2021年7月10日(土)~9月20日(月・祝)の期間、東京・上野の国立科学博物館では特別展「植物 地球を支える仲間たち」 が開催中です。
植物なのにアクティブだったり凶暴だったり、大きすぎたり小さすぎたり。不思議と驚きに満ちた、知られざる植物の世界を体感できる本展。会場の様子と見どころをレポートします。
個性派植物が目白押しの「植物 地球を支える仲間たち」
展示風景
展示風景
展示風景
本展は、最新の科学研究成果をもとに、地球上の生命にとってなくてはならない存在である植物の生き方、生存環境、形、進化などさまざまな観点から、原始から現代までの世界中の植物を紹介する大規模展覧会 です。
標本、模型、映像、インスタレーションといった展示を見るだけではなく、音楽や匂いで聴覚や嗅覚も刺激されながら、200種類以上にのぼる植物たちの生態の面白さを総合的に学べる内容になっています。
規格外のスケールに驚愕!
本展の見どころの一つは、「○○○すぎる植物たち」と題されたエリアで来場者を待ち構える、大きすぎる植物たち の展示でしょう。
「ショクダイオオコンニャク」実物大模型
まず目を引くのが、インドネシア・スマトラ島の低地熱帯雨林に自生する、世界最大級の花序(花の集まり)をもつという「ショクダイオオコンニャク」の実物大模型です。高さが実に2.72Mと、若干ファンタジーの領域に入っています……! ギネス世界記録では3.1Mにも達するというから驚き。
開花すると38度ほどまで発熱し湯気を出すという不思議な生態で、その際に虫をおびき寄せるための臭いを蒸散させるそうですが、会場内にはなんと再現した臭いを嗅げるブースがありました。油断していた筆者が思わずのけ反ったその強烈な悪臭ぶりをぜひ体験してみてください。
「ラフレシア」実物大模型 京都府立植物園蔵
また、世界最大の花としておなじみの「ラフレシア」の姿も。展示されている実物大模型はスマトラ島に分布している「ラフレシア・アーノルディ」という種類で、直径は80CM。
「ラフレシア」と聞くと赤い花を思い浮かべる方がほとんどだと思いますが、葉や茎がどうなっているかは知っていますか? 実は「ラフレシア」属の仲間って、ぶどう科の木本つる植物に寄生して栄養分を吸収する寄生生物なので、花部分しか存在しないんですって。寄生している立場で世界一の花として有名になってしまう厚かましさ(?)が面白いですね。
「メキシコラクウショウ」の写真
「メキシコラクウショウ」の幹回りのスケールを再現したタペストリー
さらに、メキシコ・オアハカ州のトゥーレ村に現生する“トゥーレの樹”こと「メキシコラクウショウ」は根本周り57.9M、幹回り36.2Mで世界最太の樹としてギネス世界記録に認定されていますが、その幹回りの巨大さを、会場天井の空間をうまく活用してタペストリーで再現しているのも必見。にわかには信じがたい、笑ってしまうくらい規格外のスケール感をぜひ体感してください。
そのほか、大きすぎる翼をもつ種子「ハネフクベの種子」、大きすぎる果実「ジャックフルーツ」、大きすぎる松ぼっくり「コウルテリマツ」などなど、インパクトのある植物の実物が多数展示されていました。
太古の化石から遺伝子組み換え植物まで
クラドキシロン類「ヒロニア・エレガンス(葉)」 国立科学博物館蔵
リンボク類「レピドデンドロン・アクレアトゥム(幹表面)」 大阪市立自然史博物館蔵
植物の誕生から上陸、森の誕生、裸子植物・花の誕生と多様化……植物のダイナミックな進化の歴史を紹介するエリアでは、貴重な植物化石の数々が並びます。
復元イラストとともに、世界初公開となる最古の大型植物化石「クックソニア・バランデイ」や、10Mを超える大型の体を初めてつくった植物・クラドキシロン類の化石、石炭紀に巨大な湿地林の主要構成要素となったリンボク類の化石などが、人間が登場するはるか以前の地球がどのような姿をしていたのかを私たちに伝えます。
「青いキク」の樹脂標本 農研機構蔵
「光るトレニア」の樹脂標本 株式会社インプランタイノベーションズ蔵
一方、かつては自然界に存在せず、遺伝子組換え技術によって誕生した「青いバラ」や「青いキク」といった、現代の植物事情についても取り上げています。
「光る」という新しい形質の付与を目指して、海洋プランクトンの蛍光タンパク質の遺伝子を導入してつくられた「光るトレニア」が放つ黄緑色の蛍光の美しさを眺めていると、この技術がこの先どのように発展していくのかワクワクとさせられます。
本当は怖い植物たち
植物に対して「静か」「癒し」のイメージをもっている人々をヒヤッとさせる、狡猾な食虫植物や凶暴な果実も会場で存在感を放っています。
「ハエトリソウ」(約100倍拡大模型) 右側の葉の中には捕らわれた虫の姿が……
感覚毛へ30秒以内に2回刺激があると、葉を閉じて虫を逃がさないようにする「ハエトリソウ」や、粘着性のある消化液で虫を捕え半日で体の芯まで溶かす「モウセンゴケ」は、性質だけに留まらないそのフォルムの禍々しさを約100倍、約200倍の拡大模型で再現。
「ドロセア・アデラエ」など12種類の食虫植物が入れられた水槽
隣に置かれた水槽展示では、その多くが一見かわいらしく見える食虫植物が生きている状態でジオラマのようにぎゅっと詰め込まれています。この無法地帯に虫を放したらどうなってしまうのか……と想像せずにはいられません。
「ライオンゴロシの果実」の6倍拡大模型(左)と実物(右) 国立科学博物館蔵
フック状の先端部や、「かえし」と呼ばれるトゲで動物に付着して果実を散布させる植物の中でも“凶暴”な代表例として、口に付着して口が開かなくなり餓死してしまったライオンの逸話をもつ「ライオンゴロシ」や、忍者の道具で有名なマキビシにそっくりな「オニビシ」といった果実の実物展示も。
いずれも花自体は非常に美しいという、ギャップのある共通点をもつことも興味深いです。
楽しいエンタメ要素も!
インスタレーション展示「光合成FACTORY」
「光合成FACTORY」プレイの様子
会場内には、子どもが楽しめる参加型インスタレーション展示も設置されています。
光合成のメカニズムを学習できるスマートフォン向けブラウザゲーム「光合成FACTORY」は、プレイヤーが光合成工場の工場長となり、3個のミッションをクリアしていくという内容。会場ではそのミッション1を、最大4人までのプレイヤーとともに体を使って体験することができます。(スマートフォン用ゲームはこちらから⇒https://kougousei-factory.com )
ほかのプレイヤーと協力しながら、光エネルギーのもと(光子)をどれだけ集められるか。操作は腕を動かすだけの単純なものですが、やってみると自然とほかのプレイヤーと競争のようになってくるので、大人だけでもなかなかの盛り上がりに。
「花の遺伝子ABC」の歌詞も展示
右は花のC遺伝子の変異によって生まれた「ツバキ(園芸品種) 八重」樹脂標本 国立科学博物館蔵
楽しく学べるといえば、会場内では組み合わせ次第で花の形が決まるという3種の遺伝子「A遺伝子」「B遺伝子」「C遺伝子」についての解説がありますが、関連して「花の遺伝子ABC」というオリジナル曲が流れています。3種の遺伝子の働きを覚えるための歌ですが、ちょっと奇妙な歌詞とメロディがクセになってしまうかも。
特設ショップ
特設ショップ
なお、本展の特設ショップでは「ラフレシア」をはじめとするクセのある植物のクッションやポーチをはじめ、人気クリエイター4組が「植物」をテーマに描き下ろしたデザインを使用した展覧会限定のオリジナルグッズ、人気トレーディングカードゲーム『デュエル・マスターズ』とのコラボ製品などが販売中。欲しい方はぜひお早めに足を運んでみてください。
特別展「植物展 地球を支える仲間たち」開催概要
会期
2021年7月10日(土)~9月20日(月・祝)
※会期等は変更になる場合があります。
最新情報は公式サイトよりご確認ください。
会場
国立科学博物館
開館時間
9時~17時(入場は16時30分まで)
休館日
7月12日(月)、9月6日(月)
入場料
一般・大学生 :1,900円(税込)
小・中・高校生:600円(税込)
※オンラインによる事前予約(日時指定)必須です。
主催
国立科学博物館、NHK、NHKプロモーション、朝日新聞社
展覧会公式サイト
https://plants.exhibit.jp
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