東京藝術大学大学美術館
東京藝術大学大学美術館では、2018年5月26日(土)~7月16日(月・祝)の期間、NHK大河ドラマ特別展「西郷どん」が開催されています。5月25日に行われた内覧会を取材いたしましたので、本展覧会の内容をご紹介いたします。
薩摩(鹿児島)の一介の下級武士から身を起こし、明治維新を成し遂げた西郷隆盛(1827-77)。しかし彼には肖像写真が一枚も残っておらず、その生涯は多くの謎に包まれています。本展覧会は大河ドラマと連動しながら、西郷ゆかりの歴史資料や美術品などによって、「西郷どん」の人物像と激動の時代を浮き彫りにします。
内容紹介
プロローグ 西郷と薩摩
西郷隆盛は文政10年に鹿児島城下の下加治屋町において生を受けました。プロローグでは、鹿児島の町並みを表した絵図や、桜島の風景画、西郷らが学んだ「野太刀自顕流」で使われた打棒などの資料が展示され、西郷が育った環境を知ることができます。
幕末・明治の名士たちが多くの肖像写真を残した一方、西郷の写真は一枚も残っていないと言われています。それでも私たちが「西郷」と聞いてその姿を思い浮かべることができるのは、肖像画によるイメージが流布したためです。エドアルド・キヨッソーネや佐藤均(さとう ひとし)、時任鵰熊(ときとう わしくま)といった画家が、遺族の写真や証言をもとに西郷を描きました。また、石川静正(いしかわ しずまさ)は絵が本職ではありませんでしたが、西郷と面識があり、思い出をもとに西郷のイメージを描き起こしました。
第一章 船出
嘉永6年(1853)のペリー来航は、西郷の人生に大きな変化をもたらしました。外国船の来航に対し、早くから危機感を抱いていた島津斉彬(しまづ なりあきら)が藩主となった薩摩藩では、近代化が推進され、西郷も政治の表舞台へと活躍の場を広げていきます。この章では、斉彬の威厳を示す大鎧や、斉彬から勝海舟(かつ かいしゅう)に宛てた書状、西郷が江戸勤務を命じられた時期の書付などを通して、幕末にさしかかろうとする時代を追います。
随分と簡易な大砲が展示されています。こちらは、ペリーが来航した際に幕府が各藩に海岸防備を命じ、大砲が不足したために即席で作らせた木製の大砲。未使用のまま残る数少ない木砲です。
第二章 流転
安政五年(1858)、井伊直弼(いい なおすけ)による「安政の大獄」が開始されました。西郷は、幕府の追求から月照(げっしょう)を守れず、月照と入水自殺を図りますが、一人息を吹き返し、奄美大島に潜居します。文久二年(1862)に、西郷は奄美大島から呼び戻されますが、その後「尊攘派を煽動している」として徳之島への遠島、続いて沖永良部島への遠島命令が下ってしまいます。第二章では、尊王攘夷運動により混迷する政局と、大きく変わっていった西郷の人生にまつわる資料を展観します。
第三章 飛翔
元治元年(1864)、西郷は、その力量が求められ、沖永良部島から鹿児島に呼び戻されました。「禁門の変」で長州軍の撃退に成功した西郷でしたが、幕府が再び長州攻めを示唆すると、西郷は幕府と手を切ることを決断。坂本龍馬の仲介により、薩長同盟が成立し、武力討幕への道が開かれました。本章では、薩長同盟覚書の写しや討幕の密勅、上野戦争の戦争画などの展示物により、一時代の終わりが示されます。
第四章 英雄
新政府の参議となった大久保利通の願いにより、西郷は政府入りを決断します。その後、朝鮮との外交問題をめぐって大久保らと対立すると、西郷は鹿児島へ戻り、狩猟や農業に従事しました。しかし、新政府に不満を募らせた士族の反乱が全国で巻き起こると、やがて西郷は生涯最後の戦い「西南戦争」に赴きます。この章では、西郷が佩用したサーベルや、大久保が所有したキセルなど、新時代を生きた彼らの所有物と合わせて、西南戦争の資料を展観し、彼らの生涯の終わりまでを追います。
エピローグ 人々の中の西郷
最終章では、発起人の急死により建設が中止された幻の西郷隆盛銅像の建設案や、上野の西郷隆盛銅像の制作過程を写した写真が展示されています。展示物を通して、西郷隆盛がいかに人々から慕われていたのか、感じ取ることができます。
内覧会で実施されたフォトセッションでは、「西郷どん」で大久保利通を演じる瑛太さんが登場。会場を観覧した瑛太さんは、小物好きの大久保が所有していた懐中時計に興味を引かれたとのこと。瑛太さん自身も懐中時計を持っているそうで「似たところがあるのかもしれない」と話していらっしゃいました。
本展覧会で展示されている資料はどれも状態がよく、非常に驚かされます。資料保全に関わる方の努力に感服すると同時に、幕末がほんの150年前の出来事であることを実感します。皆様もぜひ足を運んで、幕末や西郷隆盛に想いを馳せてみてはいかがでしょうか。
開催概要
展覧会名 | NHK大河ドラマ特別展「西郷どん」 |
会 期 | 2018年5月26日(土)- 7月16日(月・祝) 午前10時 – 午後5時(入館は午後4時30分まで) |
休館日 | 月曜日(※7月16日(月・祝)は開館) |
会場 | 東京藝術大学大学美術館 本館 展示室1、2、3、4 |
観覧料 | 一般1,500円(1,200円) 高校・大学生1000円(700円) (中学生以下は無料) ※()は20名以上の団体料金 ※ 団体観覧者20名につき1名の引率者は無料 ※ 障害者手帳をお持ちの方(介護者1名を含む)は無料 |
記事提供:ココシル上野
https://home.ueno.kokosil.net/
その他のレポートを見る:https://www.culture.city.taito.lg.jp/ja/reports