東京国立博物館
京都を代表する禅寺の一つである東福寺。
新緑や紅葉の名所として知られ、戦火に見舞われながらも古文書や書跡、典籍、肖像画など数多の宝物を守り継いできた名刹である。
東福寺の至宝をまとめて紹介する初の機会となる本展では、絵仏師・明兆による「五百羅漢図」など禅宗文化の優品が集う。
本記事では開催前日に行われた報道内覧会の様子をレポートする。
新緑や紅葉の名所としても知られる、京都を代表する禅寺の一つ「東福寺」。東福寺の名は奈良の東大寺と興福寺になぞらえて、その一字ずつを取ったことに由来します。
開山となったのは中国で禅を学んだ円爾(えんに)。東福寺は幾度も焼失の危機に遭いながらも、中世の面影を色濃く留める建造物の数々を現代に伝え、その巨大な伽藍は「東福寺の伽藍面(がらんづら)」の通称で知られています。
特別展「東福寺」は草創以来の東福寺の歴史を辿りつつ、大陸との交流を通した禅宗文化の全容を紹介。その意義と魅力を幅広く伝える展覧会です。
禅の神髄が宿る、東福寺の寺宝の数々。
本展の展示会場は第1会場・第2会場に分かれており、
- 第1章 東福寺の創建と円爾
- 第2章 聖一派の形成と展開
- 第3章 伝説の絵仏師・明兆
- 第4章 禅宗文化と海外交流
- 第5章 巨大伽藍と仏教彫刻
の全5章構成となっています。
東福寺は南北朝時代には京都五山の第四に列し、本山東福寺とその塔頭(たっちゅう)には中国伝来の文物をはじめ、建造物や彫刻・絵画・書跡など禅宗文化を物語る多くの特色ある文化財が伝えられています。国指定を受けている文化財の数は、本山東福寺・塔頭合わせて国宝7件、重要文化財98件、合計105件。
特に1章・2章では「南宋肖像画の極致」と称される《無準師範像》(国宝)など、円爾とその後継者・聖一派(しょういちは)ゆかりの禅宗美術の優品が並びます。
個人的に印象に残ったのは円爾の孫弟子で、東福寺第15代住職・虎関師錬(1278~1346)の書と伝えられる《虎 大一字》。「虎」の文字をあらわした書か、はたまた座した虎の絵か。まるでこれを見ている人間に「お前は何だと思う?」と問いかけているかのようです。
伝説の絵仏師・明兆の画力
本展の白眉となるのが、「画聖」とも崇あがめられた絵仏師・明兆による記念碑的大作《五百羅漢図》。現存全幅が修理後初公開となる本作は、水墨と極彩色が見事に調和した若き明兆の代表作で、1幅に10人の羅漢を表わし50幅本として描かれ、東福寺に45幅、東京・根津美術館に2幅が現存しています。本展はその全貌がはじめて明かされる貴重な機会となります(幅によって展示期間が異なります)。
隣には内容をユニークに解説した漫画が添えられており、トーハクならではの遊び心が発揮されているのもポイント。
また、明兆の円熟期の傑作として知られる《達磨・蝦蟇鉄拐図》も展示。シンメトリックな構成美と緻密な陰影描写、江戸絵画を先取りしたような明るく伸びやかな筆さばき・・・。中国絵画の名品を模写したものとされますが、明兆の類まれな画力と独創性を堪能することができる名品です。
巨大伽藍の圧倒的パワーに包まれる
「東福寺の伽藍面」を実物で体感できるのが第5章。巨大伽藍に相応しい特大サイズの仏像彫刻が立ち並び、そのスケールと荘厳さに圧倒されます。
修復後初公開となる四天王立像の《多聞天立像》や重要文化財の《迦葉(かしょう)・阿難(あなん)立像》をはじめ、手だけで2メートルという巨大さを誇る《仏手》にも注目。消失したという旧本尊の巨大さをしのべる貴重な遺例です。
本展の開催期間は5月7日(日)まで。禅宗文化の生彩、そして巨大伽藍の圧倒的パワーをぜひ会場で体感してみてください。
開催概要
会期 | 2023年3月7日(火)~5月7日(日)※会期中展示替えあり |
会場 | 東京国立博物館 平成館(上野公園) |
開館時間 | 9時30分~17時00分(入館は閉館の30分前まで) |
休館日 | 月曜日 ※ただし、3月27日(月)と5月1日(月)は開館 |
観覧料 | 一般 2,100円 大学生 1,300円 高校生 900円※本展は事前予約不要です。混雑時は⼊場をお待ちいただく可能性があります。 ※混雑時は入場をお待ちいただく可能性があります。 ※中学生以下、障がい者とその介護者1名は無料。入館の際に学生証、障がい者手帳等をご提示ください。 ※本展観覧券で、ご観覧当日に限り総合文化展もご覧いただけます。 (注)詳細は展覧会公式サイトチケット情報のページでご確認ください |
展覧会公式サイト | https://tofukuji2023.jp/ |
※記事の内容は取材時のものです。最新の情報と異なる場合がありますので、詳細は展覧会公式サイト等でご確認ください。また、本記事で取り上げた作品がすでに展示終了している可能性もあります。