【国立西洋美術館】「ルーベンス展-バロックの誕生」内覧会レポート

国立西洋美術館


2018年10月16日(火)~2019年1月20日(日)の期間、国立西洋美術館で 「ルーベンス展-バロックの誕生」が開催されます。10月15日に内覧会が開催されましたので、その様子をお伝えいたします。

 

17世紀バロック美術を代表する画家、ペーテル・パウル・ルーベンス(1577ー1640)。
動きの多い劇的な構図、華麗な色彩、豊満にして魅惑的な裸体表現。その作風に魅せられた人々によって「王の画家にして画家の王」と最高の賛辞を送られたルーベンスは、諸外国にまでその名を轟かせました。

ルーベンスが工房を構えて活動の拠点としたのは現在のベルギーの町アントウェルペンですが、画家として独立した直後の8年間、イタリアで過ごしていたことは日本ではあまり知られていません。ルーベンスはヴェネツィアやマントヴァ、特にローマでさまざまな表現を吸収して画風を確立させ、帰郷後にそれを発展させていったのです。

本展は、ルーベンスとイタリアの関わりに注目し、その創造の秘密を解き明かそうとする試みです。ルーベンスと古代美術、イタリアの芸術家たちの作品計71点を展示し、ルーベンスがイタリアの作品からいかに着想を得、そして与えたのかについて探ります。

 

第一章 ルーベンスの世界

 

本展覧会は7部構成。時系列ではなくテーマ別に作品を展示し、ルーベンスとイタリア、双方向の交流からその着想の源を探ります。序章となる本章では、彼の代表的な肖像画作品が展示され、イタリアの画風を貪欲に吸収したその技法の特徴や、家族への愛情あふれる眼差しを垣間見ることができます。

 

こちらは《クララ・セレーナ・ルーベンスの肖像》という作品。最初の妻イザベラ・ブラントとの間に生まれた長女クララ・セレーナを描いたものです。背景や襟の部分などは大まかに捉えていますが、その表情は非常に丹念に描きこまれており、モデルの顔を真正面にとった構図も印象的です。
クララはこの時およそ5歳でしたが、その後12歳の若さで亡くなりました。ルーベンスはクララを愛し、彼女が亡くなった後も彼女の肖像画を何度も描いていたようです。

 

第二章 過去の伝統

第二章では「過去の伝統」と題して、ルーベンスの作品のみならず、古代彫刻やルーベンスによるヴェネツィア派の模写などを紹介しています。

 

《セネカの死》はその題の通り、皇帝ネロへの陰謀の疑いをかけられて自殺を命じられた哲学者セネカの最後を描いた作品です。画中のセネカはルーブル美術館にある有名な古代彫刻を元にしており、ローマでこの彫刻を目にしたルーベンスは6点もの素描を残しています。ルーベンスによる古典学習の成果を示す好例といえるでしょう。

 

第三章 英雄としての聖人たち-宗教画とバロック

ルーベンスはイタリア滞在中、マントヴァやジェノヴァ、ローマのために宗教画を描きました。古代彫刻のような理想的な身体像を示したルーベンスの宗教画は若い世代を魅了し、カラヴァッジョ以降のローマにおける最大の革新を示したのです。

第三章では、彼が参考にした作品、影響を与えた作品とともにルーベンスの宗教画が展示されています。

 

ルーベンス晩年の大作《聖アンデレの殉教》が初来日。この作品はマドリードのサンタンドレス・デ・ロス・フラメンコス王立病院の礼拝堂に寄贈されたもので、鑑賞することも滅多に叶わない、大変貴重なものだそうです。

《聖アンデレの殉教》が描くのは、ヤコボス・デ・ウォラギネの『黄金伝説』に記述された聖アンデレの殉教場面。ローマ総督によって磔にされた聖アンデレは、彼を取り巻く2万人の群衆に教えを説きました。群衆は怒って総督に十字架から下ろすように脅しましたが、アンデレは生きたまま十字架から下りることを拒否し、そのまま祈りを唱えて昇天したということです。

一条の光が射す天上を仰ぐ聖アンデレ、暗い空からアンデレの元に飛んできた天使、口々に何か叫び、懇願する人物たち。非常に劇的で、躍動感のある迫真の描写が胸に迫ります。

 

第四章 神話の力1-ヘラクレスと男性ヌード

著名な彫刻である《ファルネーゼのヘラクレス》に魅了され、その造形を深く学び取ったルーベンス。そんな彼の想像力は、特に神話の世界を描く時、最も生き生きと発揮されました。この章では、ルーベンスとルーベンス以降のイタリア画家たちによる男性ヌードを多く展示しています。

 

第五章 神話の力2-ヴィーナスと女性ヌード

一方こちらの章では、ヴィーナスに象徴される理想の女性美を描いたヌードを特集。ヴィーナスを描く際にも古代彫刻に範をとったルーベンスでしたが、晩年はより現実的かつ豊穣さを象徴するような、ふくよかな女性を描くようになっていきました。

 

第六章 絵筆の熱狂

鮮やかな色彩と、それを画面に与える素早い筆使い。17世紀の美術理論家ベッローリは「絵筆の熱狂」という言葉でルーベンスの絵画を説明しました。第六章では、こうしたルーベンス芸術の性格が最もわかりやすい形で表現された戦いの場面などの絵画を取り上げ、その特徴に注目しています。

 

イタリア滞在中の1605年頃に描かれた《パエトンの墜落》。太陽神アポロの息子、パエトンが乗る太陽の戦車が最高神ユピテルの放った雷を受け、まさに墜落しそうになるその瞬間を捉えた絵画です。翻るマントや逆立つ馬のたてがみ、空に走る稲妻が画面全体の暴力的な躍動感を高めています。

 

第七章 寓意と寓意的説話

高い教養を持つ外交官として活躍し、成功を収めたルーベンス。ルーベンスはその教養と知識を生かし、しばしば象徴の組み合わせを駆使した寓意画を描きました。最終章では、寓意的な仕掛けが施されたルーベンスの神話主題を、古代彫刻とともに展示しています。

 

軍神マルスがウェスタ神殿の火を守る巫女レア・シルウィアを見初める場面を描いた《マルスとレア・シルウィア》。レア・シルウィアとマルスの間に生まれた双子が成長し、ローマの建設者ロムルスとレムスとなったことは有名ですね。

通常は水汲みに行ったレア・シルウィアが森の中でマルスに犯されるのに対し、本作の舞台は神殿となっているため、ルーベンスは伝統的な解釈に大胆な変更を施しています。しかし同時にルーベンスは、マントの裾を握るキューピッドやマルスの武具や足元の雲など、この神話に関する古代文献の記述を非常に几帳面に取り入れていることもうかがえます。


本展監修者アンナ・ロ・ビアンコ氏

「ルーベンスの作品には、彼の人となりが非常に良く反映されていると思います。寛大で、愛情にあふれていて、偉大である。そんな彼の姿が絵からもにじみ出てきていると感じます。ある伝記作家は彼のことを『マエストーゾ・ウマーノ(威厳がある人)であると同時に、人間味にあふれている』と表現しましたが、実際ルーベンスは家族や友人などに非常に深い愛情を注ぐ人でした」

そう語ってくださったのは、美術史家にして本展監修者のアンナ・ロ・ビアンコ氏。

「また、ルーベンスは『どちらの出身ですか?』と聞かれた時、『私は世界市民だ』と答えていたそうです。今でこそそうした言葉は使われるようになりましたが、17世紀の時点でルーベンスがそう考えていたということ。いかに彼が進んだ考えの持ち主で、友愛の素晴らしさを理解していかたが、この発言からもわかりますね。この展覧会では、そんな彼の人間性にもフォーカスして楽しんでいただけたらと思っています」

 

「画家の王」と呼ばれ、一時代を築いた巨匠の画業と人間性を、イタリアとの関わりの中で解き明かす。
「ルーベンス展-バロックの誕生」は、2019年1月20日(日)までの開催です。
この機会にぜひ、足を運んでみてはいかがでしょうか?

 

ミュージアムショップでは、『フランダースの犬』とコラボしたオリジナルグッズも販売

 

開催概要

展覧会名 ルーベンス展-バロックの誕生
会 期 2018年10月16日(火)~2019年1月20日(日)

9:30~17:30
毎週金・土曜日:9:30~20:00
(ただし11月17日は9:30~17:30)
※入館は閉館の30分前まで

休館日 月曜日(ただし12月24日、1月14日は開館)、2018年12月28日(金)~2019年1月1日(火)、1月15日(火)
会場 国立西洋美術館
観覧料 当日:一般1,600円、大学生1,200円、高校生800円
団体:一般1,400円、大学生1,000円、高校生600円
※団体料金は20名以上。
※中学生以下は無料。
※心身に障害のある方および付添者1名は無料(入館の際に障害者手帳をご提示ください)。
公式サイト http://www.tbs.co.jp/rubens2018/

 
記事提供:ココシル上野


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【上野の森美術館】「フェルメール展」内覧会レポート


 
オランダ絵画黄金時代の巨匠ヨハネス・フェルメール(1632-1675)。技巧を凝らした作風や、現存作がわずか35点ともいわれる希少性もあり、国内外で不動の人気を誇っています。
 
上野の森美術館にて2018年10月5日(金)~2019年2月3日(日)の期間開催されている「フェルメール展」は、彼の作品が9点来日するという、日本美術展史上最大のフェルメール展として大きな話題を呼んでいます(一部展示替えあり)。
 
開催に先立ち行われたプレス内覧会に参加してきましたので、その様子をお伝えいたします。
 


 

音声ガイド&小冊子無料提供

 
本展では入場者全員に無料で音声ガイドが提供されます。ガイドを務めるのは、本展のナビゲーターでもある女優の石原さとみさん。柔らかい声で、わたしたちを17世紀オランダ絵画の世界へと誘います。
 
また、こちらの小冊子も無料配布されますが、本展の展示作品全49点の解説が収録されています。


じっくりと絵画の背景を理解しながらの鑑賞が叶います。
 

17世紀オランダ絵画の傑作がずらり

 
本展は6章で構成されており、1章~5章はフェルメールと同時代のオランダの画家による絵画がテーマごとに展示されています。
 
静粛な宗教画から当時のオランダの市井の人々の日常を捕らえた風俗画まで、幅広いジャンルの作品が揃います。テーマはそれぞれですが、どの作品も対象物を細密に描き出しており、見入ってしまいます。
 
こちらに描かれているのは実在する建造物ではないそうですが、絵の前に立つと奥へ奥へと引き込まれていきそうです。

エマニュエル・デ・ウィッテ《ゴシック様式のプロテスタントの教会》1680-1685年頃 油彩・カンヴァス アムステルダム国立美術館

 
写真左の《本を読む老女》は老女の開いている本のページにも細かく文字が書き込まれており、内容を読み取ることさえできます。
左 ヘラルト・ダウ《本を読む老女》1631-1632頃 油彩・板 アムステルダム国立美術館、右 ユーディト・レイステル《陽気な酒飲み》1629年 油彩・カンヴァス アムステルダム国立美術館

 
これら2作品は対となっています。一方の作品で男性が書いた手紙を、もう一方の作品で女性が読んでいます。
左 ハブリエル・メツー《手紙を書く男》、右《手紙を読む女》 ともに1664-1666年頃 油彩・板 アイルランド・ナショナル・ギャラリー

 
ぱっと見は幸せな恋人たちのように思われますが、人物の仕草や作中画に込められた意味を知ると、2人の関係が浮かび上がってきます。音声ガイドや小冊子をたよりに読み解いてみてください。
 
また、本作はフェルメールの影響を顕著に表していることでも知られています。本作の背景となっている部屋や女性の黄色いジャケットなど、フェルメール作品との共通点を多々見出すことができます。
 

フェルメール・ルーム

 
第6章はフェルメールの作品のみが揃う「フェルメール・ルーム」で展開されています。
 
通常、欧米の主要美術館にそれぞれ所蔵されているフェルメールの作品を一度に観覧できるという贅沢な空間です。

 
 
なかでも注目作は、フェルメールの代表作のひとつとして知られる《牛乳を注ぐ女》。本展では至近距離でまじまじと鑑賞することができます。

《牛乳を注ぐ女》1658-1660年頃 油彩・カンヴァス アムステルダム国立美術館 ・解説をする千足伸行氏(本展日本側監修、成城大学名誉教授・広島県立美術館館長)

 
中央に立つ人物に注目しがちですが、細部に目を向けてみると、点描によって光の粒子を表していたり、壁の汚れやシミをひとつひとつ描いていたりと、フェルメールが子細に対象を観察し、いかにそれをカンヴァスの上で表すかに心を砕いていたかを見て取ることができます。
 
 
こちらの《ワイングラス》は日本初公開。
ヨハネス・フェルメール《ワイングラス》1661-1662年頃 油彩・カンヴァス ベルリン国立美術館

 
作中の壁にかかる絵やステンドグラスに描かれる女性像によって、男性による女性の誘惑を示唆し、女性に注意を促しているそう。
 
このように、この時代のオランダ絵画では、絵の中に道徳的な意味や訓戒を表したものが多々見られたそうです。
 

期間限定展示に注意

 
フェルメールの作品中、《赤い帽子の娘》は2018年10月5日~12月20日、《取り持ち女》は2019年1月9日~2月3日までの期間限定で展示されます。予めお目当ての作品をチェックして、お見逃しのないようご注意ください。
 
作中の暗い部屋のなかに差す光がまぶしいほどに感じられます。本作は他の作品と比較するとだいぶサイズが小さいのですが、赤とフェルメール・ブルーと呼ばれる青の色彩に目を引かれます。日本初公開。

ヨハネス・フェルメール《赤い帽子の娘》1665-1666年頃 油彩・板 ワシントン・ナショナル・ギャラリー National Gallery of Art, Washington, Andrew W. Mellon Collection, 1937.1.53 ※12月20日(木)まで展示

 
 
本展開催1カ月前に追加出展が決まった本作は、フェルメールの初期作のひとつであり、初めて手掛けた風俗画です。日本初公開。
ヨハネス・フェルメール《取り持ち女》 1656年 油彩・カンヴァス ドレスデン国立古典絵画館 bpk / Staatliche Kunstsammlungen Dresden / Herbert Boswank / distributed by AMF

 

おみやげにも注目

 
ドイツ生まれの玩具・プレイモービルが「牛乳をそそぐ女」を再現!

プレイモービル 1,800円(税込)

 
ミュージアムショップには、他にも本展ならではのアイテムが多数揃っていますので、隅々までチェックしてみてください。
 


多数の観覧客の来館が予想されていますが、本展では待ち時間緩和のため日時指定入場制を導入しています。日本美術展史上最大のフェルメール展、ぜひ足を運んでみてください。
 

展覧会概要

 

展覧会名 フェルメール展

会 期 2018年10月5日(金)~2019年2月3日(日)
※12月13日(木)は休館。

会場 上野の森美術館(東京都台東区上野公園1-2)

開館時間 9:30~20:30(入館は閉館30分前まで、開館・閉館時間が異なる日もあり)

日時指定入場制 待ち時間緩和を目的とし、入場時間を6つの時間帯に分けた前売日時指定券(当日日時指定券料金は+200円)での入場を原則としており、当日日時指定券は前売販売に余裕があった時間枠のみ販売。
一般2500円、大学・高校生1800円、中学・小学生1000円、未就学児は無料。

公式HP https://www.vermeer.jp/

インフォメーションダイアル 0570-008-035(9:00~20:00)

 
記事提供:ココシル上野
 
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【東京国立博物館】特別展「京都 大報恩寺 快慶・定慶のみほとけ」内覧会レポート

重要文化財 如意輪観音菩薩坐像(六観音菩薩像のうち) 肥後定慶作 鎌倉時代・貞応3年(1224) 大報恩寺蔵

 
2018年10月2日(火)から12月9日(日)まで、東京国立博物館では、特別展「京都 大報恩寺 快慶・定慶のみほとけ」が開催されています。10月1日に内覧会が開かれましたので、その様子をお伝えいたします。
 
鎌倉時代、1220年に義空(ぎくう)上人によって発願された真言宗智山派の古刹、大報恩寺。近くに京都を南北に縦断する千本通りがあることから「千本釈迦堂」の名で親しまれ、釈迦信仰の中心地として、貴族から庶民まで幅広い信仰を集めてきました。
応仁の乱をはじめとする幾多の戦火を免れたその本堂は国宝に指定されており、また、「おかめ」発祥の地として、縁結び、夫婦円満などの福徳があることでも知られています。
 
その本尊は、快慶の一番弟子である行快が制作した釈迦如来坐像。そして、その釈迦如来坐像に侍り立つのは、快慶最晩年の作である十大弟子立像です。
本展覧会では、これら大報恩寺に伝わる「慶派」の名品の数々がそろい踏み。運慶同世代の快慶、そして運慶次世代の名匠による鎌倉彫刻の豪華共演が実現します!

 

展示風景


 
本展の開催場所は東京国立博物館 平成館 特別第3・4室。同館の第1・2室では特別展「マルセル・デュシャンと日本美術」(10/2〜12/9)が開催されており、ふたつの展覧会が同時に、隣接しておこなわれているということになります。現代的なアート作品が並ぶデュシャンの展示会場と異なり、こちらの会場は仏像が放つ静謐な雰囲気で満ちており、そのコントラストも興味深く思えます。
 

重要文化財 傅大士坐像および二童士立像 院隆作 室町時代・応永25年(1418) 大報恩寺蔵

 
北野経王堂図扇面 室町時代・16世紀

 
特別展「京都 大報恩寺 快慶・定慶のみほとけ」は三部構成となっており、冒頭の「大報恩寺の歴史と寺宝-大報恩寺と北野経王堂」では大報恩寺に伝わる北野経王堂ゆかりの文化財、そして洛中(京都市内)最古の木造建築物として国宝に指定された本堂とその歴史が紹介されています。
 
北野経王堂とは、大報恩寺のほど近くに足利義満によって建てられた仏堂で、当時は洛中・洛外を含む京都市中最大の巨大建造物でした。経王堂では歴代の室町将軍が主導する「北野万部経会」がおこなわれるなど大変賑わいましたが、神仏分離の影響で解体され、収蔵されていた文化財や経などはあらためて大報恩寺へと移されました。
 
第一章では、平安時代の仏像を含む北野経王堂ゆかりの品々が展示され、在りし日の姿を今にそのまま伝えています。
 

 
(中央)重要文化財 舎利弗立像(十大弟子立像のうち) 快慶作 鎌倉時代・13世紀 大報恩寺蔵

 
続く「聖地の創出-釈迦信仰の隆盛」では、寺内で現在では別々に安置されている本尊「釈迦如来坐像」と「十大弟子立像」を同じ空間で展示。年に数回しか公開されない秘仏である釈迦如来坐像、そして十大弟子立像が10体そろって寺外で公開されるのは初めてです。
 
大報恩寺が建立された13世紀前半は、度重なる戦乱により「末法」(悟りを得られなくなる時代)の世相が強く感じられていました。義空上人は、この世に常住して説法する釈迦を造ることによって、末法の世を生きる人を救う場を生み出そうとしたのです。
 

 
重要文化財 十一面観音菩薩立像(六観音菩薩像のうち) 肥後定慶作 鎌倉時代・貞応3年(1224) 大報恩寺蔵

 
最後を飾る第三章「六観音菩薩像と肥後定慶」の中心となるのは、運慶一門の慶派仏師、肥後定慶作の「六観音菩薩像」。暗く、燃えるような真紅を背景に立ち並ぶ六観音の姿は、壮観のひとこと。六観音とは、地獄道や餓鬼道などの六道から人々を救い出してくれる仏さまです。
 
本像が持つ生々しい実在感は、末法の世に人々が仏さまに求めた切実な念や願いを感じさせてくれます。
 

展示作品紹介

 

重要文化財 千手観音菩薩立像 平安時代・10世紀 大報恩寺蔵


 
京都の中心地にありながら戦火をまぬがれた大報恩寺。そのために大報恩寺には周辺の古刹に収められていた文化財が多く集められました。その中でも、こちらは平安時代の名品「千手観音菩薩立像」。膝下の翻波式衣文と呼ばれる衣の表現は、平安時代前期に流行したもので、このことからも本作が大報恩寺建立以前のものであることがわかります。
 

重要文化財 釈迦如来坐像 行快作 鎌倉時代・13世紀 大報恩寺蔵


 
大報恩寺の秘仏本尊である釈迦如来坐像。像高は89.3センチ(約三尺)で、背面の下には「法眼行快」と朱書銘があり、行快が「法眼」という僧位にあった時に制作されたことを伝えています。
 
横にふっくらと張り出した頬、きりりと上がった目尻などに行快らしさがあらわれており、その力強い表情には、師である快慶の死後、自分の作風を模索し始めたことを感じさせます。
 

重要文化財 准胝観音菩薩立像(六観音菩薩像のうち) 肥後定慶作 鎌倉時代・貞応3年(1224) 大報恩寺蔵


 
六観音菩薩像の中では比較的作例が少ない准胝(じゅんでい)観音。慈悲の心を体現している女性像です。像内から発見された墨書銘に「肥後別当定慶」の署名があり、運慶次世代の実力派仏師、定慶作であることが明らかになりました。また、六観音にはいずれも針葉樹のカヤが用いられていますが、これは本来白檀で作られる「壇像」を意識しているためです。
 
結いあげた髪の毛の柔らかな質感や、空気をはらむ衣の描写など、非常に緻密な細部の表現には驚かされます。ぜひ会場に足を運んで、間近で定慶の彫技をご堪能ください!
 

 
光背や台座などが造像当初のまま残されているのも大きな特徴。特に光背(仏さまが発する光を具象化したもの)は脆いため破損しやすく、造像当初のものがここまで完全に残っているのは大変希少だということです。
 
また、六観音菩薩像は10月28日(日)までは光背付きの姿で、後期の10月30日(火)からは光背を取り外し、その後ろ姿を間近に鑑賞できます。なだらかな背中の曲線や、優美な背中の衣の文様など、普段とは違った角度から観音様の魅力を堪能できる機会ですね。


 

 
新しい時代の表現を切り開いた巨匠、運慶と快慶。大報恩寺が建立された1220年代は、その二人が相次いで表舞台を去り、行快、定慶ら次世代の仏師たちが活躍しはじめた時代でした。大報恩寺に残る珠玉の名作からは、そうした次世代の仏師たちの創作上の悩みや試行錯誤、さらに当時の人々の真剣な「祈りのかたち」を感じ取ることができます。
 
本展の会期は2018年10月2日(火)から12月9日(日)まで。
慶派の“スーパースター”たちが集う会場で、鎌倉時代の京都に思いをはせてみてはいかがでしょうか?
 

展覧会概要

展覧会名 特別展「京都 大報恩寺 快慶・定慶のみほとけ」
会 期 2018年10月2日(火)~12月9日(日)
会場 東京国立博物館(台東区上野公園13-9) 平成館 特別第3・4室
開館時間 9:30~17:00
※金曜・土曜日、10月31日(水)、11月1日(木)は21:00まで
※入館は閉館の30分前まで
休館日 月曜日
※ただし10月8日(月・祝)は開館、10月9日(火)は休館
観覧料 一般  当日1400円 団体1200円
大学生 当日1000円 団体 800円
高校生 当日 800円 団体 600円
※中学生以下無料
※団体は20名以上
※障がい者とその介護者1名は無料(入館の際に障がい者手帳などを要提示)

TEL 03-5777-8600(ハローダイヤル)

展覧会公式サイト https://artexhibition.jp/kaikei-jokei2018/

記事提供:ココシル上野
 
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「UENOYES バルーン DAYS 2018」取材レポート


 
社会包括をイメージしたアートプロジェクト「UENOYES(ウエノイエス)」は、2018年9月28日(金)~30日(日)の3日間、上野恩賜公園を舞台に「UENOYES バルーン DAYS 2018(ウエノイエス バルーンデイズ)」を開催します。
 
「UENOYES」というタイトルの中には、「NO」と「YES」が含まれています。障害のあるなし、また子どもから大人まで、人種や国を超えた様々な人々の「NO」と「YES」すべてを包括していくという意味が込められています。「UENOYES」は年間を通して多彩なプログラムを展開して上野から世界に発信していくというプロジェクトですが、今回の「UENOYES バルーン DAYS 2018」はそのキックオフイベントとして開催されます。
 
初日の28日に実施された報道関係者向けのオープニングガイドツアーに参加しましたので、その様子をレポートいたします。
 



快晴のなかスタートしたガイドツアー。UENOYES総合プロデュ―サーの日比野克彦氏(写真右)がガイドとしてプログラムを紹介してくださいます。文化庁長官の宮田亮平氏(写真左)も参加されました。参加者はそれぞれ小型ラジオ、今回のイベントのモチーフであるバルーンを身に着けます。日比野氏によると、「バルーンはどこかに連れて行ってくれるという象徴であるとともに、バルーンをどこかに連れていくこともできる。そして、このイベントでバルーンを着けたもの同士がすれ違うことで、何か感じるものがあるはず」だそうです。
 

スタチュー写生会

スタチューを囲んでイーゼルに向かう人々。いつもの上野公園では見慣れない風景です。しかも、よく見ると、スタチューが動いています。路上パフォーマーが彫刻に模しています。

 
 
東京藝術大学の在校生や卒業生が講師として参加者にアドバイス。子どもを対象とした午前の部(10:00~12:00)は事前予約が必要ですが、午後の部(13:00~17:00)はどなたでも空いている席でスケッチに参加できます。
 
画用紙、コンテ、イーゼル、画板、椅子は無料で貸し出しをしているので、手ぶらで来てもふらっと立ち寄ることができます。

全身の耳になる、全身の目になる

広場に賑やかな音が響き渡ります。音のアーティスト西原尚氏と画家の藤田龍平氏によるパフォーマンス&ワークショップです。アーティストが目や耳に障害を持つ方と対話を重ね、事前に公募した参加者とともに目や耳、手足や体の使い方を見つめなおすワークショップを実施。バルーンデイズ期間中は、ワークショップの参加者とともにパフォーマンスを披露します。
 
手押し車を大人用に改造したもの。押すと音が出ます。

 
 
海外からきたご家族も興味津々。初めて訪れた上野を楽しんでいらっしゃるようでした。

 
 
こちらの楽器は東日本大震災の際に宮城県の南三陸町の役場で流されたスピーカーで作られています。

 
 
バルーンをつなげたスティックを掲げて公園中を走り、空に絵を描くというパフォーマンス。風の流れによって変化する風景。この瞬間にしか楽しめない絵画です。

FIVE LEGS Factory

広場の一角に設けられたこちらのテントの下では、なんと移動式の屋台が造られています。

 
そもそもFIVE LEGSとは、インドネシアの移動式屋台「KAKI LIMA(カキリマ)」から来ています。インドネシア語の「KAKI」は屋台、「LIMA」とは足という意味。屋台に付属する3つの支点と、それを引く人の足2本を足して、FIVE LEGS。異国の文化を上野という都市の日常として翻訳してゆくという試みのもと、北澤潤氏により3日がかりで「KAKI LIMA」が作成されます。最終日には完成したKAKI LIMAを引いて上野公園中を移動される予定です。

シング・パーク・ハルモニア

綺麗なハーモニーを奏でるのは佐藤公哉氏が率いるアーティストユニット・トーラスヴィレッジを中心とした、参加型合唱パフォーマンス。簡単なメロディーの繰り返しによってハーモニーが作られていきます。イベント当日はその場で配布される楽譜を見ながら、どなたでも飛び入りで参加することができます。

 
 
アーティストの方、事前ワークショップに参加された方がリードしてくださるので、メロディーを真似て口ずさむだけでパフォーマーの一員になることができます。特設ステージはなく、公園内の様々な場所で実施されるようです。どこかでハーモニーが聞こえたら、参加してみてはいかがでしょうか。

プラザ・ユー Plaza・U

少し汗ばむほどの快晴のなか、一歩木陰に足を踏み入れるとひんやりとしてとても気持ち良く感じられます。そんななか地面に寝そべっている方々がいらっしゃいました。

 
 
路上生活経験者からなるダンスグループ「新人Hソケリッサ!」の皆さんです。率いるのはアーティストのアオキ裕キ氏。アオキ氏は2001年、NY留学中にテロと遭遇して以来、「今を生きる身体から生まれる踊り」を追求。日々生きるということに真剣に向き合う路上生活経験者と接触し、ともに肉体表現作品を作り上げていきます。2ヶ月半に渡る噴水前広場での公開稽古を経て、バルーンデイズ中に新作パフォーマンスを披露します。今回はたまたまリラックスしているところを見学させていただきましたが、パフォーマンスでは切れのあるダンスを見せてくださるそうです。
 

東北と上野を結ぶ 星屑屋台

スペイン出身のアーティストであるホセ・マリア・シシリア氏は2011年の東日本大震災発生から今日に至るまで、東北で被災者の方々とアートを通した交流を続けてこられました。

 
 
この「星屑屋台」はシシリア氏の東北での活動を紹介し、その活動に携わった人々や震災を経験した人々とともに震災や作品について語り、また出会いの場を創出するという目的で作られました。紙粘土で3.11のイメージで和菓子を作ったり、被災地の和菓子職人が作った和菓子を提供したりといった活動が行われます。
 
また、上野公園近辺に位置する国立国会図書館国際子ども図書館では、シシリア氏の作品の展覧会「アクシデントという名の国」が2019年2月24日(日)まで開催されます。
 
シシリア氏は近年、音を分析して二次元、三次元に形象化する作品を多く発表していますが、本展では東日本大震災の際の津波の音の轟音を基に制作された作品や、宮城県三陸町で住民に警報を発し続け亡くなった遠藤未希さんの声や、その死から発想した連作「数千年にわたる遠藤未希への想い」などを紹介しています。

きき耳ラジオ

美術家の小山田徹氏がゲストとともに公園内を散歩し、「防災」をテーマに地域の防災や食などに関するトークを展開するプログラム。参加者もラジオを身に着け、園内を一緒に散歩しながら語り合います。

 
 
上野公園は憩いの場として日々多くの人々を惹きつけていますが、敷地内には貯水タンクを有しており、災害時には避難所となります。本プログラムは、避難所としての視点から上野公園を見つめなおし、何が起きるのか、どのように生き延びるのかを語り合あうきっかけを与えてくれるものとなります。


上記でご紹介したプログラムのほかにも、気軽にアート体験に参加できる企画が充実しています。アートを楽しみながらも、震災について、また人とのつながりについて、何らかの気づきが得られるのではないでしょうか。
 

UENOYES バルーン DAYS 2018概要

 

会期 2018年9月28日(金)~30日(日)

時間 10:00~17:00

会場 上野恩賜公園竹の台広場(噴水広場)国立国会図書館国際子ども図書館

参加費 無料

公式ウェブサイト https://uenoyes.ueno-bunka.jp/


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「江戸まち たいとう芸楽祭 」 オープニングイベント 取材しました

上野恩賜公園竹の台広場(噴水広場)

大衆芸能の発祥地・台東区。本区ではこれまでに先人によって培われてきた芸能・文化のさらなる発展を願い、2018年8月4日(土)から2019年2月16日(土)にかけ、「江戸まち たいとう芸楽祭」を開催します。
 
名誉顧問はこの台東の地で芸を磨いてきたビートたけしさん。
 
夏の陣・冬の陣と大きく二部に分けて様々なプログラムを通し、「肩の力を抜いて楽しめる芸能」を発信していきます。
 
今回、その芸楽祭の開催を祝して8月4日(土)に行われたオープニングイベントを取材しましたので、その様子をお届けします。

美聖&プッチャリンfeat.車寅一郎

16時に始まった本イベント。まだ日が高く、気温は34度ありましたがステージ周辺に人が集まってきます。
 
まず賑やかに登場したのは、「美聖&プッチャリンfeat.車寅一郎」。2011年より「美聖&プッチャリン☆浅草流し」として活動していますが、本日は寅さんのモノマネをする車寅一郎さんと共演しました。

 
艶やかな着物が目を引く、浅草出身のシンガーソングライター美聖(みきよ)さん。

力強く美空ひばりさんの「お祭りマンボ」やオリジナルソング「日本・茶チャチャ」を歌いあげます。「日本・茶チャチャ」は日本の応援歌。海外の方にも日本の良さを伝えたいという想いを込めて作られた曲です。お客さんの手拍子で会場が盛り上がります。
 
 
車寅一郎さん。映画から飛び出してきたかのように、寅さんそっくりです。

 
 
「大きな木になりたい」という曲に合わせてパントマイムを演じるプッチャリンさん。ユーモラスでありながらどこか哀愁を誘う表情で情感たっぷりに演じます。

 
 

「昭和歌謡で巡る東京観光 唄声バスツアー」唄声ガイドさん

次に登壇したのは、日ごろ「観光名所を巡りながら、その土地にちなんだ昭和の名曲を全員で大合唱」するという新感覚のツアーを提供するガイドさんたち。本日は特別にステージで歌謡曲ライブを披露してくれました。

 
 
この季節にぴったりなキャンディーズの「暑中お見舞い申し上げます」や、誰もが知る坂本九さんの名曲「上を向いて歩こう」などの郷愁を感じるメドレー。マイクを向けられたお客さんも一緒に歌います。

 
 
西城秀樹さんの「YOUNG MAN(Y.M.C.A)」では、みんなが音楽に合わせて体を動かし会場が一体となりました。

 
 

ピヨピヨレボリューション

このころだいぶ日が落ちて涼しさを感じられるようになりました。ステージ前で足を止める方がさらに増え始めます。
 
ピヨピヨレボリューションは、「まるで音楽ライブを観ているかのようなノリで物語を楽しむことができる」歌とダンスとお芝居を組み合わせたパワフルなライブstyle演劇を体現する劇団。

 
 
本日は「即興ライブstyleエチュード」と称し、その場でお客さんから募ったキーワードをもとにお芝居を作り上げるという試みに挑戦しました。観ているこちらも一体どのようなストーリーになるのかドキドキします。本当に音楽ライブであるかのように、お客さんを巻き込んで展開してゆくお芝居でした。

 

​浅草安来節 大和家一座

安来節とはどじょうすくいでおなじみの島根県の民謡ですが、大正時代に浅草と大阪で大ブームになりました。その浅草でのブームを担ったのがこの大和家の初代八千代でした。

 
 
現在どじょうすくいというと、男踊りを思い浮かべる方が多いかと思われますが、実はより歴史の長い女踊り。

 
 
細い筒の中に小銭の入った「銭太鼓」の演奏も披露。太鼓が宙に舞うたびにシャンシャンという涼し気な音が響きます。

 
 
そしておなじみ男踊り。お客さんのなかには海外からの観光客も目立ちましたが、興味深げに鑑賞していました。

 
 

服部征夫区長、河野純之佐議長挨拶

台東区長と台東区議会議長から、区を代表して挨拶がありました。
 
着流しで登場の服部征夫台東区長は「今年は江戸から東京に改称して150年。江戸ルネサンス元年として、様々な試みをもって粋で人情豊かな台東区ならではの文化を国内外に広く伝えたい」と語ります。

 
 
河野純之佐台東区議会議長からは「台東区は大衆芸能・文化の発祥地。今までに多くの芸能人・文化人がこの地で誕生しました。文化の中心地としてのさらなる発展のため、今回芸楽祭を開催しました。上野だけでなく浅草、谷中など台東区全体で盛り上げていきたい」とのお話がありました。

 
 

スペシャルゲスト登壇(岸本加世子さん、アル北郷さん)

いよいよ待ちに待ったスペシャルゲストの登場です。
 
本日イベントの最後に上映が予定される、芸楽祭名誉顧問・北野武監督の映画『菊次郎の夏』。
 
本作にちなんだゲストということで作品中で菊次郎の妻を演じた女優の岸本加世子さんと、長年ビートたけしさんの付き人を務めるアル北郷さんのお二人が登場しました。区長・区議会議長とともに記念撮影です。

『菊次郎の夏』は母親と離れ離れになった少年とビートたけしさん演ずる中年男の菊次郎が、一緒に母親探しの旅に出るロードムービーです。台東区・浅草がその旅の出発地ということもあり、今回オープニングイベントでの上映が決定されました。
 
バックミュージックとして、本作のメインテーマである久石譲さん作曲の『Summer』が流れるなか対談が進められました。夜のとばりが下りるころ、ひっそりと流れるノスタルジックな旋律が映画上映に向けて雰囲気を盛り上げます。
 
本作の公開は1999年ということもあり、主に前年ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を受賞した『HANA-BI』と比較して語られました。

 
 
岸本さんは「『HANA-BI』はバイオレンスな表現が多くてたけしさんの怖い面が出ているけれど、『菊次郎の夏』はたけしさんの優しい部分、弱い部分が見られる」と語ります。
 
浅草はたけしさんが芸人としての一歩を踏み出した地であり、たけし映画で浅草が舞台となっているものはこの1本のみ。「菊次郎」はたけしさんの実の父の名前ですし、岸本さん演じる菊次郎の妻にはたけしさんの実の母・さきさんを彷彿とさせるところがあるそう。そのようなエピソードから、本作はたけしさんにとって思い入れの深い作品なのではないかと感じました。
 
その他数々の裏話によりお客さんの作品への期待が最高潮に達したところで、上映開始です。広々とした屋外で夜風に当たりながら映画を堪能して、本日のイベントは終了です。


8月4日(土)よりスタートした江戸まちたいとう芸楽祭は台東区各地で芸能・映画・演劇の分野で様々なプログラムが開催されます。無料で参加できるものがほとんどですので、気軽に覗いてみてはいかがでしょうか。詳しくは、下記公式ホームページをご覧ください。
 

江戸まち たいとう芸楽祭概要

会 期 2018年8月4日(土)~2019年2月16日(土)

会場 ○上野地区 上野恩賜公園 噴水前・御徒町南口駅前広場・上野ストアハウス ほか
○谷中地区 防災広場「初音の森」ほか
○北部地区 山谷堀広場・奥浅草界隈 ほか
○南部地区 浅草橋区民館 ほか
○浅草地区 浅草公会堂浅草九劇・木馬亭・雷5656会館 ときわホール ほか

公式HP http://www.taitogeirakusai.com/

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【東京都美術館】「BENTO おべんとう展-食べる・集う・つながるデザイン」内覧会レポート

東京都美術館

2018年7月21日(土)から10月8日(月・祝)まで、東京都美術館で「BENTO おべんとう展-食べる・集う・つながるデザイン」が開催されています。7月20日に報道内覧会に参加しましたので、今回はその内容についてレポートいたします!

私たちが普段口にしている「おべんとう」。あなたは、いつもどんな気持ちで食べていますか。
いつも一緒におべんとうを食べる仲間と談笑しながら?それとも、作ってくれた人のことを想像しながら?

行楽弁当から毎日の昼ごはんまで、「おべんとう」は私たちの生活に深く根付いています。誰かが作ってくれたお弁当は人から人へと手渡された「贈り物」であり、人と人とのつながりを深めるソーシャル・ツールとして、古来から重要な役割を果たしてきました。
 

《あゆみ食堂のお弁当》2017年
料理:大塩あゆ美、写真:平野太呂

「おべんとうを作る人」は栄養バランスと全体の色彩、配置を考えてお弁当箱に食材を詰めていきます。これって、本当に食べてくれる人のことを考えなければできないことですよね。そこには、食べる人と作る人の間の物語がある。つまり、おべんとうは「食べること」をめぐるコミュニケーション・ツールでもあるのです。
 
本展覧会は、日本独自の文化である「おべんとう」をコミュニケーション・デザインの側面から捉え直すという試みです。会場には遊び心のあるユニークなお弁当や、現代アーティストの参加型の作品が展示され、おべんとうの魅力を全身で体験し、その新たな視点を得られる空間となっています。

歌って踊れる「おべんとう」?!

展覧会は、「発酵デザイナー」の小倉ヒラクさん制作の楽しい新作アニメーション作品<おべんとうDAYS>から始まります。「ゆる系」のほんわかした絵柄に口ずさみやすいメロディと歌詞、振り付けで、歌って踊ると自然におべんとうのことがわかるという作品。
 

気さくに来場者に接する小倉氏。地下のギャラリーにも小倉氏の作品が展示されている

「言えないきもちが、かくし味だよ。こだわろう、思いのまま」

<おべんとうDAYS>はゆかいなキャラクターたちはもちろん、豊かな四季の情景と、シンプルなようで深く読み解ける歌詞が印象的です。踊る、歌う。身体を使ったムーブメントが開く新しい「おべんとう体験」。ぜひ、会場で一緒に口ずさんでみてください!

「おべんとう」が生み出す、楽しいコミュニケーション

広々とした地下ギャラリー。「コミュンケーション」を核に制作された作品が展示されている

 
お弁当を食べる人々の姿を写した阿部了氏の作品《ひるけ》

 
大塩あゆ美氏によるプロジェクト《あゆみ食堂のお弁当》の展示

地下ギャラリーでは、おべんとうが生み出すコミュニケーションに注目したアーティストたちの作品が多数展示されています。

読者からの「誰々に、こんなお弁当を作ってあげたい」というお便りに応えて大塩あゆ美氏がお弁当を作り、読者にレシピとお弁当を届けるという《あゆみ食堂のお弁当》では、実際に制作されたお弁当を平野太呂氏が撮影した写真を展示。
 
また、阿部了氏の作品《ひるけ》は、色々な人がお弁当を黙々と食べている姿を写したもの。「どんな人が作ったのだろう?」「今、どんな気持ちなのだろう?」写真を見ているだけで、想像力を掻き立てられます。
 

森内康博氏によって撮影されたワークショップのドキュメンタリー映像

 
お弁当箱を開けると参加した中学生たちの映像が流れる

 
小山田徹氏(とお嬢ちゃん)によるユニークな《お父ちゃん弁当》

 
「おべんとうルーレット」。誰に、何をテーマにしてお弁当を作るか決めてくれる。テーマが決まったら、お弁当のアイディアを書き出してみよう

お弁当を起点に自分と自分の身の周りの世界との関係についてじっくり考えることのできる展示も紹介。

小山田徹氏の作品は、長女がお弁当を考案して描き、父である小山田氏がその絵を元にお弁当を作るという日々の営みを紹介する《お父ちゃん弁当》。中には大人ではとても作ろうとは思えないようなアイディアのお弁当もあり、小山田氏は一体どんな気持ちでこの「無茶ぶり」に向き合ったのだろうと考えると、とても楽しいです(笑)。会場の一角にはルーレットでテーマと贈る相手を決めてお弁当作りにトライしてみるというコーナーもあります。

森内康博氏は、中学生が親の手を借りずに自分でお弁当を作る様子を子供たち自身がドキュメンタリー映像にするワークショップを開催。そのプロジェクトを映像作品として展示しています。テーブルの上のお弁当箱を開けると、箱の中に参加した中学生たちの映像が流れるというユニークな演出も。

「おべんとう」を再発見。参加体験型《intangible bento》

地下に広がるマライエ・フォーゲルサング氏による参加型展示。小屋のような10のセクションがある

 
会場の各所で「精霊フォン」をかざすと精霊たちの声が聞こえてくる。大人用と子供用に分かれているので家族連れで楽しめる

 
精霊さんになるフォーゲンルサング氏。作者が一番楽しんでいるような気が・・・

 
未来の食肉産業に貢献することが期待されている「骨植物」

食べることをデザインする「イーティング・デザイナー」であるマライエ・フォーゲルサング氏。彼女の展示はおべんとうの「触ることや見ることができない」側面を《intangible bento》の展示で生き生きとした物語として表現し、私たちをその中に誘います。

私たちの慣れ親しんだおべんとうを、普段とは違う視点で捉える作品を通じて、来場者自身がよくみて考え、おべんとうを再発見することができるような空間です。

本展示を監修したイーティング・デザイナーのマライエ・フォーゲルサング氏。もともとはオランダのプロダクト・デザイナー

会場では、「精霊フォン」を使って精霊たちの声を聞くことができます。彼らが語りかけてくるのは、目に見えない思い出や生産者との物語、そしてバイオプラスティックのお弁当箱や昆虫食など、おべんとうの「未来の可能性」です。

お弁当は作る人から食べる人であるだけではなく、今を生きている私たちから「未来のあなた」への贈り物なのかもしれません。

FRAGMENTS PASSAGE – おすそわけ横丁

おすそわけ横丁の入り口。まるで東南アジアのバーザールのような雰囲気が漂う

 
横丁にはたくさんの人に頂いた「おすそわけ」が並ぶ。これは・・・兜?

 
バザールに集まる「おすそわけ」を使ったワークショップ

誰かとおべんとうを食べる時の楽しみは、「おかず交換」。そういう人も多いでしょう。北澤潤氏はこの「おすそわけ」の要素に着目し、美術館の中にその気持ちや文化を考える《おすそわけ横丁》を作り上げました。

まるで東南アジアの伝統市場の風景を彷彿とさせるこの通りには、持ち寄ったものを自由におすそわけし合う空間が広がっています。家からものを持ち寄ったり、広場で敷物を広げたり。会場の一角では、横丁に集まった「おすそわけ」を使ったワークショップも行われていました。そこには、誰かに何かを「教える」といった空気はありません。あくまでこれも「おすそわけ」なので、みなさんとても自由でくつろいだ雰囲気で取り組まれていました。

この《おすそわけ横丁》は、日々おこなわれる「おすそわけ」によって変化する展示だと言えるでしょう。あなただったら、何をおすそわけしますか?してもらいますか?
 

会場には、世界のさまざまなお弁当箱を紹介するコーナーも

他にも会場では江戸時代に宴の場で使われた美しくユニークな形のお弁当箱や、世界のさまざまなお弁当箱を紹介。私たちの文化の中の「食べること」への工夫やデザインに注目し、「お弁当を食べる」という行為を通して起こる人と人とのコミュニケーションについて考えます。
 
また、8月20日には休館日の月曜日に「キッズ・デー」を開催。楽しい参加型プログラムで親子でゆったり楽しめるほか、会期中は東京都交響楽団とのコラボレーション企画の音楽会や作家によるワークショップもおこなわれます。

見て、聞いて、触れて楽しい「BENTO おべんとう展-食べる・集う・つながるデザイン」。
会場には素敵な「おもてなし」と遊び心があふれています。
みんなが大好きなおべんとうを通じて、あなたの大切な人とのつながりを感じてみてはいかがでしょうか?
 

開催概要

展覧会名 「BENTO おべんとう展-食べる・集う・つながるデザイン」
会 期 2018年7月21日(土)- 10月8日(月・祝)
9:30から17:30まで(入室は閉室の30分前まで)
※ただし7月27日(金)、8月3日(金)、10日(金)、17日(金)、24日(金)、31日(金)はサマーナイトミュージアムにより21:00まで
休室日 月曜日、9月18日(火)、25日(火) ※ただし、8月13日(月)、9月17日(月・祝)、24日(月・休)、10月1日(月)、8日(月・祝)は開室
会場 東京都美術館 ギャラリーA・B・C
観覧料 一般 800円 / 大学生・専門学校生 400円 / 65歳以上 500
団体(20名以上) 600円 / 高校生以下は無料
※身体障害者手帳・愛の手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・被爆者健康手帳をお持ちの方とその付添いの方(1名まで)は無料
※いずれも証明できるものをご持参ください
※10月1日(月)は「都民の日」により、どなたでも無料
公式サイト http://bento.tobikan.jp/

 

情報提供:ココシル上野
https://home.ueno.kokosil.net/ja/
 
その他のレポートを見る:https://www.culture.city.taito.lg.jp/ja/reports

【国立科学博物館】特別展「昆虫」内覧会レポート

国立科学博物館

2018年7月13日(金)から10月8日(月・祝)にかけて国立科学博物館で特別展「昆虫」が開催されています。メディア向け内覧会に参加してきましたので、さっそく展示の様子をお伝えします!

夏といえば、青い空、麦わら帽子、そして昆虫採集!
ということで、今回のカハク(科博)の特別展のテーマはストレートに「昆虫」です。

本展覧会は、国立科学博物館が意外にも(?)「昆虫」をテーマに開催する初めての大型特別展。その起源は4億8000万年前と言われ、私たち人類よりもはるかに長い歴史を持つ昆虫は、さまざまな環境に適応しながら、他の生物に比べて著しい多様化を遂げてきました。その種は、現在名付けられているだけでもなんと約100万種。

その仕組みや能力、生態について、標本やCG、体験型展示などを通して国立科学博物館ならではの知見を紹介する「昆虫」展は、家族で見て回るもよし、カップルで「キモい」と言って盛り上がるもよし。

一足先にその見どころをご紹介いたします!


ド迫力の巨大昆虫模型

大人気のクワガタ。黒光りする胴体とシャープなフォルムがカッコイイ

 

夏にプンプン飛び回る蚊もこの通り、巨大模型に。その姿は長年、過酷な環境の中で生き抜いてきた証でもある

 

こちらはニホンミツバチ。緻密な体毛の再現に驚かされる

会場に足を踏み入れると、まず度肝を抜かれるのが全長2メートルの巨大模型。クワガタ、オオムラサキ、ニホンミツバチ・・・。監修者が「触覚の節の数や足の長さまで完全に再現した」と語る入魂の作です。
普段特に注目することもない昆虫の身体ですが、あらためて巨大なスケールの模型で見ると、その複雑さ、多様性に驚かされ、その不思議さを実感させられます。

数万点の昆虫と「標本回廊」

色彩、形態ともにバリエーション豊かな昆虫標本の数々

 

樹脂に貼り着き、琥珀の中に閉じ込められた昆虫

 

世界最大の蝶、アレクサンドラトリバネアゲハと他種の比較

 

約5万点のコレクションが並ぶ壮大な「標本回廊」

また、今回の展覧会で非常に充実しているのが昆虫の標本です。古くから、多種多様な形と色彩で多くの人を魅了してきた昆虫たち。会場にはとても見尽くせないほどの標本が展示されているため、きっと誰もが「初めて見る」昆虫と出会えるはず。

特に、壁面がさまざまな研究機関・研究者・愛好者たちのコレクションで埋め尽くされた第5章は圧巻の一言。こうしたコレクションは昆虫研究の基盤となりますが、研究者によって収集の方針が異なり、ひとりで数万体、あるいは数十万体という巨大なコレクションを作り上げた人もいるそうです。

どうしてこうなった?美しい昆虫たち、ざんねんな昆虫たち

腹面から見ると巨大な「目」を持つアキレスモルフォ。蛾ではなく蝶だが、そもそも両者の境界はあいまいだという

 

捕食者に食べられないように有毒の蝶の擬態をしたツマグロヒョウモン

 

どうしてこうなった?どこかユニークな姿をした世界最大級の昆虫「メガスティック」。最長のものは624mm

 

「美しい昆虫」コーナー。その色彩の輝きはまるで宝石のよう

本展では、昆虫の生態の多様性を、食べる、住む、たたかう、といったキーワードに沿って紹介し、昆虫が生き抜くために獲得したさまざまな生態を見ることができます。そのユニークな形態の数々は見ていて興味が尽きず、「どうしてこうなった?」と好奇心を刺激されます。

ぜひ、あなただけの「お気に入り」の昆虫を探してみてください!

恐怖!「Gの部屋」

会場の片隅に何やら怪しげな一角が・・・

 

「生きた」マダカスカルゴキブリの展示

会場の中で特に異彩を放つのが「G」のコーナー。嫌悪する人があまりに多いばかりに「G」というコードネームを与えられてしまったこの昆虫ですが、本来はカマキリの系統に近く、決して人間に害をなす存在ではありません。

というわけでガラス越しにじっくりと見物。一心不乱に「もぐもぐもぐ・・・」とエサを食べているその姿に、不覚にも「かわいい」と感じてしまいました。ではなぜ、私たちはこんなにもGが嫌いなのか?それはやはり、私たちの発達した衛生観念や、幼い頃からの「刷り込み」が大きいのでしょう。Gが嫌いで仕方がない人にこそ、このコーナーはお勧めです!

とにかく圧巻の昆虫ワールド

広々とした展示空間。会場は5つのチャプターに分かれている

 

やっぱり男の子の一番人気はカブトムシ

 

アリと他の昆虫の共生を、4コマ漫画で楽しく紹介

 

直感的に昆虫ワールドを体感できるインスタレーションも

 

1984年に日本で発見されたヤンバルテナガコガネの紹介

その他にも、いずもり・よう氏作による4コマ漫画、360度画像を回転させて小さな昆虫を観察できる3D昆虫、世界に一点だけのヤンバルテナガコガネの「ホロタイプ標本」を展示するコーナーなど、会場の随所には魅力あふれる展示がいっぱいです。
さらに会場には「正しい昆虫採取」を学べるコーナーもあるので、お子さんの夏休みの宿題にもうってつけですね。

 

昆虫が大好きな人も、ちょっと苦手な人も。
この夏、未知とロマンにあふれた「昆虫ワールド」を体験してみてはいかがでしょうか?

開催概要

展覧会名 特別展「昆虫」
会 期 2018年7月13日(金)- 10月8日(月・祝)
午前9時 – 午後5時(入館は各閉館時刻の30分前まで)
※金曜・土曜日は午後8時まで、8月12日(日)〜16日(木)、19日(日)は午後6時まで
※会館時間や休館日については変更する可能性があります
休館日 7月17日(火)、9月3日(月)、9月10日(月)、9月18日(月)、9月25日(月)
会場 国立科学博物館
観覧料 一般・大学生  1600円
小・中・高校生 600円※ 金曜・土曜限定ペア得ナイト券は2名1組2,000円(午後5時以降2名同時入場限定、男女問わず、当日会場販売のみ)
※ 未就学時は無料
※ 障害者手帳をお持ちの方とその介護者1名様は無料
公式サイト http://www.konchuten.jp/

記事提供:ココシル上野
https://home.ueno.kokosil.net/
 
その他のレポートを見る:https://www.culture.city.taito.lg.jp/ja/reports

台東区下町風俗資料館 企画展「江戸の面影を今に伝える 下町の夏 衣食住+遊」を取材しました

台東区立下町風俗資料館

不忍池のほとりに位置する台東区立下町風俗資料館。

昭和55年(1980)10月1日、失われつつある古き良き下町の文化を後世に伝えようと開館されました。館内の展示物の9割は台東区内外からの寄贈品によるもので、実際に使用されていた日用品等から江戸時代の趣を残す明治、大正、昭和の人々の暮らしを身近に感じることができます。

そんな資料館が2018年7月3日(火)~9月2日(日)の期間、「下町の夏の暮らし」をテーマに企画展「江戸の面影を今に伝える 下町の夏 衣食住+遊」を開催するということで取材させていただきました。


館内に足を踏み入れた瞬間、そこには別世界が広がります。

一階の常設会場には大正時代の東京・下町の街並みが精巧に再現されており、タイムスリップしたかのような錯覚にとらわれます。

特にこだわりをもって関東大震災の前に時代設定が置かれているのは、当地震によりそれまでの風景が大きく損なわれてしまったからだそう。

地震以前の、江戸の風情を感じられる街並みを後世に伝えたいという想いによって造られました。

花緒の製造卸問屋。右が帳場、左が作業場です。

 

作業場

当資料館の最大の特徴は、こういった再現家屋に実際にあがることができるだけではなく、その調度品にも触れることができる点にあります。ぜひ手に取って当時の生活を感じてみて下さい。

井戸・洗濯板

“井戸端会議”は当時の主婦にとって大切なコミュニケーションの場でした。

駄菓子屋

一方、子どもたちの社交場である駄菓子屋。
すぐ奥には座敷が繋がっていますが、自宅で店を営みながら生活している様子が見て取れます。

驚いたのは住人の人物設定もされていること。
座敷にあがって箪笥の引き出しを覗くことができるので、衣服からどのような人物であるかを知ることができます。

店先は季節に合わせて展示品が変わります。
今の時期はかき氷。昔はかんなを逆さにして氷を削っていたのですね。

銅壷(どうこ)職人の作業場を兼ねた家屋。4人暮らしの設定です

そして2階にて開催されている企画展「江戸の面影を今に伝える 下町の夏 衣食住+遊」。

今回解説してくださった当資料館研究員の本田さん

「下町の夏の暮らし」をテーマに衣食住など日常生活の中で使われる道具や、夏を楽しむ「遊」に関連した資料が展示されています。

江戸の名残をとどめる明治から大正、昭和、そして平成の下町に暮らす人々の生活を覗いてみましょう。

木製の氷冷蔵庫[昭和30年代]氷屋さんで購入した氷を上部に入れ、その冷気で下部の食品を冷やしました。
 

すだれ屏風の前にはうちわや扇風機、クーラーの前身「冷風換気扇」が並びます

特に目を引かれたのは展示場中央に吊られていた蚊帳。
昭和30年代の終わりごろまで一般的に使用されていました。蚊帳を織る際に使用される麻や木綿は中にこもった熱を逃がす作用があるため、内側はひんやりと涼しく感じられます。

さらにクーラーのなかった時代、人々は工夫を凝らし目から、耳から涼しさを取り入れようとしました。風鈴は現代にも伝わる夏の風物詩ですが、その他にも電球を白熱灯から青色に換えて涼しさを演出したそう。

白熱灯を青色の電球に換えて涼しさを演出

 

外に吊るされているのは蛍籠。蚊帳の中に蛍を放って灯りを楽しみました

 

夏の装い、食文化

 

昭和戦前に流行した漫画。当時の生活の知恵を知ることができる貴重な資料

 

定斎(じょさい)箱。文字部分は螺鈿(らでん。貝殻による細工)で装飾がなされています

また、江戸に盛んであった「物売り」も取り上げられています。物売りとは商品を背負って、あるいは担いで売り歩く商売人です。売られていた商品は食品・衣料品・雑貨・薬品等の生活必需品で時間や季節によって売られる商品が変わりました。
物売りは商品を売るために呼び声に工夫を凝らしたといいます。そしてこの声により住民は季節の移り変わりを知ったのです。

江戸から明治に時代が移るとともに扱われる商品も次第に変化していきますが、江戸からそのまま引き継がれた物売りのひとつが「定斎(じょさい)屋」です。定斎屋とは夏負けの薬を売り歩いた物売りで、担いだ箱を定斎箱といいました。

箱に付属する金具が歩くたびにカチャカチャと音を立てるので、この音が定斎屋が来た合図となりました。また定斎屋は炎天下に笠をかぶらずに歩き、自らの身をもってその薬の効能をアピールしたそうです。



2階にて常設展示されている「戦時下の生活」。少女画で知られる中原淳一氏の手掛けた慰問はがきや当時の回覧物等から当時の市井の人々の暮らしを垣間見ることができます。


昭和30年代頃の部屋を再現したもの。部屋に上がって雰囲気を味わうことができます。


台東区の銭湯で使用されていた番台をそのまま移設してあります。番台からの風景を楽しめます。


展示されている品々は歴史を伝える貴重な資料でありながらも、実際に触れることができるため、当時の人々の息吹を感じられる貴重な機会となりました。

期間中は1階の銅壷屋に蚊帳が吊られ、実際に入ることのできるイベントもありますので今では失われてしまった夏の風景をぜひ目にし、体感してください。
※当イベントは期間中の土日祝日とうえの夏まつり期間中(7月14日~8月12日)午後4時頃から

開催概要

会期 2018年7月3日(火)~9月2日(日)
所在地 台東区立下町風俗資料館 台東区上野公園2番1号
開館時間 午前9時30分~午後5時30分(入館は5時まで)
休館日 月曜日
(月曜祝休日の場合は翌平日)
入館料 一般300円(200円)
小・中・高校生100円(50円)
※( )内は、20人以上の団体料金
※障害者手帳または特定疾患医療受給者証をお持ちの方とその介助者は無料(入館時要証明)
※毎週土曜日は台東区在住・在学の小・中学生と、その引率者は無料
問合せ 03-3823-7451
URL http://www.taitocity.net/zaidan/shitamachi/

ギャラリートーク

担当学芸員の方による本企画展の見どころの解説があります。
日時 7月7日(土)・21日(土) 8月4日(土)・11日(土)・18日(土) 9月1日(土) 午後2時
から 20~30分程度
会場 2階企画展示場
※予約不要。入館した方ならどなたでも参加できます。
※詳しくは下町資料館公式サイトhttp://www.taitocity.net/zaidan/shitamachi/・フェイスブック【Shitamachi Museum】・ツイッター【下町風俗資料館】で確認頂くか電話にて問合せを。
 
その他のレポートを見る:https://www.culture.city.taito.lg.jp/ja/reports

特別展「縄文―1万年の美の鼓動」内覧会レポート

東京国立博物館

2018年7月3日(火)から9月2日(日)まで、東京国立博物館 平成館にて特別展「縄文ー1万年の美の鼓動」が開催されています。7月2日に報道内覧会がおこなわれましたので、その様子をお伝えいたします。

うねり、弾け、逆巻くような、複雑で摩訶不思議な文様。
その立体的な装飾が表現する躍動感とエネルギーは、観る者の心を捉えて離しません。
燃え上がる炎のような形状から 『火焔型土器』と名付けられたその土器は、特に近世以降、その独創性と神秘性で多くの人々を魅了してきました。

また、近年「縄文」は、自然保護やデザイン、ファッション、地域活性化などさまざまな側面から世間の注目を集めています。
かっこいい、かわいい、おもしろい。
土器や土偶がSNSを通じて若い層の支持を集め、より一層私たちにとって身近な存在となりつつあるのです。

特別展「縄文ー1万年の美の鼓動」では、こうした「縄文の美」をテーマに、縄文時代草期から晩期まで、日本列島各地で育まれた優品、約200点を展観。1万年以上にわたる壮大な「美のうねり」を紹介し、その形に込められた人々の思いや技にせまります。


それでは、会場風景と展示作品の中から一部をご紹介いたします。

 

会場風景

本展では、「縄文の美」を紹介するために6つのテーマが設けられています。
縄文時代の人々が生きていく上で作り出したさまざまな道具に宿る「暮らしの美」。
約1万年という長きにわたって作り出された縄文土器の造形美の変遷をたどる「美のうねり」。
縄文土器と世界各地の土器を見比べる「美の競演」。
国宝に指定された火援型土器や土偶が集う「縄文美の最たるもの」。
縄文時代の願いや祈りを体現した造形を集めた「祈りの美、祈りの形」。
そして、岡本太郎ら芸術家や作家が愛した縄文の美を紹介する「新たにつむがれる美」。

特に第4章では国宝の『火焔型土器』『土偶 縄文のビーナス』など、「縄文の造形の極み」ともいえる作品群が展示され、まさに本展覧会の「白眉」というべき章となっています。

 

祝祭の「赤」を基調に彩られた第4章の展示会場

 

円形のオブジェが重なり合うように構成された第5章の展示空間

また、本展覧会で筆者が注目したのはその空間構成です。『火焔型土器』の名の通り、炎と祝祭を象徴する赤を基調に染め上げられた第4章の展示会場や、家を円形に配置して中央に広場を作る「環状集落」など、縄文時代の遺跡に多く見られる「円」で構成された第5章の展示空間。空間一つ一つを取り上げても、トーハクならではの演出に満ちています。

会場には縄文時代を思わせる自然音が聞こえ、さらに夜間開館では独自のライトアップが予定されているとのこと。縄文時代に迷い込んだ気分で、ぜひ会場の隅々まで散策してみてください。

展示作品紹介

土偶 縄文の女神

縄文時代中期 山形県立博物館

 

「側面から見たほうがカッコいい」と語る人も多い本作。鋭角的な「クビレ」が見る人を魅了する

国宝に指定された土偶のうち、45cmを誇る最長の土偶。八頭身美人と称される優美な姿形が特徴的です。ほかの土偶は母性的な豊満さを表現していることが多いですが、この『縄文の女神』はどちらかといえば鋭角的な印象を与え、現代美術にも通じる斬新さと洗練さが魅力的です。

「こちらの土偶には顔はありません。しかし、縄文人には慈愛に満ちた女性の顔がきっと見えていたことでしょう。あえて表現しない、そういったかたちで示すという技を、縄文人は持っていたのです」

そう語ってくださったのは、東京国立博物館の考古室長である品川欣也氏。

「動物を象った造形などもあり、縄文人はそのままに形を作ることはたやすくできます。ただし、彼らはそのままの形で仕上げることはしなかった。その出し入れ、捨象の仕方に縄文の造形の妙があるのです」

遮光器土偶

縄文時代晩期 東京国立博物館

「日本でもっとも有名な土偶」である遮光器土偶。土偶といえば、まずこの遮光器土偶を思い浮かべる人が多いでしょう。その特徴的なアーモンド形の目の表現についてはさまざまな解釈があり、雪中遮光器説(エスキモーが雪中行動の際に着用する)や、目を閉じて眠る幼児や死者の顔だとする説もありました。

全身を飾る華やかな文様も見どころのひとつ。また、左足が欠損していますが、品川氏は「ミロのヴィーナス(両手が欠損)と一緒で、これが本来のあるべき姿なのではないか」と述べ、ここにこの土偶の魅力があると語ります。欠損なのか。それとも、これが本来の姿なのか。ぜひ、会場で直接見て確かめてみてください!

ハート形土偶

縄文時代後期 群馬県東吾妻町郷原出土

“インスタ映え”必至のハート形土偶。縄文時代後期前葉に東北北部から北関東地方に分布する土偶で、顔のかたちがユニークなハート形をなすことからその名がつけられました。極端にデフォルメされた顔や体の表現と、繊細な文様との対比が特徴的で、その個性的な姿から多くの人に愛されてきました。その人気から昭和56年には切手のデザインにも採用されたハート形土偶。これからはSNSを通じて、特に若い世代の女性たちに愛されることになりそうです。

木製編籠 縄文ポシェット

縄文時代中期 青森県教育委員会(縄文時遊館保管)

縄文時代の手仕事のぬくもりと繊細さが感じられるようで、筆者お気に入りの展示。側に置かれているのは原寸大のクルミです。縄文時代といえば土器のイメージが強いですが、他にも木器、樹皮や植物の繊維を編んで作られた籠や袋などの編物製品が用いられていました。

本作は「縄文ポシェット」と呼ばれる有名な作品で、教科書でもおなじみの「三内丸山遺跡」から出土しました。この作品から感じられるのは、自然の恵みを生かし、素材の特性を考えて作られた手仕事の美しさ。縦横に規則正しく作られた網目は、土偶の緻密な文様とどこか似通っていて、あの時代に生きていた人たちはどんな繊細な感性を持っていたのだろうと興味が湧いてきます。


「人が集まるところには、『輪』があります」

個人的に印象に残ったのは、第5章の空間構成に関する品川氏の解説です。

「縄文時代の人々が過ごしたこの『円』の中で、さまざまな祈りの形と出会うことで、みなさんが普段忘れていたような願い、祈り。そういったものを思い出していただければと思っています」

円は「縁」。輪は「和」。考えてみれば、円や輪というのは全て、人と人との出会いや親密さをあらわす言葉へとつながっています。
縄文時代の自然という円環の中で、そして人と人とが紡ぎ出す関係の中で、縄文人は何を感じ、どのように生きていたのか。

特別展「縄文ー1万年の美の鼓動」で展示されている作品群は、その形に込められた当時の人々の思いを私たちに伝えてくれます。
ぜひ会場に足を運んで、その一端に触れてみてはいかがでしょうか?


開催概要

展覧会名 特別展「縄文ー1万年の美の鼓動」
会 期 2018年7月3日(火)- 9月2日(日)
午前9時 30分- 午後5時(入館は閉館の30分前まで)
※金曜・土曜日は午後9時まで、日曜日および7月16日(月・祝)は午後6時まで
休館日 月曜日、7月17日(火)※ただし7月16日(月・祝)、8月13日(月)は開館
会場 東京国立博物館 平成館
観覧料 一般  1600円 (1300円)
大学生 1200円 (900円)
高校生  900円 (600円)
※ ()は20名以上の団体料金
※ 中学生以下無料
※ 障害者とその介護者1名は無料(入館の際に障害者手帳などをご提示ください)
公式サイト http://jomon-kodo.jp/

記事提供:ココシル上野
https://home.ueno.kokosil.net/
 
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「ミラクル エッシャー展」内覧会レポート

上野の森美術館
左からロニット・ソレック氏(イスラエル博物館 版画・素描部門学芸員)、シヴァン・エラン=レヴィアン氏(イスラエル博物館 巡回展主任)、熊澤弘氏(東京藝術大学大学美術館 准教授)、野老朝雄氏(アーティスト)

2018年6月6日(水)から7月29日(日)まで、上野の森美術館にて「ミラクル エッシャー展」が開催されます。今回は、先日開催されたプレス内覧会の様子をお伝えいたします。


「視覚の魔術師」とも呼ばれる稀代の版画家、マウリッツ・コルネリス・エッシャー。実際にありそうで存在しない世界、ひとつの絵の中に重力が異なる世界が存在するなど、その奇妙で不可思議な作風は世界の人々を魅了し続けています。

生誕120年を記念して開催される大型展覧会「ミラクル エッシャー展」では、世界最大級のエッシャーコレクションを誇るイスラエル博物館の所蔵品より、有名な“トロンプ・ルイユ”(だまし絵)の作品に加え、同博物館でも常設展示されていない秘蔵のコレクション約150点が来日します。
奇想版画家エッシャーは、どのようにして唯一無二の作品を生み出したのか。本展覧会では、「科学」「聖書」などの8つの独自の観点から、その「ミラクルな」版画の謎に迫ります。


展示紹介

1. エッシャーと『科学』



エッシャーの版画では、特定のモティーフが反復しながら循環したり、タイル状に埋め尽くされるなど、幾何学的な独自の表現が用いられています。エッシャーはこれらの表現を生み出すために、同時代の科学から着想を受け、独自の数学的な理論を発展させました。

この章では、エッシャー版画に現れるさまざまな幾何学的表現を紹介しています。

2.エッシャーと『聖書』



第2章では、若いエッシャーが描いたキリスト教主題の版画が取り上げられています。旧約聖書創世記を扱った連作には、19世紀後半から20世紀初頭にヨーロッパで流行したアール・デコ様式からの影響を見ることができます。

3.エッシャーと『風景』


1920年代からのイタリア、スペイン旅行、特にアルハンブラ宮殿での幾何学な装飾模様との出会いは、のちのパターン化されたモティーフ表現の原点となりました。そしてピクチャレクスな風景版画は、のちに登場する視覚的な実験を先取りしたものとなっています。

4.エッシャーと『人物』


エッシャー版画に登場する人物像は、しばしば反復されるパターンのモティーフの一つとして画面に登場しますが、初期のエッシャーは単身の人物表現にも取り組んでいます。

この章で紹介されている人物像の多くは家族など近しい人を扱っていますが、同時に自分自身の姿もさまざまな方法でモティーフとしていました。

5.エッシャーと『広告』


エッシャーの造形は商業デザインにも登場します。この章では、商用として利用されたイメージとともに、エッシャーらしさが凝縮された小さなグリーディングカードも展示されています。

6.エッシャーと『技法』


自らを「芸術家」ではなく「版画家」と考えていたエッシャーは、木版、リトグラフ、メゾティントなどさまざまな版画技法に取り組み、それらの技法を高度に発展させ、時に複数の技法を統合させながら不可思議な版画空間を作り出しました。

この章では、多種多様な作例、マテリアルとともにエッシャーの版画技法を紹介しています。

7.エッシャーと『反射』


こちらは《球面鏡のある静物》という作品。エッシャーの作り出す不可思議な世界の特徴のひとつが、「鏡面」のイメージです。鏡面を用いた絵画は、ヨーロッパでは近代以前から数多く描かれましたが、エッシャーもまた現実世界のモティーフと仮想世界としての鏡像の共存するイメージを描くことに没頭していました。

8.エッシャーと『錯視』


エッシャーの代表作でもある《相対性》や《滝》といった作品が展示されている最終章。エッシャー芸術を代表する要素が、これらの作品に見られるような実現不可能な建築表現、永遠に変化し続けるパターンを描いた「ありえない世界」です。

この独創的な表現は、当時の数学者が発表した不可能な図形に着想を得たものもあり、正則分割を用いた循環する表現とともに、エッシャーが長年にわたり独自発展させた理論が形になったものです。


大作《メタモルフォーゼII》の前で展示解説をおこなう熊澤弘氏

本展覧会のフィナーレを飾るのは、1939-1940年に制作された大作《メタモルフォーゼII》。文字から始まり、さまざまな形態が変容しながら循環し続け、やがて最初の文字へと至るこの作品は「エッシャー芸術の極点」とも称えられます。

「第二次世界大戦後、エッシャーの展覧会が英語圏で開かれたのをきっかけに、現在まで至るエッシャー人気が生まれましたが、その時に高く評価されたのがこの《メタモルフォーゼII》です。この後、彼の作品はいわゆるアートの領域よりも科学者や数学者に取り上げられる機会が増えていきました。そうした点もこの作者の面白いところだと思います」

そう語ってくださったのは、東京藝術大学大学美術館 准教授の熊澤弘氏。

「彼のフォロワーの一人が『インセプション』を監督したクリストファー・ノーランであり、変わったところでは『ジョジョの奇妙な冒険』の荒木飛呂彦さんもそうですね。このように現代の私たちのポップカルチャーにも影響を与えているエッシャーですが、彼の展覧会では東京では12年ぶりとなります。ぜひまたフレッシュな視点で、エッシャーの作品をご覧いただければと思います」

会期は2018年6月6日(水)から7月29日(日)まで。
これは現実なのか?仮想世界なのか?
今世紀最大の「奇想の版画家」に挑む「ミラクル エッシャー展」、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。

開催概要

展覧会名 生誕120年 イスラエル博物館所蔵 ミラクル エッシャー展 奇想版画家の謎を解く8つの鍵
会場 上野の森美術館
東京都台東区上野公園1-2
会期 2018年6月6日(水)~7月29日(日)
※会期中無休
開館時間 10:00~17:00
※毎週金曜日は20:00まで
※入館は閉館の30分前まで
料金 一般:1,600円(1,400円)、大学・高校生:1,200円(1,000円)、中学・小学生:600円(500円)
※()内は団体料金
URL http://www.escher.jp/

記事提供:ココシル上野
https://home.ueno.kokosil.net/
 
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