ワクワク!ドキドキ!音楽とSTEAM教育を掛け合わせた体験型イベント「STEAM FESTIVAL」上野恩賜公園竹の台広場(噴水広場)にて6月27日(金)28日(土)の2日間開催!

上野恩賜公園竹の台広場(噴水広場)

~音楽とSTEAM教育を通じて、子供たちの創造力を育む教育イベントです。キッチンカーの出店やアーティスト公演なども実施~

公益社団法人東京青年会議所台東区委員会は、創造力を育みSTEAM教育を広めるため、上野恩賜公園竹の台広場(噴水広場)にて6月27日(金)28日(土)の2日間、音楽やプログラミングなどを通じてSTEAM教育に触れ合える、体験型イベントを開催します。

6月27日(金)は前日告知企画として、アイドルSAKURADOLLのライブを開催、28日(土)はアーティストによるオープニングライブ、シンガーソングライター遠坂めぐによるフリーライブ&サイン会&特典会、また台東区の小学生を対象とした、各種STEAM体験及び楽曲制作体験を開催します。
さらに2日間にわたり、キッチンカーが35店舗が集まる、子供も大人も楽しめる企画となっています。

 

【楽曲制作体験・STEAM体験・来場者特典のご案内】
各STEAM体験会に参加後、アンケートにお答えいただいたお子様には花やしきの入場チケットをプレゼント!
・楽曲制作体験(事前申し込み制):全員にプレゼント
・ロボットワークショップ、発明アイディアワークショップ(自由参加):先着180名様にプレゼント
また会場内に貼られているQRコードからアンケートにお答えいただいた来場者の方には、抽選で1,000名様に株式会社湖池屋さんのお菓子をプレゼント!

 

事業概要

イベント名 STEAM FESTIVAL~音と色でつなぐ未来のワークショップ~
日時 2025年6月27日(金) 11:00~20:00
2025年6月28日(土) 10:00~18:00
開催場所 上野恩賜公園竹の台広場(噴水広場)
東京都台東区上野公園
アーティスト
(詳細は下記にて)
■SAKURADOLL
■遠坂めぐ
■PALM
■金田すなほ
■結城亜美
参加費 無料
主催 公益社団法人東京青年会議所台東区委員会
後援団体 台東区、台東区教育委員会、東京商工会議所台東支部
協力団体 UUUM株式会社、株式会社ジーエムピー、株式会社STAR SEARCH LABEL、台東区立小学校PTA連合会、東洋大学Bbooth (50音順)
協賛企業 いちかわ興産株式会社、株式会社eNMUSUBi、株式会社オーテクノコーポレーション、株式会社Ogatomo、関東キタック販売株式会社、現役を応援する会一同、株式会社湖池屋、株式会社三善堂、在日本朝鮮青年商工会、株式会社シー・アイ・シー、株式会社CU、株式会社城北通信サービス、株式会社ときわ、株式会社No.1パートナー、農道楽、株式会社花やしき、株式会社フィスイノベーション、株式会社藤田建装、プライムファイナンシャルパートナーズ株式会社、株式会社ボンズトラスト、ユニプラス株式会社 (50音順)

タイムスケジュール

●6月27日(金)11:00~20:00

時間 コンテンツ
11:00~ キッチンカーエリアオープン
べらぼう江戸たいとう大河ドラマ館PR
18:30~ SAKURADOLL アーティストライブ公演
※SAKURADOLLのライブ公演時間については変更になる可能性があります。

●6月28日(土)10:00~18:00

時間 コンテンツ
10:00~ キッチンカーエリアオープン
金田すなほ 結城亜美オープニングライブ、総合司会
10:30~
10:30〜13:25
ロボットワークショップ
PALM 楽曲制作体験
14:00〜15:25 遠坂めぐ 楽曲制作講座
16:30~ 遠坂めぐ フリーライブ&サイン会&特典会

アーティスト紹介

SAKURADOLL

「Made in Japan to the world」をテーマに日本のアイドル文化の新たな風を世界に吹き込みSAKURADOLLの音楽とパフォーマンスで世界中に満開の桜を咲かせる。日本が誇る世界のアニメから、世界のアイドルへ情熱と輝きでエンターテイメントの新たな歴史を築きグローバルステージで日本の魅力を伝えていくことを目指している。

遠坂めぐ

ショート動画界におけるNo.1人気音楽系クリエイター/シンガーソングライター。 2022年2月末に投稿した「切れてるバターにキレてます!」がTikTok・YouTube Shortsでバズったことをきっかけに、日常での些細なストレスを軽快なリズムに乗せて歌う「キレてます!」シリーズがSNS累計再生6億回を超える大ヒット。 その功績が認められ同年末には、1年間で最も活躍した音楽クリエイターに贈られる「TikTok Awards 2022 Music部門大賞」受賞。 2023年夏にリリースした「もうすぐ花火はじまるよ」は人気インフルエンサーたちとのコラボ企画の影響力もあり累計1億回再生を超えるロングヒットを記録。 2024年1月にリリースした「明日君に会えるせいだ」はSNS関連動画再生数1.5億回超え、YouTube Shorts楽曲使用ランキングでウィークリー7位/デイリー最高3位を記録。 2024年12月にリリースした「赤点だらけの毎日でも」は、公開からわずか1ヶ月でMVが100万回再生突破・ショート動画での音源使用件数が1万件を超えハイスピードで楽曲が拡散されるなど、SNSを活用したセルフプロデュースで注目を集めている。 活躍はSNSのみに留まらず、数々のTV番組やラジオ番組にも出演。 ピアノの演奏技術も高く評価されており、フジテレビ系列「芸能界特技王決定戦TEPPEN ~ピアノ部門~」に3度出演。 アンタッチャブル山崎弘也のレギュラーラジオ番組・NACK5「エネクルpresentsまいにちザキヤマ」に準レギュラーとして出演中。 耳に溶け込んでいく声、一度聴いたら耳から離れないキャッチーな歌詞、日本人に馴染みやすいメロディを得意とするシンガーソングライター。

PALM

中学時代、姉の影響でクラブミュージックと出会い、アーティスト活動をスタート。同時に兄の影響でベースを手にし、高校時代にはアーティスト活動を本格的に展開。自身が主催するパーティやライブイベントの企画にも積極的に取り組み、アーティストとしての基盤を築く。その後、インターネットレーベルへの関心からDTMを始め、新潟のクラブ「プラネット」や「Yellow Pigs」を拠点にサブカルチャーイベントのアーティストとして活動。Okadadaやi-depといった著名アーティストとの共演を果たし、その実力を広く認知される。大学入学を機に作曲活動を本格化し、多彩なアーティストと共演。現在は音楽家として活動している。これまでにシングル6曲をリリースし、そのミュージックビデオはYouTubeで公開中。独自のスタイルでシーンに新しい風を吹き込んでいる。

金田すなほ

ミュージカルに憧れ、10歳より芸能界入り。歌やお芝居の勉強を始め、2015年より本格的にヴォーカルレッスンを開始。 2018年、アイドルグループ「すぴりたんと」でデビュー。2020年からは「Jewel☆Ciel」として活動し、4thシングル『僕らは』がオリコンデイリーランキング6位を獲得。2021年には「gran☆ciel」へ改名し、『Message!』でオリコンデイリーランキング1位を記録した。 2022年4月よりソロ活動をスタート。 2023年12月にはシングル『夢が叶うまで』をリリース。持ち前の明るさ、透明感のある歌声と確かな歌唱力を活かし、舞台・CM・YouTubeなど多方面で精力的に活動中。

結城亜美

幼少期から音楽に親しみ、エレクトーン歴25年。ポピュラーソングからジャズまで様々な楽曲を演奏し、最近ではキーター奏者としても活躍の幅を広げている。 カメラマンとして活躍している反面、自身もモデルとして写真集を出したり、司会業をしたりできるマルチタレント。

 

実施背景

昨今変化が激しい現代社会において、創造力課題解決力協調性などを育み、複雑な課題に対応できる人財育成が求められています。
そこで今回は、楽曲制作体験ライブ公演に加え、プログラミング発明を考えるワークショップなどのSTEAM教育を掛け合わせた体験イベントを開催。
参加者がさまざまな課題を見つけ、クリエイティブな発想で解決していくための手段を身につけられるきっかけを促す企画です。

STEAM教育とは、Science(科学)STechnoligy(技術)TEngineering(工学)EArt(芸術)AMathematics(数学)Mの頭文字を組み合わせた、5つの分野を横断的に学ぶ教育のことです。
一般的にSTEAM教育を学べる体験会は屋内で実施されることが多く、来場者数が限られることがあります。
そのため今回は、より多くの方がSTEAM教育に触れられる機会を提供できるよう、アクセスの良い上野恩賜公園竹の台広場(噴水広場)で実施する運びとなりました。

楽曲制作体験では、講師にアーティストのPALM氏人気YouTuberの遠坂めぐ氏を招き、iPadで制作の考え方や楽しさを学べます。
また発明アイディアワークショップでは、どういうものが世の中の役に立つ発明かを考える、創造力を育む力を促します。
そのほか、各アーティストによるライブ公演や、多くのキッチンカーも用意。
音楽STEAM教育体験会だけでなく、誰でも気軽に楽しめる無料イベントとなっています。

主催団体紹介

主催団体紹介 私たち公益社団法人東京青年会議所(略称「東京JC」以下本文中では、「東京青年会議所」と呼称) は1949年(昭和24年)、戦争の傷跡が街にも人々の心にも深く残る中、「新日本の再建は青年の仕事 である」という志を同じにする青年達によって築き上げられました。
以来、東京青年会議所は「明るい豊かな社会の実現」という理念を掲げ、様々な活動‧運動を行ってき ました。
また東京青年会議所は、人種、国籍、性別、職業および宗教の別なく、自由な個々の意志によ り入会したメンバーで構成されています。
日本の青年会議所は活動の基本を「個人の修練」、「社会への奉仕」、「世界との友情」におき、会員 相互の啓発と交流をはかり、公共心を養いながら地域との協働により社会の発展に貢献するために活動 し、社会的課題に積極的に取り組んでいます。
青年会議所におけるさまざまな実践トレーニングを経験した活動分野は幅広く、40歳をむかえ卒業し た卒業生を含め、地域のリーダーとして活躍するばかりではなく、政財界へも多くの人材を輩出してい ます。

 
問い合わせ先
〒101-0054
東京都千代田区神田錦町3-1 オームビル新館8階
TEL:03-6285-1515(事務局)
FAX:03-6285-1516(事務局)
公益社団法人東京青年会議所
台東区委員会 担当者 金子晃大
メールアドレス:akhrknk@gmail.com

【公益社団法人東京青年会議所】プレスリリースより

 

記事提供:ココシル上野


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「五大浮世絵師展―歌麿 写楽 北斎 広重 国芳」(上野の森美術館)取材レポート。浮世絵の頂点を極めたスターたちの代表作が多数

上野の森美術館

浮世絵黄金期を彩った5大スターの傑作が一堂に会する「五大浮世絵師展―歌麿 写楽 北斎 広重 国芳」が、上野の森美術館(東京・上野)で開幕しました。会期は2025年7月6日(日)まで。

先立って行われた報道内覧会のギャラリートークでは、本展の図録執筆者である川崎浮世絵ギャラリー学芸員の山本野理子さんが登壇。見どころを解説していただきましたので、展示の様子と合わせて紹介します。

展示風景

天明・寛政期に黄金期を迎えた、日本が誇る大衆美術である「浮世絵」で名を馳せた5人の絵師、喜多川歌麿、東洲斎写楽、葛飾北斎、歌川広重、歌川国芳。本展は、美人画、役者絵、風景画など、各分野で頂点を極めた彼らの代表作を中心に約140点の作品を展示し、その表現の特色と魅力を伝えるものです。

第1章「喜多川歌麿―物想う女性たち」

展示は絵師一人ずつに焦点を当てた5章構成となっており、まず登場するのは喜多川歌麿です。

喜多川歌麿《両国橋上橋下納涼之図(橋下の図)》寛政後期(1795-1800)頃

歌麿は、現在NHKで放送中の大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」でも活躍している、江戸きっての名物プロデューサー・蔦重(蔦屋重三郎)が見出した絵師として知られています。

蔦重と組み、当時役者絵で用いられていた人物の上半身にクローズアップする「大首絵」のスタイルを美人画にも導入。艶やかな女性のしぐさや想いを写した作品で一世を風靡した、美人画の第一人者です。

喜多川歌麿《五人美人愛敬競 兵庫屋花妻》寛政7-8年(1795-96)頃

展示では、着飾った艶姿より、ほつれ髪で手紙を読む遊女のオフショットを捉えた《五人美人愛敬競 兵庫屋花妻》など、日常の様子を描いた美人画が目立ちます。

女性に対する教訓を記した「教訓親の目鑑」シリーズでは、だらしない格好で酒を呷る「ばくれん」(すれっからしの女性)が登場。美人画では、庶民の憧れだった才色兼備の遊女や町で評判の看板娘といった当世の美人が描かれがちですが、歌麿はこのように、ある意味で正反対の属性の女性も区別なくモデルにしました。

喜多川歌麿《教訓親の目鑑 俗二云 ばくれん》享和2年(1802)頃

山本さんは「歌麿の美人画は、よく理想的な女性像だと表現されることが多いのですが、実はこうした悪女風の女性も得意なんです」とコメント。

家庭で遊ぶ弟を微笑ましそうに見守る姉、海岸で休息する海女、子に乳をのませる山姥など、歌麿はあらゆる女性の生態や風俗に関心を向け、それを網羅するかのように題材にしてきました。そうした多様な女性の魅力を、指先一つに至るまで背景のストーリーを想像させるような豊かな表現力で提示している点が、歌麿作品の大きな特長となっていると話しました。

喜多川歌麿《風流子寶合 大からくり》享和2年(1802)頃

ちなみに、先述の《五人美人愛敬競 兵庫屋花妻》に描かれた手紙には、「ひとまねきらい、しきうつしなし、自力画師哥麿」から始まる、歌麿の美人画絵師としての確固たる自負を窺わせる文章も見られます。崩し字が読める方はぜひ注目してください。

第2章「東洲斎写楽―役者絵の衝撃」

続く東洲斎写楽もまた、歌麿同様に蔦重に見出され、浮世絵の黄金期を彩った絵師の一人。寛政6(1794)年5月から翌年の1月までの10ヶ月間に約145点の錦絵を残したものの、その後忽然と表舞台から姿を消したため、経歴がほとんど明らかになっていないミステリアスな人物です。

個性的でインパクトの強い役者大首絵を数多く手掛けており、その作画期は取材した芝居の上演時期によって4期に分けられ、作風や仕様がきれいに分類できることが特徴です。本展に展示される写楽作品の半分以上は、とくに人気の高い第1期の大首絵で、これだけの点数が一同に揃うのはたいへんに希少な機会とのこと。

手前は東洲斎写楽《二代目嵐龍蔵の金貸石部金吉》寛政6年(1794)

山本さんが写楽作品の魅力の分かりやすい作例として挙げたのは、第1期作の《二代目嵐龍蔵の金貸石部金吉》です。

二代目嵐龍蔵は悪役を得意とした役者で、本図で描かれているのは金貸しの役どころ。袖をたくし上げて見得を切る役者の目の動き、力を込めた指の一本一本、真一文字に引いた口元にできたシワなど、鋭い観察眼による独特の写実表現に着目し、「ズームできるカメラも望遠鏡もない時代に、よくここまでというくらい細部まで描く。役者の演技の一瞬を正確に捉えようとしたのが写楽です」と述べました。

東洲斎写楽《尾上松助の松下造酒之進》寛政6年(1794)

《尾上松助の松下造酒之進》では、落ちぶれた浪人の伸びた月代に乱れた髪、うつろで落ちくぼんだ目の描写が際立っています。全体を暗い色彩でまとめることで、貧窮に陥った寂寥感を表現しているだけでなく、まるでまもなく殺されてしまう悲壮な運命をも描き出そうとしたかのようです。

東洲斎写楽《中山富三郎の宮城野》寛政6年(1794)

当時、他の絵師たちは役者を美化していましたが、写楽はたとえ女形であっても男らしい骨格をそのまま描くなど、美しさよりもリアリティや間近で舞台を望むような臨場感を重視していました。迫真の画面からは他の役者絵にはないエネルギーが伝わってきますが、あまりに真を極めようとする姿勢は、当時の役者本人やファンからの不評を買い、活動期が短命に終わった原因と言われています。

左から東洲斎写楽《大童山土俵入り 谷風、雷電、花頂山、達ヶ関、宮城野》、《大童山土俵入り 大童山文五郎》寛政6年(1794)

第3章「葛飾北斎―怒涛のブルー」

3人目は葛飾北斎(宝暦10~嘉永2年・1760~1849)です。19世紀後半に起こったジャポニズムでその名がヨーロッパ中に広まり、近年アメリカの写真情報誌『LIFE』が特集した「この1000年で最も重要な功績を残した世界の著名人100人」のアンケートでも日本人で唯一選出されるなど、世界で最も有名な日本人画家と評しても過言ではないでしょう。

葛飾北斎《仮名手本忠臣蔵 十段目》文化3年(1806)頃

北斎は90年に及ぶ生涯で、版本挿絵はもちろん、錦絵、摺物、肉筆画などあらゆる分野の仕事に着手し、風景・花鳥・人物に留まらない森羅万象を描き続けました。絵の総数は4,000図ともいわれる北斎の代表的な絵手本『北斎漫画』の尋常ではないデッサン力を見るだけでも、70年以上を画業三昧に励み、ついには「画狂老人卍」を名乗るに至ったその画歴の凄みが伝わってくるはずです。

葛飾北斎『北斎漫画』初~14編、文政11-明治11年(1828-78)

誰もが知る、富士をさまざまな視点で捉えた「冨嶽三十六景」シリーズを発表したのは70歳代の老境に入ってからですが、その前後を展示作品で概観すると、色彩が深く、豊かに変化していることがわかります。絵具の変化も理由でしょうが、何歳になろうと尽きない、北斎の探求心と向上心を感じさせるこうした変化も見どころです。

葛飾北斎《冨嶽三十六景 山下白雨》天保2年(1831)頃

中でも傑作とされる《冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏》は、遠景に富士の山容を構える海原で、狂ったように高く上がる波の飛沫が飛ぶ一瞬の様子を、大胆な構図で捉えています。

葛飾北斎《冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏》天保2年(1831)頃

山本さんは本図を例に出し、北斎作品の魅力の一つとして「視覚のトリック」を挙げました。

「北斎は、視線を誘導する効果をあえて作品に入れていると指摘されています。人々はこの絵を見たとき、まずは荒々しくせり上がった波に視線が向かうと思います。手前の波は三角形をしていて、よく見ると遠くの富士山と対になっているという呼応関係にあります。手前の三角から遠くの三角へ、鑑賞者の視点が自然に誘導されるように工夫されているんです」

葛飾北斎《冨嶽三十六景 五百らかん寺さざゐどう》天保2年(1831)頃

同様に、視線誘導の意図がわかりやすいのは《冨嶽三十六景 五百らかん寺さざゐどう》で、堂上の床板、屋根、欄干、そして参詣客の指先まで、さまざまな描線が奥にそびえる富士に集まっています。西洋の透視図法(遠近法)を得意としていた北斎の、幾何学的な構成力の巧みさが本図からも感じられるでしょう。

葛飾北斎《諸国名橋奇覧 三河の八つ橋の古図》天保4-5年(1833-34)頃
葛飾北斎《百物語 笑ひはんにや》天保2-3年(1831-32)頃

第4章「歌川広重―雨・月・雪の江戸」

続く歌川広重(寛政9~安政5年・1797~1858)は、デビュー当初こそ美人画や役者絵を中心に制作していましたが、出世作の「東海道五拾三次之内」シリーズで風景画の絵師としての地位を確固たるものにしました。

歌川広重《東海道五拾三次之内 日本橋 朝之景》天保4-5年(1833-34)頃

同シリーズは、江戸と上方を結ぶ東海道に設置された53の宿場に、日本橋と京都三条大橋を加えた55の風景を描いたもの。十返舎一九著の『東海道中膝栗毛』が起こした旅行ブームのあおりを受けて爆発的にヒットしました。風景画の名手として対比されることの多い北斎の「冨嶽三十六景」シリーズと、ほぼ同時期に発表されている点にも注目です。

歌川広重《東海道五拾三次之内 蒲原 夜之雪》天保4-5年(1833-34)頃

広重の風景画について、山本さんは次のように話します。

「風景画ではありますが、土着の人々や旅人、旅行の風俗、風情といったものも描かれていて、それが情趣感みたいなものを作り出しています。ただの風景画でもないし、ただの人物画でもない、ただの自然でもなくて、ただの人々の暮らしでもない。それらが一体となっているというところが広重の作品の良さです」

広重と北斎は、ともに無類の旅行好きだったといいます。自然や風土、そしてそこに生きる人々のもつ情趣を存分に生かした広重と、目に映る物の造形性を大胆に誇張した北斎。その眼差しや方向性の違いを比べてみるもの面白いでしょう。

歌川広重《月二拾八景之内 弓張月》天保3年(1832)頃
歌川広重《名所江戸百景 大はしあたけの夕立》安政4年(1857)

また、広重は各地の名所を描いた「名所絵」も得意としており、晩年の傑作と名高い「名所江戸百景」シリーズでは、風景画として異質な縦画面にも挑戦しています。

特に目を見張るのは《名所江戸百景 亀戸梅屋舗》で、近景に極端に拡大して描かれた梅の木の枝、その隙間に梅屋敷の全体的な景色を捉えることで、縦画面でも十分な遠近感を出しています。こうした構図は近像型構図と呼ばれ、晩年の広重が好んで用いていました。

歌川広重《名所江戸百景 亀戸梅屋舗》安政4年(1857)

このように広重作品は、旅人と同じ目線をとったり、鳥のように遥か高みから見下ろしたり、崖の険しさを表現するためにごつごつした岩肌をあえて画面中央に配したりと、作品ごとで構図に緩急をつけていることも大きな特長です。まるでドローン撮影したかのように想像を巡らせて描かれた縦横無尽な空間表現は、鑑賞者を飽きさせません。

第5章「歌川国芳―ヒーローとスペクタクル」

第5章は、歌川広重と同い年で幕末・明治期に活躍した歌川国芳(寛政9~文久元年・1797~1861)を特集。これまでと展示作品の雰囲気がガラリと変わり、スペクタクルな大活劇の様相を呈しています。

国芳は豪快な筆さばきによる躍動的な画面に、ダイナミックな人物描写と美しい色彩を織り交ぜた「通俗水滸伝」シリーズでブレイク。日本の英雄やヒーローを数多く手掛け、奇想天外で心躍る発想の武者絵や、反逆・諧謔精神あふれる風刺画で新境地を拓きました。

歌川国芳《通俗水滸伝豪傑百八人之壱人 浪裡白跳張順》文政末年(1827-29)頃

《通俗水滸伝豪傑百八人之壱人 浪裡白跳張順》はシリーズの中でも傑作と名高く、水軍の頭領である張順が敵の罠にかかり、無数の矢を浴びて壮絶な最期を迎える場面を描いたもの。睨みを利かせる表情、逆立つ髪の一本一本の描写が、死を覚悟した者の凄みを感じさせます。

なお、本作同様、国芳は作品の中で人物にたびたび派手な彫り物(刺青)を施していますが、それらがあまりに見事であったため、江戸では彫り物ブームが巻き起こったとか。

歌川国芳《小子部栖軽豊浦里捕雷》天保7-8年(1836-37) 頃

紙の継ぎ目を跨いだ巨大なドクロが印象的な《相馬の古内裏》は、山東京伝の読本(江戸で流行した挿絵付きの長編小説)に取材した作品。特徴的なワイドスクリーン(続き物を一つの大画面として扱う構図)の三枚続は国芳が得意とした手法です。

手前は歌川国芳《相馬の古内裏》 弘化年間 (1844-48) 頃

廃墟となった平将門の内裏の跡に、異類異形のものが出現している様子を描いていますが、読本の挿絵では小さいドクロが無数に出てくる図だったものを、独自の解釈で一つの巨大なドクロに変更。さらに三枚続で迫力を持たせている点に、国芳らしいクリエイティビティの一端が垣間見られます。

歌川国芳《酒田公時 碓井貞光 源次綱と妖怪》文久元年(1861)

活劇的な武者絵を得意とする国芳といっても、壮大なシーンばかりではありません。たとえば《酒田公時 碓井貞光 源次綱と妖怪》は、源頼光四天王らが悪事を企む妖怪たちと囲碁に興じている場面を描いたもの。難なく抑え込まれた哀れな妖怪たちと、厳めしくも何事もなかったかのような表情で囲碁を指す武士たちのユーモラスな対比にクスリと笑いがこぼれます。

《名誉 右に無敵左り甚五郎》は、江戸に名高い彫物師・甚五郎と彼を囲む彫刻作品を描いたもの。しかし、地獄変相図のどてら、芳桐印の座布団、傍らに侍らせている猫などのトレードマークが散らばっていることから、実は甚五郎に見立てた国芳本人が登場していることがわかります。

手前は歌川国芳《名誉 右に無敵左り甚五郎》嘉永元年(1848) 頃

さらに、周囲の仁王や関羽などの彫刻も、顔は役者の似顔絵風になっていると山本さんは指摘します。

「天保の改革で娯楽産業の取り締まりがあり、浮世絵師たちは役者絵や美人画を描くことを禁じられました。ですが、絵師たちはあの手この手を尽くして作品を制作し、特に国芳は非常に反骨精神が強い人だったので、改革が緩んだ後もこうして幕府をおちょくるかのように役者に似せた仏像を描いて、自分たちはこんなこともできるんだぞと見せつけました。庶民のための絵を描く庶民でありながら、こうして権力に抗う。それが国芳という絵師です」


「五大浮世絵師展―歌麿 写楽 北斎 広重 国芳」の開催は、2025年7月6日(日)まで。本展のキャッチコピーのひとつは「あなたの推しをさがせ!」となっています。浮世絵に詳しくない方も、ぜひ本展で浮世絵の頂点を極めた5大スターたちの傑作に触れ、お気に入りの絵師を見つけてみてください。

「五大浮世絵師展―歌麿 写楽 北斎 広重 国芳」概要

会期 2025年5月27日(火)~ 7月6日(日) ※休館日なし
開館時間 10:00〜17:00(入館は閉館の30分前まで)
会場 上野の森美術館(〒110-0007 東京都台東区上野公園1-2)
チケット 詳細は公式ページをご覧ください。
主催 上野の森美術館 / フジテレビジョン
お問い合わせ 050-5541-8600(ハローダイヤル、全日/9:00~20:00)
展覧会公式サイト https://www.5ukiyoeshi.jp/

※記事の内容は取材時点のものです。最新情報は展覧会公式サイト等でご確認ください。

 

記事提供:ココシル上野


その他のレポートを見る

「大佛師 松本明慶工房 仏像彫刻展 ~運慶の流れをくむ心と技~」

松坂屋上野店

2025年6月4日(水)→6月10日(火)10時~18時30分 ※最終日は17時閉場(入場は閉場の30分前まで)/松坂屋上野店 6階催事場 ※入場無料

松坂屋上野店では6/4(水)~10(火)、6階催事場にて「大佛師 松本明慶工房 仏像彫刻展」を初開催いたします。運慶・快慶の流れをくむ佛師であり、「現代の大佛師」と呼ばれる松本明慶氏が造りあげた、息をのむほど精緻を極めた魂宿る木彫り仏像三百余体を一堂に集め、展示・販売いたします。

松本明慶氏

大佛師 松本明慶
1945年京都生まれ。1962年の17歳から佛師を志して63年。現在は京都大原野において、日々みほとけのお姿を彫り続け、艱難辛苦をかかえた現代を生きる人々の光明となれと打ち込まれています。また、2024年大本山増上寺の開宗850年御忌大会において徳川家康公像及び厨子制作安置など、ますますご活躍されています。

 

作品の一例

毘沙門天
(楠/截金/7寸/総高42.0cm)

毘沙門天(楠/截金/7寸/総高42.0cm)

 

普賢菩薩
(楠/截金/半跏3寸/総高34.0cm)

普賢菩薩(楠/截金/半跏3寸/34.0cm)

 

大黒天 (ねずみ付)
(楠/3寸2分/総高20.0cm)

大黒天 (ねずみ付)(楠/3寸2分/総高20.0cm)

 

十一面千手観音菩薩
(白檀/座2寸5分/総高27.0cm)

十一面千手観音菩薩(白檀/座2寸5分/総高27.0cm)

 

白衣観音菩薩
(桧葉/彩色/6寸/総高37.0cm)

白衣観音菩薩(桧葉/彩色/6寸/総高37.0cm)

 

[浄土宗] 阿弥陀如来
(楠/5寸/総高30.0cm)

[浄土宗] 阿弥陀如来(楠/5寸/総高30.0cm)

 

不動明王
(沈香/プラチナ截金/2寸5分/総高13.0cm)

不動明王(沈香/プラチナ截金/2寸5分/総高13.0cm)

 

鬼 (魂)
(桜/2寸5分/総高23.0cm)

鬼 (魂)(桜/2寸5分/総高23.0cm)

 

童観音 (カエル付)
(白檀/1寸1分/総高12.0cm)

童観音 (カエル付)(白檀/1寸1分/総高12.0cm)

 

香合仏
香合とはお香を入れる器で、その内側に御仏が刻み込まれたもの。生まれ年の干支に因んだ守護仏や信仰している仏様など、小さくて携帯に便利な香合仏は、お守りとしてお持ちいただけます。

香合仏 普賢菩薩
(白檀/截金/直径6.0cm)

香合仏 普賢菩薩(白檀/截金/直径6.0cm)

 

香合仏 大日如来
(白檀/截金/直径6.0cm)

香合仏 大日如来(白檀/截金/直径6.0cm)

 

※期間中、松本明慶工房スタッフが常駐し、展示品のほか、特別注文も承ります。
※古い仏像の修理、修復のお見積もりやご相談を無料にて承ります。


大佛師 松本明慶工房 仏像彫刻展 ~運慶の流れをくむ心と技~
会   期: 2025年6月4日(水)→10日(火)
会   場: 松坂屋上野店 6階催事場  入場料:無料
営 業 時 間: 10時~18時30分 ※最終日は17時閉場 ※入場は閉場の30分前まで
特設ページ: https://www.matsuzakaya.co.jp/ueno/topics/250604_matsumotomyokei.html

 

 

【株式会社大丸松坂屋百貨店】プレスリリースより

記事提供:ココシル上野


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【上野の森美術館】「生誕100年 朝倉響子展」取材レポート。洗練された女性像を中心に選りすぐりの12点を紹介

上野の森美術館
《リサ》1994年、ブロンズ

現代具象彫刻を代表する芸術家・朝倉響子(1925-2016)の生誕100年を記念した個展「生誕100年 朝倉響子展」が、2025年5月11日(日)から 5月21日(水) までの期間、上野の森美術館ギャラリーで開催されました。入場無料。


朝倉響子は、明治から昭和にかけて日本の彫刻界をけん引し、優れた自然主義的写実表現で知られる彫刻家・朝倉文夫の次女。

父が主宰する朝倉彫塑塾で彫刻を学び、1942年に第5回新文展で初入選を果たします。日展で特選を重ね、1952年には26歳の若さで最年少かつ初の女性審査員となるも、男性社会やさまざまなしがらみから決別するように日展を脱退。その後は自由な立場から、洗練された都会的な女性像を数多く生み出し、自身の様式を確立します。晩年まで第一線で精力的に活動し、2016年に90歳でこの世を去りました。

本展は、没後に遺族から台東区に寄贈された作品群の中から選りすぐりの12点、主に1970年以降にブロンズで制作された作品を紹介。朝倉響子の生誕100年という節目にあたり、作家の魅力をあらためて知ってもらおうと企画されたものです。なお、上野の森美術館ギャラリーは、生前の朝倉響子が最後に個展を開催した会場でもあります。

エントランスで来場者を出迎えた《アリサ》2005年、ブロンズ
展示風景

本展を案内してくださった朝倉彫塑館(※)の主任研究員・戸張泰子さんによると、朝倉響子は作品のモデルに並々ならぬこだわりを持っていたそうで、ときには選定に数年かけたこともあったとか。眼鏡にかなった人物の多くは外国人やハーフの若い女性で、小顔で手足が長い、スタイリッシュな体型をしているのが特徴です。

(※)…朝倉文夫が台東区谷中に構えたアトリエ兼住居であり、朝倉響子もそこで父から彫刻の基礎を学びました。現在は美術館として一般公開されています。

《ツキー》1977年、ブロンズ

精悍な顔立ちに引き込まれる《ツキー》は、シリーズで3点を展示。全身像の1点はダンスをしているのか、不思議な姿勢をとり、その研ぎ澄まされたプロポーションの美しさを遺憾なく伝えています。躍動感のある独特の構えに見られる、張りつめた下半身と弛緩する両腕という対称的な筋肉の表現や、つま先立ちを叶えるバランス感覚などに、彫刻家の確かな技量が感じられます。

手前は《ツキー》1978年、ブロンズ

大きな帽子を目深に被ったエレガントな《帽子》は、朝倉響子が特に気に入っていたと思われる作品のひとつ。正面からは表情が窺えませんが、胸のあたりで開かれた美しい手の表情が作品へ魅力的に華を添えており、鑑賞する目線の高さや角度を変えると印象も多彩に変化します。

《帽子》1976年、ブロンズ

戸張さんによれば、おおよそ本作以降、こうした手の表現が朝倉響子作品のアクセントになっていったのではないかとのこと。

「彫刻家の佐藤忠良は“確かに手という奴は、目立ちたがり屋で、こっちがちょっと気を許すと、一人歩きのおしゃべりをして俗な彫刻になってしまうのである。”と書いています。しかしながら、《帽子》などに見られる手の表現を効果的に用いた響子作品においては、作品に対峙する私たちと対話するような時間と空間を生みだしているように感じます」

手前は《クリスティン》2000年、ブロンズ

会場でひときわ目を引いたのは、朝倉響子作品には珍しい男性像であり、歌手の布施明氏をモデルにした《F》(後に《憩う》に改題)です。忙しく活動する青年歌手が少しの空き時間にテラスで休憩している姿をイメージした作品で、1979年に第7回長野市野外彫刻賞を受賞。黒い台から足の一部がはみ出しているのは、リラックスしている心のイメージを示そうとした彫刻家の意図であるとのこと。

《F(憩う)》1978年、ブロンズ

余談ですが、朝倉響子作品は日本全国のパブリック・スペースに数多く点在し、本作も長野県長野市の城山公園に設置されています。《憩う》というタイトルがピッタリの緑広がるのどかなロケーションで、石の台座から地面につま先を伸ばし、まるでピクニック中であるかのようにのびのびとくつろぐ姿は、鑑賞者の精神にも余裕を与えてくれそうです。

《リサ》1994年、ブロンズ

会場の一番奥には、本展のメインビジュアルにも選ばれた《リサ》が展示されていました。女性の自然な立ち姿を彫刻作品に昇華したもので、その特長は360度、どの角度から見ても“隙がない”ことだと話す戸張さん。

「多くの場合、作品に正面があるといいますか、作品と対峙すると、彫刻家が見せたいのはこの面だな、というのがあります。響子先生の場合は、作品をどの角度から見てもポーズが決まっている。人間にもあるような隙が響子作品にはないんです。それに気づかせてくれるのが本作です。彫刻というものが響子先生にとってどのような存在なのか、その答えのひとつが提示されている作品なのかなと考えています」

《リサ》1994年、ブロンズ

また、戸張さんは本作の足元にも注目してほしいと話しました。

足2本で立たせて彫刻を成立させることは、実はかなり技量が必要なのだそうです。よく、足元の地面まで作品と一体化した彫刻作品を目にすることがあるかと思います。あれは“地余(じあま)”といって、作品の重心を調整する重りのような役割も果たします。

「ある彫刻家の話では、“地余”を設けるとバランスが調整しやすいらしいのですが、本作にはそれがない。難しいことをさらりとやってのけているのが響子先生のすごいところですね。本作は粘土で作った原型から石膏で型を取り、ブロンズを流し込んで仕上げています。人間と同じように立たせ、粘土でかたちやバランスをとって完成に至るためには、人体研究が不可欠です。そうした過程を想像すると、スタイリッシュな響子作品は、観察眼と卓越した技術力の上に成り立っていることがわかると思います」

作品全体を見渡すと、それなりに制作から年代が経過していますが、まったく女性像に古さを感じないことに驚きます。正しく芸術作品として永遠性を獲得するに至った理由の一つには、肉体美を生かしながらシンプルにまとめられたファッションを挙げてもいいでしょう。ジーンズのポケットに指を入れ、凛とした表情を浮かべつつも、かっこつけ過ぎてはいない。自然体で自由な女性像は、まだまだ男性中心だった芸術界で、父の庇護から離れて奮闘した朝倉響子の姿と重なるようにも感じます。

数が少ないという抽象彫刻も出展されていました。《原題不明》制作年不詳、FRP

最後に戸張さんは、朝倉響子作品の魅力について次のような見解を示しました。

「朝倉文夫先生の作品は高い位置に設置されがちで、見上げて鑑賞する作品が多いです。反対に、響子先生の作品は見る者と同じ高さに設置されることが多いですね。空間と作品が一体化して、そこに私たちも溶け込んでいくような気安さ、距離感の近さがある。それが大きな魅力となっているから、今でも屋外のパブリック・スペースに先生の作品が設置され、人々に親しまれているのだと思います」

一種の清涼剤のように、街の風景に爽やかな風を吹かせる朝倉響子の彫刻群。本展を見逃してしまったという方も、ぜひ都内にも多数点在する朝倉響子作品を探して、その溌剌とした雰囲気と普遍的な美しさに触れてみてください。

 

なお、朝倉彫塑館では2025年9月13日(土)から12月14日(日)の期間、特別展として「生誕100年 ASAKURA Kyoko」の開催が決定しています。同館において初めて朝倉文夫と響子の父娘が創り出す彫刻空間が現出するとのことで、詳細は朝倉彫塑館公式HPをご覧ください。

【参考】過去の展覧会の記事を公開しています。
朝倉文夫没後60年特別展「ワンダフル猫ライフ 朝倉文夫と猫、ときどき犬」
(会期:2024年9月14日(土)~12月24日(火))

 

「生誕100年 朝倉響子展」概要

会場 上野の森美術館ギャラリー
会期 2025年5月11日 (日) 〜 5月21日 (水)
開館時間 10:00〜17:00
入館料 無料
美術館公式HP https://www.ueno-mori.org/

朝倉彫塑館(台東区谷中7-18-10)

開館時間 9:30~16:30(入館は16:00まで)
休館日 月曜日・木曜日(祝休日は開館)
入館料 一般500円/小・中・高校生250円
TEL 03-3821-4549
朝倉彫塑館HP https://www.taitogeibun.net/asakura/

※記事の内容は取材時のものです。


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【東京国立博物館 平成館】特別展「蔦屋重三郎 コンテンツビジネスの風雲児」取材レポート

東京国立博物館

江戸時代の傑出した出版業者である“蔦重”こと蔦屋重三郎(1750~97)。その蔦重を主人公にした2025年の大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」と連携した特別展「蔦屋重三郎 コンテンツビジネスの風雲児」が、東京・上野の東京国立博物館で開催中です。会期は2025年6月15日(日)まで。

※会期中、一部作品の展示替えがあります。
前期展示:4月22日(火)~5月18日(日)
後期展示:5月20日(火)~6月15日(日)

歌麿や写楽を見出した江戸のメディア王、蔦屋重三郎

蔦重は寛延3年(1750)、幕府公認の遊廓である吉原の生まれ。貸本屋から身を起こし、版元として武家や富裕な町人、人気の役者、戯作者、絵師のネットワークを広げてメディアミックスを展開し、江戸の出版業界にさまざまな新機軸を打ち出した人物です。

時流をつかみながら黄表紙や洒落本、狂歌本、浮世絵などあらゆる出版物を手掛け、数々のベストセラー作品を輩出。現在では世界に冠たる日本の芸術家とみなされる浮世絵師、喜多川歌麿や東洲斎写楽をプロデュースしたことでも知られています。

本展は、前期・後期合わせて約250件の作品を通じて、時代の風雲児たる蔦重の活動を追いながら、彼が創出した価値観や芸術性を体感するものです。

第1章「吉原細見・洒落本・黄表紙の革新」

第1章の「吉原大門」

展示は全3章に附章を加えた構成になっており、第1章のエントランスでは、遊廓・吉原への唯一の入場口だった「吉原大門」が来場者を出迎えます。

これは大河ドラマ「べらぼう」の撮影で実際に使用されたセットであり、制作に当たっては歌川豊春、歌川国貞、歌川広重らの浮世絵が参照されたとのこと。門の先には吉原のメインストリート「仲之町」を模した空間が広がり、立ち並ぶ桜や常夜灯が春の風情を演出しています。

第1章 展示風景
歌川豊春筆《新吉原春景図屛風》天明(1781-89)後期~寛政(1789-1801)前期 個人蔵
重要文化財 平賀源内作《エレキテル》 江戸時代・18世紀 東京・郵政博物館 
※前期展示(後期は複製を展示)

第1章には、蔦重が出版人として活動する出発点となった吉原のガイドブック『吉原細見』が展示されています。

もともとは別の版元が手掛けていた『吉原細見』は、変化の激しい吉原の情報の精査が追い付いていないなど、多くの問題を抱えて信用を落としていました。
比較して、最初の蔦重版『吉原細見』である『籬の花』では、吉原育ちの情報網を生かして最新の情報にアップデートしたのはもちろん、通りの左右に並ぶ妓楼を本紙の上下で向かい合わせ、手に持ちながら街歩きができるレイアウトに改良。また、2頁分の情報を1頁にまとめるなどコストダウンも実現し、斜陽だった吉原に多くの客を呼び込みました。

出版活動全体を通して人々が楽しむものを追い求め続けた蔦重ですが、この時点ですでに、消費者視点が徹底していたことがうかがえます。

山東京伝序『新吉原細見』寛政2年(1790)正月 東京都江戸東京博物館
※前期展示

展示では、新旧の『吉原細見』の変化を見比べることができるほか、当代随一の人気戯作者であった山東京伝に序文をまかせるなど、商品価値を高めるためさまざまな試みをしていた点についても取り上げています。

紅塵陌人作/北尾重政画『一目千本』安永3年(1774)7月 大阪大学附属図書館忍頂寺文庫
※会期中場面替えあり

遊女を生け花に見立てた遊女評判記『一目千本』(1774)は、蔦重が初めて独自に手掛けた出版物。各妓楼の遊女たちが四季折々で琴や書画、生け花など芸事や座敷遊びにいそしむ姿を描いた錦絵本『青楼美人合姿鏡』(1776)は蔦重が企画したもので、人気絵師・北尾重政と勝川春章の合筆です。

どちらも描かれた遊女やその贔屓客、妓楼主などが出資したものと目されており、こうした自らの懐を傷めない形で制作された「入銀物」は、蔦重の主なビジネスモデルの一つとなっていきました。

北尾重政・勝川春章画『青楼美人合姿鏡』安永5年(1776)正月 東京国立博物館
※会期中場面替えあり
手前は礒田湖龍斎筆《雛形若菜初模様 丁字屋内ひな鶴》安永4年(1775)頃
東京国立博物館 ※前期展示

出版人として優れた手腕を発揮した蔦重は、江戸で流行した富本節という浄瑠璃の正本(歌詞を節つきでまとめた本)を独占出版したり、寺子屋などで使われた初等教科書である往来物を数多く手掛けたりと、手堅い定番商品で資金力をつけていきます。

現在確認できる最古の蔦重版富本正本。中村重助作『夫婦酒替奴中仲』安永6年(1777)
東京大学教養学部 国文・漢文学部会 黒木文庫  ※会期中場面替えあり

一方で、人気の作家や絵師を抱え、大衆文芸である黄表紙や洒落本といった戯作の出版にも着手。展示ではその例として、戯作界に蔦重の名を知らしめるきっかけとなった朋誠堂喜三二作の『見徳一炊夢』(1781)や、寛政の改革による出版統制の中で制作された、『浦島太郎』の後日譚を描いた山東京伝によるパロディ作品『箱入娘面屋人魚』(1791)などが紹介されています。

第2章「狂歌隆盛──蔦唐丸、文化人たちとの交流」

第2章では、天明期(1781-89)を中心に江戸で一世を風靡した狂歌(和歌をパロディし、世相に風刺や皮肉を盛り込んだ短歌の一種)と蔦重の関わりに注目。

江戸を謳歌する狂歌を詠む文化は、教養ある武士階級の戯れとして始まりました。寛政の改革によって町人や役者、絵師らさまざまな階層の人々へ広まっていくなかで、蔦重も狂歌師「蔦唐丸」として参入。文芸活動を行う一方で、出版人としても、読み捨てされていた狂歌を出版物としてまとめた狂歌本に活路を見出します。大田南畝や唐衣橘洲、朱楽菅江といった当代一流の文化人たちと交流しながら、流行の発信源であった吉原からブームを牽引していきました。

さらに蔦重は、文字だけの世界であった狂歌本に絵を加えた新ジャンル、狂歌絵本を開拓し、一手に刊行します。狂歌絵本のうち、自分の名を広めたい裕福な狂歌師などが出資したという入銀物は、多色摺による華やかさ、雲母摺や空摺などの技法も備えた芸術作品といえる豪華な仕様になっていました。

宿屋飯盛撰/喜多川歌麿画『画本虫撰』天明8年(1788)正月 千葉市美術館 
※前期展示

本章の見どころは、蔦重がその才能を見出し、専属絵師に近い起用をした喜多川歌麿が挿絵を担当した狂歌絵本。歌麿の狂歌絵本三部作と呼ばれる『画本虫撰』(1788)、『潮干のつと』(1789)、『百千鳥狂歌合』(1790)はそれぞれ虫、貝、鳥をテーマとしており、歌麿の写生描写の精度の高さや確かな観察眼を感じることができます。

赤松金鶏撰/喜多川歌麿画『百千鳥狂歌合』寛政2年(1790)頃 千葉市美術館 
※前期展示

また、ここでは歌麿畢生の作とされる枕絵(春画)本の『歌まくら』(1788)も展示。本展の企画担当である松嶋雅人氏(東京国立博物館 学芸企画部長)によれば、創立150年を超える同館の歴史のなかで、枕絵が展示されるのは今回が初めてとなるそう。

喜多川歌麿画『歌まくら』(部分)天明8年(1788) 東京・浦上蒼穹堂 
※前期展示(後期は別本を展示)

横大判の錦絵12枚に、修羅場や駆け引きなど茶屋での男女の細やかな機微が描かれた本作の中で、とりわけ秀美とされるのは「茶屋の二階座敷」の図です。(画像は部分)
忍ぶ恋を描いたものですが、女は後ろ姿で表情がわからないものの、頬を撫でるしぐさに男への情を感じさせる一方で、女の髷の下にのぞく男の右目は冷静で醒めているようにも見えるという、男女の織りなす思惑、その一瞬のリアリズムは見事というほかありません。

本図について、松嶋氏は「歌麿がどういった想いでこの絵を描いたかは定かではありませんが、見る人によって、二人の感情面がさまざまに思い描ける。それだけ重層的で内容の深い絵なのではないか」との見解を示しました。

第3章「浮世絵師発掘──歌麿、写楽、栄松斎長喜」

第3章は、蔦重の出版業の後半、寛政期(1789-1801)に浮世絵版画へ進出してからの活動を追うもの。西村屋与八や若狭屋与市など他の版元から刊行された作品も含め、浮世絵黄金期と呼ばれる18世紀末の浮世絵界を代表する名品が一堂に揃います。

歌川豊国筆 《役者舞台之姿絵 まさつや》寛政6年(1794)
東京・公益財団法人平木浮世絵財団 ※前期展示
鳥居清長筆《子宝五節遊 上巳》寛政6~7年(1794~95)頃 東京国立博物館 
※前期展示

蔦重は、喜多川歌麿、東洲斎写楽、栄松斎長喜といった名だたる絵師たちを発掘し、彼らの魅力を最大限に生かした浮世絵を企画・出版します。当時の浮世絵はさまざまな版元が新機軸を打ち出していましたが、蔦重版の作品を特徴づけるのは、全身像が一般的だった美人画に、役者絵で用いられていた人物の顔を大胆にクローズアップする「大首絵」の構図を取り入れたことでした。

左は喜多川歌麿筆《当世踊子揃 鷺娘》寛政5~6年(1793~94)頃 東京国立博物館 
※前期展示

美人画の第一人者である歌麿は蔦重と組み、「大首絵」の手法で人物の表情や仕草へ細やかに目配せし、心情までも感じさせる表現が人気を博しました。また、遊女が中心だった美人画において、市井の女性たちを主題とした作品の制作も開始します。

喜多川歌麿筆《婦女人相十品 ポッピンを吹く娘》寛政4~5年(1792~93)頃
東京国立博物館蔵 ※前期展示
喜多川歌麿筆《高名三美人》寛政5年(1793)頃 東京・公益財団法人平木浮世絵財団 
※前期展示

たとえば、《高名三美人》(1793)は難波屋のおきた、高島おひさ、富本豊雛という寛政期に実在した評判の看板娘たちを描いたもの。一見同じような顔に見えますが、よく観察すれば眉や目じり、鼻、輪郭線などでわずかに個性を捉えた似顔絵であることがわかるでしょう。

美人画はその時代ごとの理想の顔や体形で描かれることが一般的であったため、ある意味で絵空事の世界にリアリズムを持ち込んだこの試みは、大変画期的なものでした。

右は栄松斎長喜筆《井筒中居かん 芸子あふきやふせや》寛政4~5年(1792~93)頃
東京国立博物館 ※前期展示
栄松斎長喜筆《四季美人 雪中美人と下男》寛政4~6年(1792~94)頃 東京国立博物館 
※前期展示

第3章の終わりでは、東洲斎写楽が大きく取り上げられています。写楽は日本を代表する浮世絵師の一人ですが、実はその活動期間はわずか10ヶ月ほど。彗星のごとく江戸に現れ、140点以上の作品を残して忽然と姿を消したミステリアスな人物です。

蔦重が役者絵独占を目指して見出したスターであり、有名な作品群もすべて蔦重が出版したもの。歌麿の美人画に続き役者大首絵でも成功を収めるため、芝居興行の演目を網羅した、黒雲母摺の豪華な大判錦絵28枚の一挙刊行で華々しくデビューさせています。

左から《三代目大谷鬼次の江戸兵衛》、《初代市川男女蔵の奴一平》
ともに重要文化財 東洲斎写楽筆 寛政6年(1794) 東京国立博物館蔵 ※前期展示

誰もが一度は目にしたことがあるだろう《三代目大谷鬼次の江戸兵衛》(1794)もそのうちの1点。「恋女房染分手綱」の一場面、奴一平から用金を奪うため襲い掛かろうとする江戸兵衛を描いたもので、特徴的な手の構えは上着を脱ぎ棄てようとする瞬間を捉えています。対になる《初代市川男女蔵の奴一平》(1794)の悲壮な表情と合わせて、黒雲母摺の暗い背景とマッチする非常に緊迫した雰囲気を漂わせています。

重要文化財 東洲斎写楽筆《三代目佐野川 市松の祇園町の白人おなよと市川富右衛門の蟹坂藤馬》寛政6年(1794) 東京国立博物館 ※前期展示
重要文化財 東洲斎写楽筆《四代目松 本幸四郎の山谷の肴屋五郎兵衛》
寛政6年(1794)東京国立博物館 ※前期展示

一般的に写楽の画風はデフォルメだといわれますが、役者自身が隠したいであろうシワやほうれい線はもちろん、女役でも容赦なくごつごつした骨格を描くなど、顔の特徴を容赦なく暴き出しているため、実のところは先進的なリアリズム表現が特徴だといえそうです。

当時、他の絵師たちは役者を美化して描いていました。蔦重はこうした写実的な表現が新しいトレンドになると睨んでいたことが想像できますが、歌舞伎を愛する多くの人々は、贔屓の役者が演じる役割こそに夢を抱くもの。あまりに真に迫りすぎた写楽の絵は、ファンのみならず役者自身からも不評となり、流行には至りませんでした。

そうした顛末はともかく、今を生きる人々の内面を映し出すこうした錦絵は、版元・蔦重の、そして浮世絵の人物表現の一つの到達点を示しています。

附章「天明寛政、江戸の街」

附章 展示風景

蔦重が書店兼版元「耕書堂」を構えた18世紀後半の江戸は、経済や文化が成長し、大江戸と呼ぶべき魅力あふれる都市へと発展した時期にあたります。

附章では、当時の日本橋界隈の街並みを大河ドラマ「べらぼう」の美術チームが再現。日本橋での春夏秋冬を表したCG映像のほか、ドラマで使われた小道具や設定資料も展示し、江戸の文化をどのように物語に取り入れたのかを紹介しています。

なお、附章のみ撮影可能で、建物内には実際に入ることができます。

附章 展示風景
附章 展示風景
附章 展示風景

江戸の空気感を可能な限り感じられるような設えにしたという本展。ドラマでは毎週のように蔦重が手掛けた出版物が登場しますが、会場にはそのオリジナルが多数展示されていますので、熱心にドラマをご覧になっている方ほど多くの発見があるかもしれません。

特別展「蔦屋重三郎 コンテンツビジネスの風雲児」概要

会場 東京国立博物館 平成館
会期 2025年4月22日(火)~ 6月15日(日)
※会期中、一部作品の展示替えがあります。
開館時間 午前9時30分 ~ 午後5時
※毎週金・土曜日は午後8時まで開館
※入館は閉館の30分前まで
休館日 月曜日
観覧料 展覧会公式サイトにてご確認ください。
主催 東京国立博物館、NHK、NHKプロモーション
お問い合わせ 050-5541-8600(ハローダイヤル)
展覧会公式サイト https://tsutaju2025.jp/

※記事の内容は取材時点のものです。最新情報は展覧会公式サイト等でご確認ください。


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もっと身近にミュージアムを体験しよう!今年も上野ミュージアムウィークが堂々開催決定!

5月9日(金)~5月25日(日)は、上野エリアのミュージアム&人気スポット&グルメなど!文化・芸術を楽しみながらおトクにまちを巡るスペシャルウィーク!

上野エリアでは、5月18日の “国際博物館の日” にちなみ、上野恩賜公園周辺にある博物館や美術館、動物園など 13 施設と、上野のれん会の加盟店が協力し、「上野ミュージアムウィーク」が開催されます。今年も昨年に続き大好評でしたデジタルスタンプラリーも継続して行われ、リニューアルされたばかりの新スポットしたまちミュージアムも加わり、より魅力的なスペシャルウィークとなります。毎年恒例の “まちのお楽しみ” クーポンと合わせ、上野全体が芸術にあふれたテーマパークになる特別な時間をフルにお楽しみください。

やはり今回も一番の注目は5月18日 “国際博物館の日” に行われる “無料観覧” です。当日は東京国立博物館、国立科学博物館、国立西洋美術館、旧東京音楽学校奏楽堂、したまちミュージアムの5館の常設展示(※東京国立博物館は東博コレクション展が対象です)が無料観覧できます。

そして、もうひとつの目玉が、デジタルスタンプラリー!上野公園内の文化施設から上野商店街の各スポットまで実に15箇所のスタンプポイントが上野エリアに出現します!

上野駅の交番跡地をリノベーションし誕生したギャラリー CREATIVE HUB UENO “es”(上野駅)や新進気鋭のアーティストが揃うロイドワークスギャラリー、アートの展示だけでなく演劇も頻繁に開催されるバズチカ(シノバズブルワリー ひつじあいすの地下)、若手アートクリエイターが集うRoom101(花園アレイ)など、公園内の文化施設だけでなく、まちの中でもアートを感じられるスポットもラリーポイントとなります。

国際博物館の日とスタンプラリーともにアートのまち上野の風情をぜひお楽しみください。

スタンプラリーの特典は、スタンプ0か所で上野エリアのグルメ、ショッピングのお店で使える杜まちクーポン、3か所でクリエーターコラボデジタルアート作品、7か所で参加文化施設各館の景品の抽選に応募する権利が得られます。15か所回れば7か所の景品の当選確率は2倍になります。ぜひコンプリートを目指してみてください!

 

■開催概要■
「国際博物館の日」記念事業2025 上野ミュージアムウィーク
開催期間:2023年5月9日(金)~5月25日(日)
会場(参加施設・団体):東京国立博物館/国立科学博物館/国立西洋美術館/東京藝術大学大学美術館/東京都美術館/東京都恩賜上野動物園/上野の森美術館/台東区立旧東京音楽学校奏楽堂/旧岩崎庭園/国立近現代建築資料館/国立国会図書館国際子ども図書館/東叡山寛永寺/台東区立したまちミュージアム/上野のれん会参加店舗(順不同)
※会期中に休館日あり
主催:上野ミュージアムウィーク実行組織連盟
共同主催:上野のれん会
協賛:(一財)全国科学博物館振興財団
協力:東京都東部公園緑地事務所、台東区、(公財)台東区芸術文化財団
公式サイト:http://www.ueno-mw.com/

 

■【ueno杜まちふらり】上野ミュージアムウィーク2025~国際博物館の日~■
5月9日(金)~5月25日(日)の間、デジタルスタンプラリーが開催されます。下記の参加施設内にスタンプポイントが出現します。

【チェックポイント紹介】
1.東京国立博物館
2.国立科学博物館
3.国立西洋美術館
4.国立国会図書館国際子ども図書館
5.東京都美術館
6.上野の森美術館
7.旧東京音楽学校奏楽堂
8.東京藝術大学大学美術館
9.東叡山寛永寺 根本中堂
10.旧岩崎邸庭園
11.したまちミュージアム
12.ロイドワークスギャラリー
13.CREATIVE HUB UENO “es”(JR上野駅)
14.バズチカ
15.Room101(花園アレイ)

 

【利用方法】
お手持ちのスマートフォンにでジタルスタンプラリーfurariをダウンロード。スタンプラリー加盟の参加施設の指定の場所に行き、スタンプをゲットする。

スタンプ0個・・・・・上野エリアのグルメ、ショッピングのお店で使える杜まちクーポン
スタンプ3個・・・・・藝を育むまち同好会クリエーターコラボデジタルアート作品
スタンプ7個・・・・・参加各館の賞品
スタンプ15個・・・・・参加各館の賞品(当選確率2倍)

※賞品の発送は、ミュージアムウィーク終了後1から2か月後に当選者に届きます。

 

★スタンプ0個
上野エリアのグルメ、ショッピングのお店で使える杜まちクーポン
うなぎ、焼肉、洋食、甘味から婦人服、バッグ、スカジャンまで
幅広く使えるスペシャルクーポンをこの機会にぜひご利用ください。

デジタルクーポンが使える店舗・施設一覧
https://ueno-morimachi.jp/coupon

★スタンプ3個
クリエーターコラボデジタルアート作品
上野界隈を中心に活動する若手アーティスト支援団体・藝を育むまち同好会の若手アーティスト5名が制作したデジタルアート作品を配布します。

★スタンプ7個
参加各館の賞品一覧

〇東京国立博物館賞
・東博コレクション展招待券+オリジナルチケットフォルダセット 20組40枚
・URL:https://www.tnm.jp/

〇国立科学博物館賞
・共通招待券
2枚組20名様 ※お一人1回、各施設(上野本館・筑波実験植物園・自然教育園)のいずれかの常設展示にご入館できます。
・URL:http://www.kahaku.go.jp

〇国立西洋美術館賞
・企画展「スウェーデン国立美術館 素描コレクション展ールネサンスからバロックまで」の無料観覧券20組40枚
・URL:https://www.nmwa.go.jp/

〇東京藝術大学大学美術館賞
・大学美術館オリジナルポストカード 20名様 (20名様)
・URL:https://museum.geidai.ac.jp/

〇東京都美術館
・「つくるよろこび 生きるためのDIY」展招待券を20組(40名様)
・URL:https://www.tobikan.jp/

〇上野の森美術館賞
・ポストカード20枚 (20名様)
・URL:http://www.ueno-mori.org/

〇旧東京音楽学校奏楽堂賞
・「招待券2枚+クリアファイル」20組(20名様)
・URL:https://www.taitogeibun.net/sougakudou/

〇東叡山寛永寺賞
・非売品の特製ご朱印帳(お一人様1冊):10名様
・URL:http://kaneiji.jp/

〇旧岩崎邸庭園賞
・旧岩崎邸庭園オリジナルミニクリアファイル+オリジナルポストカード20組(20名様)
・URL:https://www.tokyo-park.or.jp/park/kyu-iwasaki-tei/

〇国立近現代建築資料館
・収蔵図面資料等のポストカード4枚1組を20セット 20名様
・URL:https://nama.bunka.go.jp/

〇したまちミュージアム
・招待券2枚+ポストカード3枚 20組20名様
・URL:https://www.taitogeibun.net/shitamachi/

〇上野のれん会
・特別展「蔦屋重三郎 コンテンツビジネスの風雲児」招待券 20組20名様
・URL:https://uenonorenkai.com/zasshi_ueno.html

 

【チェックポイント紹介】

ロイドワークスギャラリー | roidworksgallery

展示タイトル 幽体離脱の風景
アーティスト 斉木駿介・沼田侑香・本岡景太
会期 2025年5月17日(土)-5月25日(日) ※会期中無休
営業時間 12:00-19:00 (最終日は18:00まで)
会場 roidworksgallery
〒113-0034 東京都文京区湯島4-6-12 湯島ハイタウンB棟1F
TEL:03-3812-4712

 

CREATIVE HUB UENO “es”

住所 東京都台東区上野7-1-1(上野駅浅草口付近)
開場時間 11:00−19:00(最終入場18:45)
休場日 月曜日(祝日の場合は翌日に振替)
※5月9日~19日は会場メンテナンスのため休場とさせていただきます。

展示タイトル 久保田荻須智広 個展「5/?のR」
展示会プロフィール
本展は、公共と個人の収蔵と価値基準をめぐる行為の実践として、久保田荻須の2017年の卒業制作《一時的廃棄目録》を再構成する。アーティストの生産物がいかにして取り残されるか、その資産性と負債性の両義性について問いを投げかける。

 

久保田荻須智広(KUBOTAOGUISS Tomohiro)

2020年に東京藝術大学大学院美術研究科版画専攻を修了。現在、同大学院博士後期課程に在籍。文化資産が持つ「負債」としての側面に注目し、物品の一時的な移動や契約、他者の負債の肩代わりといった行為を通じて、しばしば物理的な制作を伴わない作品を展開している。彼の制作は、所有や管理、移動、保存といったプロセスそのものを介して、アートが制度や経済とどのように関わり合うのかを批評的に考察することを目的としている。近年の作品では、個人的な経験や実際の出来事を出発点とし、共同体における物の所有や責任の所在、そして個人から組織、さらには制度へと拡張する負債の関係性を探求している。

 

Yamanote Line Museum 上野駅公園口(関連施設紹介)
JR上野駅公園改札内連絡通路 始発~終電まで

美術館や博物館などの文化施設へとつながる上野駅公園改札内の壁面を彩る展示空間。
壁面の一部はライブペインティングができるスペースとなっており、作品入れ替え時はアーティストのライブペインティングを見ることができるかもしれません。

 

五十嵐 岳(いがらし がく)

幼少期からオーストラリアで過ごし、保育士として従事しながら創作活動を行う。帰国後、本格的にアーティスト活動を開始。
オリジナルキャラクター小人の「ELF」、人間を描いた「HAPPY PEOPLE」を軸にさまざまな企業、ブランドとコラボレーションしている。
ほのぼのとした優しく鮮やかな色使いが施された絵画は、幅広い層から人気を得る。

 

バズチカ
【バズチカ 展示情報】
展示タイトル:FIND IT!!!(上野ミュージアムウィーク2025内展示)

会期 2025年5月23日(金)-5月25日(日)
営業時間 14:00-20:00
場所 バズチカ 〒110-0005 東京都台東区上野2丁目10−7
シノバズブルワリー ひつじあいすの地下
アーティスト情報 イイダメグミ、後藤まどか、波佐間、百瀬天、柳澤樹

 

Room101

住所 東京都台東区池之端3-3-9 花園アレイ101
展示タイトル 「木々について」
展示会プロフィール
会期 2025年4月末〜7月末まで開催 ※火曜・水曜休み

アーティスト情報 山本修路
1979年東京都⽣まれ。2005年多摩美術⼤学卒業。庭師としてのバックグラウンドを持ち、「大自然と人間の関わり」をテーマに日本各地を旅し、フィールドワークを行いながら平面作品やインスタレーションなど様々な作品を展開している。

 

藝を育むまち同好会クリエーターコラボデジタルアート・アーティスト紹介

イイダメグミ

2000年生まれ 千葉県出身
略歴
2024年3月 武蔵野美術大学造形学部油絵学科 卒業
2024年4月 武蔵野美術大学大学院造形研究科修士課程 入学現在 修士課程在学展示
2024年1月 2023年度 武蔵野美術大学卒業·修了制作展/武蔵野美術大学鷹の台キャンパス
2024年11月 Group Exhibition:EPIC PAINTERS Vol:14@THE blank GALLERY,Tokyo

 

後藤まどか

日々の暮らしの中で心惹かれた瞬間を題材として、その時・その場で受けた印象を色や模様、形を使って再構成し、日本画作品を制作している。

略歴
2000年 北海道出身
2022年 武蔵野美術大学造形学部日本画学科卒業
2025年 東京藝術大学美術研究科デザイン専攻修了

2020年 第20回佐藤太清賞公募美術展 板橋区長賞
2021年 第39回上野の森美術大賞展 入選
2022年 武蔵野美術大学卒業修了制作展 優秀賞
2022年 東京藝術大学大学院美術研究科デザイン専攻修士課程入学
2022年 神山財団芸術支援プログラム第9期生採用
2022年 第49回創画展2022 入選
2022年 FACE 2023 入選
2024年 第11回郷さくら美術館桜花賞展 奨励賞
2024 年 個展「マイディア」 柴田悦子画廊
2024年 トリエンナーレ豊橋 星野眞吾賞展 入選

 

波左間

グラフィティとカリグラフィーを融合し、伝統的な書の美とストリートアートの自由を現代に再解釈するアーティスト。都市空間に詩的リズムと力強さを刻み、視覚と言葉の新たな対話を創出している。

 

百瀬天

2002 長野県生まれ
2020 武蔵野美術大学 造形学部 油絵学科 油絵専攻 入学
第72回中美展 入選
2021 岐阜県飛騨市「吉城の郷」グループ展
東京都杉並区 Gallery JUILLET グループ展
立川立飛ららぽーと ガラスペイント
2024 第47回 東京五美術大学連合卒業・修了制作展 国立新美術館
武蔵野美術大学 造形学部 油絵学科 油絵専攻 卒業
武蔵野美術大学大学院 造形研究科 美術専攻油絵コース 在学

 

柳澤樹

略歴
2001.12 埼玉県川越市生まれ
2024.3 武蔵野美術大学 造形学部 油絵学科 油絵専攻 卒業

展示歴
2022.10 「 第48回 美術の祭典 東京展 」東京都美術館
2024.2 藝を育むまち同好会「大藝育会展」松坂屋上野店 7階 アートギャラリー
2024.2 八犬堂「ヤングアーティスト公募展“いい芽ふくら芽”in TOKYO2024」松坂屋上野店
2024.9 八犬堂「KANZEN-完全-」伊勢丹新宿店

 

■その半券、捨てないで!クーポンサービス■
開催期間中、下記店舗にて各館の半券をご提示いただくと無料サービスが受けられます。サービスの内容などの詳細は、上野ミュージアムウィーク公式サイトをご覧ください。

【参加店舗】 ​
よし寿司 上野店
あんみつ みはし
伊豆榮(鰻割烹)
Hatoya(婦人服)
天寿ゞ (天ぷら)
会席中華料理 上野 池之端 古月
洋食 黒船亭
亀屋 一睡亭(御蒲焼・旬菜料理)
焼肉 太昌園
厳選洋食さくらい
しゃぶしゃぶ 鉢の木

【利用方法】
上野公園の文化施設の半券を提示
スマホのQRコード、コンビニやチケット売り場で印刷したものもOK
※お1人様1枚提示
※クーポンサービス併用不可

 

■国際博物館の日プレゼント■
【東京藝術大学大学美術館】
美術館オリジナルグッズプレゼント
●時間:5月18日(日)10:00〜
●場所:東京藝術大学大学美術館エントランスホール
●対象:展覧会入場者先着50名様

 

■国際博物館の日とは ■
「国際博物館の日」は1977年に国際博物館会議(ICOM)が設けた博物館の記念日です。多くの方に博物館に親しんでいただくこと、博物館の役割をより広く知っていただくことなどを目的に、5月18日とその前後に世界中の博物館で記念行事が行われます。国際的にも稀なほど、博物館・美術館などの文化施設が多数集まる上野では、毎年「国際博物館の日」の前後を「上野ミュージアムウィーク」として文化施設と上野のれん会が様々な記念イベントを行っています。

 

■上野のれん会■
花の雲、上野は大江戸このかたの盛り場代表。明治このかた芸術文化の発信地。 上野のれん会は、その上野の有名店約100店の連合体です。1959年(昭和34年)の創立以来この地の文化的伝統の再発見をめざして、タウン誌「うえの」を、毎月発行してきました。通巻785号(2025年5月現在)になります。


■フライヤー■

 

◎お問い合わせ
上野ミュージアムウィーク実行委員会事務局
TEL 03-3833-8016 FAX 03-3839-2765(上野のれん会内 平日10:00~17:00)

 

【上野のれん会】プレスリリースより

記事提供:ココシル上野


その他の展覧会情報を見る

リニューアルオープンした「したまちミュージアム」取材レポート。東京下町の文化や伝統に触れることのできる博物館が展示を一新

台東区立したまちミュージアム


古き良き東京下町の文化や伝統を後世に伝えるため、昭和55年(1980)に開館し、訪日外国人を含め多くの来館者を楽しませてきた「下町風俗資料館」。施設老朽化に伴う大規模改修のため令和5年春より休館していましたが、このたび「したまちミュージアム」に名称を変えてリニューアルオープンしました。

※以前の「下町風俗資料館」の様子についてはこちら⇒
https://www.culture.city.taito.lg.jp/ja/reports/29750

したまちミュージアム外観

今回の大規模改修により、1~2階のみだった展示エリアが3階まで拡大。新たに授乳室やバリアフリートイレも新設され、より多くの方が楽しめる施設となりました。

1階展示室では、昭和30年代の下町の町並みを再現しています。モデルとなったのは、関東大震災や東京大空襲などの被害を免れ、近年まで古い町並みや建物が多く残っていたという台東区坂本(現・根岸3丁目)の金杉通りで営業していた提灯屋の一角。実物大で作られた長屋は、実際に中に入り当時の暮らしや風情を体験することができます。

1階 再現展示室
1階 再現展示室

リニューアル前の再現展示では大正時代をモデルにしていましたが、同館研究員の近藤剛司さんによると、開館から40年以上が経ってから初めての大規模改修という区切りに、内容を一新することに決めたそう。

「昭和30年代、今から60~70年前という時代設定に決めた背景には、当時を知る方がご家族と展示を鑑賞した際に、『この道具はこう使っていたんだよ』といった会話が生まれれば嬉しいな、という想いがありました」(近藤さん)

また、金杉通りは、図面などの研究資料が多く残っていたことに加え、展示の中核をなす「五十嵐提灯店」の店主である五十嵐さんがご健在で、さまざまな協力を仰げたことがモデルの決め手になったといいます。
(※建物こそ建て替えられていますが、五十嵐提灯店は現在も営業中です)

昭和30年代の下町では、関東大震災後の区画・街路整備や、戦後の復興にかかる高度経済成長期の影響で、生活の質が向上していく様子が見られました。展示エリアに設置された大型スクリーンでは、そうした時期の金杉通りをイメージしたレトロタッチのアニメーション映像を上映しています。

大型スクリーン

映像内では、目抜き通りらしく商店や飲食店、美容院などが入った店舗兼住宅の「表長屋」が立ち並んでおり、道路には路面電車や自動車が走る一方で、野菜を売る大八車やラーメン屋の屋台も登場。新しい時代の波の中で、昔ながらの生活が息づいていたことを伝えるもので、あえてBGMをつけず、路面電車の走行音や鳥のさえずりなど環境音を強調することで臨場感を演出しています。

映像は時間経過で朝~昼~夕方~夜に変化するほか、
時期により「春・夏バージョン」と「秋・冬バージョン」を入れ替えるとのこと。
五十嵐提灯店

電気やガスなどのインフラ整備が進むなかでも、祭礼の多い下町地域において、提灯はなくてはならない必需品でした。江戸時代末期から営業していたという五十嵐提灯店の展示では、提灯の組み立てや文字入れを行っていた作業場を再現。丸型の祭礼提灯をはじめ、提灯の上下を固定するための金床や金槌、文字や色を入れるための絵筆が並んでいます。

作業場

こうした生活道具や家具といった収蔵資料は、基本的に区民の皆様からの寄贈品であるため、使い込まれた痕跡があるのが特徴。触れることも可能で、感触や重さといったリアルな使用感を知ることができるのは、同館の魅力のひとつです。(触る際は丁寧に取り扱ってください)

居住空間には、昨今のレトロブームで密かに人気を集めている黒電話の姿もあります。
路地は通路であると同時に生活空間であり、
子どもたちの遊び場、住人たちの交流の場でもありました。

作業場の奥に居住空間と台所が続き、台所にある勝手口から路地に出ると、向かいには「裏長屋」が建っています。裏長屋には、家から仕事場へ通う職人やサラリーマンに加えて、街頭紙芝居屋などの行商人が住んでいたそうで、展示では紙芝居屋の住居を再現しています。

裏長屋は玄関と勝手口が隣り合った造りです。
紙芝居の舞台を載せた自転車
舞台の引き出しには駄菓子が入っています。

玄関の上がり框(かまち)には、駄菓子を入れるためのガラス瓶や木箱が置かれています。紙芝居屋は、紙芝居を見に集まった子どもたちに駄菓子を売って生計を立てていましたが、紙芝居ができない雨の日には、子どもたちが駄菓子を求めて住居を訪れることもあったとか。

上がり框
四畳半の座敷
台所

展示物をよく観察してみると、「台所にガスコンロがある一方で、七輪も使われている」など、アニメーションに描かれた日常風景と同じく、古いものと新しいものとが混在していることに気づきます。近藤さんによれば、こうした過渡期の時代性の再現には特にこだわったとのこと。小学生が社会科見学で訪れた際には、「ガス台が登場する前は何を使って調理をしていたか、同じ役割の物を探してみよう!」と、ゲーム感覚で学んでもらうこともあると話します。

2階エリアは、明治から昭和30年代にかけての台東区を中心とした下町地域の歴史や文化を学べる常設展示室となっています。

2階 導入展示

入ってすぐの導入展示では、台東区の歴史を双六風にたどる映像と、先人たちの暮らしを支えた生活道具を紹介する映像の2種類をスクリーンで上映。さらに、スクリーンの前のステージには、映像内で取り上げた生活道具の実物資料を「衣」「食」「住」「商(商人)」「職(職人)」のジャンル別で並べています。

「導入展示については、初めはしたまちミュージアムを象徴するような収蔵資料を一つだけ選んで展示しようという案が出ていました。しかし、“下町”という概念は、学芸員としても明確に定義することが難しく、資料一つでは到底表現できません。そこで、一つの見せ方として、家族団らんの中心にあった卓袱台(ちゃぶだい)を真ん中に据えて、その周りに生活道具が広がっていくような配置で展示しました。道具を並べてみたときに生まれる空気感、それが“下町”だよね、という話に落ち着いたんです」(近藤さん)

生活道具の収蔵資料

卓袱台や招き猫など、今の子どもたちも知っているであろう道具から、ガラス製の蠅取り器や、商家の帳場で売上金を入れていた銭箱など、令和ではすっかり姿を消したものまで幅広く取り揃えられています。未知の道具の使い方をあれこれ想像しながら鑑賞するのも面白いでしょう。

先へ進むと、「1. 江戸から続く下町の文化と暮らし」「2. 関東大震災と復興」「3. 戦時下の暮らし」「4. 焼け跡からの出発」「5. 高度経済成長へ」「6.私たちの台東区へつながる暮らし」とセクションを分け、時代ごとの大きな変革の影響により、町並み、生活習慣などがどのように変化していったのかを振り返る展示が続きます。

展示室中央のスペースでは、年中行事に関する展示を季節毎に入れ替えて行うとのこと。
取材時は「桜」がテーマ。
リニューアルにより、壁と一体化した展示スペースが設けられたため、
資料の見せ方も以前よりメリハリのあるものになっています。
各時代のトピックは写真やイラスト付きで紹介。子どもでも親しみやすい構成です。

以前は施設の入り口で来場者を出迎えていた「自働電話」(のちの公衆電話)も、下町の移り変わりを象徴するものとして同エリアで登場。自働電話が日本で最初に設置されたのは明治33年、上野・新橋両駅の構内でのことです。

「自働電話」(明治時代)
「上野浅草間 建設工事概要」(昭和2年/東京地下鐡道株式會社)など

見逃しがちですが、引き出しにもさまざまな資料が隠れていますので要チェックです。たとえば、台東区は昭和2年(1927)に日本で初めて地下鉄(現在の銀座線)が通った地域であり、「上野浅草間 建設工事概要」は当時の地下鉄の工事概要をまとめた冊子です。現在の銀座線は、浅草から上野を経由して新橋で西に折れて渋谷へ至りますが、資料には当初、新橋から御成門を経て品川へ至るルートが計画されていたことが記載されており、非常に興味深いものでした。

「防空頭巾」(昭和10年代)、「防毒マスク」(昭和10年代)など
「娯楽のデパート」として親しまれた浅草の「新世界」関連資料

新しく開かれた3階エリアには、企画展示室と下町情報コーナーがあります。

企画展示室では年3回、およそ4ヶ月ごとに展示替えを行うとのことで、記念すべき第1回の企画展は「下町ってどんな町」 がテーマ。そもそも下町とはどのような町なのか、東京下町の成立(成立当初、台東区は下町に含まれていなかったそう)から拡大の経緯、暮らしていた人々の職業や気質などをひも解いています。

3階 企画展示室、「下町ってどんな町」の展示(~2025年6月29日まで)

隣接する下町情報コーナーには、同館の収蔵資料について詳細を調べるための「したまち資料検索」というタッチパネル端末が設置されています。

1階の再現展示と2階の導入展示の資料で興味をもったもの、分からないものがあればこちらへ足を運ぶと安心です。展示していない資料のデータも閲覧できるため、学習や調査研究の一助にもなるでしょう。
(混雑状況にもよりますが、資料について分からないことは学芸員の方々に聞けば快く解説してもらえます)

「したまち資料検索」の画面

また、ここではけん玉やメンコ、松風ゴマ、そろばん、棹秤といった昔のおもちゃや日用品を自由に体験できるほか、ベンチは休憩スペースとしても利用可能。大きな窓からは不忍池を一望でき、桜や蓮、紅葉など、季節ごとに変化する様子を楽しむ絶好のスポットになります。

下町情報コーナー
窓から見える不忍池の風景

子供から年配の方まで、世代ごとにさまざまな発見と喜びがありそうな「したまちミュージアム」。大変身を遂げて再スタートを切りましたが、「下町風俗資料館」の頃から引き継いだのは、どこからともなく来館者のリアルな体験談が聞こえてくることだと、近藤さんは話します。

「展示が呼び水となって、来館者が『こんなのあったなー!』と当時の記憶を思い出して盛り上がったり、祖父母から孫へ、自身の体験から得た知識を共有し、それを近くで聞いた別の来館者も『そうなんだ』と頷いたり……。そうした光景が毎日のように見られます。資料には載っていない、実際に経験した方からしか得られない貴重な情報が自然と聞こえてくる。それが本館の一番の魅力だと考えています」(近藤さん)

不忍池の散歩がてら、ふらりと訪れるのにもぴったりな立地ですので、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。なお、リニューアル前と変わらず、街頭紙芝居や伝統工芸の実演会等のイベントも開催されるそうですので、スケジュール等の詳細は公式サイトでご確認ください。

「したまちミュージアム」概要

開館時間 9:30~16:30(入館は16:00まで)
休館日 毎週月曜日(祝休日と重なる場合は翌平日)、年末年始、特別整理期間等
入館料 一般300円(200円)、小・中・高校生100円(50円)
※( )内は20名以上の団体料金
所在地 〒110-0007 台東区上野公園2-1
アクセス 京成本線「上野駅」徒歩3分
JR、東京メトロ銀座線・日比谷線「上野駅」徒歩5分
電話 03-5846-8426
公式サイト https://www.taitogeibun.net/shitamachi/

※記事の内容は取材時点のものです。最新情報は公式サイト等でご確認ください。


その他のレポートを見る

「Resol Gallery Ueno」新進気鋭作家によるアート作品 2025年4月特設展示アーティスト・石田 烏有氏の作品7点を本展にて展示

「納札江戸三天王祭」(2021年)

ツーリストホテル『ホテルリソル上野』 リビングロビー内アートギャラリー「Resol Gallery Ueno」
会期:4月1日(火)~4月30日(水) 入場無料

リソル株式会社が運営する「リソルホテルズ」ブランドのツーリストホテル『ホテルリソル上野』(東京都台東区上野7丁目2-9)では、リビングロビー内アートギャラリー「Resol Gallery Ueno」にて、アーティスト 石田 烏有氏による作品7点の特設展示を、2025年4月1日(火)~4月30日(水)の期間実施します。

 

『ホテルリソル上野』では、アートと下町が調和する「上野」という地域に根ざしたホテルづくりの一環として、リビングロビー内アートギャラリー「Resol Gallery Ueno」を、未来の文化を発信する新進気鋭のアーティストと、旅するお客さまとの  出会いを創出する場として活用する取り組みを、昨年2月よりスタートしました。実施以来、新進気鋭のアーティストの方々の感性・作品に触れる場として、宿泊者のみならず一般の方にもお楽しみいただいています。

第七弾のアーティストとなる石田 烏有(いしだ うゆう)氏は、木版画彫師・三代目扇令 関岡裕介氏に声をかけられたことがきっかけで約5年前から千社札の絵師となって以来、2019年には都展奨励賞を受賞、その後も2度にわたり国展にも入選、足立区展足立区長賞、区議会議長賞なども受賞されるなど、ご活躍されています。

今回展示する作品は、「納札江戸三天王祭」(2021)や「江戸の食」(2024)など、鮮やかで江戸のエネルギーが感じられる、江戸時代の錦絵の伝統的な作成行程を踏襲した作品となっています。絵師が絵を描き、江戸文字の師匠が文字を書き、彫師が堅い桜の板に墨線の版と色の数だけ色版を堀り、摺師が和紙に一枚一枚摺ってゆくといった、長い経験と技術の集大成となっております。ぜひ伝統的な木版画をご覧ください。

「リソルホテルズ」では、今後もすべての旅人(ツーリスト)たちのニーズに徹底的に応えるホテル運営を通じて、かけがえのない旅の「物語」を紡いでまいります。

 

開催概要
会 期:2025年4月1日(火)~4月30日(水)
会 場:『ホテルリソル上野』リビングロビー内 アートギャラリー「Resol Gallery Ueno」
アーティスト:石田 烏有氏
入場料:無料  ※ご宿泊者以外の方も気軽に立ち寄っていただけます。
開館時間:【ご宿泊者様】 24時間見学いただけます。 / 【ご宿泊者以外の方】 10時~20時

 

展示作品:
「納札江戸三天王祭」
(2021年 木版画 八丁)
企画 東都納札睦/彫摺 関岡木版画工房/筆耕 橘右橘/絵  石田烏有

江戸三天王祭の、「天王」とは、牛頭天王(ごずてんのう)の事です。牛頭天王は、京都八坂神社の祭神で、疫病を防ぐ神であり、素戔嗚命と同体とされています。
江戸時代、神田明神の祭神は、平将門命の一神とされましたが、二代将軍徳川秀忠により、素戔嗚命を祭神とする地主神、牛頭天王を三社に分けました。神田明神の社殿を、左に回ってみると、その三社が鎮座しています。
一の宮は南伝馬町、二の宮は大伝馬町、三の宮は日本橋小舟町が受け持ちました。
この三社の祭礼は、江戸の三大祭りとして、江戸っ子たちに熱狂的に親しまれました。

 

ここでちょっと注意して観て戴きたいのは、大伝馬町の幟です。
空摺りと言って、色を摺るのではなくて、紙に凸凹をつける摺り方をしています。

 

「江戸の食」
(2024 木版画 八丁)
企画 東都納札睦/彫摺 関岡木版画工房/筆耕 橘右/絵  石田烏有

このシリーズは、そのまま江戸の食。
春は寿司、夏は虹に鰻、秋は月に天ぷら、冬は雪に蕎麦、です。
納札とか、千社札とは、一体どんなものなのでしょうか。
納札は神社仏閣に、自分の屋号や名前を貼る、題名納札から始まり、徐々に愛好家たちが自分の札を交換するようになりました。江戸時代の名刺交換みたいな役割です。
すると、納札会が結成され、サロン文化として発達しました。

春「寿司」  夏「虹に鰻」  秋「月に天ぷら」  冬「雪に蕎麦」

 

浮世絵の発達とともに、多色摺りの千社札が制作されるようになり、色やデザインなどを競って、より凝った札が制作されるようになります。
東都納札睦は、1900年に発足し、現在も納札、江戸文化の継承の、社交場として存在しています。

 

プロフィール:石田 烏有(いしだ・うゆう)-Uyuu Ishida- 


 

2019 都展奨励賞(東京都美術館)
   JAM公募展入選
2021 国展入選(国立新美術館)
2021 世界絵画大賞展同志舎賞(東京都美術館)
   絵と言葉のチカラ展入選(松坂屋)
   足立区展足立区長賞、区議会議長賞
2022 足立区展足立区長賞、区議会議長賞
   国展入選(国立新美術館)  等

 

「Resol Gallery Ueno」について
『ホテルリソル上野』のリビングロビー内にあるアートギャラリー「Resol Gallery Ueno」では、新進気鋭のアーティストたちが、その想いや技術を具現化したアートの数々を展示しています。
アカデミズムの街上野ならではの芸術体験は、単なるホテルステイとはひと味違ったスパイスを、旅人たちに提供します。
ギャラリーでは特設展示と常設展示を隔月で交互に実施。訪れるたびに新たな発見と成長の機会を与えてくれます。

 

【特設展示について】
「Resol Gallery Ueno」では、新進気鋭のアーティストの作品発表の場として、無償でギャラリーを提供しています。
「旅、旅人、または旅先をイメージさせる作品」「下町文化、風土、歴史をイメージさせる作品」「アカデミズムを感じさせる作品」「観る者の心を癒し、新たな発見やインスピレーションを与える作品」など、様々な作品とお客さまとの出会いを  創出していきます。

<出展希望者からの問い合わせ先>
Tel:  03-5325-9269(担当:伊藤)
Mail: ka.ito@resol.jp

 

【常設展示について】

(画像左から)
太陽と月(2020 清水慶太 木製パネルにアクリル絵の具 2枚1組)
パンダ(2020 石川マサル・清水慶太 樹脂製フィギュアにアクリル絵の具)
EDO, rotated 90°(2020 清水慶太 キャンバスにプリント)
うえの(2020 清水慶太 木製パネルにアクリル絵の具)

 

プロフィール:清水 慶太(しみず けいた)
デザイナー、デザインコンサルタント
1974年、東京都生まれ。
東京藝術大学大学院美術研究科修士課程修了後、ミラノを拠点にデザイナーとして活動を開始。
アメリカで過ごした幼少期、およびイタリアでのデザイナー生活によって培われたグローバルな価値観から作られる包含性のあるデザインは、国内外で高い評価をうける。昨今は、プロダクトのデザインのみでなく、ホテルのコンセプト開発や企業のコーポレートデザインも手掛けている。

 

『ホテルリソル上野』概要
◇所在地:東京都台東区上野7丁目2-9
◇交通 :JR上野駅、浅草口・入谷口から徒歩1分
◇構造 :鉄骨造[地上10階]
◇客室数: 115室[モダレット(セミダブル)107 室 /ツイン8室]
◇公式サイト: https://www.resol-hotel.jp/ueno/

 

【リソル株式会社】プレスリリースより

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東京・上野公園|『第四十六回 上野東照宮 春のぼたん祭』2025年4月5日(土)~5月6日(火)開催

上野東照宮

“ジパング”“赤銅の輝”など希少品種や珍しい緑色の「ぼたん」など110種500株以上が春を彩ります。

徳川家康公・徳川吉宗公・徳川慶喜公を祀る神社として建立された上野東照宮(東京台東区 上野公園内)では、2025年4月5日(土)~5月6日(火)の間、『上野東照宮 第四十六回 春のぼたん祭』を開催します。
開催期間中は毎日の開花情報をInstagramで発信しています。
公式Instagram:https://www.instagram.com/utbotanen_official/
暖かい陽気で毎日表情が移り変わる花々を観に、是非ご来苑ください。

 

世界のさまざまな品種や緑色に咲く『まりも』など110種500株以上
期間中、日本、中国、アメリカ、フランスなどで作出された110種500株以上の「ぼたん」が咲き誇ります。赤やピンクなどのぼたん以外にも中国品種と日本品種の自然交配による緑色の花が珍しい『まりも』などもお楽しみいただけます。

[苑内風景※昨年のイメージ]
[まりも]

 

今回ご覧いただける希少品種
[ジパング]

黄色の千重咲きのぼたん。とても上品な香りと共にお楽しみいただけます。

 

[赤銅の輝]
黄色に桃色がかった橙色の花弁でとても珍しい品種のぼたんです。

[春の粧(はるのよそおい)]

 

■『ぼたん』とは
ぼたんの花は「富貴」の象徴とされ、「富貴花」「百花の王」などと呼ばれています。
中国に原種がある「ぼたん」は日本には奈良時代に中国から薬用植物として伝えられたとされ、江戸時代以降、栽培が盛んになり数多くの品種が作り出されました。中国文学では盛唐(8世紀初頭)以後、詩歌に盛んに詠われるようになり、日本文学でも季語として多くの俳句に詠まれ、絵画や文様、家紋としても親しまれてきた花です。
日本や中国以外にもアメリカやフランスなどでも品種が作り出されています。

[紫紅殿(しこうでん)]
[黄冠(おうかん)]

 

『旧寛永寺 五重塔』をはじめとする本格的な江戸建築とボタンを楽しむ
苑内からは旧寛永寺五重塔や東照宮の参道に並ぶ石灯籠を見る事ができ、枯山水の日本庭園とあわせて他では味わえない江戸風情の中でぼたんを見る事ができます。

 

■他にも写真撮影スポットが充実!
ぼたん等の花々と一緒に、季節感のある撮影をできる色鮮やかな鯉のぼりや、苑内の随所に寄せ植えや盆栽などをご用意しています。

こいのぼりと盆栽

 

■ボタンと共に咲くお花達
苑内にはぼたんの他にシャクナゲや約20品種のシャクヤクなどが代わる代わる開花し、毎日様々な見どころが満載です。

[シャクナゲ(4月初旬~下旬)]
[シャクヤク(4月下旬~5月中旬)]
[シャクヤク(4月下旬~5月中旬)]
和傘とシャクヤク

 

■第四十六回 上野東照宮 春のぼたん祭 開催概要
会期期間:2025年4月5日(土)~5月6日(月)※期間中無休
開苑時間:9:00~17:00(入苑締切)
入 苑 料 :大人(中学生以上)1,000円、団体(15名以上)800円、会期入苑券2,500円、小学生以下無料
住  所  :〒110-0007 東京都台東区上野公園9-88
TEL   :03-3822-3575(ぼたん苑)
アクセス:JR上野駅 公園口より徒歩5分
京成電鉄京成上野駅 池之端口より徒歩5分
東京メトロ根津駅 2番出口より徒歩10分

 

■上野東照宮ぼたん苑
上野東照宮ぼたん苑は、徳川家康公を御祭神とする上野東照宮の敷地内に、1980年4月、日中友好を記念し開苑しました。回遊形式の日本庭園に植栽されたぼたんは現在、春は110品種500株、冬は40品種160株が栽培されています。また、より多くの皆様に季節のお花をお楽しみいただきく、秋には100品種200株のダリア(別名:天竺牡丹)の展示をおこなっております。
東京都心にありながら緑豊かな上野で、江戸風情に身を委ねながら、ごゆっくりとぼたんをご観賞ください。

住 所 :〒110-0007 東京都台東区上野公園9-88
TEL  :03-3822-3575(ぼたん苑)
アクセス:JR上野駅 公園口より徒歩5分
京成電鉄京成上野駅 池之端口より徒歩5分
東京メトロ根津駅 2番出口より徒歩10分
公式HP:https://uenobotanen.com/
公式Instagram:https://www.instagram.com/utbotanen_official/

 

【東照宮】プレスリリースより

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【取材レポート】「西洋絵画、どこから見るか?」展が国立西洋美術館で開幕。さまざまな角度から作品の楽しみ方を提案

国立西洋美術館
展示風景

東京・上野の国立西洋美術館で「西洋絵画、どこから見るか?―ルネサンスから印象派まで サンディエゴ美術館 vs 国立西洋美術館」展(通称、どこみる展)が開幕しました。会期は2025年3月11日から6月8日まで。
先立って行われた報道内覧会に参加してきましたので、画像とともに会場の様子をご紹介します。

会場エントランス
展示風景、手前はペーテル・パウル・ルーベンスと工房《聖家族と聖フランチェスコ、聖アンナ、幼い洗礼者ヨハネ》1625年頃、サンディエゴ美術館
展示風景、左からホアキン・ソローリャ《ラ・グランハのマリア》1907年、サンディエゴ美術館/《バレンシアの海辺》1908年、サンディエゴ美術館/《水飲み壺》1904年、国立西洋美術館

二つの美術館のコレクションを対話させ、さまざまな角度から魅力を深堀り

同展は、アメリカのサンディエゴ美術館と国立西洋美術館の所蔵品計88点を組み合わせ、ルネサンスから19世紀末までの600年にわたる西洋美術の歴史をたどりながら、「作品をどのように見ると楽しめるか」という観点から鑑賞のヒントを提案するもの。

アメリカ西部において、最も早い時期に充実した西洋古典絵画のコレクションを築いた美術館の一つであるサンディエゴ美術館は、サンディエゴがスペイン人の入植によって築かれた地域であるという文化的・歴史的な結びつきから、スペイン美術を収集の軸としてきました。

そのため、同展にはボデゴン(スペイン静物画)の祖であるフアン・サンチェス・コターンの傑作《マルメロ、キャベツ、メロンとキュウリのある静物》をはじめ、エル・グレコ、スルバラン、ソローリャなどスペイン美術の名品も多数出品されています。なお、今回サンディエゴ美術館から来日した49点はいずれも日本初公開となるそう。

一方で、国立西洋美術館は東アジアにおいて唯一の体系的な西洋絵画のコレクションを所蔵しています。同展の開催経緯について、監修者である川瀬佑介さん(国立西洋美術館主任研究員)は次のように話します。

「ひとつの美術館から借りてきた作品のみで構成する美術展では、1点1点の作品を味わうことはできても、作家の人物像やその作家の画業における位置づけなど、コンテクスト(文脈)はなかなか理解しづらい場合が多いです。それは国立西洋美術館の常設展も同様のことが言えます。そこで今回は、両館のコレクションをかけ合わせ、同一の作家や主題の作品をグループごとに並べ、深掘りしてみようと考えました。そうした試みにより、主題の難しさや時代の古さから敬遠されがちな西洋美術をどこから見ればいいのか、その世界の面白さをわかりやすくお伝えしようと考えて構成した展覧会です」

第1章展示、左からルカ・シニョレッリ《聖母戴冠》1508年、サンディエゴ美術館/ ジョット《父なる神と天使》1328-35年頃、サンディエゴ美術館
第1章展示、左からアンドレア・デル・サルト《聖母子》1516年頃、国立西洋美術館/ カルロ・クリヴェッリ《聖母子》1468年頃、サンディエゴ美術館

川瀬さんが述べたように、実際に展示は36の小テーマで分けられています。たとえば、ジョットからボス(工房)まで、イタリアとネーデルランド(現在のベルギー、オランダ)のルネサンス絵画の展開を探る第1章では、「ヴェネツィア・ルネサンスの肖像画」としてジョルジョーネ(1477/78-1510)とヤコポ・ティントレット(1518-1594)の作品を併置。

第1章展示、左からヤコポ・ティントレット《ダヴィデを装った若い男の肖像》1555-60年頃、国立西洋美術館/ ジョルジョーネ《男性の肖像》1506年、サンディエゴ美術館

ジョルジョーネは30代前半で早逝していることもあり、資料がほとんど残っておらず未だ多くの謎に包まれていますが、ヴェネツィア絵画における盛期ルネサンス様式の創始者として位置づけられている画家です。サンディエゴ美術館所蔵の《男性の肖像》(1506)は小品ながら、ルネサンス肖像画の傑作の一つ。身体的特徴の厳密な描写と柔らかな陰影表現で、革新的なリアリズムを実現しました。

一方のティントレットは、ジョルジョーネ亡き後の16世紀ヴェネツィア絵画においてティツィアーノ、ヴェロネーゼと並ぶ三大巨匠に数えられる人物。サンディエゴ美術館所蔵の《老人の肖像》(c.1550)と国立西洋美術館所蔵の《ダヴィデを装った男性の肖像》(c.1555-1560)をジョルジョーネと並べることで、色彩のグラデーションによりボリュームを表現するジョルジョーネ以来の手法を、ティントレットがどのように発展させていったのかを解説文とともに見せています。

ゴヤやピカソにまで影響を与えた、スペイン静物画の最重要画家の傑作が来日

地域別に17世紀バロック美術の特色を紹介する第2章では、同展のハイライトであるフアン・サンチェス・コターン(1560-1627)作の《マルメロ、キャベツ、メロンとキュウリのある静物》(c.1602)を展示。

第2章展示、フアン・サンチェス・コターン《マルメロ、キャベツ、メロンとキュウリのある静物》1602年頃、サンディエゴ美術館

16世紀末から17世紀初頭にかけて、ヨーロッパ各地で静物画が独立して描かれるようになり、スペインではとりわけ食べ物や食卓に関連するモティーフを主題とした静物画「ボデゴン」が発展します。1600年前後にトレドで活躍した画家サンチェス・コターンは、本作に見られるような、少数のありふれた野菜や果物を石枠の上に並べ、スポットライトのような光で照らして明暗を際立たせる独自の構図法を考案。長く続くスペイン静物画の典型を確立しました。

本作の魅力について、監修者のマイケル・ブラウンさん(サンディエゴ美術館ヨーロッパ美術担当学芸員)は「一見では簡潔な構図に見えますが、中央にある一つの空白のような闇に、無限の要素、また謎めいた、そこに到達することができないような雰囲気のある世界観を醸し出しています」とコメント。

川瀬さんは、サンチェス・コターンの6点しか現存していない静物画のうち、本作は「最もバランスが取れており、サンチェス・コターン独特の厳粛さ、静けさがよくわかる最高傑作」であり、「この作品が来日すること自体が一大イベント」だとアピールしました。

第2章展示、フアン・バン・デル・アメン《果物籠と猟鳥のある静物》1621年頃、国立西洋美術館

スペイン静物画の比較として、サンチェス・コターンの次の世代を代表するフアン・バン・デル・アメン(1596-1631)による、華やかで装飾的な《果物籠と猟鳥のある静物》(c.1621)と、聖人像を多く手掛けたことから「修道僧の画家」とも称されるフランシスコ・デ・スルバラン(1598-1664)による、静かな瞑想と祈りを呼び起こす《神の仔羊》(c.1635-40)が並んでいます。いずれも構図や仕掛けに、サンチェス・コターンからの伝統を明確に受け継いでいることが見てとれるでしょう。

第2章展示、左からフランシスコ・デ・スルバラン《洞窟で祈る聖フランチェスコ》1658年頃、サンディエゴ美術館/《聖ドミニクス》1626-27年、国立西洋美術館/《聖ヒエロニムス》1640-45年頃、サンディエゴ美術館

なお、スルバランについては画家単独でもテーマを立て、彼が得意とした大型の単身像《聖ドミニクス》(1626-27)や、慈愛に満ちた円熟期の傑作《聖母子と聖ヨハネ》(1658)など、4点の作品を並べて紹介。重厚かつ彫刻的なリアリズムから、光のヴェールに包まれたかのように甘美で理想化された表現へと移る画業の展開を簡潔に示すものです。そこには常に気品と静けさが存在し、画家の一貫した美意識も感じられます。

第2章展示、手前はエル・グレコ《悔悛する聖ペテロ》1590-95年頃、サンディエゴ美術館
第2章展示、左からアントニオ・デ・べリス《ゴリアテの首を持つダヴィデ》1642-43年頃、サンディエゴ美術館/グエルチーノ《ゴリアテの首を持つダヴィデ》1650年頃、国立西洋美術館

現実のヴェネツィアと空想のローマ、イタリアで別方向に発展した都市景観画

第3章は、18世紀美術をリードしたイタリア絵画とフランス絵画の展開に焦点を当て、風景画、肖像画、風俗画それぞれのジャンルにおける特徴を見ていくセクション。ここでは、ヴェネツィアとローマにおける都市景観画の比較展示が目を引きます。

18世紀はイギリスやアルプス以北の国々で、上流階級の子弟が文化的教養を身に付けるためにヨーロッパ文明の源であるイタリアをはじめ、欧州各都市を周遊するグランド・ツアーが流行。彼らが帰国の際、土産として求めた物の一つに都市景観画「ヴェドータ」があり、ヴェネツィアとローマというグランド・ツアーの二大中心地で隆盛しました。

第3章展示、左からベルナルド・ベロット《ヴェネツィア、サン・マルコ湾から望むモーロ岸壁》1740年頃、サンディエゴ美術館/ フランチェスコ・グアルディ《南側から望むカナル・グランデとリアルト橋》1775年頃、サンディエゴ美術館

ヴェネツィアの都市景観画としては、カナレットに並びヴェドータの三大巨匠と称されるベルナルド・ベロット(1721-1780)とフランチェスコ・グアルディ(1712-1781)の作品を紹介。いずれも壮麗な水の都らしいアイコニックな景観を、おおむね現実に見える形で写し取っています。対して、同じイタリア国内ながらローマ側の展示では、特定の場所の再現から離れ、現実と空想を融合させたノスタルジアな世界が広がります。

第3章展示、左からユベール・ロベール《モンテ・カヴァッロの巨像と聖堂の見える空想のローマ景観》、《マルクス・アウレリウス騎馬像、トラヤヌス記念柱、神殿の見える空想のローマ景観》1786年、国立西洋美術館

たとえば、「廃墟のロベール」として名を馳せたユベール・ロベール(1733-1808)が描いた一対の景観画では、カンピドーリオ広場にあるマルクス・アウレリウス帝騎馬像やトラヤヌス帝記念柱など、実際には別々の場所にある古代の有名な作品を画面にまとめ、さらに想像の産物であろう巨大な神殿を配置。人々は18世紀当時の服装をしていることから、本作は古代の建造物を廃墟として楽しもうとする当時の人々の視線が強く反映されたものと考えられます。

これらは都市景観画の中でも「カプリッチョ」(奇想画)と呼ばれるもの。崩れ、風化する遺跡や歴史的な建造物が多く残るローマの街並みは画家たちにとって重要なインスピレーション源であったようで、自由な発想で旅行者たちの想像力を刺激しました。ヴェネツィアはリアルへ、ローマはファンタジーへ。絵画ジャンルの隆盛における地域の特色の影響がいかに大きいかが歴然と示されています。

カペとブノワ、二人の女性画家で理解するロロコから新古典主義への変遷

また第3章では、華やかで貴族的なロココから、秩序や理性を重んじる新古典主義へ移り変わる、18世紀フランスの美的価値観の変化を端的に示すものとして、マリー=ガブリエル・カペ(1761-1818)とマリー=ギユミーヌ・ブノワ(1768-1826)、二人の女性画家による肖像画の比較展示があります。

第3章展示、左からマリー=ガブリエル・カペ《自画像》1783年頃、国立西洋美術館/マリー=ギユミーヌ・ブノワ《婦人の肖像》1799年頃、サンディエゴ美術館

18世紀後半からフランスでは女性芸術家が台頭しはじめ、カペとブノワはともに、フランス革命後に女性が初めて出品を許された1791年のサロン(官展)で名を連ねた代表的な画家です。

カペの《自画像》(c.1783)で描かれている、華やかなブルーのドレスとリボンや巻き髪等のファッションがいかにもロココ趣味であり、こちらを見つめる若き画家の表情は、思わず見入ってしまうほど輝きに満ちて晴れやか。自身の腕を誇るような、確かな自信がうかがえます。対してブノワの《婦人の肖像》(c.1799)は、古代風の白いシュミーズドレスや彫塑的で安定感のある身体描写などに、古典古代の美術に規範を求める新古典主義的な志向が顕著に表れています。

作品自体の質の高さはもちろん、先述の都市景観画と並んで「どこを見ると楽しめるか?」が分かりやすいという点でも、特に初心者の方は必見の展示といえるでしょう。

垣根の描き方で絵画の印象はどう変わる?

19世紀における人物表現の多様な在り方に注目する第4章では、印象派の画家による「垣根の表層」の比較展示があり、やや意表を突かれました。

第4章展示、左からカミーユ・ピサロ《立ち話》1881年頃、国立西洋美術館松方コレクション/ セオドア・ロビンソン《闖入者》1891年、サンディエゴ美術館

パリを離れポントワーズ周辺の農民の生活に取材した印象派最年長のカミーユ・ピサロ(1830-1903)と、モネの暮らすシルヴェニーで表現手法を学んだアメリカの画家セオドア・ロビンソン(1852-1896)の作品に描かれた、農村でよく見られる垣根のモティーフに着目。人物の心理と結びつくもの、あるいは空間構成の装置として垣根がいかに効果的に描かれているかなどが解説されています。

こうした少々マニアックといえる角度からも作品の楽しみ方が提案されているため、さらに西洋美術の深みを歩みたい中級者、上級者のファンも新鮮な発見が期待できそうです。

第4章展示、左からウィリアム=アドルフ・ブーグロー《羊飼いの少女》1885年、サンディエゴ美術館/《小川のほとり》1875年、国立西洋美術館(井内コレクションより寄託)

カジュアルに、思考に制限のない状態で楽しむ――ディーン・フジオカ流の鑑賞法

報道内覧会では、同展の音声ガイドナビゲーターを務めるディーン・フジオカさんも登壇しました。

ディーン・フジオカさん

音声ガイドの収録を振り返り、「“ここみる展”みたいに、押し付けがましくなってしまうと意図が変わってしまいます。いろんな時代の背景や社会の空気、宗教観、何を描くかというモティーフの選び方やタッチ、画法など、判断の基準になる要点を打ち合わせの中で教えていただき、自分なりに解釈して、ガイダンス、ナビゲーションの一つとして伝えられたらいいなと考えて務めさせていただきました」と話したフジオカさん。

また、「自分で物語を作り出していくと、自分なりの見方、その日そのときの楽しみ方というものが生まれるのかなと思っています。(司会者に、まずは作品と対峙して自分の中の感性と語り合うということですね、と聞かれて)かっこよく言うとそうですね。自分の中でボケとツッコミを無限に繰り返すみたいな感じ」とフジオカ流の鑑賞方法も提案。

「いろいろな宗教的モティーフや文脈があると思いますが、けっこう突っ込みどころが多い作品もあったりしますよね。そういったものをカジュアルに、何をしちゃいけないみたいなものがない状態で楽しんでみる」と続け、スルバランの《聖ドミニクス》を見ながら「天を仰いで、手元はハート型のキュンな感じのポーズになっています」と独特の視点で魅力を表現するなど、笑いを誘う場面もありました。

《聖ドミニクス》と同じ“キュン”なポーズをとったフジオカさん

なお、会期中は4日間(夜間開館日)限定でイベント「どこみるde夜会」を開催。魅力的な人物像が多数登場する同展の一員となるつもりで、自分なりのおしゃれをして「夜会に招待されました!」と申告すると、オリジナルポストカードがプレゼントされるというもので、会場にはフォトスポットや、仮面や扇子など「夜会用撮影アイテム」も用意されるといいます。
※詳しい日程や注意事項は展覧会公式サイトよりご確認ください。

カぺの《自画像》になりきってイベントをPRした、音声ガイドのナレーターを務める日比麻音子さん。※あくまで演出であり、美術館での作品鑑賞を前提としない服装での来場はNGです。

さらに、同展とは別に、サンディエゴ美術館から借用したゴヤの《ラ・ロカ公爵ビセンテ・マリア・デ・ベラ・デ・アラゴン》(c.1795)をはじめとする絵画5点が、常設展示室にも展示されています。常設展は「どこみる展」の当日有効観覧券があれば無料で鑑賞できるため、こちらもぜひお見逃しなく。

「西洋絵画、どこから見るか?-ルネサンスから印象派まで サンディエゴ美術館 VS 国立西洋美術館」概要

会期 2025年3月11日(火)~2025年6月8日(日)
会場 国立西洋美術館(東京・上野公園)
開館時間  9:30 〜 17:30(毎週金・土曜日は20:00まで)
※入館は閉館の30分前まで
休館日 月曜日、5月7日(水)
※ただし、3月24日(月)、5月5日(月・祝)、5月6日(火・休)は開館
観覧料(税込) 一般2,300円、大学生1,400円、高校生1,000円

※中学生以下、心身に障害のある方及び付添者1名は無料(学生証または年齢の確認できるもの、障害者手帳の提示が必要です)
※観覧当日に限り同展観覧券で常設展も鑑賞できます。
そのほか、詳細は公式のチケットページよりご確認ください。

主催 国立西洋美術館、サンディエゴ美術館、日本経済新聞社、TBS、TBSグロウディア、テレビ東京
問い合わせ 050-5541-8600(ハローダイヤル)
展覧会公式サイト https://art.nikkei.com/dokomiru/

※記事の内容は取材時点のものです。最新情報は展覧会公式サイト等でご確認ください。

記事提供:ココシル上野


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