お家で楽しむ 上野の山文化ゾーン

東京国立博物館

「みどりのライオン オンライン」
さまざまな教育事業の中から、ギャラリートーク動画やぬり絵など、離れていてもいつでも楽しめるコンテンツを集めました。

国立科学博物館

「自宅でかはくを楽しめるコンテンツ
「お家で体験!かはくVR」「おうちでかはく、科学に触れる時間」「THE WILDLIFE MUSEUM~ヨシモトコレクションVR~」等、おうちから同館を楽しめるコンテンツをまとめてご紹介いたします。たっぷりお楽しみください。

国立西洋美術館


「国立西洋美術館ギャラリートーク」
同館の研究員らによるギャラリートークをYouTube公式チャンネルで公開、常設展の作品を1点ずつ解説しています。

「おうちでファミリープログラム」
ご自宅でも子どもと大人がいっしょに同館の所蔵作品をお楽しみいただけるワークシートです。

上野の森美術館


「上野の森アートスクール」YouTube公式チャンネル
同館運営のアートスクールでは画材の説明・使い方・デザインなどの基礎講座を公開しています。

東京都美術館


「東京都美術館」YouTube公式チャンネル

日本美術院


「ギャラリー」

「同人コラム」

横山大観記念館


「館内ガイド」
上野池之端「横山大観記念館」ガイド案内。

「台東区文化探訪アーカイブス特集」
館内や庭園の様子を360°の画像で楽しむことができます。
リンク先ページ右上の「PANORAMA」からご覧いただけます。

台東区立朝倉彫塑館


「朝倉彫塑館」YouTube公式チャンネル
紹介動画をYouTubeで公開しています。

旧岩崎邸庭園


「見どころ」
同園の情報や動画をご覧いただけます。

台東区立書道博物館


video おうちで書道博物館を楽しもう!
館の紹介動画をトップページに掲載しています。

上野動物園


「東京ズーネット 」YouTube公式チャンネル
ジャイアントパンダをはじめ、さまざまな動物たちの動画をYouTubeで公開しています。

台東区ヴァーチャル美術館


「台東区ヴァーチャル美術館」
区が所蔵する台東区長賞受賞作品をはじめとした、台東区ゆかりの芸術作品を紹介するWebサイトです。作品の画像や作者の紹介などを掲載しています。

国立国会図書館国際子ども図書館

「電子展示会」
「日本の子どもの文学―国際子ども図書館所蔵資料で見る歩み」「ヴィクトリア朝の子どもの本:イングラムコレクションより」「中高生のための幕末・明治の日本の歴史事典」等、資料の画像に解説をつけてテーマ別に編集した電子展示会です。

台東区立下町風俗資料館


「下町風俗資料館」Youtube公式チャンネル
資料館の展示・資料の紹介など、動画の公開を始めました。

東京文化会館


「東京文化会館」Youtube公式チャンネル
これまでに行われた主催公演の記録映像等をYouTubeで公開しています。

上野学園石橋メモリアルホール


「古楽器webコレクション」
古楽器コレクションの一部を公開しています。

東京藝術大学奏楽堂


「藝大ミュージアムアーカイブ」
東京藝術大学でこれまでに開催された演奏会を、ハイレゾ音源で無料オンデマンド配信しています。

台東区立旧東京音楽学校奏楽堂


「東京藝術大学特別コンサート 東京音楽学校が育んだ日本の懐かしい調べ」

「パイプオルガン100周年記念演奏会(ダイジェスト)」

「旧東京音楽学校奏楽堂」Youtube公式チャンネル

寛永寺


「寛永寺」公式サイト
公式HPでは毎月法話を公開しております。また、一部のお守りやお札は郵送による授与も行っております。

 

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【東京都美術館】「The UKIYO-E 2020 ― 日本三大浮世絵コレクション」 内覧会レポート

東京都美術館


歌川国芳 「みかけハこハゐがとんだいゝ人だ」 日本浮世絵博物館 前期展示

 

2020年7月23日(木・祝)より、東京都美術館にて、「The UKIYO-E 2020 ― 日本三大浮世絵コレクション」が開催されています。(~9月22日(火・祝)まで) ※前期・後期で作品の入れ替えあり)

先日、この展覧会の報道内覧会がありました。
この記事では、展覧会について、みどころ、展覧会の構成と編集部注目作品などについて、紹介します。
それでは、ご覧ください!


「 The UKIYO-E 2020 ― 日本三大浮世絵コレクション」とは?

 

今回、東京都美術館で開催される、「The UKIYO-E 2020 ― 日本三大浮世絵コレクション」は、日本の三大浮世絵コレクションといっても過言ではない、太田記念美術館、日本浮世絵博物館、平木浮世絵財団に所蔵される浮世絵の名品が集結し、選りすぐりの約450点の浮世絵版画のすぐれた名品を前期・後期にわたり展示するものです。
江戸時代の庶民に愛好された、日本を代表する芸術の一ジャンル、浮世絵の魅力を存分に楽しむことができます。

「The UKIYO-E 2020 ― 日本三大浮世絵コレクション」のみどころ5つ

 

The UKIYO-E 2020 ― 日本三大浮世絵コレクション」のみどころは、5つあります。

 

3大浮世絵コレクションが一堂に集う史上初の展覧会です。

 

浮世絵の歴史を展観する約60名の絵師の代表作を一挙に公開します。

 

出品数の約450点のうち、重要文化財・重要美術品は100点以上展示します。

 

世界唯一の残存作など所蔵の逸品が目白押しです。

 

超有名作である、葛飾北斎「冨嶽三十六景」、歌川広重「東海道五拾三次」を通期で展示します。

 

 

 

各章の構成と編集部注目作品

 


第一章 初期浮世絵

 

初期浮世絵版画は、延宝期(1673~81)頃の墨一色の版による「墨摺絵」(すみずりえ)により、始まります。
のちに、墨摺絵に丹を中心に筆彩色を施した「丹絵」(たんえ)、丹に代わり紅を用いて、黄色、藍で彩色した「紅絵」(べにえ)、黒色部分に膠(にかわ)を混ぜ、光沢を出した「漆絵」などが作られました。

延享期(1744~48)頃になると、紅や緑の色版を重ねる版彩色が行われ、「紅摺絵」(べにずりえ)と名付けられ、多色摺の錦絵が生まれる土台を確立します。

第一章では、浮世絵初期の時代の絵師、菱川師宣、懐月堂派、奥村政信、鳥居清信・清倍などの作品を展示しています。

 

 

【編集部注目作品】

 

●菱川師宣 「若衆と娘」

浮世絵版画の創始、菱川師宣が描いた、衝立の脇で寄り添う男女を描いた作品です。
唐草のような枠の中に描かれている、シンプルな描線とその線の上に塗られた、黄色や赤の色彩が目を引きます。

菱川師宣 若衆と娘 平木浮世絵財団 前期展示

 

 

●懐月堂度繁 「立美人」

肉筆画を中心に描いた懐月堂派の中では、版画の制作数が最も多いといわれている懐月堂度繁の作品です。
着物の前褄(まえつま)を取って立つ女性を画面いっぱいに描いています。
凛として佇む女性の姿は、まさに立美人です。

懐月堂度繁 立美人 重要美術品 平木浮世絵財団 前期展示

 

 

●奥村利信 「お七と吉三」

浄瑠璃や歌舞伎に脚色された、お七と吉三郎の話を描いた作品です。
八百屋お七が恋文を吉三郎に手渡ししている様子をとらえています

お七役は、二代目三条勘太郎が、初代嵐喜世三郎の追善として演じたのが有名で、以降の上演では、お七役は、嵐喜世三郎の定紋を用いるようになりました。
本作品の吉三郎は、衣装に二代目中村七三郎の紋が見えますが、当時七三郎が吉三郎を演じた狂言は、見出せなかったとのことです。

奥村利信 お七と吉三 太田記念美術館 前期展示

 

 


第二章 錦絵の誕生

 

明和2年(1765)頃、多色摺の版画が誕生し、錦のように美しい江戸の絵という意味で「東錦絵」(あずまにしきえ)と称されました。

第二章では、錦絵創生の時代にもっとも活躍した、鈴木春信、磯田湖龍斎、一筆斎文調、勝川春章らの作品を展示しています。

 

【編集部注目作品】
 
 
●鈴木春信 「風流諷八景 鉢木の暮雪」
 
中国の山水画の伝統的画題、瀟湘八景(しょうしょう はっけい)にちなんだ作品です。
8つの謡曲と結び付けたうちの「鉢の木」の物語の一場面が描かれています。
箒で屋根に積もる雪を払い落としているだけの姿ですが、その姿は、上品で雰囲気があります。

鈴木春信 風流諷八景 鉢木の暮雪 太田記念美術館 前期展示

 
 
●勝川春章 「初代中村仲蔵の近江小藤太 三代目大谷広次の番場忠太」

中村座の「御誂染曽我雛形」(おあつらえぞめそがのひながた)の一場面、
初代中村仲蔵の近江小藤太と三代目大谷広次の番場忠太の二人が、闇仕合をする姿が描かれています。
鬼気迫る表情で演じる役者の熱が、肌感覚で伝わってきます。

勝川春章 初代中村仲蔵の近江小藤太 三代目大谷広次の番場忠太 日本浮世絵博物館 前期展示

 

 

第三章 美人画・役者絵の展開

 

天明期(1781~89)に入ると、鳥居清長が伸びやかな長身の美人画様式を生みだし、群像図を多く制作します。
寛政期(1789~1801)に入ると、喜多川歌麿が様々な階層の女性を描きます。
東洲斎写楽は、寛政6年(1794)5月からわずか1年たらずで、忽然と消えてしまった絵師ですが、国際的にも評価されていいます。

第三章では、鳥居清長、喜多川歌麿、東洲斎写楽、歌川豊国らの作品を展示しています。

 

【編集部注目作品】

●鳥居清長 「大川端夕涼み」

川辺で涼風を楽しむ女性たちを描いた作品です。
今回、40年ぶりの展示となります。

五月二十八日の川開きに始まる、江戸の夏。
左側の茶托を持つ茶屋娘、中央のうちわを持つ女性、右側の片足を乗せる女性たちが、夏を楽しむ視線の先には、なにが映るのでしょうか?

※隅田川の下流は、当時、大川として親しまれていました。

鳥居清長 大川端夕涼み 重要文化財 平木浮世絵財団 8月10日まで展示

 

 

●喜多川歌麿 「五人美人愛敬競 松葉屋喜瀬川」

五人美人愛敬競は、江戸で評判の美女を描いた全5図の揃物です。
目鼻立ちの整った、面長の江戸美人に思わず見とれてしまいます。
顎に手をのせる女性の手指のしなやかさも印象的です。

喜多川歌麿 「五人美人愛敬競 松葉屋喜瀬川」 太田記念美術館 前期展示

 

 

●東洲斎写楽 「三代目坂田半五郎の藤川水右衛門」

二代目坂田半五郎十三回忌追善の興行で、三代目坂田半五郎が藤川水右衛門を演じたシリーズのうちの1点です。
藤川水右衛門のへの字口、かっと見開く眼、血管の浮き出た腕は、まさに敵役にふさわしい出立ちです。

東洲斎写楽 三代目坂田半五郎の藤川水右衛門 太田記念美術館 前期展示

 

 

●歌川豊国 「三代目市川八百蔵の此下東吉」

寛政8年(1796)三代目市川八百蔵が演じた、「衹園祭礼信仰記」の此下東吉を描いたとされる作品。
衹園祭礼信仰記は、悪人松永大膳に立ち向かう此下東吉の活躍を描いた物語です。
この絵の三代目市川八百蔵の目力には、圧倒されます。
その目からは、ただならぬ意志が感じられます

歌川豊国 三代目市川八百蔵の此下東吉 日本浮世絵博物館 前期展示

 

 

 

第四章 多様化する表現

 

文化・文政期(1804~30)に入ると、大らかな雰囲気だった錦絵は、より緻密な描写となり、画面に描かれる情報量も増えていきます。

第四章では、菊川英山の美人画、歌川国貞(のちに歌川豊国を襲名)らの作品を展示しています。

 

【編集部注目作品】

 

●菊川英山 「東すがた源じ合  紅葉賀」


源氏かるたと女性の半身像を組み合わせた揃物の一つで、行灯の灯りで冊子を読む娘を描いた作品です。
紙面を照らそうと、首を傾けて熱心に冊子を読みふける女性の真剣な表情が印象に残ります。
本の赤と髪留めと和服の赤が、調和を保っているように感じられます。

菊川英山 「東すがた源じ合  紅葉賀」 日本浮世絵博物館 前期展示

 

 

●歌川国貞 「紅毛油画風 永代橋」

洋風表現で描いた風景画の揃物で、知られたものでは、「紅毛油画風」、「紅毛油画名所尽」という図がそれぞれ5図、計10図あります。
この作品は、隅田川で四番目に架けられた橋、永代橋を取り上げた作品です。
永代橋の前を優雅に屋形船が渡ろうとしています。

歌川国貞「紅毛油画風 永代橋」日本浮世絵博物館 前期展示

 

 

第五章 自然描写と物語の世界

 

天保初期(1830~33)頃に、葛飾北斎による浮世絵版画、「神奈川沖浪裏」を含む「冨嶽三十六景」シリーズが出版されます。
天保4~5年(1833~34)頃には、歌川広重の代表作、「東海道五拾三次之内」も制作されました。

第五章では、葛飾北斎、歌川広重、歌川国芳などの作品を展示しています。

 

 

【編集部注目作品】

 

 

●葛飾北斎 「冨嶽三十六景 凱風快晴」

嶽三十六景は、日本一の名峰富士を眺める場所を変えて、描いた作品です。
この作品の富士は、河口湖付近から富士の北側を捉えたといわれています。
全46図が制作され、世界に北斎の富士のイメージを広めることになりました。
赤い富士山が、鰯雲を突き抜け、そびえる様子に心が震えます。
全46図をすべて見て、比較したくなります。

葛飾北斎 「冨嶽三十六景  凱風快晴」 日本浮世絵博物館  前期展示 ※後期は他館所蔵の同作品が展示されます

 

●歌川広重 「東海道五拾三次之内 箱根 湖水図」

東海道五拾三次之内は、歌川広重の出世作で、代表作の揃物です。
全55図からなり、旅路の風景を叙情豊かに描き、季節や時間、天候により変化する情景を実在感をもって表現しています。

こちらの作品は、小田原宿と三島宿の間に位置し、険しい山道が東海道の難所の一つだった箱根宿を描いています。
黄色、茶色、青の山の色は、色彩豊かです。
手前を歩く、笠を被った大名行列を見ると、その険しい山道の様子がわかります。
遠くに見える富士山を見て、少しだけ心が休まったでしょうか?

歌川広重 「東海道五拾三次之内  箱根  湖水図」 日本浮世絵博物館  前期展示

 
 
●歌川国芳 「みかけハこハゐがとんだいゝ人だ」

何人もの人間を集め、一人の人間の半身像を形作ったパズルのような趣向の戯画です。
その一人一人の顔や、体勢に、思わず笑ってしまいます。
怖い顔と、体のパーツの表情のギャップが面白いです。

歌川国芳 「みかけハこハゐがとんだいゝ人だ」 日本浮世絵博物館 前期展示

 

 

まとめ

 

「The UKIYO-E 2020 ― 日本三大浮世絵コレクション」について、紹介してきました。
日本三大浮世絵コレクションが、そろい踏みする史上初めての展覧会。

展覧会は、第一章から第五章まで、約60名の絵師たちが描いた作品が、前期・後期にわたり455点も登場する、ボリュームある内容となっています。
素晴らしい浮世絵の数々を鑑賞できるチャンスは、めったにないので、興味がある方は、東京都美術館へ是非とも、足を運んでください。

点数が多いので、まずは、自分のお目当ての絵師の作品を見てから、他の作品をじっくり見てもいいかもしれません。

 

※会場では、新型コロナウイルス対策として、検温の実施、手指の消毒のお願いをしております。
手指の消毒の徹底、マスク着用、密を避けるようソーシャルディスタンスを保って、ご鑑賞ください。

 

開催概要

 

■展覧会名: The UKIYO-E 2020 ― 日本三大浮世絵コレクション

■会期:   2020年7月23日(木・祝)~9月22日(火・祝)
前期:7月23日(木・祝)~8月23日(日) 後期:8月25日(火)~9月22日(火・祝)
(※前期・後期で作品は全て入れ替わります ※日時指定入場制)

■会場:          東京都美術館企画展示室

■開室時間: 9:30~17:30

■休室日:      8月17日(月)、8月24日(月)、9月7日(月)、9月14日(月)

観覧料 : 
※本展は日時指定入場制となりました。詳細は展覧会公式サイトへ(https://ukiyoe2020.exhn.jp)

※中学生以下および、身体障害者手帳・愛の手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・被爆者健康手帳をお持ちの方とその付添いの方(1名まで)は無料(日時指定券(無料)のお申し込みが必要です)
※いずれも証明できるものをご持参ください

展覧会公式サイト:https://ukiyoe2020.exhn.jp)

 

 

その他のレポートを見る

自由な表現者たちの魂が、胸に迫る。
【東京藝術大学美術館】「あるがままのアート -人知れず表現し続ける者たち-」内覧会レポート

東京藝術大学大学美術館

2020年7月23日(木・祝)から9月6日(日)まで、東京藝術大学美術館にて特別展「あるがままのアート -人知れず表現し続ける者たち-」が開催されています。先日、メディア向けの内覧会が開催されましたので、その様子をお伝えいたします。

人間味あふれる、「あるがまま」の作品たち

 

会場入口を彩る、小森谷章氏の作品。糸の塊が絡み合い、アメーバのような生命体を彷彿とさせる

 

展示会場風景

 

作家名の下にはQRコードが貼付されており、スマホ等で読むことで作品情報などを閲覧できる

 

林田嶺一氏はミュシャやロートレックなどのポスター作品とミニチュアなどのさまざまなマテリアルを組み合わせ、不可思議なイメージを作り出す

 

枯葉を折り紙のように折って製作された、渡邊義紘の作品。驚くべき手技の妙

 

井村ももか氏の制作した布製の丸いオブジェ。まるでパフォーマンのように「歌うように、踊るように」作り上げるという

 

当初はTシャツなど、身近なものに描いていたという福井誠。強烈な「目」のイメージが印象的

 

特別展「あるがままのアート -人知れず表現し続ける者たち-」で展示されているのは、いわゆる「プロフェッショナル」の作品ではありません。

ここに集うのは、世間からは「アウトサイダーアート」などとも呼ばれる、既存の芸術や教育、障害の有無などに左右されず、ただひたすらの独自の世界を追求し続けるアーティストたちの作品です。こうした、いわば「独学」のアーテイストたちの活動は20世紀初頭の美術界に大きな衝撃を与え、今日においてもその価値と重要性が強調され、広く社会に受け入れられています。

本展覧会ではNHK・Eテレで放送中のドキュメンタリー番組「no art,no life」と連携し、世界的に注目を集め続ける「あるがまま」のアートの世界を、近年国内外で注目を集めるアーティスト総勢25名、約200点の作品を通じて紹介しています。

 

展覧会初の試み!オンライン上で「ロボット鑑賞」

 

会場を自由に徘徊する自動運転ロボット

 

会場には「ロボット館長」も登場!

 

まさに「日本初」の試み。本展では東京藝術大学とNHKの独自企画として、インターネット経由で遠隔操作可能な自動運転ロボットを活用し、オンライン上のロボ鑑賞会を実現させています。内覧会ではそのお目見えが行われ、「ロボット館長」による展示作品解説も行われました。

ロボットは3Dセンサーを利用して周辺の環境を把握し、目的地に到達する最適なルートを探ってくれます。また、モニターを通じて来場者とコミュニケーションを自由に取ることも可能。来場者とロボットが並んで歩き、和気あいあいと鑑賞する姿を見て、「ああ、新しい時代がやってきたな・・・」と感慨もひとしおでした。

ロボ鑑賞会は予約制で、事前に希望日時を選んで登録し、配信されたURLにアクセスすることで当日鑑賞できるという流れのようです。詳しくはスペシャルコンテンツサイトをご覧ください。

 

出展作家紹介

 

魲万里絵(すずきまりえ)

 

高校時代に統合失調症を発症したという魲万里絵さん。現在は地元の会社と地域活動支援センターに通う傍ら、絵を描き続けているそうです。

ふくよかな女性の身体、ハサミ、性器・・・。彼女の絵画にはこれらのモチーフが反復して登場し、「呪術的」とも言えるほどの強烈な世界観を作り上げています。特にハサミは「描くと落ち着く」モチーフなのだとか。

初めの頃はチラシやポスターのような挿絵風の絵だったようですが、次第にマジックと紙というシンプルな道具を使い、自分自身の内面を曝け出すような絵を描くようになったそうです。

 

小久保憲満(こくぼのりみつ)

 

「この世界のすべてを自分でつくってみたい」

小久保憲満さんは、そうした強い思いで日々筆を取り、絵を描き続けています。会場に展示されている横幅10メートルにも及ぶ大作は17歳の時から描きはじめ、約5年の歳月を経て完成させたもの。

街を縦横に走る線路、ショッピングモール、遊園地・・・。キャンパスには俯瞰した街の風景が描かれていますが、小久保さんは記憶やインターネット検索などで集めた情報を集め、どこにも存在しない空想の街を作り上げました。まさに圧巻の一枚。

キャンパスの右から描き進めていったということで、左に進むほどにモチーフやタッチがまるでグラデーションのように徐々に変化していっているのがわかります。

 

川上健次(かわかみけんじ)

 

「自分にとって強烈な感情をもたらすものをモチーフにする」という川上健次氏。その作品は幼いころに自分をいじめていた男の子や、自責の念にかられながら置き去りにしてしまった猫など、その背後に密度の高い「物語」や「情念」を感じさせるものです。

会場内のモニターには作家自身の姿や創作の様子などがディスプレイされていますが、川上氏は大声で笑ったり泣いたり、まさに「天真爛漫」そのもの。その力強い筆遣いやタッチからは、純粋で野太いエネルギーが伝わってきます。

ときにスリリングで恐ろしい場面を描きながらも、作風はどこかほのぼの。もし岡本太郎が生きていたら、彼のことを絶賛していたのでは・・・そんな想像も浮かんできます。

 

 

開催概要

展覧会名 特別展「あるがままのアート -人知れず表現し続ける者たち-」
会期 2020年7月23日(木・祝)~9月6日(日)
開館時間 10:00~17:00(最終入場は16:30)
※7月30日(木)は12時からご観覧いただけます。
※日時予約制(予約サイトはこちら
休館日 ※休館日:月曜日
ただし、8月10日(月・祝)は開館、8月11日(火)休館
会場 東京藝術大学大学美術館(〒110-8714 東京都台東区上野公園12-8)
観覧料 入場無料
公式サイト https://www.nhk.or.jp/event/art2020/

 

その他のレポートを見る

 

【上野の森美術館】「なんでもない日ばんざい!」内覧会レポート~注目作品などを紹介~

上野の森美術館

野田 哲也「日記1979年8月10日」木版、シルクスクリーン、和紙 49.0×63.7cm 1979年 上野の森美術館

2020年7月23日(木・祝)より、上野の森美術館にて、上野の森美術館所蔵作品展「なんでもない日ばんざい!」が開催されています。(~8月30日(日)まで)
先日、この展覧会の報道内覧会がありました。
この記事では、展覧会について、展覧会の構成と編集部注目作品などについて、紹介します。
それでは、ご覧ください!


「なんでもない日ばんざい!」について

上野の森美術館では、1983年から今まで38回開催してきた上野の森美術館大賞展の受賞作品を多数所蔵しています。

今回の展覧会「なんでもない日ばんざい!」は、「なんでもない、どこにでもある日常」をテーマに、コロナ禍で、私たちの行動に様々な制限が強いられる中、こんな時期だからこそ見てみたいという作品を約80点展示します。
そのほか、同じく上野の森美術館の所蔵作品から、版画家・野田哲也が、家族や日常の日々を記録した〈日記〉シリーズの1970~80年代の作品約40点を前後期に分けて展示。また、秋山さやかが上野公園を題材に制作した作品も展示します。

「なんでもない日ばんざい!」公式サイト:http://www.ueno-mori.org/specials/2020/nandemonaihi/

 

展覧会の構成と編集部注目作品を紹介します。

 

展覧会は、5章から構成されており、作品の題材や視点が、徐々に日常の内側から外側、身近なものからより遠いものへとひろがっていくよう構成されています。

第1章「日常のなかに」

日常の「核(コア)ともいえる家や室内、身の回りの光景、自分自身やすぐそばにいる親しい人を描いた作品など、展覧会のテーマ、「なんでもない、どこにでもある日常」を感じる一番代表的なイメージ群です。

 

☆藤井 由隆 「花束」

 

まっすぐと、強いまなざしでこちらを見つめる女性。
その表情に、一瞬で引き込まれてしまいます。
ドレスや靴の鮮明なブルーが、女性の芯の強さを象徴しているように思えます。

藤井 由隆 「花束」油彩 F100  第35回 優秀賞 上野の森美術館

 

☆八嶋 洋平 「プラスチックガール」

 

壁にもたれかかる桃色の少女の人形。
深い悩みを抱えているように見えます。
よく見ると、壁には犬か猫を抱く男性の絵が描かれています。
実は、父親への愛情を求める気持ちを表しているのでしょうか?

八嶋 洋平 「プラスチックガール」 油彩 F100 第36回 絵画大賞 上野の森美術館

 

第2章「日常から絵画へ」

 

日常は、絵画の世界への入り口でもあります。
身近な日常に題材を得ているものを、そのまま描くのではなく、古今東西様々な絵画の様式や先達の手法を参考にしたり、あるいは独自のイマジネーションを発揮して様式化した絵画が、第2章にはそろいます。

 

☆原田 久万 「日本の行方 Ⅱ」

 

顔に布を被る男。
その足元は、粉々に崩れていきます。
日本の未来への憂いでしょうか?
「日本の行方」というタイトルにドキッとさせられます。

原田 久万 日本の行方 Ⅱ 油彩 F80  第10回 佳作賞 上野の森美術館

 

☆井上 猛 「きざし」

 

カタツムリの殻のようなものの中から飛び出す大きな魚と殻に吸い込まれるエビのような生き物。
水面は大きく渦を巻いています。
渦は、どんどん大きくなって、どこへ向かうのでしょうか?

井上 猛 「きざし」 油彩 S80  第8回 佳作賞 上野の森美術館

 

第3章「動物」

 

現代社会においての動物は、人間にとってどういう存在なのでしょう?
都市生活者にとっては、家で飼うペット、あるいは動物園などで囲われた状況の動物がいます。
第3章では、人々の感情を映し出す重要な存在として表現された動物などを紹介しています。

 

☆大村美玲 「間」

 

大きな樹と、その近くに佇む鳥。
神話的な樹が、まばゆい光を放っているようにも、鳥がクジャクのように羽を広げているようにも見えます。
薄明りの中で鑑賞すると、どのように見えるのかも見てみたい作品です。

大村美玲 「間」 日本画 S100  第37回 優秀賞 上野の森美術館

 

第4章「風景」

 

第4章は、第1章で紹介した室内などの手の届く範囲の風景よりももっと広い、遠い風景や俯瞰した風景が中心の展示となります。
都市の象徴である建造物から、水の流れや雲の動き、それら私たちの生活に欠かせない風景がここに描かれます。

 

☆呉 梨沙 「あさくさ」

 

誰もが知っている浅草の風景が、季節の移ろいを象徴する花とともに描かれています。
爽やかな色使いの中に、儚(はかな)さも存在しているように感じられます。

呉 梨沙 「あさくさ」油彩 F100 第29回 優秀賞

 


☆茂木 瑶(もてぎたまな)「星座ー窓からの風景ー」

 

窓の外に広がる夜景を描いた作品。
様々な光が交差して眩(まばゆ)い光を放ち、生き生きと語りかけてきます。
それぞれの光を見ていると、明るさが微妙に異なるので、不思議です。

茂木 瑶(もてぎたまな)「星座ー窓からの風景ー」油彩 S100 第32回 優秀賞

 

第5章「広がる想像」

 

実際の日常がいくら狭く、限られたものであっても、私たちは想像力を用い、物理的な制約を補うことができます。
第5章では、画家たちは絵画のなかで、異質なものどうしを結びつけ、異なる時空を導き入れ、目の前の現実よりはるかに広く深い世界を生み出そうと試みた作品を展示します。

 

☆青木萌 「覚醒する情動」

 

花瓶に植えられた花から蝶のような、別の生命のようなものが誕生しています。
ほとんどモノクロームの作品なのに、色彩を豊かに感じ取ることができるのは、気のせいでしょうか?
所々に配置された赤も、効果的です。

青木萌 「覚醒する情動」ミクストメディア F100 第33回 優秀賞

 

[特集展示] 野田哲也 版画 < 日記>シリーズ

 

☆野田 哲也「日記1979年8月10日」

 

野田哲也が、当時幼かった息子さんを題材にした作品。
歯抜けの口を大きく開けて、こちらを向く表情が、とてもユーモラスです。
よく見ると、顔の上に計算式が書いてあります。
この計算式が、作品を一段とポップな印象にしています。

野田 哲也「日記1979年8月10日」 木版、シルクスクリーン、 和紙 49.0×63.7cm 1979年 上野の森美術館

 

※特集展示は、展示替えがあります。

前期:7 月23 日( 木・祝)~8 月10 日( 月・祝)
後期:8 月12 日( 水)~8 月30 日( 日)

まとめ

 

上野の森美術館所蔵作品展「なんでもない日ばんざい!」について、お伝えしてきました。
展示されている”なんでもない、どこにでもある日常”をテーマにした作品群は、どれも気になるものばかりでした。
ここで紹介した作品以外にも、素晴らしい作品が展示されていますので、上野の森美術館へ行って、確かめてみませんか?

そして、作品に触れたあとは、なんでもない日々の大切さを噛みしめることでしょう。
美術館で作品を鑑賞すること、上野公園を散策すること、家族や友人と笑いあうこと。
なんでもないことが、こんなにもキラキラと輝いているということに。

 

※会場では、新型コロナウイルス対策として、検温の実施、手指の消毒の依頼をしております。
手指の消毒の徹底、マスク着用、密を避けるようソーシャルディスタンスを保って、ご鑑賞ください。

 

開催概要

 

タイトル :     上野の森美術館所蔵作品展 なんでもない日ばんざい!
会   場   :  上野の森美術館 〒110-0007 東京都台東区上野公園1-2
会   期 :    2020年7月23日(木・祝)-8月30日(日)
休   館    :   月曜日(ただし8月10日は開館)、8月11日(火)
時   間    :   午前10 時─午後5 時(入場は閉館30 分前まで)
主   催    :   日本美術協会 上野の森美術館、フジテレビジョン
後   援    :   フジサンケイグループ

 

 

チケット情報 

 

*この展覧会は日時予約制です

①10:00~10:59  ②11:00~11:59  ③12:00~12:59  ④13:00~13:59
⑤14:00~14:59  ⑥15:00~16:30

ご来館前にあらかじめ下記(e+ イープラス、ファミリーマート店舗)で日時指定券を購入のうえ
会場にお越し下さい。美術館内の混雑緩和のため、会期中は入場制限をさせていただきます。

 

ネット環境をお持ちでない方へ
日時指定の予約なく当日直接お越しになる方は【当日窓口】でお越しいただいた時間帯の空いている時間枠を照会いたします。
日時指定予約をされた方が優先となりますので、ご入場までお待ちいただく場合がございます。予めご了承ください。

※入替制ではございません。 ※指定時間内にご入場ください。

 

入場料: 一般1000 円、大学生500 円、高校生以下無料

※障がい者とその付き添いの方1名は無料、入館の際に障がい者手帳などをご提示ください。

 

販売期間

 

①2020 年7月10日(金)10時~
[7月23 日( 木・祝)~8 月10 日(月・祝) の期間のチケットを販売します。]

 

②2020 年7 月22 日( 水) 0 時~
[8 月12 日( 水)~8 月30 日( 日) まで の期間のチケットを販売します。]

 

販売場所  e+(イープラス) / QRチケット 【WEB 販売】 https://eplus.jp/ueno-mori/

【 コンビニ店頭販売】 ファミリーマート店内Famiポート

※ファミリーマート店頭購入方法 https://www.family.co.jp/services/famiport.html
※上野の森美術館窓口(開館日のみ)

 

・当館内で新型コロナウイルスの感染者が確認された場合、上野の森美術館ホームページにその情報を掲出いたします。
・会期等に変更等ある場合は上野の森美術館ホームページにてお知らせいたします。

 

 

※タイトルについて

「なんでもない日ばんざい!」は、もともとルイス・キャロルの「鏡の国のアリス」に出てくる「誕生日じゃない日のプレゼント」(un-birthday present)という言葉に由来。ディズニーの「不思議の国のアリス」では、「お誕生日じゃない日のうた」のなかに「なんでもない日おめでとう!」(A Very Merry Unbirthday To You)という歌詞がある。

 

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東京藝術大学大学美術館 特別展「あるがままのアート -人知れず表現し続ける者たち-」 国内外で注目を集める出品作家たちをご紹介!

東京藝術大学大学美術館


井村 ももか《みどりの玉》2014年

 

東京藝術大学・NHK・文化庁・独立行政法人日本芸術文化振興会は、東京藝術大学大学美術館(台東区・上野公園)にて『日本博』の一環として特別展「あるがままのアート -人知れず表現し続ける者たち-」[会期:2020 年7月23 日(木・祝)-9 月6 日(日)/令和2 年度 日本博主催・共催型プロジェクト]を開催します。

本展では、特定の文化や既存の美術、流行、専門教育などに影響されることなく、自身の芸術的な衝動に忠実に、ただひたすら自由に独自の世界を創造し続ける表現活動を行っているアーティストの作品にスポットを当てます。

日本国内には、独学のアーティストの独自の個性的な表現活動が多く見られ、その担い手の中には知的障害や精神障害のある方も多く、作品はなかなか世に出てきませんが、圧倒的な迫力に満ちています。
それらは私たちに人間の豊かさや心の自由を教えてくれると同時に、創造力を掻き立て、新たな人間像を考えるきっかけを提示しています。

近年国内外で注目を集めるアーティスト総勢25 名による約200 点の作品を通して、魅力的で多様性にあふれる「あるがままのアート」の世界と、その作品から垣間見えるアーティストたちの人生を、NHK のE テレやBS4K8K、国際放送で放送中の「no art, no life」、2017 年からETV 特集にて放送している「人知れず表現し続ける者たち」シリーズの映像とともに紹介します。

 

【『日本博』とは】

日本博は、「日本人と自然」を総合テーマに、縄文時代から現代まで続く「日本の美」を体感する美術展・舞台芸術公演、芸術祭などを、年間を通じ、全国各地で展開するプロジェクトです。
文化庁、日本芸術文化振興会、関係府省庁、全国の文化施設、地方自治体、民間企業・団体等が連携して、各地域が誇る様々な文化芸術の振興を図り、その多様かつ普遍的な魅力を国内外へ発信し、次世代に伝えることで、更なる未来の創生を目指します。
日本博公式ウェブサイト:https://japanculturalexpo.bunka.go.jp/

 

 

■本展みどころ

■パリで、ニューヨークで、アジアで、話題となった日本の「あるがまま」のアート作品が勢揃い!
■トゲトゲのオブジェ、落ち葉の折り紙、10 メートル!圧巻の現代絵巻など約200 点の作品を展示
■多様な表現が生まれる瞬間 アーティストたちの創作風景を4K 映像でも紹介
■人間の豊かさとはなにか、共に生きるとはなにか、心を揺さぶる総勢25 名の表現

【出品作家】
今村 花子/井村 ももか/大倉 史子/金崎 将司/川上 建次/記 富久/喜舎場 盛也/CANKTLE (キャンクト)
古久保 憲満/小森谷 章/坂元 郁代/澤井 玲衣子/澤田 真一/舛次 崇/杉浦 篤/魲 万里絵/高田 幸恵
長 恵/林田 嶺ー/福井 誠/藤岡 祐機/戸來 貴規/松本 寛庸/山際 正己/渡邊 義紘(五十音順)
※都合により、掲載している出品作家・作品が変更になる場合があります。

 

■作家紹介

 

澤田 真一(さわだ しんいち)

 

澤田は、架空の動物とも人間とも思えるシンボリックな陶芸オブジェを制作する。形態は奇怪だが、どことなくユーモラスにも見える不思議な生き物たちである。
表面を覆う無数の棘は、独特な世界を作り出し、作品は一度見たら忘れることのできない魅力を兼ね備えている。
棘のような突起物は、見ようによっては、世界を感受するセンサーのようなものにも見えるし、また、自らを保護する体毛が覆っているようにも見える。
当初は、手に乗るほどの小さな動物のようなオブジェの制作から始まったが、やがてサイズは大きくなり、原初的な人間や動物を想起する、空想的な形態の彫刻的な作品へと発展していった。

澤田は、滋賀県栗東市の山中の窯場で静かに制作を続けている。

 

澤田 真一《無題》制作年不詳

 

喜舎場 盛也(きしゃば もりや)

喜舎場盛也は、アルファベットや文字を紙一面に書き記した作品や、ベルや四角といった形を描き連ねる作品などの制作を経て、インクの滲みに着目した≪ドットシリーズ≫を制作している。
本シリーズは、必ず左下隅の青い丸を打つことから始まる。
この丸だけ他よりも少しだけ大きいのは、ペン先が紙に触れている時間が長いからである。
最初の斑点の後は、ドットの色選びを即興的に行っているようであるが、画面の中で色の偏りが見受けられないことから、独自の制作システムがあると思わずにはいられない。
色鉛筆で描かれた新作の≪ドットシリーズ≫では、 色彩のうねりが不思議な景色を作り出している。

喜舎場 盛也《ドットシリーズNo.10》2014年

 

井村 ももか(いむら ももか)

布製の丸い形のオブジェを作り出す。手の上に乗るサイズから抱きかかえるとちょうどよいサイズまで大小がある。
具体的なイメージがあるわけではないが、どこか愛玩動物やぬいぐるみを彷彿とさせる。
始めから大きなものをつくるわけではなく、順次、オブジェを成長させていくように、小さなものから大きなものへと作り上げる。
ピンク色が好きで、工房に着くと、まずピンクのウイッグをかぶり、創作が終わるとウィッグを外して、帰るという日々は、まるでパフォーマンスでもしているかのよう。
ときに歌うように、踊るように、動きながら、作り上げる。

井村 ももか《みどりの玉》2014年

 

 

松本 寛庸(まつもと ひろのぶ)

3m を超える大きな作品からスケッチブックサイズのものまで大小様々な作品あるが、どれも色彩に富んでいて、明快なイメージによってディテールが構成され、隅々までそれらによって埋め尽くされて、ひとつの物語を構成している。作品に近づくと読み解く面白さを堪能できる。
扱う題材は宇宙や歴史上の合戦というスケールの大きなものから、霧や、細菌と白血球など微小なものまで幅が広いが、題材のスケールの大きさを問わず、いずれも一種の世界の成り立ちを、作品を介して紹介しているともいえるもので、どのような法則やルールによってその世界が成立し、系統づけられているのかといった“なぞ”への興味が通底した制作の動機になっている。

松本 寛庸《加藤清正と徳川家康の陣取り合戦》2009-2010年頃

 

 

■展覧会開催概要

 

特別展「あるがままのアート -人知れず表現し続ける者たち- 」

 

特定の文化や美術動向に影響されることなく、自身の芸術的な衝動に忠実に、ダイレクトに、表現活動を行っているアーティストの作品を紹介します。
世界的に注目を集める「あるがままのアート」の世界を、近年、国内外で注目を集めるアーティストたち総勢 25名、約 200点の作品を通して幅広い“人間観”を探っていき、“人間の豊かさ”とは何かについて考えていきます。

 

会場: 東京藝術大学大学美術館  〒110-8714 東京都台東区上野公園12-8

会期: 2020年 7月23日(木・祝)~9月6日(日 )

休館日 :毎週月曜日、8月11日(火)
※ただし、 8月10日(月・祝)は開館10:00〜 17:00
※入館は閉館の 30分前まで

主催 :東京藝術大学、NHK、文化庁、独立行政法人日本芸術文化振興会、令和2年度日本博主催・共催型プロジェクト

展覧会公式HP: https://www.nhk.or.jp/event/art2020/

展覧会公式 SNS
Instagram:  https://www.instagram.com/arumama20/
Facebook :    https://www.facebook.com/arumama20
twitter    :         https://twitter.com/arumama20

 

 

【展示室内の3密(密閉・密集・密接)を防止するため、 入場予約制の導入のご案内】

 

本展は入場無料ですが、すべてのお客様はオンラインによる事前予約が必要となります。(小学生未満のお子様 は予約不要)
・開館 時間は 10時から 17時 まで 、 30分毎の入場となります。 最終 予約受付時間 は 16時予約回(最終入場 16時 30分) です。
・予約サイト からのみ予約可能です。 ご来場希望日の 1週間前より受付開始します。 電話等ではお受けできません。
・ご来場当日は、日時指定券の画面、もしくは画面を印刷したものを、展示室入口の係員にご提示ください。提示がない場合はご入館できません。

予約ページのURL https://art as it is.jp/reservation/ [ 7月 16日(木)午前 10:00より受付開始]

 

 

記事提供:ココシル上野


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