025年5月11日 (日) 〜 5月21日 (水) |
開館時間 | 10:00〜17:00 |
入館料 | 無料 |
美術館公式HP | https://www.ueno-mori.org/ |
朝倉彫塑館(台東区谷中7-18-10)
開館時間 | 9:30~16:30(入館は16:00まで) |
休館日 | 月曜日・木曜日(祝休日は開館) |
入館料 | 一般500円/小・中・高校生250円 |
TEL | 03-3821-4549 |
朝倉彫塑館HP | https://www.taitogeibun.net/asakura/ |
※記事の内容は取材時のものです。
【東京国立博物館 平成館】特別展「蔦屋重三郎 コンテンツビジネスの風雲児」取材レポート
東京国立博物館
江戸時代の傑出した出版業者である“蔦重”こと蔦屋重三郎(1750~97)。その蔦重を主人公にした2025年の大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」と連携した特別展「蔦屋重三郎 コンテンツビジネスの風雲児」が、東京・上野の東京国立博物館で開催中です。会期は2025年6月15日(日)まで。
※会期中、一部作品の展示替えがあります。
前期展示:4月22日(火)~5月18日(日)
後期展示:5月20日(火)~6月15日(日)
歌麿や写楽を見出した江戸のメディア王、蔦屋重三郎
蔦重は寛延3年(1750)、幕府公認の遊廓である吉原の生まれ。貸本屋から身を起こし、版元として武家や富裕な町人、人気の役者、戯作者、絵師のネットワークを広げてメディアミックスを展開し、江戸の出版業界にさまざまな新機軸を打ち出した人物です。
時流をつかみながら黄表紙や洒落本、狂歌本、浮世絵などあらゆる出版物を手掛け、数々のベストセラー作品を輩出。現在では世界に冠たる日本の芸術家とみなされる浮世絵師、喜多川歌麿や東洲斎写楽をプロデュースしたことでも知られています。
本展は、前期・後期合わせて約250件の作品を通じて、時代の風雲児たる蔦重の活動を追いながら、彼が創出した価値観や芸術性を体感するものです。
第1章「吉原細見・洒落本・黄表紙の革新」

展示は全3章に附章を加えた構成になっており、第1章のエントランスでは、遊廓・吉原への唯一の入場口だった「吉原大門」が来場者を出迎えます。
これは大河ドラマ「べらぼう」の撮影で実際に使用されたセットであり、制作に当たっては歌川豊春、歌川国貞、歌川広重らの浮世絵が参照されたとのこと。門の先には吉原のメインストリート「仲之町」を模した空間が広がり、立ち並ぶ桜や常夜灯が春の風情を演出しています。



※前期展示(後期は複製を展示)
第1章には、蔦重が出版人として活動する出発点となった吉原のガイドブック『吉原細見』が展示されています。
もともとは別の版元が手掛けていた『吉原細見』は、変化の激しい吉原の情報の精査が追い付いていないなど、多くの問題を抱えて信用を落としていました。
比較して、最初の蔦重版『吉原細見』である『籬の花』では、吉原育ちの情報網を生かして最新の情報にアップデートしたのはもちろん、通りの左右に並ぶ妓楼を本紙の上下で向かい合わせ、手に持ちながら街歩きができるレイアウトに改良。また、2頁分の情報を1頁にまとめるなどコストダウンも実現し、斜陽だった吉原に多くの客を呼び込みました。
出版活動全体を通して人々が楽しむものを追い求め続けた蔦重ですが、この時点ですでに、消費者視点が徹底していたことがうかがえます。

※前期展示
展示では、新旧の『吉原細見』の変化を見比べることができるほか、当代随一の人気戯作者であった山東京伝に序文をまかせるなど、商品価値を高めるためさまざまな試みをしていた点についても取り上げています。

※会期中場面替えあり
遊女を生け花に見立てた遊女評判記『一目千本』(1774)は、蔦重が初めて独自に手掛けた出版物。各妓楼の遊女たちが四季折々で琴や書画、生け花など芸事や座敷遊びにいそしむ姿を描いた錦絵本『青楼美人合姿鏡』(1776)は蔦重が企画したもので、人気絵師・北尾重政と勝川春章の合筆です。
どちらも描かれた遊女やその贔屓客、妓楼主などが出資したものと目されており、こうした自らの懐を傷めない形で制作された「入銀物」は、蔦重の主なビジネスモデルの一つとなっていきました。

※会期中場面替えあり

東京国立博物館 ※前期展示
出版人として優れた手腕を発揮した蔦重は、江戸で流行した富本節という浄瑠璃の正本(歌詞を節つきでまとめた本)を独占出版したり、寺子屋などで使われた初等教科書である往来物を数多く手掛けたりと、手堅い定番商品で資金力をつけていきます。

東京大学教養学部 国文・漢文学部会 黒木文庫 ※会期中場面替えあり
一方で、人気の作家や絵師を抱え、大衆文芸である黄表紙や洒落本といった戯作の出版にも着手。展示ではその例として、戯作界に蔦重の名を知らしめるきっかけとなった朋誠堂喜三二作の『見徳一炊夢』(1781)や、寛政の改革による出版統制の中で制作された、『浦島太郎』の後日譚を描いた山東京伝によるパロディ作品『箱入娘面屋人魚』(1791)などが紹介されています。
第2章「狂歌隆盛──蔦唐丸、文化人たちとの交流」
第2章では、天明期(1781-89)を中心に江戸で一世を風靡した狂歌(和歌をパロディし、世相に風刺や皮肉を盛り込んだ短歌の一種)と蔦重の関わりに注目。
江戸を謳歌する狂歌を詠む文化は、教養ある武士階級の戯れとして始まりました。寛政の改革によって町人や役者、絵師らさまざまな階層の人々へ広まっていくなかで、蔦重も狂歌師「蔦唐丸」として参入。文芸活動を行う一方で、出版人としても、読み捨てされていた狂歌を出版物としてまとめた狂歌本に活路を見出します。大田南畝や唐衣橘洲、朱楽菅江といった当代一流の文化人たちと交流しながら、流行の発信源であった吉原からブームを牽引していきました。
さらに蔦重は、文字だけの世界であった狂歌本に絵を加えた新ジャンル、狂歌絵本を開拓し、一手に刊行します。狂歌絵本のうち、自分の名を広めたい裕福な狂歌師などが出資したという入銀物は、多色摺による華やかさ、雲母摺や空摺などの技法も備えた芸術作品といえる豪華な仕様になっていました。

※前期展示
本章の見どころは、蔦重がその才能を見出し、専属絵師に近い起用をした喜多川歌麿が挿絵を担当した狂歌絵本。歌麿の狂歌絵本三部作と呼ばれる『画本虫撰』(1788)、『潮干のつと』(1789)、『百千鳥狂歌合』(1790)はそれぞれ虫、貝、鳥をテーマとしており、歌麿の写生描写の精度の高さや確かな観察眼を感じることができます。

※前期展示
また、ここでは歌麿畢生の作とされる枕絵(春画)本の『歌まくら』(1788)も展示。本展の企画担当である松嶋雅人氏(東京国立博物館 学芸企画部長)によれば、創立150年を超える同館の歴史のなかで、枕絵が展示されるのは今回が初めてとなるそう。

※前期展示(後期は別本を展示)
横大判の錦絵12枚に、修羅場や駆け引きなど茶屋での男女の細やかな機微が描かれた本作の中で、とりわけ秀美とされるのは「茶屋の二階座敷」の図です。(画像は部分)
忍ぶ恋を描いたものですが、女は後ろ姿で表情がわからないものの、頬を撫でるしぐさに男への情を感じさせる一方で、女の髷の下にのぞく男の右目は冷静で醒めているようにも見えるという、男女の織りなす思惑、その一瞬のリアリズムは見事というほかありません。
本図について、松嶋氏は「歌麿がどういった想いでこの絵を描いたかは定かではありませんが、見る人によって、二人の感情面がさまざまに思い描ける。それだけ重層的で内容の深い絵なのではないか」との見解を示しました。
第3章「浮世絵師発掘──歌麿、写楽、栄松斎長喜」
第3章は、蔦重の出版業の後半、寛政期(1789-1801)に浮世絵版画へ進出してからの活動を追うもの。西村屋与八や若狭屋与市など他の版元から刊行された作品も含め、浮世絵黄金期と呼ばれる18世紀末の浮世絵界を代表する名品が一堂に揃います。

東京・公益財団法人平木浮世絵財団 ※前期展示

※前期展示
蔦重は、喜多川歌麿、東洲斎写楽、栄松斎長喜といった名だたる絵師たちを発掘し、彼らの魅力を最大限に生かした浮世絵を企画・出版します。当時の浮世絵はさまざまな版元が新機軸を打ち出していましたが、蔦重版の作品を特徴づけるのは、全身像が一般的だった美人画に、役者絵で用いられていた人物の顔を大胆にクローズアップする「大首絵」の構図を取り入れたことでした。

※前期展示
美人画の第一人者である歌麿は蔦重と組み、「大首絵」の手法で人物の表情や仕草へ細やかに目配せし、心情までも感じさせる表現が人気を博しました。また、遊女が中心だった美人画において、市井の女性たちを主題とした作品の制作も開始します。

東京国立博物館蔵 ※前期展示

※前期展示
たとえば、《高名三美人》(1793)は難波屋のおきた、高島おひさ、富本豊雛という寛政期に実在した評判の看板娘たちを描いたもの。一見同じような顔に見えますが、よく観察すれば眉や目じり、鼻、輪郭線などでわずかに個性を捉えた似顔絵であることがわかるでしょう。
美人画はその時代ごとの理想の顔や体形で描かれることが一般的であったため、ある意味で絵空事の世界にリアリズムを持ち込んだこの試みは、大変画期的なものでした。

東京国立博物館 ※前期展示

※前期展示
第3章の終わりでは、東洲斎写楽が大きく取り上げられています。写楽は日本を代表する浮世絵師の一人ですが、実はその活動期間はわずか10ヶ月ほど。彗星のごとく江戸に現れ、140点以上の作品を残して忽然と姿を消したミステリアスな人物です。
蔦重が役者絵独占を目指して見出したスターであり、有名な作品群もすべて蔦重が出版したもの。歌麿の美人画に続き役者大首絵でも成功を収めるため、芝居興行の演目を網羅した、黒雲母摺の豪華な大判錦絵28枚の一挙刊行で華々しくデビューさせています。

ともに重要文化財 東洲斎写楽筆 寛政6年(1794) 東京国立博物館蔵 ※前期展示
誰もが一度は目にしたことがあるだろう《三代目大谷鬼次の江戸兵衛》(1794)もそのうちの1点。「恋女房染分手綱」の一場面、奴一平から用金を奪うため襲い掛かろうとする江戸兵衛を描いたもので、特徴的な手の構えは上着を脱ぎ棄てようとする瞬間を捉えています。対になる《初代市川男女蔵の奴一平》(1794)の悲壮な表情と合わせて、黒雲母摺の暗い背景とマッチする非常に緊迫した雰囲気を漂わせています。


寛政6年(1794)東京国立博物館 ※前期展示
一般的に写楽の画風はデフォルメだといわれますが、役者自身が隠したいであろうシワやほうれい線はもちろん、女役でも容赦なくごつごつした骨格を描くなど、顔の特徴を容赦なく暴き出しているため、実のところは先進的なリアリズム表現が特徴だといえそうです。
当時、他の絵師たちは役者を美化して描いていました。蔦重はこうした写実的な表現が新しいトレンドになると睨んでいたことが想像できますが、歌舞伎を愛する多くの人々は、贔屓の役者が演じる役割こそに夢を抱くもの。あまりに真に迫りすぎた写楽の絵は、ファンのみならず役者自身からも不評となり、流行には至りませんでした。
そうした顛末はともかく、今を生きる人々の内面を映し出すこうした錦絵は、版元・蔦重の、そして浮世絵の人物表現の一つの到達点を示しています。
附章「天明寛政、江戸の街」

蔦重が書店兼版元「耕書堂」を構えた18世紀後半の江戸は、経済や文化が成長し、大江戸と呼ぶべき魅力あふれる都市へと発展した時期にあたります。
附章では、当時の日本橋界隈の街並みを大河ドラマ「べらぼう」の美術チームが再現。日本橋での春夏秋冬を表したCG映像のほか、ドラマで使われた小道具や設定資料も展示し、江戸の文化をどのように物語に取り入れたのかを紹介しています。
なお、附章のみ撮影可能で、建物内には実際に入ることができます。



江戸の空気感を可能な限り感じられるような設えにしたという本展。ドラマでは毎週のように蔦重が手掛けた出版物が登場しますが、会場にはそのオリジナルが多数展示されていますので、熱心にドラマをご覧になっている方ほど多くの発見があるかもしれません。
特別展「蔦屋重三郎 コンテンツビジネスの風雲児」概要
会場 | 東京国立博物館 平成館 |
会期 | 2025年4月22日(火)~ 6月15日(日) ※会期中、一部作品の展示替えがあります。 |
開館時間 | 午前9時30分 ~ 午後5時 ※毎週金・土曜日は午後8時まで開館 ※入館は閉館の30分前まで |
休館日 | 月曜日 |
観覧料 | 展覧会公式サイトにてご確認ください。 |
主催 | 東京国立博物館、NHK、NHKプロモーション |
お問い合わせ | 050-5541-8600(ハローダイヤル) |
展覧会公式サイト | https://tsutaju2025.jp/ |
※記事の内容は取材時点のものです。最新情報は展覧会公式サイト等でご確認ください。
3.貸出施設情報にHIBIKUS 浅草ベースメントが追加されました!
もっと身近にミュージアムを体験しよう!今年も上野ミュージアムウィークが堂々開催決定!
5月9日(金)~5月25日(日)は、上野エリアのミュージアム&人気スポット&グルメなど!文化・芸術を楽しみながらおトクにまちを巡るスペシャルウィーク!
上野エリアでは、5月18日の “国際博物館の日” にちなみ、上野恩賜公園周辺にある博物館や美術館、動物園など 13 施設と、上野のれん会の加盟店が協力し、「上野ミュージアムウィーク」が開催されます。今年も昨年に続き大好評でしたデジタルスタンプラリーも継続して行われ、リニューアルされたばかりの新スポットしたまちミュージアムも加わり、より魅力的なスペシャルウィークとなります。毎年恒例の “まちのお楽しみ” クーポンと合わせ、上野全体が芸術にあふれたテーマパークになる特別な時間をフルにお楽しみください。
やはり今回も一番の注目は5月18日 “国際博物館の日” に行われる “無料観覧” です。当日は東京国立博物館、国立科学博物館、国立西洋美術館、旧東京音楽学校奏楽堂、したまちミュージアムの5館の常設展示(※東京国立博物館は東博コレクション展が対象です)が無料観覧できます。
そして、もうひとつの目玉が、デジタルスタンプラリー!上野公園内の文化施設から上野商店街の各スポットまで実に15箇所のスタンプポイントが上野エリアに出現します!
上野駅の交番跡地をリノベーションし誕生したギャラリー CREATIVE HUB UENO “es”(上野駅)や新進気鋭のアーティストが揃うロイドワークスギャラリー、アートの展示だけでなく演劇も頻繁に開催されるバズチカ(シノバズブルワリー ひつじあいすの地下)、若手アートクリエイターが集うRoom101(花園アレイ)など、公園内の文化施設だけでなく、まちの中でもアートを感じられるスポットもラリーポイントとなります。
国際博物館の日とスタンプラリーともにアートのまち上野の風情をぜひお楽しみください。
スタンプラリーの特典は、スタンプ0か所で上野エリアのグルメ、ショッピングのお店で使える杜まちクーポン、3か所でクリエーターコラボデジタルアート作品、7か所で参加文化施設各館の景品の抽選に応募する権利が得られます。15か所回れば7か所の景品の当選確率は2倍になります。ぜひコンプリートを目指してみてください!
■開催概要■
「国際博物館の日」記念事業2025 上野ミュージアムウィーク
開催期間:2023年5月9日(金)~5月25日(日)
会場(参加施設・団体):東京国立博物館/国立科学博物館/国立西洋美術館/東京藝術大学大学美術館/東京都美術館/東京都恩賜上野動物園/上野の森美術館/台東区立旧東京音楽学校奏楽堂/旧岩崎庭園/国立近現代建築資料館/国立国会図書館国際子ども図書館/東叡山寛永寺/台東区立したまちミュージアム/上野のれん会参加店舗(順不同)
※会期中に休館日あり
主催:上野ミュージアムウィーク実行組織連盟
共同主催:上野のれん会
協賛:(一財)全国科学博物館振興財団
協力:東京都東部公園緑地事務所、台東区、(公財)台東区芸術文化財団
公式サイト:http://www.ueno-mw.com/
■【ueno杜まちふらり】上野ミュージアムウィーク2025~国際博物館の日~■
5月9日(金)~5月25日(日)の間、デジタルスタンプラリーが開催されます。下記の参加施設内にスタンプポイントが出現します。
【チェックポイント紹介】
1.東京国立博物館
2.国立科学博物館
3.国立西洋美術館
4.国立国会図書館国際子ども図書館
5.東京都美術館
6.上野の森美術館
7.旧東京音楽学校奏楽堂
8.東京藝術大学大学美術館
9.東叡山寛永寺 根本中堂
10.旧岩崎邸庭園
11.したまちミュージアム
12.ロイドワークスギャラリー
13.CREATIVE HUB UENO “es”(JR上野駅)
14.バズチカ
15.Room101(花園アレイ)
【利用方法】
お手持ちのスマートフォンにでジタルスタンプラリーfurariをダウンロード。スタンプラリー加盟の参加施設の指定の場所に行き、スタンプをゲットする。
スタンプ0個・・・・・上野エリアのグルメ、ショッピングのお店で使える杜まちクーポン
スタンプ3個・・・・・藝を育むまち同好会クリエーターコラボデジタルアート作品
スタンプ7個・・・・・参加各館の賞品
スタンプ15個・・・・・参加各館の賞品(当選確率2倍)
※賞品の発送は、ミュージアムウィーク終了後1から2か月後に当選者に届きます。
★スタンプ0個
上野エリアのグルメ、ショッピングのお店で使える杜まちクーポン
うなぎ、焼肉、洋食、甘味から婦人服、バッグ、スカジャンまで
幅広く使えるスペシャルクーポンをこの機会にぜひご利用ください。
デジタルクーポンが使える店舗・施設一覧
https://ueno-morimachi.jp/coupon
★スタンプ3個
クリエーターコラボデジタルアート作品
上野界隈を中心に活動する若手アーティスト支援団体・藝を育むまち同好会の若手アーティスト5名が制作したデジタルアート作品を配布します。
★スタンプ7個
参加各館の賞品一覧
〇東京国立博物館賞
・東博コレクション展招待券+オリジナルチケットフォルダセット 20組40枚
・URL:https://www.tnm.jp/
〇国立科学博物館賞
・共通招待券
2枚組20名様 ※お一人1回、各施設(上野本館・筑波実験植物園・自然教育園)のいずれかの常設展示にご入館できます。
・URL:http://www.kahaku.go.jp
〇国立西洋美術館賞
・企画展「スウェーデン国立美術館 素描コレクション展ールネサンスからバロックまで」の無料観覧券20組40枚
・URL:https://www.nmwa.go.jp/
〇東京藝術大学大学美術館賞
・大学美術館オリジナルポストカード 20名様 (20名様)
・URL:https://museum.geidai.ac.jp/
〇東京都美術館
・「つくるよろこび 生きるためのDIY」展招待券を20組(40名様)
・URL:https://www.tobikan.jp/
〇上野の森美術館賞
・ポストカード20枚 (20名様)
・URL:http://www.ueno-mori.org/
〇旧東京音楽学校奏楽堂賞
・「招待券2枚+クリアファイル」20組(20名様)
・URL:https://www.taitogeibun.net/sougakudou/
〇東叡山寛永寺賞
・非売品の特製ご朱印帳(お一人様1冊):10名様
・URL:http://kaneiji.jp/
〇旧岩崎邸庭園賞
・旧岩崎邸庭園オリジナルミニクリアファイル+オリジナルポストカード20組(20名様)
・URL:https://www.tokyo-park.or.jp/park/kyu-iwasaki-tei/
〇国立近現代建築資料館
・収蔵図面資料等のポストカード4枚1組を20セット 20名様
・URL:https://nama.bunka.go.jp/
〇したまちミュージアム
・招待券2枚+ポストカード3枚 20組20名様
・URL:https://www.taitogeibun.net/shitamachi/
〇上野のれん会
・特別展「蔦屋重三郎 コンテンツビジネスの風雲児」招待券 20組20名様
・URL:https://uenonorenkai.com/zasshi_ueno.html
【チェックポイント紹介】
ロイドワークスギャラリー | roidworksgallery
展示タイトル 幽体離脱の風景
アーティスト 斉木駿介・沼田侑香・本岡景太
会期 2025年5月17日(土)-5月25日(日) ※会期中無休
営業時間 12:00-19:00 (最終日は18:00まで)
会場 roidworksgallery
〒113-0034 東京都文京区湯島4-6-12 湯島ハイタウンB棟1F
TEL:03-3812-4712
CREATIVE HUB UENO “es”
住所 東京都台東区上野7-1-1(上野駅浅草口付近)
開場時間 11:00−19:00(最終入場18:45)
休場日 月曜日(祝日の場合は翌日に振替)
※5月9日~19日は会場メンテナンスのため休場とさせていただきます。
展示タイトル 久保田荻須智広 個展「5/?のR」
展示会プロフィール
本展は、公共と個人の収蔵と価値基準をめぐる行為の実践として、久保田荻須の2017年の卒業制作《一時的廃棄目録》を再構成する。アーティストの生産物がいかにして取り残されるか、その資産性と負債性の両義性について問いを投げかける。
久保田荻須智広(KUBOTAOGUISS Tomohiro)
2020年に東京藝術大学大学院美術研究科版画専攻を修了。現在、同大学院博士後期課程に在籍。文化資産が持つ「負債」としての側面に注目し、物品の一時的な移動や契約、他者の負債の肩代わりといった行為を通じて、しばしば物理的な制作を伴わない作品を展開している。彼の制作は、所有や管理、移動、保存といったプロセスそのものを介して、アートが制度や経済とどのように関わり合うのかを批評的に考察することを目的としている。近年の作品では、個人的な経験や実際の出来事を出発点とし、共同体における物の所有や責任の所在、そして個人から組織、さらには制度へと拡張する負債の関係性を探求している。
Yamanote Line Museum 上野駅公園口(関連施設紹介)
JR上野駅公園改札内連絡通路 始発~終電まで
美術館や博物館などの文化施設へとつながる上野駅公園改札内の壁面を彩る展示空間。
壁面の一部はライブペインティングができるスペースとなっており、作品入れ替え時はアーティストのライブペインティングを見ることができるかもしれません。
五十嵐 岳(いがらし がく)
幼少期からオーストラリアで過ごし、保育士として従事しながら創作活動を行う。帰国後、本格的にアーティスト活動を開始。
オリジナルキャラクター小人の「ELF」、人間を描いた「HAPPY PEOPLE」を軸にさまざまな企業、ブランドとコラボレーションしている。
ほのぼのとした優しく鮮やかな色使いが施された絵画は、幅広い層から人気を得る。
バズチカ
【バズチカ 展示情報】
展示タイトル:FIND IT!!!(上野ミュージアムウィーク2025内展示)
会期 2025年5月23日(金)-5月25日(日)
営業時間 14:00-20:00
場所 バズチカ 〒110-0005 東京都台東区上野2丁目10−7
シノバズブルワリー ひつじあいすの地下
アーティスト情報 イイダメグミ、後藤まどか、波佐間、百瀬天、柳澤樹
Room101
住所 東京都台東区池之端3-3-9 花園アレイ101
展示タイトル 「木々について」
展示会プロフィール
会期 2025年4月末〜7月末まで開催 ※火曜・水曜休み
アーティスト情報 山本修路
1979年東京都⽣まれ。2005年多摩美術⼤学卒業。庭師としてのバックグラウンドを持ち、「大自然と人間の関わり」をテーマに日本各地を旅し、フィールドワークを行いながら平面作品やインスタレーションなど様々な作品を展開している。
藝を育むまち同好会クリエーターコラボデジタルアート・アーティスト紹介
イイダメグミ
2000年生まれ 千葉県出身
略歴
2024年3月 武蔵野美術大学造形学部油絵学科 卒業
2024年4月 武蔵野美術大学大学院造形研究科修士課程 入学現在 修士課程在学展示
2024年1月 2023年度 武蔵野美術大学卒業·修了制作展/武蔵野美術大学鷹の台キャンパス
2024年11月 Group Exhibition:EPIC PAINTERS Vol:14@THE blank GALLERY,Tokyo
後藤まどか
日々の暮らしの中で心惹かれた瞬間を題材として、その時・その場で受けた印象を色や模様、形を使って再構成し、日本画作品を制作している。
略歴
2000年 北海道出身
2022年 武蔵野美術大学造形学部日本画学科卒業
2025年 東京藝術大学美術研究科デザイン専攻修了
2020年 第20回佐藤太清賞公募美術展 板橋区長賞
2021年 第39回上野の森美術大賞展 入選
2022年 武蔵野美術大学卒業修了制作展 優秀賞
2022年 東京藝術大学大学院美術研究科デザイン専攻修士課程入学
2022年 神山財団芸術支援プログラム第9期生採用
2022年 第49回創画展2022 入選
2022年 FACE 2023 入選
2024年 第11回郷さくら美術館桜花賞展 奨励賞
2024 年 個展「マイディア」 柴田悦子画廊
2024年 トリエンナーレ豊橋 星野眞吾賞展 入選
波左間
グラフィティとカリグラフィーを融合し、伝統的な書の美とストリートアートの自由を現代に再解釈するアーティスト。都市空間に詩的リズムと力強さを刻み、視覚と言葉の新たな対話を創出している。
百瀬天
2002 長野県生まれ
2020 武蔵野美術大学 造形学部 油絵学科 油絵専攻 入学
第72回中美展 入選
2021 岐阜県飛騨市「吉城の郷」グループ展
東京都杉並区 Gallery JUILLET グループ展
立川立飛ららぽーと ガラスペイント
2024 第47回 東京五美術大学連合卒業・修了制作展 国立新美術館
武蔵野美術大学 造形学部 油絵学科 油絵専攻 卒業
武蔵野美術大学大学院 造形研究科 美術専攻油絵コース 在学
柳澤樹
略歴
2001.12 埼玉県川越市生まれ
2024.3 武蔵野美術大学 造形学部 油絵学科 油絵専攻 卒業
展示歴
2022.10 「 第48回 美術の祭典 東京展 」東京都美術館
2024.2 藝を育むまち同好会「大藝育会展」松坂屋上野店 7階 アートギャラリー
2024.2 八犬堂「ヤングアーティスト公募展“いい芽ふくら芽”in TOKYO2024」松坂屋上野店
2024.9 八犬堂「KANZEN-完全-」伊勢丹新宿店
■その半券、捨てないで!クーポンサービス■
開催期間中、下記店舗にて各館の半券をご提示いただくと無料サービスが受けられます。サービスの内容などの詳細は、上野ミュージアムウィーク公式サイトをご覧ください。
【参加店舗】
よし寿司 上野店
あんみつ みはし
伊豆榮(鰻割烹)
Hatoya(婦人服)
天寿ゞ (天ぷら)
会席中華料理 上野 池之端 古月
洋食 黒船亭
亀屋 一睡亭(御蒲焼・旬菜料理)
焼肉 太昌園
厳選洋食さくらい
しゃぶしゃぶ 鉢の木
【利用方法】
上野公園の文化施設の半券を提示
スマホのQRコード、コンビニやチケット売り場で印刷したものもOK
※お1人様1枚提示
※クーポンサービス併用不可
■国際博物館の日プレゼント■
【東京藝術大学大学美術館】
美術館オリジナルグッズプレゼント
●時間:5月18日(日)10:00〜
●場所:東京藝術大学大学美術館エントランスホール
●対象:展覧会入場者先着50名様
■国際博物館の日とは ■
「国際博物館の日」は1977年に国際博物館会議(ICOM)が設けた博物館の記念日です。多くの方に博物館に親しんでいただくこと、博物館の役割をより広く知っていただくことなどを目的に、5月18日とその前後に世界中の博物館で記念行事が行われます。国際的にも稀なほど、博物館・美術館などの文化施設が多数集まる上野では、毎年「国際博物館の日」の前後を「上野ミュージアムウィーク」として文化施設と上野のれん会が様々な記念イベントを行っています。
■上野のれん会■
花の雲、上野は大江戸このかたの盛り場代表。明治このかた芸術文化の発信地。 上野のれん会は、その上野の有名店約100店の連合体です。1959年(昭和34年)の創立以来この地の文化的伝統の再発見をめざして、タウン誌「うえの」を、毎月発行してきました。通巻785号(2025年5月現在)になります。
■フライヤー■
◎お問い合わせ
上野ミュージアムウィーク実行委員会事務局
TEL 03-3833-8016 FAX 03-3839-2765(上野のれん会内 平日10:00~17:00)
【上野のれん会】プレスリリースより
記事提供:ココシル上野
4.令和7年3月9日にリニューアルオープンした「したまちミュージアム」の取材レポートを公開しました!
リニューアルオープンした「したまちミュージアム」取材レポート。東京下町の文化や伝統に触れることのできる博物館が展示を一新
台東区立したまちミュージアム
古き良き東京下町の文化や伝統を後世に伝えるため、昭和55年(1980)に開館し、訪日外国人を含め多くの来館者を楽しませてきた「下町風俗資料館」。施設老朽化に伴う大規模改修のため令和5年春より休館していましたが、このたび「したまちミュージアム」に名称を変えてリニューアルオープンしました。
※以前の「下町風俗資料館」の様子についてはこちら⇒
https://www.culture.city.taito.lg.jp/ja/reports/29750

今回の大規模改修により、1~2階のみだった展示エリアが3階まで拡大。新たに授乳室やバリアフリートイレも新設され、より多くの方が楽しめる施設となりました。
1階展示室では、昭和30年代の下町の町並みを再現しています。モデルとなったのは、関東大震災や東京大空襲などの被害を免れ、近年まで古い町並みや建物が多く残っていたという台東区坂本(現・根岸3丁目)の金杉通りで営業していた提灯屋の一角。実物大で作られた長屋は、実際に中に入り当時の暮らしや風情を体験することができます。


リニューアル前の再現展示では大正時代をモデルにしていましたが、同館研究員の近藤剛司さんによると、開館から40年以上が経ってから初めての大規模改修という区切りに、内容を一新することに決めたそう。
「昭和30年代、今から60~70年前という時代設定に決めた背景には、当時を知る方がご家族と展示を鑑賞した際に、『この道具はこう使っていたんだよ』といった会話が生まれれば嬉しいな、という想いがありました」(近藤さん)
また、金杉通りは、図面などの研究資料が多く残っていたことに加え、展示の中核をなす「五十嵐提灯店」の店主である五十嵐さんがご健在で、さまざまな協力を仰げたことがモデルの決め手になったといいます。
(※建物こそ建て替えられていますが、五十嵐提灯店は現在も営業中です)
昭和30年代の下町では、関東大震災後の区画・街路整備や、戦後の復興にかかる高度経済成長期の影響で、生活の質が向上していく様子が見られました。展示エリアに設置された大型スクリーンでは、そうした時期の金杉通りをイメージしたレトロタッチのアニメーション映像を上映しています。

映像内では、目抜き通りらしく商店や飲食店、美容院などが入った店舗兼住宅の「表長屋」が立ち並んでおり、道路には路面電車や自動車が走る一方で、野菜を売る大八車やラーメン屋の屋台も登場。新しい時代の波の中で、昔ながらの生活が息づいていたことを伝えるもので、あえてBGMをつけず、路面電車の走行音や鳥のさえずりなど環境音を強調することで臨場感を演出しています。

時期により「春・夏バージョン」と「秋・冬バージョン」を入れ替えるとのこと。

電気やガスなどのインフラ整備が進むなかでも、祭礼の多い下町地域において、提灯はなくてはならない必需品でした。江戸時代末期から営業していたという五十嵐提灯店の展示では、提灯の組み立てや文字入れを行っていた作業場を再現。丸型の祭礼提灯をはじめ、提灯の上下を固定するための金床や金槌、文字や色を入れるための絵筆が並んでいます。

こうした生活道具や家具といった収蔵資料は、基本的に区民の皆様からの寄贈品であるため、使い込まれた痕跡があるのが特徴。触れることも可能で、感触や重さといったリアルな使用感を知ることができるのは、同館の魅力のひとつです。(触る際は丁寧に取り扱ってください)


子どもたちの遊び場、住人たちの交流の場でもありました。
作業場の奥に居住空間と台所が続き、台所にある勝手口から路地に出ると、向かいには「裏長屋」が建っています。裏長屋には、家から仕事場へ通う職人やサラリーマンに加えて、街頭紙芝居屋などの行商人が住んでいたそうで、展示では紙芝居屋の住居を再現しています。



玄関の上がり框(かまち)には、駄菓子を入れるためのガラス瓶や木箱が置かれています。紙芝居屋は、紙芝居を見に集まった子どもたちに駄菓子を売って生計を立てていましたが、紙芝居ができない雨の日には、子どもたちが駄菓子を求めて住居を訪れることもあったとか。



展示物をよく観察してみると、「台所にガスコンロがある一方で、七輪も使われている」など、アニメーションに描かれた日常風景と同じく、古いものと新しいものとが混在していることに気づきます。近藤さんによれば、こうした過渡期の時代性の再現には特にこだわったとのこと。小学生が社会科見学で訪れた際には、「ガス台が登場する前は何を使って調理をしていたか、同じ役割の物を探してみよう!」と、ゲーム感覚で学んでもらうこともあると話します。
2階エリアは、明治から昭和30年代にかけての台東区を中心とした下町地域の歴史や文化を学べる常設展示室となっています。

入ってすぐの導入展示では、台東区の歴史を双六風にたどる映像と、先人たちの暮らしを支えた生活道具を紹介する映像の2種類をスクリーンで上映。さらに、スクリーンの前のステージには、映像内で取り上げた生活道具の実物資料を「衣」「食」「住」「商(商人)」「職(職人)」のジャンル別で並べています。
「導入展示については、初めはしたまちミュージアムを象徴するような収蔵資料を一つだけ選んで展示しようという案が出ていました。しかし、“下町”という概念は、学芸員としても明確に定義することが難しく、資料一つでは到底表現できません。そこで、一つの見せ方として、家族団らんの中心にあった卓袱台(ちゃぶだい)を真ん中に据えて、その周りに生活道具が広がっていくような配置で展示しました。道具を並べてみたときに生まれる空気感、それが“下町”だよね、という話に落ち着いたんです」(近藤さん)

卓袱台や招き猫など、今の子どもたちも知っているであろう道具から、ガラス製の蠅取り器や、商家の帳場で売上金を入れていた銭箱など、令和ではすっかり姿を消したものまで幅広く取り揃えられています。未知の道具の使い方をあれこれ想像しながら鑑賞するのも面白いでしょう。
先へ進むと、「1. 江戸から続く下町の文化と暮らし」「2. 関東大震災と復興」「3. 戦時下の暮らし」「4. 焼け跡からの出発」「5. 高度経済成長へ」「6.私たちの台東区へつながる暮らし」とセクションを分け、時代ごとの大きな変革の影響により、町並み、生活習慣などがどのように変化していったのかを振り返る展示が続きます。

取材時は「桜」がテーマ。

資料の見せ方も以前よりメリハリのあるものになっています。

以前は施設の入り口で来場者を出迎えていた「自働電話」(のちの公衆電話)も、下町の移り変わりを象徴するものとして同エリアで登場。自働電話が日本で最初に設置されたのは明治33年、上野・新橋両駅の構内でのことです。


見逃しがちですが、引き出しにもさまざまな資料が隠れていますので要チェックです。たとえば、台東区は昭和2年(1927)に日本で初めて地下鉄(現在の銀座線)が通った地域であり、「上野浅草間 建設工事概要」は当時の地下鉄の工事概要をまとめた冊子です。現在の銀座線は、浅草から上野を経由して新橋で西に折れて渋谷へ至りますが、資料には当初、新橋から御成門を経て品川へ至るルートが計画されていたことが記載されており、非常に興味深いものでした。


新しく開かれた3階エリアには、企画展示室と下町情報コーナーがあります。
企画展示室では年3回、およそ4ヶ月ごとに展示替えを行うとのことで、記念すべき第1回の企画展は「下町ってどんな町」 がテーマ。そもそも下町とはどのような町なのか、東京下町の成立(成立当初、台東区は下町に含まれていなかったそう)から拡大の経緯、暮らしていた人々の職業や気質などをひも解いています。

隣接する下町情報コーナーには、同館の収蔵資料について詳細を調べるための「したまち資料検索」というタッチパネル端末が設置されています。
1階の再現展示と2階の導入展示の資料で興味をもったもの、分からないものがあればこちらへ足を運ぶと安心です。展示していない資料のデータも閲覧できるため、学習や調査研究の一助にもなるでしょう。
(混雑状況にもよりますが、資料について分からないことは学芸員の方々に聞けば快く解説してもらえます)

また、ここではけん玉やメンコ、松風ゴマ、そろばん、棹秤といった昔のおもちゃや日用品を自由に体験できるほか、ベンチは休憩スペースとしても利用可能。大きな窓からは不忍池を一望でき、桜や蓮、紅葉など、季節ごとに変化する様子を楽しむ絶好のスポットになります。


子供から年配の方まで、世代ごとにさまざまな発見と喜びがありそうな「したまちミュージアム」。大変身を遂げて再スタートを切りましたが、「下町風俗資料館」の頃から引き継いだのは、どこからともなく来館者のリアルな体験談が聞こえてくることだと、近藤さんは話します。
「展示が呼び水となって、来館者が『こんなのあったなー!』と当時の記憶を思い出して盛り上がったり、祖父母から孫へ、自身の体験から得た知識を共有し、それを近くで聞いた別の来館者も『そうなんだ』と頷いたり……。そうした光景が毎日のように見られます。資料には載っていない、実際に経験した方からしか得られない貴重な情報が自然と聞こえてくる。それが本館の一番の魅力だと考えています」(近藤さん)
不忍池の散歩がてら、ふらりと訪れるのにもぴったりな立地ですので、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。なお、リニューアル前と変わらず、街頭紙芝居や伝統工芸の実演会等のイベントも開催されるそうですので、スケジュール等の詳細は公式サイトでご確認ください。
「したまちミュージアム」概要
開館時間 | 9:30~16:30(入館は16:00まで) |
休館日 | 毎週月曜日(祝休日と重なる場合は翌平日)、年末年始、特別整理期間等 |
入館料 | 一般300円(200円)、小・中・高校生100円(50円) ※( )内は20名以上の団体料金 |
所在地 | 〒110-0007 台東区上野公園2-1 |
アクセス | 京成本線「上野駅」徒歩3分 JR、東京メトロ銀座線・日比谷線「上野駅」徒歩5分 |
電話 | 03-5846-8426 |
公式サイト | https://www.taitogeibun.net/shitamachi/ |
※記事の内容は取材時点のものです。最新情報は公式サイト等でご確認ください。