第2回江戸まち たいとう芸楽祭~夏の陣~
オープニングイベント 取材レポート

上野恩賜公園竹の台広場(噴水広場)

昨年、好評を博した「江戸まち たいとう芸楽祭」が満を持して今年も開催。
粋・豊かな人情・進取の気性といった先人たちが守り、育み、現代へ継承されてきた多彩な芸能・芸術文化を老若男女だれもが肌で感じることができる情趣あふれる文化イベントです。

名誉顧問は前回に引き続きビートたけしさん。

8月18日のオープニングイベントを皮切りに、夏の陣が2019年8月18日~10月26日、冬の陣が2020年1月~2月15日にかけて開催の2部構成です。
そこで今回はオープニングイベントを取材しましたので、その模様をご覧ください。

マッハスピード豪速球&モンローズ

イベントの先陣を切ったのは、2019年1月に開催された「ビートたけし杯 漫才日本一」で、見事に優勝をさらったマッハスピード豪速球。10秒、30秒、1分のショートコントを披露しました。持ち味の毒舌と、要所要所に自らの知名度に関する自虐を交えたテンポの良いボケとツッコミ、そしてトークが会場から心地よい笑いを誘います。

マッハスピード豪速球

そんな彼らと、ビートたけし杯で競り合った準優勝のモンローズも次いで登場。現代的な脱力感あるボケと熱量全開のツッコミを持ち合わせた対照的な二人は、鉄板ネタ『弱小野球部の監督』を披露し、独自の笑いを魅せつけます。

モンローズ

こうして今年波に乗る若手芸人二組が会場を盛り上げ、「江戸まちたいとう芸楽祭~夏の陣~」の口火がきられました。

尺八演奏(き乃はち さん)

江戸時代から続く「琴古流」という尺八の流派を継承するき乃はちさんは、台東区根岸出身。4歳にして尺八をおもちゃ代わりに吹き始め、後に三橋貴風に師事。
2003年のソロデビュー後、舞台・歌舞伎・映画などの作曲活動にもその才能を発揮され、さらには全国の寺社仏閣において、奉納演奏を実施することをライフワークにもされているようです。
国外に目を向ければ、これまでロンドン、モスクワ、ウクライナ、カザフスタン、クリミア、ニュージーランド、北京、上海をはじめとした海外公演にも精力的で、まさに日本文化の発信者のお一人です。
今回は故郷台東区でその音色を響かせます。

き乃はち さん(左) 竹内純さん(右)

竹内純さんのヴァイオリン演奏もあって、一層会場は敬虔で神秘的なムードに包まれていきます。大人ばかりではなく、その音色は、物心ついたばかりの小さな子供たちの足をも止めさせる力を持っていました。伝統や格式を重んじる一方で、現代的な遊び心も忘れないそんな魅力ある演奏でした。

ニューヨーク発ダンスパフォーマンス(国際芸術文化交流 舞)

「国際芸術文化交流 舞」は、アメリカ・ブロードウェイでも活躍されている舞台女優・井本美穂さんを中心に、ダンスというエンターテイメントを通じて、地域に密着した体験型ワークショップや、国際文化交流にも力を発揮されているパフォーマンス集団です。

国際芸術文化交流 舞

特にシアターダンスを得意とし、今回は手話をダンスに取り入れることにも挑戦しました。そして、なんといっても今回のダンスの目玉は、この後上映される映画 『ボヘミアン・ラプソディ』にちなんだロックバンド QUEENの曲にのせたダンスパフォーマンス。躍動感あふれる力強いダンスに皆さん夢中です。曲調に併せて手拍子も沸き起こり、会場は盛り上がりをみせます。

手話を取り入れたダンスパフォーマンス

ROLLY & 村治 佳織(トークショー)

こよなくQUEENを敬愛するミュージシャンのROLLYさんと、たいとう観光大使としても活躍しているクラシックギタリストの村治 佳織さんが映画『ボヘミアン・ラプソディ』、そしてQUEENについて熱く語ってくれました。

村治佳織さん(左)・ROLLYさん(右)

特に印象的だったのはブライアン・メイがギターを演奏するときに、ピックではなくコインを使ってギターを弾いていたというエピソード。
日本でいう1円玉にあたるイギリスのシックスペンスコインと彼のピッキングセンスが相まって数々の曲が生まれたとか。
お二人のQUEEN愛トークは尽きません。
そして、今回はなんとお二人セレクトのQUEENメドレーのセッションも披露してくれました。

『ボヘミアン・ラプソディ』映画上映

昨年、日本だけでなく世界で一大ムーブメントを巻き起こし、第91回アカデミー賞最多4部門を受賞した映画『ボヘミアン・ラプソディ』。
本作が、これ以上ない最高級のサウンド設備で、上野恩賜公園に設営された野外大スクリーンで上映されました。
上映に併せて、会場に集まった多くの観覧者の視線が、上映機材を積んだトラックから投影される光の先に注がれました。

日も沈み、暑さはコンクリートの地面がため込んだ熱を残すのみだったはずが、応援上映もOKとなった会場では場面が進むにつれて、QUEENファンによる熱い声援と歌声によって再び熱気がたちこもりました。
その様子は映画館というよりもライブ会場さながら。
この日の上野はいつも以上に熱くなりました。


こうして始まった「第2回 江戸まち たいとう芸楽祭」では、今後続々と映画・芸能・演劇といった多種多様な文化イベントが開催されます。
ぜひ周囲の皆様をお誘いの上、地域に根付き育まれてきた大衆芸能と、年月をかけ洗練された格式や伝統を観て、聴いて、笑いに、会場へ足を運んでみてはいかがでしょうか。
詳しくは、下記公式ホームページをご覧ください。

江戸まち たいとう芸楽祭概要

会期 2019年8月18日(日)~2020年2月15日(土)
会場 ○上野地区 上野恩賜公園噴水前広場・御徒町南口駅前広場ほか
○谷中地区 防災広場初音の森
○北部地区 山谷堀広場ほか
○南部地区 蔵前小学校
○浅草地区 東本願寺・浅草公会堂ほか
公式HP http://www.taitogeirakusai.com/

その他のレポートを見る

東京国立博物館 第6回「博物館でアジアの旅」開催!

東京国立博物館


東京国立博物館では、2019年9月10日(火)~10月14日(月)まで、第6回「博物館でアジアの旅」が開催されます。

「博物館でアジアの旅」は、今年で6回目を迎える東京国立博物館の秋の恒例企画です。
東洋の美術・工芸・考古遺物が集う「東洋館」を舞台に、毎年異なるテーマを掲げ、それに沿った名品を館内随所に展示します。

今年のテーマは「愛」。
愛は人間の根源的な感情であるがゆえに、その対象や交わりのかたちもさまざまです。
愛と性のかかわり、愛と恋の違いについても、人それぞれの答えがあるはず。
今回は「ラブラブアジア」※というタイトルのとおり、愛を題材とした多彩な作品をご紹介しながら、アジア各地の人々が、いにしえより愛をどのようにとらえ、表現してきたのかを探ります。

※正式には「LOVEラブアジア」(“ラブ”部分はハートマーク)と表記します。

 

◇主な作品◇

≪一本の矢に込めた、切なる願い≫

 

【東洋館13室】

●ナーイカを膝に乗せて矢をつがえるナーヤカ
ビーカーネール派 インド 18世紀初

実は、男が狙った矢の先には雄鶏がいるのです。
雄鶏さえ鳴かなければ朝は来ない、そうすれば二人はいつまでも一緒にいられるという男女の想いが描かれています。

※インドではさまざまな愛を細密画の形で表現してきました。今回の展示では、性的表現を含む作品も一部ございます。予めご了承ください。

 

≪絵画ではなく刺繍!愛にあふれた縁起物≫

【東洋館10室】

●花鳥図屏風(かちょうずびょうぶ)
朝鮮 朝鮮時代・19世紀 小倉コレクション保存会寄贈

つがいの鳥と吉祥の植物を刺繍で表したおめでたい意匠の屏風。
新婚の高貴な女性の部屋を飾ったものです。

 

≪美女と勇者のカップル、その運命やいかに≫

【東洋館13室】

(左) ワヤン・クリ アルジュノ
インドネシア・中部ジャワ 20世紀 松本 亮氏寄贈

(右) ワヤン・クリ バヌワティ
インドネシア・中部ジャワ 20~21世紀 松本 亮氏寄贈

インドネシアの影絵人形ワヤン・クリ。
画像の二体は叙事詩『マハーバーラタ』に登場するキャラクターです。
勇者アルジュノを慕いながら、彼の宿敵の妻となった美女バヌワティ。
戦火のなかでついに二人は結ばれますが、バヌワティは敵襲によって命を散らします。

 

≪“鴛鴦(おしどり)夫婦”が可愛い、唐三彩の枕≫

【東洋館5室】三彩印花鴛鴦文枕(さんさいいんかえんおうもんまくら)

中国 唐時代・8世紀 広田 松繁氏寄贈

夫婦和合の象徴とされる鴛鴦が、子孫繁栄を意味する蓮花に乗った、たいへん縁起のよい意匠が施されています。

 

≪仲良し親子には、隠れた意味が≫

【東洋館9室】白玉水禽形合子(はくぎょくすいきんがたごうす)
中国 清時代・19世紀

蓮池に遊ぶ水鳥の家族を表す白玉の合子。
雌雄の水鳥は相愛を、雛鳥と蓮は子孫繁栄を意味します。
蓮は恋と同音なので、恋愛をも象徴するモチーフです。

 

≪二人の想いを、笛の音にのせて≫

【東洋館8室】春水吹簫図扇面(しゅんすいすいしょうずせんめん)
諸火斤筆※ 中国 清時代・乾隆48年(1783) 林 宗毅氏寄贈

※「火斤」は正式には1文字での表記です

うららかな春の川下りを楽しむ男女。南宋時代の有名な詞人・姜キ(きょうき)が奏でる簫(しょう)の音に、彼に愛された小紅(しょうこう)が歌をあわせる場面です。
※展示は9月18日(水)から

 

≪小さいけれど、後ろ姿までラブラブ≫

【東洋館3室】銀製装飾(ぎんせいそうしょく)ピン
イランまたはイラク パルティア時代・2~3世紀

(全体)

 

(背面部分)

まったりと飲食を楽しむ、夫婦と思しき仲睦まじい男女の姿が印象的です。
葬送の宴の一幕とも考えられます。

 

◇関連イベント◇

※すべて参加無料(ただし高校生を除く18歳以上70歳未満の方は当日の観覧料が必要)

<スペシャルツアー「愛を探す旅 ―添乗員はトーハク研究員―」>[当日受付]

各日3人の研究員が「愛」をキーワードに約20分ずつ、計70分間の東洋館の旅へと、ご案内します。

スペシャルツアー 2018年の実施風景

 

●9月10日(火)14:00~15:10「工芸に表現された愛」

猪熊 兼樹(工芸史)、小野塚 拓造(中近東考古)、三笠 景子(東洋陶磁史)

●10月8日(火)14:00~15:10「絵画に表現された愛」

勝木 言一郎(東洋美術史)、植松 瑞希(東洋絵画)、市元 塁(東洋考古)

受付場所:東洋館1階エントランス(受付開始は各回30分前予定)

※展示室をめぐるツアーです。歩きやすい靴でご参加ください。

<月例講演会「アジア美術に見える愛の表現」>[当日受付]

地中海世界から東アジアに至るまで、愛をテーマとしたさまざまな作品を通して、古今東西の人々が愛をどのようにとらえ、そして表現しようとしたのかを探ります。

●9月28日(土)13:30~15:00

講師:勝木 言一郎(東洋美術史)

会場:平成館大講堂(開場は開始30分前予定) 定員:380名

 

<ボランティアによるガイドツアー>[当日受付]

東洋館ハイライト、彫刻、考古などのガイドツアーを「博物館でアジアの旅 特別バージョン」で実施します。

9月15日(日) 11:00~11:40 東洋館ツアー (1)

9月20日(金) 11:00~11:30 樹木ツアー (2)

9月21日(土) 14:00~14:40 本館ハイライトツアー (2)

9月26日(木) 11:00~11:40 東洋館ツアー (1)

9月29日(日) 14:30~15:00 考古ガイド@東洋館 (1)

10月1日(火) 11:00~11:40 たてもの散歩ツアー (2)

10月3日(木) 11:00~11:40 東洋館ツアー (1)

10月5日(土) 14:00~14:40 本館ハイライトツアー (2)

15:00~15:30 彫刻ガイド@東洋館 (1)

10月6日(日) 14:30~15:00 考古ガイド@東洋館 (1)

10月13日(日) 15:00~15:30 彫刻ガイド@東洋館 (1)

集合場所:(1)東洋館1階エントランス

(2)本館1階エントランス

 

<トーハクでヨガ体験>[事前申込制]

毎年大好評のヨガ、今年も行います! トーハクの文化財に囲まれながらヨガを体験できるチャンスです。

●マットでリラックスヨガin表慶館

9月27日(金)(1)11:00~11:30、(2)13:30~14:00、(3)15:00~15:30

講師  :渡辺 美保(ヨガインストラクター)

会場  :表慶館1階(受付開始は各回30分前予定)

定員  :各回20名(応募者多数の場合は抽選)

申込方法:当館ウェブサイトのフォームからお申し込みください。

申込締切:8月23日(金) 必着

※マットを使用したヨガとなりますので、動きやすい服装でご参加ください。(ジーンズ、スカートはご遠慮ください)

※着替えができる部屋をご利用いただけます。

 

●気軽に椅子ヨガin東洋館

気軽に椅子ヨガin東洋館(2018年の実施風景)

 

10月4日(金)(1)11:00~11:30、(2)13:30~14:00、(3)15:00~15:30

講師  :渡辺 美保(ヨガインストラクター)

会場  :東洋館1階(受付開始は各回15分前予定)

定員  :各回20名(応募者多数の場合は抽選)

申込方法:当館ウェブサイトのフォームからお申し込みください。

申込締切:8月30日(金)必着

※動きやすい服装でご参加ください。(ジーンズ、スカートはご遠慮ください)

※展示室内でのプログラムですので、着替えができる部屋のご用意はございません。

 

【博物館でアジアの旅 ラブラブアジア】

※正式には「LOVEラブアジア」(“ラブ”部分はハートマーク)と表記します。

■会期:2019年9月10日(火)~10月14日(月・祝)
■会場:東京国立博物館 東洋館
■開館時間:9時30分~17時

※金・土曜日は21時まで、9月20日(金)・21日(土)は22時まで

※入館は閉館の30分前まで

■休館日:月曜日、9月17日(火)、9月24日(火)

※9月16日(月・祝)、9月23日(月・祝)、10月14日(月・祝)は開館

■観覧料:一般620円(520円)/大学生410円(310円)

※総合文化展観覧料および開催中の特別展観覧券(観覧当日に限る)でご覧いただけます。

※( )内は20名以上の団体料金。

※特別展は別料金。

※高校生以下、および満18歳未満と満70歳以上の方は無料。

入館の際に年齢のわかるものをご提示ください。

※障がい者とその介護者1名は無料。

入館の際に障がい者手帳などをご提示ください。

※敬老の日(9月16日<月・祝>)は総合文化展が観覧無料です。

お問合せ:03-5777-8600(ハローダイヤル)

■ウェブサイト: https://www.tnm.jp/?lang=ja/

記事提供:ココシル上野


その他の展覧会情報を見る

【東京藝術大学大学美術館】円山応挙から近代京都画壇へ~報道内覧会レポート~

東京藝術大学大学美術館

2019年8月3日(土)から東京上野の東京藝術大学大学美術館で、
「円山応挙から近代京都画壇へ」が開催されています。
(~9月29日(日)まで)

先日、本展の報道内覧会が開催されましたので、今回は、そのレポートをお届けします。

 


円山応挙について

 

円山応挙は、1733年(享保十八年)に現在の京都亀岡付近(丹波桑名郡穴太村)で農民の子として生まれました。
しかし、貧しい家庭環境のため生活は苦しく、幼いころから奉公に出されていたといいます。

その奉公先の一つ、尾張屋勘兵衛の店は浮絵、望遠鏡、のぞき眼鏡、人形などを扱う玩具商でした。
応挙はそこで眼鏡絵を描く機会を得たのを皮切りに、狩野派の流れをくむ石田幽汀(ゆうてい)に師事し、眼鏡絵を通して西洋画の技法である透視図法を習得することで、絵画の技術を磨いていきました。

名前も1766年(明和3年)から「応挙」と名乗るようになります。
そして、三井寺円満院門主の祐常と出会い、様々な注文を受ける中で、数々の名品を生み出し、画家として大成していきます。

この時期に生まれた様式が実物そのままの生を写す、写生画(スケッチ)。
当時の絵画の基本が、やまと絵か中国画だけであった時代に、応挙の写生画は簡単でわかりやすく、庶民に身近なものとして絵画を広めることになります。

そんな親しみやすく、古い伝統にとらわれない自由奔放な応挙の画風に魅せられ、全国から入門する門弟は数多く、1780年代には、円山派という一流派が形作られて工房を組織できる規模の流派になっていきます。

 

円山・四条派とは?

 

円山派と共に、与謝蕪村に学び、のちに応挙に師事した呉春を中心とした流派に”四条派”があります。

四条派は、呉春やその弟子たちが京都の四条通り周辺に住んでいたことから名づけられた画派。
呉春の写生的な画風が応挙の影響を受けていることから、円山派と四条派の二派は、関連する二大流派として、「円山・四条派」と呼ばれ、近世以降の京都の主流となり、近代京都画壇にも大きな影響を及ぼし、現代まで脈々と受け継がれています。

 

展覧会の見どころ

 

本展覧会は、応挙、呉春から近代へ至る系譜を追うことで、円山・四条派の全貌に迫り、日本美術史の中で重要な位置付けの京都画壇の様相の一端を明らかにするもので、大まかに4章構成となっています。
その展示数は、重要文化財8点、重要美術品2点を含む約100点で、これまでには無かった最大規模の展覧会となっています。

一番の注目は、丸山応挙最晩年の最高傑作と呼ばれる「大乗寺襖絵」の立体展示。

「大乗寺襖絵」は、そのスケール感は、息をのむほど。光により作品の墨の濃度に変化がみられます。様々な角度からご覧ください。

 

 

円山応挙『松に孔雀図』寛政7年作 重要文化財 兵庫・大乗寺所蔵 東京展のみ通期展示。

 

その他、応挙に関連する呉春を始め山本守礼、亀岡規礼と続く、「円山・四条派」の系統を踏む画家の襖絵、32面も紹介します。

 

呉春 『四季耕作図』 寛政7年(1795年)作 重要文化財 兵庫・大乗寺所蔵

 

(手前) 亀岡規礼『採蓮図』 江戸時代後期作 重要文化財  兵庫・大乗寺所蔵  
(奥) 山本守礼 『少年行図』江戸時代後期作 重要文化財 兵庫・大乗寺所蔵

 

また、東京展前期のみ、重要美術品「江口君図」が出品されるのも見どころの一つ。

円山応挙『江口君図』は、応挙の数少ない美人画の中でも優れた作品の一つ。
応挙の人物画は、しっかりした人体構図で描かれているのが特徴。
髪の上部から髪の毛が、ハラハラと落ちていく様子が自然に再現されています。

写真(左) 円山応挙『江口君図』寛政6年(1794年)作 重要美術品 静嘉堂文庫美術館所蔵※東京展の前期のみ展示。 写真(右)は、幸野 楳嶺 『洞房粧雨図』明治8年(1875年)作

 

新発見された作品「魚介尽くし」も東京展のみ展示されています。

写真左の『魚介尽くし』は、 円山・四条派の大半を占める、総勢28名の画家たちが1つの画面に魚介類を描いた合作。28人で描いているのに、一見すると一人の画家が描いているように調和がとれているところが面白い。
写真中央の『松虎図』は、 円山派の系統を踏む岸派の代表的な虎を描いた作品

(右)森寛斎他『魚介尽くし』 明治5~6年(1872-73年)作 個人蔵 ※東京展のみ通期展示 (中)岸駒 『松虎図』 江戸時代後期作公益財団法人角屋保存会所蔵 (右)幸野楳嶺 『敗荷鴛鴦図』 明治18年(1885年)頃作 敦賀市立博物館蔵

その他の作品

国井応文・望月玉泉 『花卉鳥獣図巻』

円山派の五代目・応文と望月派の四代目・玉泉によって描かれた画巻。光沢ある塗料で描かれた、孔雀の羽の薄青、濃い青、 緑がかった色は鮮やか。立体感を感じさせます。

国井応文・望月玉泉 『花卉鳥獣図巻』 江戸時代後期~明治時代作 京都国立博物館所蔵 

 

竹内栖鳳 『春暖』
長沢芦雪 『薔薇蝶狗子図』
応挙に影響を受けた2人の画家、栖鳳と芦雪。どちらの犬も、個性的で可愛らしいです。

(左)竹内栖鳳 『春暖』 昭和5年(1930年)作 愛知県美術館(木村定三コレクション)所蔵 (右)長沢芦雪 『薔薇蝶狗子図』寛政後期頃(1794‐99年)作 愛知県美術館(木村定三コレクション)所蔵

まとめ

円山・四条派は、どれが円山派か?どれが四条派か?という定義が曖昧で、専門家でも判断しきれないとのこと。
円山応挙の写生画に奇をてらったり個性を発揮する表現がないように、円山・四条派の変化も大きく目に見えるものはなく、なだらかです。
そのため、作品を鑑賞する際には、難しいことを考えずに、そのなだらかな変化やそれぞれの作風の違いを自然に楽しむことが、大切。

 

急速な変化と共に進化した江戸の文化に対して、京都独自の文化を育んできた円山・四条派。
東京藝術大学大学美術館で、円山・四条派の作品たちに触れてみては、いかがでしょうか?

 

開催概要

 

展覧会名 円山応挙から近代京都画壇へ
会期 前期:2019年8月3日(土) – 9月1日(日) 後期:2019年9月3日(火) – 9月29日(日) 前期後期で大展示替え!
※ただし、大乗寺襖絵は通期展示
午前10時 – 午後5時(入館は閉館の30分前まで)
休館日 月曜日
※ ただし、月曜日が祝日または振替休日の場合は開館、翌日休館
会場 東京藝術大学大学美術館(上野公園) 本館 展示室1、2、3、4
観覧料 一般1,500円(1,200円)高校・大学生1,000円(700円)
※中学生以下無料
※( )は、20名以上の団体料金  ※ 団体観覧者20名につき1名の引率者は無料
※障がい者とその介護者1名は無料。入館の際に障がい者手帳などを要提示。お得なチケット情報
※詳細は公式サイトでご確認ください。
公式サイト https://okyokindai2019.exhibit.jp/

 

その他のレポートを見る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【7.20(土)より東京都美術館にて開催】伊庭靖子展 まなざしのあわい 報道内覧会レポート

東京都美術館


2019年7月20日(土)から上野の東京都美術館で、「伊庭靖子展 まなざしのあわい」が開催されています。【10月9日(水)まで】
先日、本展の報道内覧会が開催されましたので、今回は、そのレポートをお届けします。


伊庭靖子展について

伊庭靖子さん

 

伊庭靖子は、画家としての自身の眼とモチーフのあわい(間)にある世界に魅せられ、触れたくなるような質感のモチーフやそれがまとう光を描くことで、そのものの景色を表現し続けてきました。
その創作スタイルは、自ら撮影した写真を元に制作するもので、2000
年代は、主に寝具や器をモチーフとしていました。
近年も、制作スタイルは変わっていませんが、接近していたモチーフとの距離が少しずつ広がっています。
風景への関心が徐々に高まり、周りの空間への視点が広がることにより、新たな展開を見せる伊庭作品。
今回の展覧会では、東京都美術館にて撮影した写真から描いた絵画をはじめ、版画、新たな試みとして映像作品が発表されています。

2009年の個展、「伊庭靖子――まばゆさの在処――」(神奈川県立近代美術館)以来、10年ぶりの美術館での開催となる「伊庭靖子展 まなざしのあわい」。
本展覧会は、近作・新作を中心に、新たな展開に至る前の作品も併せて展示することにより、伊庭靖子の10年の変化とともに、変わらない関心の核に迫ります。

 

展覧会のみどころ

展覧会の見どころは、3つです。

①10年ぶりとなる個展で、東京の美術館では、はじめての開催

国内外の主要な美術館に多く収蔵されている伊庭作品。
その人気は、美術館だけでなく、多くのコレクターにも愛されています。
今回の展覧会は、個人の邸宅で大切に保管されている、たくさんの所蔵者にご協力いただき、近作・新作につながる2004年からの作品を展示します。
普段は、中々見ることができないコレクターお気に入りの作品が目白押しです。

②新作中心の展覧会

今回の展覧会は、開催が決定した、2016年春から、3年余りの時間を掛け準備を行い、絵画、版画、映像といった新作を中心に展示しています。
東京都美術館で撮影した写真から描いた絵画は、伊庭のレンズと手を通して生まれ変わり、美術館を設計した前川國男の建築に新たな命を吹き込みました。

③映像作品に初挑戦

絵画に軸を置き、制作活動を広げてきた伊庭は、今回初めての映像作品に挑戦しています。
光に満ちた静謐(せいひつ)な空間を描く絵画から発展し、大気、光、雰囲気などの人間の目と見る物の対象との間にある様々なものを意識させる映像作品となっています。

 

展示作品紹介

 

Untitled 2018-02 油彩、カンヴァス  作家蔵(協力:MA2 Gallery)

この作品は、東京都美術館で撮影した写真から描かれています。
アクリルボックスにモチーフを入れて制作。
透明なアクリルボックスに反射して映り込む周りの景色と対象物の光が何重にも重なり合って、独特の世界を生み出しています。

 

 

Untitled 2006-07 油彩 カンヴァス 個人蔵

クッションを両手でギュッと抱きしめた後に出来る皺(しわ)の質感。
そこに暮らす人の生活の温もりも感じ取れるように思えます。
作品の前に佇むと、光を帯びて、作品が浮かび上がってくるような錯覚を覚えるから不思議です。

 

 

Untitled 2015‐01 油彩 カンヴァス 作家蔵(協力:MA2 Gallery)

ガラスの透明感、つや、器から伸びた影が、繊細に表現されています。
背景の淡い桜色が、対象物を際立たせています。

 

 

depth #2019 映像インスタレーション ランダム・ドット・ステレオグラム(交差視)/Random dot stereogram(Cross-eyed viewing)

伊庭の新作映像作品の内の一つ。
左右の目の視差を利用し、立体的に物を見る方法を使いスクリーンを見ると、ある画像が現れます。
人によって、日によっても見え方が変わってくるというから面白いです。
実際に目で見て感じ取ってください。

 


まとめ

 

「それぞれの作品を目で見て、体でも感じながら、ご自身の過去の思い出を呼び覚ましてもらいたい」と話す伊庭靖子さん。

目に見える対象物から目に見えないものの存在感を感じ取る。
それが伊庭作品の鑑賞の仕方です。

対象物とそれがまとう光を描くスタイルを取りながらも、絵画だけではなく、映像などの新しい視覚表現に挑戦し続け、変化する伊庭靖子。
本展覧会に、是非足を運んでみてはいかがでしょうか?

 

 

開催概要

展覧会名 「伊庭康子展 まなざしのあわい」
会期  2019年7月20日(土)~10月9日(水)
会場 東京都美術館 ギャラリーA・B・C
休室日  月曜日、8月13日(火)、9月17日(火)、9月24日(火)
※ただし、8月12日(月・休)、9月16日(月・祝)、9月23日(月・祝)は開室
開室時間
9:30~17:30、金曜日は9:30~20:00(いずれも入室は閉室の30分前まで)
※ただし、7月26日(金)、8月2日(金)、9日(金)、16日(金)、23日(金)、30日(金)は9:30~21:00
観覧料 当日券 | 一般 800円 / 大学生・専門学校生 400円 / 65歳以上 500
団体券 | 一般 600
※団体割引の対象は20名以上
※高校生以下は無料
※身体障害者手帳・愛の手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・被爆者健康手帳をお持ちの方とその付添いの方(1名まで)は無料
※8月21日(水)、9月18日(水)は「シルバーデー」により、9月16日(月・祝)は「敬老の日」により、65歳以上の方は無料
※8月17日(土)、18日(日)、9月21日(土)、22日(日)は「家族ふれあいの日」により、18歳未満の子を同伴する保護者(都内在住、2名まで)は、一般料金の半額
※いずれも証明できるものをご持参ください
※10月1日(火)は「都民の日」により、どなたでも無料[サマーナイトミュージアム割引]
7月26日(金)、8月2日(金)、9日(金)、16日(金)、23日(金)、30日(金)の17:00~21:00は、一般600円、大学生・専門学校生無料(証明できるものをお持ちください)

[相互割引]本展会場入口で下記展覧会の観覧券(半券可)をご提示の方は、一般当日料金が割引になります(いずれも1枚につき1名1回限り、他の割引との併用はできません)

・特別展「コートールド美術館展 魅惑の印象派
一般当日料金から300円引き。本展の観覧券(半券可)を当館内のチケットカウンターでご提示の方は、「コートールド美術館展 魅惑の印象派」の当日券が100円引き
・東京都庭園美術館「1933年の室内装飾 朝香宮邸をめぐる建築素材と人びと
一般当日料金から200円引き。本展の観覧券(半券可)を、東京都庭園美術館の正門横の券売所でご提示の方は、「1933年の室内装飾 朝香宮邸をめぐる建築素材と人びと」の一般料金が180円引き・東京都現代美術館「あそびのじかん」展
一般当日料金から200円引き。本展の観覧券(半券可)を、東京都現代美術館のチケットカウンターでご提示の方は、「あそびのじかん」展の一般料金が120円引き

家族ふれあいの日
(https://www.tobikan.jp/guide/hospitality.html#anchor1)

シルバーデー
( https://www.tobikan.jp/guide/hospitality.html#anchor2)

都内教育機関 観覧料免除申請
(https://www.tobikan.jp/learn/exemption.html)

パパママデー
(https://www.tobikan.jp/guide/nurseryservice.html)

特設WEBサイト https://www.tobikan.jp/yasukoiba

※その他イベント情報は、特設WEBサイトにてご確認頂けます。

 

記事提供:ココシル上野


その他のレポートを見る