【東京国立博物館】「日本のたてもの展」会場レポート―伝統建築の巨大模型が大集合!(~2021/2/21まで開催)

東京国立博物館

 

日本の伝統建築の造形的特徴や工匠の技を、模型や図案などの資料を通じて紹介する展覧会「日本のたてもの ―自然素材を活かす伝統の技と知恵」が、東京国立博物館、国立科学博物館、国立近現代建築資料館の3館合同で開催中です。

会場ごとに展示テーマと会期が異なる本展。
今回は、東京国立博物館で12月24日にスタートした「古代から近世、日本建築の成り立ち」をテーマとする展示を見てきましたので、会場の様子や展示作品についてレポートします。

 

*東京国立博物館「古代から近世、日本建築の成り立ち」
  会期:2020年12月24日~2021年2月21日
*国立科学博物館「近代の日本、様式と技術の多様化」
  会期:2020年12月8日~2021年1月11日
*国立近現代建築資料館「工匠と近代化―大工技術の継承と展開―」
  会期:2020年12月10日~2021年2月21日
 

《東大寺鐘楼 1/10模型》1966年・尾田組製作/東京国立博物館蔵/原建物1207-1211年・国宝
《如庵 1/5模型》1971年・京都科学標本製作/国立歴史民俗博物館蔵/原建物1618年頃・国宝
《東福寺三門 1/10模型》1979年・大栄土建工業、祖田康三ほか製作/国立歴史民俗博物館蔵/原建物1405年・国宝

《仁科神明宮本殿 1/10模型》1973年・伊藤平左ェ門建築事務所製作/国立歴史民俗博物館蔵/原建物17-18世紀・国宝

 

仏堂、城郭、茶室――バラエティに富んだ古代~近世の伝統建築模型19件を展示。

政治・宗教といった社会的条件の中で、気候や地域に適応し、時代ごとの美的感覚を吹き込みながら、変化と多様化を繰り返してきた日本の伝統建築。

建築模型は、そんな伝統建築に見られる工匠たちの優れた技術や美意識を凝縮して表現したもの。木・土・石……多様な自然素材を生かした造形的特徴、さらには日本建築史そのものを俯瞰するのに便利な存在といえるでしょう。

「古代から近世、日本建築の成り立ち」で展示されているのは、法隆寺五重塔、松本城天守、東福寺三門、如庵など、原建物が国宝・重要文化財である模型がメイン。細部まで精巧に再現した模型19件で、近世までの伝統建築の様式や意匠を鑑賞していきます。

これだけの模型が一堂に会すことは稀ですし、中にはこれまでほとんど披露される機会のなかった建築模型も含まれているなど、貴重な展覧会となっています。
 

会場内には伝統建築を受け継ぐ職人や技術についての丁寧な紹介パネルも。

大迫力! 縮尺1/10模型の存在感

展示風景 左から《一乗寺三重塔 1/10模型》《法隆寺五重塔 1/10模型》《石山寺多宝塔 1/10模型》

 
本展の会場は、東京国立博物館の中にある表慶館。1~2階の各部屋で、「中世の仏堂」「神社」「民家」といった幅広いカテゴリで作品が分類されていました。

出展されている建築模型の多くは、縮尺サイズが原建物の1/10とかなり大きめ。非常に迫力があり、全体の構造はもちろん装飾品の一つひとつまでじっくりと確認できます。

また、周囲360度どこからでも鑑賞できるように配置されている模型もあれば、東福寺三門や唐招提寺金堂など、内部構造を確認できるように分割製作された模型も複数ありました。

前から後ろから、斜めから下からと、いろいろな角度から作品を鑑賞するのがおすすめです。

 

《唐招提寺金堂 1/10模型》1963年・伊藤平左ェ門建築事務所製作/東京国立博物館蔵/原建物8世紀・国宝

 
というのも、たとえばこちら。唐招提寺金堂の1/10模型(分割)は、実は天井裏に原建物を再現した美しい極彩色の模様が描かれているそう。しかし筆者はうっかり見逃して後悔しているところなので、これから行かれる方は隅々まで鑑賞してみてください。

どの模型も探せば探すほど見どころだらけです。宝探しのような気持ちで楽しめるかもしれません。
 

模型作品をピックアップ紹介

《大仙院本堂 1/10模型》1969年・伊藤平左ェ門建築事務所製作/国立歴史民俗博物館蔵/原建物1513年・国宝

同上

 
日本最古の「床の間」をもつとされる大徳寺大仙院の本堂は、禅院方丈建築を代表する建物で国宝にも指定されています。

この1/10模型(分割)でぜひ注目してほしいのは障屏画。狩野元信の代表作の一つ《四季花鳥図》まで細かく再現されているのには目を見張りました。

現在は掛幅に改装されていますが、もともと八面の襖絵だったもの。このように襖絵が入っていた当時の大仙院を鑑賞できるのも、模型ならではの面白さといえるのかもしれません。

 

《松本城天守 1/20模型》1963年・伊藤平左ェ門建築事務所製作/東京国立博物館蔵/原建物16世紀・国宝

同上

 
松本城は、姫路城とともに五重天守の代表遺構で、現存する五重天守としては日本最古ともいわれています。日本の代表的な城郭建築の例として模型が製作されたそう。

この1/20模型(分割)も見ごたえ十分。外からは内部がどうなっているのかまるで想像がつきませんが、こうして断面から全体の構造を見ると「階段の配置が面白い」「空間自体はかなりシンプルなんだ」などさまざまな気づきもあり、新鮮でワクワクとした気分に。

 

《明治度大嘗宮 模型》明治時代・式部職製作/宮内庁蔵/原建物1871年

 
2019年11月、新天皇即位を受けて、国家や国民のために安寧と五穀豊穣などを祈る宮中祭祀「大嘗祭」が開かれ、一般公開もされました。

そのためだけに建設された祭場「大嘗宮」はすでに解体されていますが、本展では1871年の明治天皇即位の大嘗祭で使われた「明治度大嘗宮」の模型が展示されています。

令和の「大嘗宮」は板葺の屋根でしたが、こちらは伝統的な茅葺屋根の建築群が並んでいました。

宮内庁の式部職が製作したもので、大正時代までは東京国立博物館で展示されていたそうですが、その後は倉庫へしまい込まれた状態だったとか。これほどの大作が長年埋もれていたとはもったいない……!
 

◆2019年に焼失した首里城正殿の模型も。

《首里城正殿 1/10模型》1953年・知念朝栄製作/沖縄県立博物館・美術館蔵/原建物18世紀前半(1945年焼失)

 
18世紀前半頃に建ったとされ、かつては琉球王国の文化や外交の中心地であり、沖縄の歴史を象徴するシンボルとも呼べる首里城。

沖縄戦で戦災に遭い、1992年に主な施設が復元されましたが、2019年10月の大規模火災により正殿を含む6棟が全焼。激しく炎が燃え上がる様子は連日ニュースで取り上げられましたので、記憶に新しいという方も多いのではないでしょうか。

本展にはそんな首里城正殿の1/10模型も出展。戦前の解体修理に参加した知念朝栄という大工が1953年に製作した作品で、沖縄県外の展覧会に出されるのは今回が初めてとなるそう。

日本と中国の建築様式が混じった独特な意匠が見られ、たとえば二層三階建ての建物や正面末広がりの階段などは、琉球独自のものなのだとか。

原建物の特徴的な朱色こそ見られませんが、同フロアに配置された在りし日の正殿の写真と見比べながら、2026年の再建へ思いが募りました。

 

 

 

12月17日、国連教育科学文化機関(ユネスコ)が、日本の宮大工や左官が継承してきた17分野の技術をまとめた「伝統建築工匠の技:木造建造物を受け継ぐための伝統技術」のユネスコ無形文化遺産登録を決めたばかり。

今だからこそ、ぜひ「日本のたてもの ―自然素材を活かす伝統の技と知恵」展で、あらためて日本人がこれまで培ってきた技術と美意識に触れてみていかがでしょうか。

 

オリジナルデザインのグッズが非常にかわいかったです!

 

開催概要

「日本のたてもの ―自然素材を活かす伝統の技と知恵」
会場テーマ「古代から近世、日本建築の成り立ち」

会期 2020年12月24日(木)~2021年2月21日(日)
会場 東京国立博物館 表慶館
開館時間 午前9時30分~午後5時
*金曜・土曜日は午後9時まで開館
*1月2日(土)、8日(金)、9日(土)は午後5時に閉館
休館日 月曜日、2020年12月26日(土)~2021年1月1日(金・祝)、1月12日(火)
*ただし、1月11日(月・祝)は開館
観覧料 一般1,500円、大学生1,000円、高校生600円
*中学生以下および障がい者とその介護者1名は無料。
注意事項 *入館はオンラインによる事前予約(日時指定券)制です。
*定員に達していない場合は当日受付が可能です。
チケットはこちらから↓
https://tsumugu.yomiuri.co.jp/tatemono/ticket.html
公式ページ https://tsumugu.yomiuri.co.jp/tatemono/

 

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【東京国立博物館】特別展「桃山―天下人の100年」内覧会レポート【10/6~11/29開催】

東京国立博物館

 

2020年10月6日(火)~11月29日(日)の期間中、東京・上野にある東京国立博物館 平成館にて、特別展「桃山―天下人の100年」が開催されています。

先日、先立って開かれた報道内覧会に参加してきましたので、展示作品や会場の様子をレポートします。

特別展「桃山―天下人の100年」はこんな展覧会

 

 

1573年の室町幕府の滅亡から1603年の江戸幕府開府まで、30年にわたり続いた安土桃山時代。日本が戦国武将の台頭する動乱の時代から、江戸幕府による安寧の時代へと移り変わる、目まぐるしい変化の中にあった時代です。

日本美術史上、もっとも豪壮・華麗だとされる「桃山美術」は、その中で花開きました。

特別展「桃山―天下人の100年」は、安土桃山時代を中心とした、室町時代末から江戸時代初期にかけての100年の中で変化していった日本人の美意識を、その時代を代表する約230件の美術作品によって確かめてみよう、という展覧会です。

 

国宝 狩野永徳筆《洛中洛外図屛風(上杉家本)》 室町時代・1565年 山形・米沢市上杉博物館 前期展示  織田信長が上杉謙信に送ったとされる屛風

展覧会のポイント① 国宝・重要文化財が目白押し!

 

本展では国宝・重要文化財が、前期・後期合わせてなんと100件以上も出展されていますそれ一つ一つが展示の目玉となり得る選りすぐりの名品たちが、全国からこの東京国立博物館に集結。

《洛中洛外図屛風(上杉家本)》《聖フランシスコ・ザビエル像》など、教科書で一度は見たことがあるような有名作品が顔を揃えています。また織田信長や徳川家康ゆかりの品々も並び、戦国ファンなら一度は見ておきたい展示といっていいかもしれません。

展覧会のポイント② 要チェック!前期・後期で展示作品が入れ替わる

 

本展は会期が前期・後期に分かれていて、かなりの数の作品が入れ替わりますので要注意

・前期展示は10月6日(火)~11月1日(日)
・後期展示は11月3日(火・祝)~11月29日(日)

全期展示の作品もあれば、前期のみ、後期のみ、一部は特定期間のみのものも存在するので、絶対に見たい作品がある場合は、事前に展示期間をチェックしておくのがおすすめです。展示替えの詳細は公式サイト等でご確認ください。

本記事でご紹介するのは、主に前期で鑑賞できる作品になります。

展示作品紹介

 

展示風景

 

ここからは、前期の展示期間中に鑑賞することができる作品の一部を写真付きで紹介していきます。

■ピックアップ① 障屛画

 

展示品は絵画、茶道具、着物、刀剣、甲冑、硯箱等の調度品などバラエティに富んでいますが、中でも注目すべきは、やはり障屛画をはじめとした大画面の絵画作品。非常に力を入れている印象で、前期・後期とも、狩野永徳や長谷川等伯、曽我直庵といった、安土桃山時代を代表する画家たちによる不世出の名画が数多く集められています。

天下統一の機運が高まる中、各地の経済活動と文化交流が活発になり、海外との往来によってさらに人々の世界が開かれていった時代。当時の気風を反映したかのように生まれた豪華で壮大な美術たち。障屛画は、そのスケールの大きさを一番率直に感じられるジャンルといってもいいでしょう。

 

重要文化財 土佐光茂筆《日吉山王祇園祭礼図屛風》 室町時代・16世紀 東京・サントリー美術館 前期展示
伝 狩野永徳筆《四季花鳥図屛風》 安土桃山時代・1581年 兵庫・白鶴博物館 10月6日~25日まで展示
曽我直庵筆《龍虎図屛風》 安土桃山~江戸時代・16~17世紀 東京国立博物館 前期展示

 

六曲一双のそれぞれ一面に大きく描かれた龍と虎。水墨画を得意とした曽我直庵による《龍虎図屛風》は、前期の展示の中で一・二を争うくらいに迫力のあった屛風絵です。幻想的でありながら威圧的でもあり、安土桃山時代らしい豪壮さに満ちています。

 

国宝 狩野永徳筆《檜図屛風》 安土桃山時代・1590年 東京国立博物館 前期展示

 

スピード感のある筆致により形取られた、画面を突き破らんばかりに広がる幹と枝は、植物にもかかわらず動的な生命力に満ちており、まるで龍のよう。大画様式を確立した永徳による《檜図屛風》は、荒々しく、見る者に圧倒的な存在感で迫ってきます。

■ピックアップ② 武具甲冑

 

戦いが続いた安土桃山時代では、合戦に勝ち抜くために武器や防具も大きく発展していきました。たとえば、主に民衆の間で普及していた実用的な刀装「打刀」を、趣向を凝らしながら武将たちも積極的に用いるように。また全身の防具を揃いの仕立てにする「当世具足」が登場したのもこの時期です。

武将たちは自らの装備品に、実用性を重視しながらもさまざまな装飾や工夫を施し、地位や風格を示していきました。展示ではそのような、当時の武将たちの生き様を感じられる作品が鑑賞できます。

 

《紺糸威五枚胴具足》 安土桃山~江戸時代・16~17世紀  宮城・仙台市博物館 全期展示
重要文化財 《紺糸威南蛮胴具足》 安土桃山~江戸時代・16~17世紀 東京国立博物館 全期展示
《白糸威一の谷形兜》 安土桃山~江戸時代・16~17世紀 東京国立博物館 全期展示

 

源平合戦で特に有名な「一の谷の戦い」の舞台となった、一の谷の断崖を表したとされる頭立と、長さ90cmを越える、天に向かってそびえ立つように挿された大釘形の後立。《白糸威一の谷形兜》は、徳川家康から水戸徳川家に伝えられたとされる変わり兜です。

まるで角のような大釘は、敵を打ち貫くものとして武将たちに好まれたモチーフ。もともとは全体に銀箔が押されていたとされ、この威嚇的な造形とあいまって、身に着ける者の心をいかに奮い立たせたか、想像を掻き立てられます。

 

国宝  [刀身]長船真光《太刀 銘 真光》鎌倉時代・13世紀 [刀装]《梨地糸巻太刀》 安土桃山時代・16世紀 山形・致道博物館 全期展示
重要文化財 《黒漆打刀》 江戸時代・17世紀 10月6日~25日まで展示

 

こちらの《黒漆打刀》は、徳川家を代々渡り歩いたとされる名刀中の名刀《本庄正宗》を納めるために作られた刀装。展覧会への出展は今回が初となるそう!

「打刀」は安土桃山時代に発展したものですが、この刀装の表現は室町時代から伝統的に作られてきたものということで、革新と伝統の交わりを確認できる、まさに歴史の過渡期を思わせる逸品です。

鞘のひやりとした黒漆と、三所物に飾られた菊や桐などの格調高い金色装飾が気品を感じさせました。

■ピックアップ③ 南蛮美術関係の作品

 

絵画、武具甲冑といった作品のジャンルではありませんが、南蛮美術の存在も安土桃山時代の美を語る上では不可欠なもの。

フランシスコ・ザビエルによるキリスト教の布教、ポルトガル船やスペイン船の往来によって盛んになった海外との文化・経済交流、そして鎖国体制の開始まで。西洋諸国との関係において、状況が激しく変化していったのがこの時期のことです。もちろん、美術の世界にも多大な影響がありました。

南蛮美術とは、そんな西洋との出会い、西洋への興味や憧れによって成立した美術作品を指します。

 

重要文化財 《日本図・世界図屛風》 安土桃山~江戸時代・16~17世紀 前期展示
重要文化財 《聖フランシスコ・ザビエル像》 江戸時代・17世紀 兵庫・神戸市立博物館 10月6日~25日まで展示
重要文化財 《花鳥蒔絵螺鈿聖龕》 安土桃山時代・16世紀 九州国立博物館 前期展示

 

一際目を引いたのは《花鳥蒔絵螺鈿聖龕》。聖龕と書いて「せいがん」と読みます。聖龕はキリスト教の聖画を納めるもののことで、こちらは海外に輸出された南蛮美術の一つ。

屋根や枠など、正面から見える範囲にはびっしりと文様装飾が施されていますが、特に観音開きの扉を埋め尽くすように描かれた花鳥文様は、言葉をなくすほどの美しさがあります。中に入れられているテンペラ画と合わせて見どころの尽きない作品です。

 

 

ピックアップしたジャンル以外にも、《瓢花入 銘 顔回》や《黒楽茶碗 銘 禿》(いずれも前期展示)といった茶の湯の大成者・千利休ゆかりのやきもの。段や筋を重視するデザインから、徐々に絵画的なデザインへと流行が変化していく過渡期の意匠が見られる衣服《小袖 染分綸子地小手毬松楓模様》(全期展示)などなど。

見どころがありすぎて、瞬く間に時間が過ぎ去ってしまいました。

 

重要文化財 [書]本阿弥光悦筆 [絵]俵屋宗達筆《鶴下絵三十六歌仙和歌巻》 江戸時代・17世紀 京都国立博物館 前期展示  無二の美的世界が広がる絵巻の傑作。書と金銀泥の鶴が呼応するかのように優美に描かれています。
重要文化財 本阿弥光悦筆《子日蒔絵棚》 江戸時代・17世紀 東京国立博物館 全期展示  大胆な意匠構成が目を引く「源氏物語」をモチーフにした蒔絵棚。側面の蒔絵がまるで星のよう。

充実のミュージアムグッズ

 

帰路につく前に、ぜひミュージアムグッズのコーナーもチェックしてみてください。出展作品をモチーフにしたインテリア雑貨やTシャツ、日用品など幅広いアイテムが揃っていました。

 

《洛中洛外図屛風》や《檜図屛風》などをモチーフにしたミニチュア屛風
8bit風にかわいくデザインされた武将のミニメモセット
《龍虎図屛風》の虎がデザインされたTシャツやトートバッグ
展覧会オリジナルグッズであるザビエル入浴剤(サビエル入浴剤とはいったい……?)

 

特別展「桃山―天下人の100年」の開催は11月29日(日)まで。

新型コロナウィルス感染対策により、完全な事前予約・時間指定制となっていますのでご注意ください。

全国から名だたる逸品が集まった貴重な展覧会。芸術の秋に、ぜひ足を運んでみてくださいね。

 

開催概要 ※完全事前予約制・時間指定制

展覧会名 特別展「桃山―天下人の100年」
会期 2020年10月6日(火)~11月29日(日)
◇前期展示:10月6日(火)~11月1日(日)
◇後期展示:11月3日(火・祝)~11月29日(日)
休館日 月曜日 (ただし11月23日[月・祝]は開館)、11月24日(火)
開館時間 午前9時30分~午後6時
※金曜、土曜日は午後9時まで開館
会場 東京国立博物館 平成館
入場料 一般  2,400円
大学生 1,400円
高校生 1,000円  ※すべて税込
主催 東京国立博物館、読売新聞社、文化庁
公式サイト https://tsumugu.yomiuri.co.jp/momoyama2020/

<参考資料> 読売新聞社『特別展「桃山―天下人の100年」図録』

 

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悪の権化、逆転女王・・・王家の「人物」を読み解く展覧会。【上野の森美術館】(~2021/1/11)「KING&QUEEN展」プレス内覧会レポート

上野の森美術館

 

2020年10月10日(土)~2021年1月11日(月・祝)まで、上野の森美術館で「KING & GUEEN展」が開催されています。公開前日にメディア向けの特別内覧会が開催されましたので、今回はその様子をお伝えいたします。

肖像でたどる、英国王家の物語。

 

展示会場入口。正面を飾るのはエリザベス2世の肖像画
エリザベス1世の肖像画(作者不詳)。大英帝国の礎を築き、権勢を振るった
会場は五つのエリアに区分けされ、王朝ごとに肖像画を展示。こちらはステュアート朝エリア
非常にサイズの大きな肖像画も多く、見応えがある。こちらはステュアート朝の最後を飾ったアン女王
ヴィクトリア女王のエリアでは美しい大理石の彫像とともに作品を展示
写真というメディアが肖像画に代わるようになった現代。手前にはハリー王子とメーガン妃の姿が

 

日本と同様、国家として王室を戴き、その歴史を保ち続けている国イギリス。
ハプスブルク、オマノフ、オスマン・トルコ・・・第一次大戦を経て数々の王朝が瓦解する中、イギリス王朝は時代時代で名称や形態を変えながらも、その血脈を五百年以上も受け継いできました。

「KING&QUEEN展」は、今なお世界中から注目を集め続ける英国王室の歴史を肖像画でたどる展覧会。世界屈指の肖像専門美術館であるロンドン・ナショナル・ポートレートギャラリーのコレクションにより、テューダー朝から現在のウィンザー朝までの貴重な肖像画・写真など約90点を展示します。

本展サポーターのデヴィ夫人も登場!

 

 

また、報道内覧会では本展のサポーターに就任したデヴィ夫人が登場。
以前は絵画において「天才」と呼ばれ、一時はその道を志すことも考えたというデヴィ夫人。絵画や王族のファッションへの確かな見識を示しながらも、ダイアナ妃と競馬の祭典で出会ったエピソードなど、まさにデヴィ夫人にしか話せないような「セレブな」話が数多く披露されました。

最後に「展覧会のここを見てほしい、というポイントは?」と問われると、
「英国の歴史、出来事の背景、その人物がどういう運命をたどったのか。日本の方にはほとんど知られていないことかもしれません。しかし、肖像画というのは本当に深い部分まで訴えているもの。ぜひ、キャプションをよく読みながら鑑賞して理解を深めてもらえればと思います」
と、サポーターとして本展の楽しみ方について語ってくださいました。

肖像画とは、物語だ。

 

 

英国は偉大なる劇作家シェイクスピアを生んだ国としても有名です。つまり、英国民は生まれながらに人物好き、歴史好き、そして物語好きと言えるかもしれません。

無心に色彩や構図を味わうのも絵画の楽しみ方のひとつですが、時代による画風やファッションセンスの変遷、画面の細部に込められた寓意、そして絵画の背景に込められた「物語」・・・。そうしたものを味わうことによって、より一層目の前の絵画が生き生きと輝きだす瞬間があるのかもしれません。

ここでは、展示された肖像画の中から編集部が三点をピックアップ。その背景に流れる「物語」をちょっとだけご紹介します!

 

《ヘンリー8世》 作者不詳(ハンス・ホルバイン[子]の原作に基づく) 17世紀か

 

愛か、信仰か。英国史上もっとも残酷な王。

ハンス・ホルバイン[子]が1536年に描いたものに基づくとされる、ヘンリー8世の肖像画。豪華な衣服や宝飾品で飾り立てられた伝統的な王族の表現により、まさに権勢の頂点にあるヘンリー8世の威厳を示しています。

彼の驚くべきは、生涯6人の妻と結婚し、その妻たちを離婚・追放、挙句の果てには処刑までおこなっているということ。さらには二番目の妻アン・ブーリンと結婚するために、離婚禁止のローマ教会を敵に回し、ついには英国国教会の設立にいたります。まさにこれが発端となり、世には宗教改革の嵐が吹き荒れることに・・・。

まさに、愛に狂い、愛のために歴史を変えた男と言えるかもしれません。

 

《レディ・ジェーン・グレイ》 作者不詳  1590-1600年頃

 

断頭台に散った、16歳の儚き人生。

中野京子「怖い絵」で取り上げられ、一躍有名になったポール・ドラローシュの《レディジェーングレイの処刑》。こちらは生前ではなく、死後にレディ・ジェーン・グレイを弔うために描かれた板絵です。両目と口の上には引っ掻かれたような傷が残っており、その歴史の中で聖像破壊を目的とした攻撃を受けたことを示しています。

ヘンリー8世の孫娘である彼女の治世はたった9日しか続かず、ローマ・カトリックを信仰するメアリーによって王位を奪われ、わずか16歳の身で断頭台にその若い命を散らすことになりました。

 

《ジョージ4世》 トーマス・ローレンス 1814年頃

 

なかなかのイケメン。でもあだ名は「クジラ王子」?

若い頃からハンサムで教養も深く、「イングランドいちのジェントルマン」とも呼ばれていたジョージ4世。精神疾患を患っていたジョージ3世の代理として国を治め、父親の死去によって即位。特に彼は芸術面における優れた支援活動で世に知られています。

「ジェントルマン」の名に恥じぬ容姿端麗な姿。この魅力的な造形はメダル用に作られたものですが、結局メダルは鋳造されることはありませんでした。なぜか。
それは、彼が見る影もなくぶくぶくと太ってしまったからです・・・。浪費や放蕩が絶えず、お世辞にも素行が良いとは言えなかったようで、ついたあだ名は「クジラ王子」。うーん、残念!

 

開催概要

展覧会名 ロンドン・ナショナル・ポートレートギャラリー所蔵
KING&QUEEN展 ―名画で読み解く 英国王室物語―
会 期 2020年10月10日(土)〜2021年1月11日(月・祝)
10:00~17:00 金曜日は10:00~20:00 <1月1日(金祝)は17:00まで>
※最終入館は閉館の30分前まで
※会期中無休
入場料 平日  一般¥1.800  高・大学生¥1,600  小・中学生¥1,000
土日祝 一般¥2,000  高・大学生¥1,800  小・中学生¥1,200
日時指定制を導入しています。
入場方法・チケット購入などこちらよりご確認ください。
会場 上野の森美術館
公式サイト https://www.kingandqueen.jp/

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10/25まで開催中!「藝大コレクション展2020――藝大年代記(クロニクル)」取材レポート

東京藝術大学 大学美術館

 

2020年9月26日から東京・上野にある東京藝術大学 大学美術館にて開催中の「藝大コレクション展2020――藝大年代記(クロニクル)」に行ってきました!

皆さんはもう足を運ばれたでしょうか?

この記事では、本展の展示内容や見どころについてレポートしていきます。

 

特にすばらしかったのは、展示室にぐるりと並べられた、かつての在学生たちが納めてきた自画像、その数100点以上!

後年に画壇で活躍した人、才能がありながら若くしてこの世を去った人。それぞれが学生だった当時の自意識や趣味関心など、自己のありようがまざまざと投影された自画像を一度に見比べて楽しめる、非常に見ごたえのある展示になっていました。

「藝大コレクション展」はどんな展覧会?

 

前身である東京美術学校(以下「美校」)開校から現在に至るまで、約130年以上の歴史をもつ東京藝術大学(以下「藝大」)。藝大はその歴史の中で、さまざまな美術資料を収集してきました。

学生たちの教育・研究資料として方々から買い上げられた作品や、黒田清輝や横山大観ら、歴代の教員・在学生・卒業生による作品など、藝大の大学美術館に収蔵されているコレクションは約3万点にものぼります。

そんな藝大の大学美術館が定期的に開催しているのが「藝大コレクション展」。その名の通り、普段は非公開となっている膨大な量の藝大コレクションの中から、厳選された作品を拝める貴重なチャンスなのです!

「藝大コレクション2020――藝大年代記(クロニクル)」は2部構成になっていて、第1部テーマは「『日本美術』を創る」、第2部テーマは「自画像をめぐる冒険」。

多彩な美術作品から藝大の歴史を年代記のように辿ることをテーマに、絵画を中心とした150点以上の作品が展示されています。

 

今回は展覧会をより深く堪能するため、学芸研究員の長友さんにご解説いただきながら巡ってきました。長友さん、お忙しいところご協力いただきありがとうございました。

第1部「『日本美術』を創る」の内容と展示作品を紹介

 

第1部では、主に美校時代のコレクション形成において重要な時期が、作品を収集した年とともに紹介されていました。

作品を収集した年を明らかにすることで、「美校がそのときどきに、どんなものを美術資料として集めたかったのか」の傾向がわかる――言い換えれば、「各時期の学生たちが、どんな作品を参考に技術を学んでいたのか」がわかるということですね。

 

(左から) 原田直次郎《靴屋の親爺》1886年 重要文化財 / 高橋由一《鮭》1877年頃 重要文化財/ 黒田清輝《婦人像(厨房)》1892年

 

たとえば、エントランスで来館者を出迎えてくれる、

原田直次郎《靴屋の親爺》
高橋由一《鮭》
黒田清輝《婦人像(厨房)》

こちらの3枚の有名な油画。(早速の登場に「おおっ!」とテンションが急上昇!)

藝大コレクションの中でも人気が高く、時代を象徴する名画ですからご存じの方も多いと思います。

伝統的な西洋画技法を使っていた原田と高橋はいわゆる「旧派」、印象派風の外光表現を取り入れた黒田は「新派」の画家として区別されていた当時。ジャーナリストたちに対立を煽られ、次第に新派が優位に立つなど、洋画家の世界は複雑な状況にあったそうです。

しかし、これら3点はいずれもほぼ同時期(1896~1897年)、美校に西洋画科が新設された時期に収集されたという記録が残っています。西洋画の新旧の技法や表現を、分け隔てなく学生たちに学ばせたいという当時の教員たちの思いがうかがえますね。

このように、第1部では学校と教員の歴史を垣間見ることができます。

開校から西洋画科新設まで――学習を支えた古典絵画の模写作品

 

(伝)狩野永徳《松鷹図屏風》(16-17世紀)

 

展示室入口を進み、まず重要な年代として取り上げられていたのは1889年。美校開校の年に収蔵が記録されている、最初期のコレクションのエリアです。

開校にあたり、国宝の《絵因果経》や、(伝)狩野永徳の《松鷹図屏風》など、白鳳時代から江戸時代までの幅広い時代の古美術が参考美術品として集められたそうです。

 

(左から) 原作:ベルナルディーノ・ルイーニ 模写:久米桂一郎《小児と葡萄》1892年 / 久米桂一郎《寒林枯葉》1891年 / 山本芳翠《西洋婦人像》1882年 / 岡田三郎助《セーヌ河上流の景》1899年

 

次のエリアに移動すると西洋画科と図案科が新設された1896年に、指導者として招かれた黒田清輝・久米桂一郎たちが収集した西洋画が展示されていました。

その中にはオリジナルの絵だけでなく、久米がフランス留学時代にベルナルディーノ・ルイーニのフレスコ画の一部を模写した《小児と葡萄》も含まれています。

これらの模写作品は、当時の西洋画科にとって非常に重要な存在だったそう。

 

原作:ジャン=フランソワ・ミレー  模写:和田英作《落穂拾い》1903年

 

当時はまだまだ、学生が海外へ気軽に絵を見に行くことができない時代。それでもどうにかして西洋の優れた名画に触れさせたいと考えた黒田たちは、古典絵画の模写を推奨。さらに、文部省の給費留学生たちに、名画の模写を美校に提出するように取り計らったそうです。

その一例として同じエリアに展示されていたのは、和田英作がフランスのルーヴル美術館で模写した、ジャン=フランソワ・ミレーの傑作を原作とした《落穂拾い》。色こそ経年で暗くなってしまっていますが、忠実に原作の描写や雰囲気を再現しています。

この作品がどれだけの学生たちに新しい世界を教え、また刺激を与えたのか。当時の切実な事情が伝わってくると同時に、壮大な物語を感じる絵画でした。

 

幻の天女に思いをはせる

 

アントニオ・フォンタネージ《天女》1876-1878年

 

第1部の中盤には、藝大の前身である美校の、さらに前身として位置づけられている工部美術学校関係の素描が集められたエリアがありました。

教員として招かれたイタリアの画家、アントニオ・フォンタネージが教材用に描いた、建築や風景画などの小さい素描が並ぶ中で、ひときわ目を引く《天女》という巨大な素描。わずかに微笑んでいるような、考え事をしているような、不思議な表情が魅力的な女性が写実的に描かれています。

これは教材ではなく、「当時造営予定だった天皇家の新宮殿、その壁画に使うための構想スケッチとして描かれたれたものだったのでは」というお話です。残念ながらその計画は頓挫してしまったそうですが、もし建てられていたら、どれだけ美しい《天女》が誕生したのだろうと想像力を刺激してくれました。

 

学校をあげて参加したパリ万博の出展作品も!

 

(左から)藤島武二《池畔納涼》1898年 / 広瀬勝平《磯》1898年頃 / 結城素明《兵車行》1897年 / 長沼守敬《老夫》1898年 / 島田佳矣《徳川式室内装飾》1894年頃

 

展示室をさらに進み、第1部の最後に位置するエリアでは、

・美校教員が数多く参加した 1900 年のパリ万国博覧会への出品作品
・1930年代、文部省美術展覧会に代表されるいわゆる“官展” で高い評価を得たのち、政府が買い上げ、美校に移管された作品

が鑑賞できました。

 

島田佳矣《徳川式室内装飾》1894年頃

 

パリ万博に出品された作品の中には、島田佳矣の《徳川式室内装飾》があります。

江戸時代の様式で、空想のお城の内部空間が細やかに描かれた作品ですが、工芸品の飾り方、かけ軸のかけ方、ふすまの存在、意匠化した家紋、おめでたいモチーフとしての鶴……そういったものを、日本の室内装飾に対する関心が高まっていた海外の人々に紹介するために作ったデザイン案になっているそう。

あくまで控えめに、しかしそれぞれの小道具・装飾の魅力が実に緻密に・魅力的に描かれていて見入ってしまいました。

これらの出品作品は、19世紀において最も重要な文化現象のひとつであった万博に、日本がどのように反応していたのかを示す記録として非常に重要な存在なのだとか。

 

狩野芳崖《悲母観音》1888年 重要文化財
上村松園《序の舞》1936年 重要文化財

 

重要文化財である上村松園の《序の舞》や、特別展示された狩野芳崖の《悲母観音》などもこのエリアに飾られていました。どちらもかなりの大きさがあってさすがの迫力。

藝大の大学美術館の宝ともいえる《悲母観音》に関しては、これを見るためだけに「藝大コレクション展」に訪れる人も少なくない人気の作品とのこと。平日の午前中にうかがったので、幸運にも目の前でじっくりと鑑賞できてラッキーでした。

 

第2部「自画像をめぐる冒険」の内容と展示作品を紹介

 

 

第1部の展示室の反対側にあるもう一つの展示室へ足を向けると、第2部「自画像をめぐる冒険」の展示が姿を現します。

第1部が学校と教員の記録だとすると、第2部は学生の記録。

西洋画科では伝統的に自画像の制作がカリキュラムに含まれていて、現在でも卒業生全員が学校に自画像を納めることになっているそうです。ここではその自画像と、卒業制作として買い上げになった作品が飾られています。

 

(左下) 原作:レンブラント・ファン・レイン 模写:黒田清輝《羽根帽子をかぶった自画像》1889年

 

日本に限らず、海外の美術学校でも必ず自画像を納めさせている学校はおそらく皆無で、美校・藝大独自の文化なのだとか。ちょっと面白いお話ですよね。

 

 

100点以上の自画像がぐるりと展示室を飾る様子が壮観すぎました……!

青木繁、萬鉄五郎、藤田嗣治、佐伯祐三、吉井淳二、中西利雄などなど、日本の近代美術史に名を残す人物たちの若かりし頃の姿が一堂に会しています。ファンにとってはまさに垂涎ものの光景ではないでしょうか。

年代別に飾られていますが、明治期は着物を着た人、そしてやけに貫禄のある人が多かった印象です。しかし大正を過ぎ、昭和に入ると、中には服を着ていない、顔のパーツを書かないなど強烈に個性を出す人が目につくように。戦争中はやはり重々しい雰囲気で……と、並べてみることで見えてくる“時代”がありました。

自画像を描くときは、自分の姿だけではなく、好きなものや、自分のキャラクターを伝える小道具を入れることも多いそう。

なので、この人は学生時代ゴーギャンが好きだったのかな、背後に描かれた浮世絵がお気に入りだったのかな……そんなふうに、各人のバックグラウンドや趣味関心を想像してみると、新しい発見があるかもしれません。

 

板倉鼎の自画像 1924年3月

 

筆者が一番気に入ったのは、板倉鼎の自画像。暗めで落ち着いた色彩の自画像が多い中で、白い肌とキャンバスが眩しく映り、ふんわりとした筆遣いとやさしげな風貌に癒されました。

 

和田英作《渡頭の夕暮》1897年

 

卒業制作の展示では、美校の第一期生であった横山大観の《村童観猿翁》や、和田英作の《渡頭の夕暮》など11点が並んでいました。

《村童観猿翁》は子どもたちが微笑ましく遊んでいる風景かと思いきや、どことなく表情が奇妙で少し怖くなる、晩年とはまた違った凄みのある作品。《渡頭の夕暮》は写実的でありながら、空と川の色づかいがまるで夢の中のように幻想的で引き込まれました。

 

画像がなくて恐縮ですが、面白かったのは金澤庸治の《ユートピアの倶楽部》という複数枚のデザイン画。島ごとレジャー施設をつくったら、という空想の計画を絵にしたものということですが、そのデザインが今見ても非常に斬新で、曲線をメインに据えた奇妙さがクセになり……。派手さはないですが、家の壁に飾りたくなるようなかわいらしい雰囲気の作品でした。

足を運ばれた際はぜひ注目してみてください。

終わりに

 

会場は藝大の大学美術館 地下2階展示室のみということで、比較的小規模な展示ではありましたが、観覧料一般440円が安すぎると感じられる満足感がありました。

ちなみに、最近は新型コロナウイルス感染対策で事前の予約が必要な展覧会も増えていますが、こちらの展覧会は思い立ったときにふらりと立ち寄るのもOK。

 

毎年1~2回開催されている「藝大コレクション展」。一部有名作品は展示常連になっているものもあるようですが、なにせ収蔵数は30,000点以上。今回初出しという作品や、今回を逃せば今後何十年も出てこない作品だってあるはず。

開催は10月25日(日)までですので、ぜひこの機を逃さず足を運んでみてくださいね。

 

 

 

「藝大コレクション展 2020――藝大年代記(クロニクル)」概要

会期:2020年9月26日(土)~ 10月25日(日)

時間:午前10時 ~ 午後5時 (入館は午後4時30分まで)

※本展は事前予約制ではありませんが、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、混雑状況により入場をお待ちいただく場合があります。

休館日:月曜日

会場:東京藝術大学大学美術館 本館 展示室1、2

観覧料;一般440円(330円)、大学生110円(60円)、高校生以下及び18歳未満は無料

※ ( )は20名以上の団体料金
※ 団体観覧者20名につき1名の引率者は無料
※ 障がい者手帳をお持ちの方(介護者1名を含む)は無料

主催:東京藝術大学

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【東京都美術館】「The UKIYO-E 2020 ― 日本三大浮世絵コレクション」 内覧会レポート

東京都美術館


歌川国芳 「みかけハこハゐがとんだいゝ人だ」 日本浮世絵博物館 前期展示

 

2020年7月23日(木・祝)より、東京都美術館にて、「The UKIYO-E 2020 ― 日本三大浮世絵コレクション」が開催されています。(~9月22日(火・祝)まで) ※前期・後期で作品の入れ替えあり)

先日、この展覧会の報道内覧会がありました。
この記事では、展覧会について、みどころ、展覧会の構成と編集部注目作品などについて、紹介します。
それでは、ご覧ください!


「 The UKIYO-E 2020 ― 日本三大浮世絵コレクション」とは?

 

今回、東京都美術館で開催される、「The UKIYO-E 2020 ― 日本三大浮世絵コレクション」は、日本の三大浮世絵コレクションといっても過言ではない、太田記念美術館、日本浮世絵博物館、平木浮世絵財団に所蔵される浮世絵の名品が集結し、選りすぐりの約450点の浮世絵版画のすぐれた名品を前期・後期にわたり展示するものです。
江戸時代の庶民に愛好された、日本を代表する芸術の一ジャンル、浮世絵の魅力を存分に楽しむことができます。

「The UKIYO-E 2020 ― 日本三大浮世絵コレクション」のみどころ5つ

 

The UKIYO-E 2020 ― 日本三大浮世絵コレクション」のみどころは、5つあります。

 

3大浮世絵コレクションが一堂に集う史上初の展覧会です。

 

浮世絵の歴史を展観する約60名の絵師の代表作を一挙に公開します。

 

出品数の約450点のうち、重要文化財・重要美術品は100点以上展示します。

 

世界唯一の残存作など所蔵の逸品が目白押しです。

 

超有名作である、葛飾北斎「冨嶽三十六景」、歌川広重「東海道五拾三次」を通期で展示します。

 

 

 

各章の構成と編集部注目作品

 


第一章 初期浮世絵

 

初期浮世絵版画は、延宝期(1673~81)頃の墨一色の版による「墨摺絵」(すみずりえ)により、始まります。
のちに、墨摺絵に丹を中心に筆彩色を施した「丹絵」(たんえ)、丹に代わり紅を用いて、黄色、藍で彩色した「紅絵」(べにえ)、黒色部分に膠(にかわ)を混ぜ、光沢を出した「漆絵」などが作られました。

延享期(1744~48)頃になると、紅や緑の色版を重ねる版彩色が行われ、「紅摺絵」(べにずりえ)と名付けられ、多色摺の錦絵が生まれる土台を確立します。

第一章では、浮世絵初期の時代の絵師、菱川師宣、懐月堂派、奥村政信、鳥居清信・清倍などの作品を展示しています。

 

 

【編集部注目作品】

 

●菱川師宣 「若衆と娘」

浮世絵版画の創始、菱川師宣が描いた、衝立の脇で寄り添う男女を描いた作品です。
唐草のような枠の中に描かれている、シンプルな描線とその線の上に塗られた、黄色や赤の色彩が目を引きます。

菱川師宣 若衆と娘 平木浮世絵財団 前期展示

 

 

●懐月堂度繁 「立美人」

肉筆画を中心に描いた懐月堂派の中では、版画の制作数が最も多いといわれている懐月堂度繁の作品です。
着物の前褄(まえつま)を取って立つ女性を画面いっぱいに描いています。
凛として佇む女性の姿は、まさに立美人です。

懐月堂度繁 立美人 重要美術品 平木浮世絵財団 前期展示

 

 

●奥村利信 「お七と吉三」

浄瑠璃や歌舞伎に脚色された、お七と吉三郎の話を描いた作品です。
八百屋お七が恋文を吉三郎に手渡ししている様子をとらえています

お七役は、二代目三条勘太郎が、初代嵐喜世三郎の追善として演じたのが有名で、以降の上演では、お七役は、嵐喜世三郎の定紋を用いるようになりました。
本作品の吉三郎は、衣装に二代目中村七三郎の紋が見えますが、当時七三郎が吉三郎を演じた狂言は、見出せなかったとのことです。

奥村利信 お七と吉三 太田記念美術館 前期展示

 

 


第二章 錦絵の誕生

 

明和2年(1765)頃、多色摺の版画が誕生し、錦のように美しい江戸の絵という意味で「東錦絵」(あずまにしきえ)と称されました。

第二章では、錦絵創生の時代にもっとも活躍した、鈴木春信、磯田湖龍斎、一筆斎文調、勝川春章らの作品を展示しています。

 

【編集部注目作品】
 
 
●鈴木春信 「風流諷八景 鉢木の暮雪」
 
中国の山水画の伝統的画題、瀟湘八景(しょうしょう はっけい)にちなんだ作品です。
8つの謡曲と結び付けたうちの「鉢の木」の物語の一場面が描かれています。
箒で屋根に積もる雪を払い落としているだけの姿ですが、その姿は、上品で雰囲気があります。

鈴木春信 風流諷八景 鉢木の暮雪 太田記念美術館 前期展示

 
 
●勝川春章 「初代中村仲蔵の近江小藤太 三代目大谷広次の番場忠太」

中村座の「御誂染曽我雛形」(おあつらえぞめそがのひながた)の一場面、
初代中村仲蔵の近江小藤太と三代目大谷広次の番場忠太の二人が、闇仕合をする姿が描かれています。
鬼気迫る表情で演じる役者の熱が、肌感覚で伝わってきます。

勝川春章 初代中村仲蔵の近江小藤太 三代目大谷広次の番場忠太 日本浮世絵博物館 前期展示

 

 

第三章 美人画・役者絵の展開

 

天明期(1781~89)に入ると、鳥居清長が伸びやかな長身の美人画様式を生みだし、群像図を多く制作します。
寛政期(1789~1801)に入ると、喜多川歌麿が様々な階層の女性を描きます。
東洲斎写楽は、寛政6年(1794)5月からわずか1年たらずで、忽然と消えてしまった絵師ですが、国際的にも評価されていいます。

第三章では、鳥居清長、喜多川歌麿、東洲斎写楽、歌川豊国らの作品を展示しています。

 

【編集部注目作品】

●鳥居清長 「大川端夕涼み」

川辺で涼風を楽しむ女性たちを描いた作品です。
今回、40年ぶりの展示となります。

五月二十八日の川開きに始まる、江戸の夏。
左側の茶托を持つ茶屋娘、中央のうちわを持つ女性、右側の片足を乗せる女性たちが、夏を楽しむ視線の先には、なにが映るのでしょうか?

※隅田川の下流は、当時、大川として親しまれていました。

鳥居清長 大川端夕涼み 重要文化財 平木浮世絵財団 8月10日まで展示

 

 

●喜多川歌麿 「五人美人愛敬競 松葉屋喜瀬川」

五人美人愛敬競は、江戸で評判の美女を描いた全5図の揃物です。
目鼻立ちの整った、面長の江戸美人に思わず見とれてしまいます。
顎に手をのせる女性の手指のしなやかさも印象的です。

喜多川歌麿 「五人美人愛敬競 松葉屋喜瀬川」 太田記念美術館 前期展示

 

 

●東洲斎写楽 「三代目坂田半五郎の藤川水右衛門」

二代目坂田半五郎十三回忌追善の興行で、三代目坂田半五郎が藤川水右衛門を演じたシリーズのうちの1点です。
藤川水右衛門のへの字口、かっと見開く眼、血管の浮き出た腕は、まさに敵役にふさわしい出立ちです。

東洲斎写楽 三代目坂田半五郎の藤川水右衛門 太田記念美術館 前期展示

 

 

●歌川豊国 「三代目市川八百蔵の此下東吉」

寛政8年(1796)三代目市川八百蔵が演じた、「衹園祭礼信仰記」の此下東吉を描いたとされる作品。
衹園祭礼信仰記は、悪人松永大膳に立ち向かう此下東吉の活躍を描いた物語です。
この絵の三代目市川八百蔵の目力には、圧倒されます。
その目からは、ただならぬ意志が感じられます

歌川豊国 三代目市川八百蔵の此下東吉 日本浮世絵博物館 前期展示

 

 

 

第四章 多様化する表現

 

文化・文政期(1804~30)に入ると、大らかな雰囲気だった錦絵は、より緻密な描写となり、画面に描かれる情報量も増えていきます。

第四章では、菊川英山の美人画、歌川国貞(のちに歌川豊国を襲名)らの作品を展示しています。

 

【編集部注目作品】

 

●菊川英山 「東すがた源じ合  紅葉賀」


源氏かるたと女性の半身像を組み合わせた揃物の一つで、行灯の灯りで冊子を読む娘を描いた作品です。
紙面を照らそうと、首を傾けて熱心に冊子を読みふける女性の真剣な表情が印象に残ります。
本の赤と髪留めと和服の赤が、調和を保っているように感じられます。

菊川英山 「東すがた源じ合  紅葉賀」 日本浮世絵博物館 前期展示

 

 

●歌川国貞 「紅毛油画風 永代橋」

洋風表現で描いた風景画の揃物で、知られたものでは、「紅毛油画風」、「紅毛油画名所尽」という図がそれぞれ5図、計10図あります。
この作品は、隅田川で四番目に架けられた橋、永代橋を取り上げた作品です。
永代橋の前を優雅に屋形船が渡ろうとしています。

歌川国貞「紅毛油画風 永代橋」日本浮世絵博物館 前期展示

 

 

第五章 自然描写と物語の世界

 

天保初期(1830~33)頃に、葛飾北斎による浮世絵版画、「神奈川沖浪裏」を含む「冨嶽三十六景」シリーズが出版されます。
天保4~5年(1833~34)頃には、歌川広重の代表作、「東海道五拾三次之内」も制作されました。

第五章では、葛飾北斎、歌川広重、歌川国芳などの作品を展示しています。

 

 

【編集部注目作品】

 

 

●葛飾北斎 「冨嶽三十六景 凱風快晴」

嶽三十六景は、日本一の名峰富士を眺める場所を変えて、描いた作品です。
この作品の富士は、河口湖付近から富士の北側を捉えたといわれています。
全46図が制作され、世界に北斎の富士のイメージを広めることになりました。
赤い富士山が、鰯雲を突き抜け、そびえる様子に心が震えます。
全46図をすべて見て、比較したくなります。

葛飾北斎 「冨嶽三十六景  凱風快晴」 日本浮世絵博物館  前期展示 ※後期は他館所蔵の同作品が展示されます

 

●歌川広重 「東海道五拾三次之内 箱根 湖水図」

東海道五拾三次之内は、歌川広重の出世作で、代表作の揃物です。
全55図からなり、旅路の風景を叙情豊かに描き、季節や時間、天候により変化する情景を実在感をもって表現しています。

こちらの作品は、小田原宿と三島宿の間に位置し、険しい山道が東海道の難所の一つだった箱根宿を描いています。
黄色、茶色、青の山の色は、色彩豊かです。
手前を歩く、笠を被った大名行列を見ると、その険しい山道の様子がわかります。
遠くに見える富士山を見て、少しだけ心が休まったでしょうか?

歌川広重 「東海道五拾三次之内  箱根  湖水図」 日本浮世絵博物館  前期展示

 
 
●歌川国芳 「みかけハこハゐがとんだいゝ人だ」

何人もの人間を集め、一人の人間の半身像を形作ったパズルのような趣向の戯画です。
その一人一人の顔や、体勢に、思わず笑ってしまいます。
怖い顔と、体のパーツの表情のギャップが面白いです。

歌川国芳 「みかけハこハゐがとんだいゝ人だ」 日本浮世絵博物館 前期展示

 

 

まとめ

 

「The UKIYO-E 2020 ― 日本三大浮世絵コレクション」について、紹介してきました。
日本三大浮世絵コレクションが、そろい踏みする史上初めての展覧会。

展覧会は、第一章から第五章まで、約60名の絵師たちが描いた作品が、前期・後期にわたり455点も登場する、ボリュームある内容となっています。
素晴らしい浮世絵の数々を鑑賞できるチャンスは、めったにないので、興味がある方は、東京都美術館へ是非とも、足を運んでください。

点数が多いので、まずは、自分のお目当ての絵師の作品を見てから、他の作品をじっくり見てもいいかもしれません。

 

※会場では、新型コロナウイルス対策として、検温の実施、手指の消毒のお願いをしております。
手指の消毒の徹底、マスク着用、密を避けるようソーシャルディスタンスを保って、ご鑑賞ください。

 

開催概要

 

■展覧会名: The UKIYO-E 2020 ― 日本三大浮世絵コレクション

■会期:   2020年7月23日(木・祝)~9月22日(火・祝)
前期:7月23日(木・祝)~8月23日(日) 後期:8月25日(火)~9月22日(火・祝)
(※前期・後期で作品は全て入れ替わります ※日時指定入場制)

■会場:          東京都美術館企画展示室

■開室時間: 9:30~17:30

■休室日:      8月17日(月)、8月24日(月)、9月7日(月)、9月14日(月)

観覧料 : 
※本展は日時指定入場制となりました。詳細は展覧会公式サイトへ(https://ukiyoe2020.exhn.jp)

※中学生以下および、身体障害者手帳・愛の手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・被爆者健康手帳をお持ちの方とその付添いの方(1名まで)は無料(日時指定券(無料)のお申し込みが必要です)
※いずれも証明できるものをご持参ください

展覧会公式サイト:https://ukiyoe2020.exhn.jp)

 

 

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自由な表現者たちの魂が、胸に迫る。
【東京藝術大学美術館】「あるがままのアート -人知れず表現し続ける者たち-」内覧会レポート

東京藝術大学大学美術館

2020年7月23日(木・祝)から9月6日(日)まで、東京藝術大学美術館にて特別展「あるがままのアート -人知れず表現し続ける者たち-」が開催されています。先日、メディア向けの内覧会が開催されましたので、その様子をお伝えいたします。

人間味あふれる、「あるがまま」の作品たち

 

会場入口を彩る、小森谷章氏の作品。糸の塊が絡み合い、アメーバのような生命体を彷彿とさせる

 

展示会場風景

 

作家名の下にはQRコードが貼付されており、スマホ等で読むことで作品情報などを閲覧できる

 

林田嶺一氏はミュシャやロートレックなどのポスター作品とミニチュアなどのさまざまなマテリアルを組み合わせ、不可思議なイメージを作り出す

 

枯葉を折り紙のように折って製作された、渡邊義紘の作品。驚くべき手技の妙

 

井村ももか氏の制作した布製の丸いオブジェ。まるでパフォーマンのように「歌うように、踊るように」作り上げるという

 

当初はTシャツなど、身近なものに描いていたという福井誠。強烈な「目」のイメージが印象的

 

特別展「あるがままのアート -人知れず表現し続ける者たち-」で展示されているのは、いわゆる「プロフェッショナル」の作品ではありません。

ここに集うのは、世間からは「アウトサイダーアート」などとも呼ばれる、既存の芸術や教育、障害の有無などに左右されず、ただひたすらの独自の世界を追求し続けるアーティストたちの作品です。こうした、いわば「独学」のアーテイストたちの活動は20世紀初頭の美術界に大きな衝撃を与え、今日においてもその価値と重要性が強調され、広く社会に受け入れられています。

本展覧会ではNHK・Eテレで放送中のドキュメンタリー番組「no art,no life」と連携し、世界的に注目を集め続ける「あるがまま」のアートの世界を、近年国内外で注目を集めるアーティスト総勢25名、約200点の作品を通じて紹介しています。

 

展覧会初の試み!オンライン上で「ロボット鑑賞」

 

会場を自由に徘徊する自動運転ロボット

 

会場には「ロボット館長」も登場!

 

まさに「日本初」の試み。本展では東京藝術大学とNHKの独自企画として、インターネット経由で遠隔操作可能な自動運転ロボットを活用し、オンライン上のロボ鑑賞会を実現させています。内覧会ではそのお目見えが行われ、「ロボット館長」による展示作品解説も行われました。

ロボットは3Dセンサーを利用して周辺の環境を把握し、目的地に到達する最適なルートを探ってくれます。また、モニターを通じて来場者とコミュニケーションを自由に取ることも可能。来場者とロボットが並んで歩き、和気あいあいと鑑賞する姿を見て、「ああ、新しい時代がやってきたな・・・」と感慨もひとしおでした。

ロボ鑑賞会は予約制で、事前に希望日時を選んで登録し、配信されたURLにアクセスすることで当日鑑賞できるという流れのようです。詳しくはスペシャルコンテンツサイトをご覧ください。

 

出展作家紹介

 

魲万里絵(すずきまりえ)

 

高校時代に統合失調症を発症したという魲万里絵さん。現在は地元の会社と地域活動支援センターに通う傍ら、絵を描き続けているそうです。

ふくよかな女性の身体、ハサミ、性器・・・。彼女の絵画にはこれらのモチーフが反復して登場し、「呪術的」とも言えるほどの強烈な世界観を作り上げています。特にハサミは「描くと落ち着く」モチーフなのだとか。

初めの頃はチラシやポスターのような挿絵風の絵だったようですが、次第にマジックと紙というシンプルな道具を使い、自分自身の内面を曝け出すような絵を描くようになったそうです。

 

小久保憲満(こくぼのりみつ)

 

「この世界のすべてを自分でつくってみたい」

小久保憲満さんは、そうした強い思いで日々筆を取り、絵を描き続けています。会場に展示されている横幅10メートルにも及ぶ大作は17歳の時から描きはじめ、約5年の歳月を経て完成させたもの。

街を縦横に走る線路、ショッピングモール、遊園地・・・。キャンパスには俯瞰した街の風景が描かれていますが、小久保さんは記憶やインターネット検索などで集めた情報を集め、どこにも存在しない空想の街を作り上げました。まさに圧巻の一枚。

キャンパスの右から描き進めていったということで、左に進むほどにモチーフやタッチがまるでグラデーションのように徐々に変化していっているのがわかります。

 

川上健次(かわかみけんじ)

 

「自分にとって強烈な感情をもたらすものをモチーフにする」という川上健次氏。その作品は幼いころに自分をいじめていた男の子や、自責の念にかられながら置き去りにしてしまった猫など、その背後に密度の高い「物語」や「情念」を感じさせるものです。

会場内のモニターには作家自身の姿や創作の様子などがディスプレイされていますが、川上氏は大声で笑ったり泣いたり、まさに「天真爛漫」そのもの。その力強い筆遣いやタッチからは、純粋で野太いエネルギーが伝わってきます。

ときにスリリングで恐ろしい場面を描きながらも、作風はどこかほのぼの。もし岡本太郎が生きていたら、彼のことを絶賛していたのでは・・・そんな想像も浮かんできます。

 

 

開催概要

展覧会名 特別展「あるがままのアート -人知れず表現し続ける者たち-」
会期 2020年7月23日(木・祝)~9月6日(日)
開館時間 10:00~17:00(最終入場は16:30)
※7月30日(木)は12時からご観覧いただけます。
※日時予約制(予約サイトはこちら
休館日 ※休館日:月曜日
ただし、8月10日(月・祝)は開館、8月11日(火)休館
会場 東京藝術大学大学美術館(〒110-8714 東京都台東区上野公園12-8)
観覧料 入場無料
公式サイト https://www.nhk.or.jp/event/art2020/

 

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【上野の森美術館】「なんでもない日ばんざい!」内覧会レポート~注目作品などを紹介~

上野の森美術館

野田 哲也「日記1979年8月10日」木版、シルクスクリーン、和紙 49.0×63.7cm 1979年 上野の森美術館

2020年7月23日(木・祝)より、上野の森美術館にて、上野の森美術館所蔵作品展「なんでもない日ばんざい!」が開催されています。(~8月30日(日)まで)
先日、この展覧会の報道内覧会がありました。
この記事では、展覧会について、展覧会の構成と編集部注目作品などについて、紹介します。
それでは、ご覧ください!


「なんでもない日ばんざい!」について

上野の森美術館では、1983年から今まで38回開催してきた上野の森美術館大賞展の受賞作品を多数所蔵しています。

今回の展覧会「なんでもない日ばんざい!」は、「なんでもない、どこにでもある日常」をテーマに、コロナ禍で、私たちの行動に様々な制限が強いられる中、こんな時期だからこそ見てみたいという作品を約80点展示します。
そのほか、同じく上野の森美術館の所蔵作品から、版画家・野田哲也が、家族や日常の日々を記録した〈日記〉シリーズの1970~80年代の作品約40点を前後期に分けて展示。また、秋山さやかが上野公園を題材に制作した作品も展示します。

「なんでもない日ばんざい!」公式サイト:http://www.ueno-mori.org/specials/2020/nandemonaihi/

 

展覧会の構成と編集部注目作品を紹介します。

 

展覧会は、5章から構成されており、作品の題材や視点が、徐々に日常の内側から外側、身近なものからより遠いものへとひろがっていくよう構成されています。

第1章「日常のなかに」

日常の「核(コア)ともいえる家や室内、身の回りの光景、自分自身やすぐそばにいる親しい人を描いた作品など、展覧会のテーマ、「なんでもない、どこにでもある日常」を感じる一番代表的なイメージ群です。

 

☆藤井 由隆 「花束」

 

まっすぐと、強いまなざしでこちらを見つめる女性。
その表情に、一瞬で引き込まれてしまいます。
ドレスや靴の鮮明なブルーが、女性の芯の強さを象徴しているように思えます。

藤井 由隆 「花束」油彩 F100  第35回 優秀賞 上野の森美術館

 

☆八嶋 洋平 「プラスチックガール」

 

壁にもたれかかる桃色の少女の人形。
深い悩みを抱えているように見えます。
よく見ると、壁には犬か猫を抱く男性の絵が描かれています。
実は、父親への愛情を求める気持ちを表しているのでしょうか?

八嶋 洋平 「プラスチックガール」 油彩 F100 第36回 絵画大賞 上野の森美術館

 

第2章「日常から絵画へ」

 

日常は、絵画の世界への入り口でもあります。
身近な日常に題材を得ているものを、そのまま描くのではなく、古今東西様々な絵画の様式や先達の手法を参考にしたり、あるいは独自のイマジネーションを発揮して様式化した絵画が、第2章にはそろいます。

 

☆原田 久万 「日本の行方 Ⅱ」

 

顔に布を被る男。
その足元は、粉々に崩れていきます。
日本の未来への憂いでしょうか?
「日本の行方」というタイトルにドキッとさせられます。

原田 久万 日本の行方 Ⅱ 油彩 F80  第10回 佳作賞 上野の森美術館

 

☆井上 猛 「きざし」

 

カタツムリの殻のようなものの中から飛び出す大きな魚と殻に吸い込まれるエビのような生き物。
水面は大きく渦を巻いています。
渦は、どんどん大きくなって、どこへ向かうのでしょうか?

井上 猛 「きざし」 油彩 S80  第8回 佳作賞 上野の森美術館

 

第3章「動物」

 

現代社会においての動物は、人間にとってどういう存在なのでしょう?
都市生活者にとっては、家で飼うペット、あるいは動物園などで囲われた状況の動物がいます。
第3章では、人々の感情を映し出す重要な存在として表現された動物などを紹介しています。

 

☆大村美玲 「間」

 

大きな樹と、その近くに佇む鳥。
神話的な樹が、まばゆい光を放っているようにも、鳥がクジャクのように羽を広げているようにも見えます。
薄明りの中で鑑賞すると、どのように見えるのかも見てみたい作品です。

大村美玲 「間」 日本画 S100  第37回 優秀賞 上野の森美術館

 

第4章「風景」

 

第4章は、第1章で紹介した室内などの手の届く範囲の風景よりももっと広い、遠い風景や俯瞰した風景が中心の展示となります。
都市の象徴である建造物から、水の流れや雲の動き、それら私たちの生活に欠かせない風景がここに描かれます。

 

☆呉 梨沙 「あさくさ」

 

誰もが知っている浅草の風景が、季節の移ろいを象徴する花とともに描かれています。
爽やかな色使いの中に、儚(はかな)さも存在しているように感じられます。

呉 梨沙 「あさくさ」油彩 F100 第29回 優秀賞

 


☆茂木 瑶(もてぎたまな)「星座ー窓からの風景ー」

 

窓の外に広がる夜景を描いた作品。
様々な光が交差して眩(まばゆ)い光を放ち、生き生きと語りかけてきます。
それぞれの光を見ていると、明るさが微妙に異なるので、不思議です。

茂木 瑶(もてぎたまな)「星座ー窓からの風景ー」油彩 S100 第32回 優秀賞

 

第5章「広がる想像」

 

実際の日常がいくら狭く、限られたものであっても、私たちは想像力を用い、物理的な制約を補うことができます。
第5章では、画家たちは絵画のなかで、異質なものどうしを結びつけ、異なる時空を導き入れ、目の前の現実よりはるかに広く深い世界を生み出そうと試みた作品を展示します。

 

☆青木萌 「覚醒する情動」

 

花瓶に植えられた花から蝶のような、別の生命のようなものが誕生しています。
ほとんどモノクロームの作品なのに、色彩を豊かに感じ取ることができるのは、気のせいでしょうか?
所々に配置された赤も、効果的です。

青木萌 「覚醒する情動」ミクストメディア F100 第33回 優秀賞

 

[特集展示] 野田哲也 版画 < 日記>シリーズ

 

☆野田 哲也「日記1979年8月10日」

 

野田哲也が、当時幼かった息子さんを題材にした作品。
歯抜けの口を大きく開けて、こちらを向く表情が、とてもユーモラスです。
よく見ると、顔の上に計算式が書いてあります。
この計算式が、作品を一段とポップな印象にしています。

野田 哲也「日記1979年8月10日」 木版、シルクスクリーン、 和紙 49.0×63.7cm 1979年 上野の森美術館

 

※特集展示は、展示替えがあります。

前期:7 月23 日( 木・祝)~8 月10 日( 月・祝)
後期:8 月12 日( 水)~8 月30 日( 日)

まとめ

 

上野の森美術館所蔵作品展「なんでもない日ばんざい!」について、お伝えしてきました。
展示されている”なんでもない、どこにでもある日常”をテーマにした作品群は、どれも気になるものばかりでした。
ここで紹介した作品以外にも、素晴らしい作品が展示されていますので、上野の森美術館へ行って、確かめてみませんか?

そして、作品に触れたあとは、なんでもない日々の大切さを噛みしめることでしょう。
美術館で作品を鑑賞すること、上野公園を散策すること、家族や友人と笑いあうこと。
なんでもないことが、こんなにもキラキラと輝いているということに。

 

※会場では、新型コロナウイルス対策として、検温の実施、手指の消毒の依頼をしております。
手指の消毒の徹底、マスク着用、密を避けるようソーシャルディスタンスを保って、ご鑑賞ください。

 

開催概要

 

タイトル :     上野の森美術館所蔵作品展 なんでもない日ばんざい!
会   場   :  上野の森美術館 〒110-0007 東京都台東区上野公園1-2
会   期 :    2020年7月23日(木・祝)-8月30日(日)
休   館    :   月曜日(ただし8月10日は開館)、8月11日(火)
時   間    :   午前10 時─午後5 時(入場は閉館30 分前まで)
主   催    :   日本美術協会 上野の森美術館、フジテレビジョン
後   援    :   フジサンケイグループ

 

 

チケット情報 

 

*この展覧会は日時予約制です

①10:00~10:59  ②11:00~11:59  ③12:00~12:59  ④13:00~13:59
⑤14:00~14:59  ⑥15:00~16:30

ご来館前にあらかじめ下記(e+ イープラス、ファミリーマート店舗)で日時指定券を購入のうえ
会場にお越し下さい。美術館内の混雑緩和のため、会期中は入場制限をさせていただきます。

 

ネット環境をお持ちでない方へ
日時指定の予約なく当日直接お越しになる方は【当日窓口】でお越しいただいた時間帯の空いている時間枠を照会いたします。
日時指定予約をされた方が優先となりますので、ご入場までお待ちいただく場合がございます。予めご了承ください。

※入替制ではございません。 ※指定時間内にご入場ください。

 

入場料: 一般1000 円、大学生500 円、高校生以下無料

※障がい者とその付き添いの方1名は無料、入館の際に障がい者手帳などをご提示ください。

 

販売期間

 

①2020 年7月10日(金)10時~
[7月23 日( 木・祝)~8 月10 日(月・祝) の期間のチケットを販売します。]

 

②2020 年7 月22 日( 水) 0 時~
[8 月12 日( 水)~8 月30 日( 日) まで の期間のチケットを販売します。]

 

販売場所  e+(イープラス) / QRチケット 【WEB 販売】 https://eplus.jp/ueno-mori/

【 コンビニ店頭販売】 ファミリーマート店内Famiポート

※ファミリーマート店頭購入方法 https://www.family.co.jp/services/famiport.html
※上野の森美術館窓口(開館日のみ)

 

・当館内で新型コロナウイルスの感染者が確認された場合、上野の森美術館ホームページにその情報を掲出いたします。
・会期等に変更等ある場合は上野の森美術館ホームページにてお知らせいたします。

 

 

※タイトルについて

「なんでもない日ばんざい!」は、もともとルイス・キャロルの「鏡の国のアリス」に出てくる「誕生日じゃない日のプレゼント」(un-birthday present)という言葉に由来。ディズニーの「不思議の国のアリス」では、「お誕生日じゃない日のうた」のなかに「なんでもない日おめでとう!」(A Very Merry Unbirthday To You)という歌詞がある。

 

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【国立西洋美術館】「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」内覧会レポート

国立西洋美術館
フィンセント・ファン・ゴッホ 《ひまわり》 1888年

3月中旬に国立西洋美術館で「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」メディア向けの特別内覧会が開催されました。今回はその様子をお伝えいたします。

※開幕が延期となりました。開幕後も混雑対策のためチケットの販売方法や展示室への入場方法が変更となる場合がございます。
最新情報を展覧会公式サイト(https://artexhibition.jp/london2020/)で必ずご確認ください。

英国の誇る至宝、奇跡の初来日。

展示会場入口

 

展示風景

 

レンブラント・ハルメンスゾーン・ファン・レイン 《34歳の自画像》 1640年

 

(画面手前)トマス・ゲインズバラ《シドンズ夫人》1785年

ロンドン中心部、トラファルガー広場に面して建つロンドン・ナショナル・ギャラリー西洋絵画に特化し、その世界屈指のコレクションは多くの来場者を魅了し続けています。多くのヨーロッパの美術館とは違い王室のコレクションを母体とせず、市民のために、市民の手で形成されたという点が大きな特徴。いわば、英国民による「アワ(私たちの)・コレクション」と言えるかもしれません。

しかし、これまで同ギャラリーはまとまった数の作品を貸し出すことには慎重で、英国外で所蔵作品展が開かれたことは一度もありませんでした

本展では、ロンドン・ナショナル・ギャラリーの所蔵する世界的傑作が奇跡の日本上陸。全作が「初来日」となるこの機会は、まさに歴史的な展覧会といえるでしょう。

さあ、西洋絵画の歴史をめぐる美の旅へ

第4章展示会場風景

 

(画面手前)ルカ・ジョルダーノ《ベラスケス礼賛》1692-1700年頃

 

ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー 《ポリュフェモスを嘲るオデュッセウス》 1829年

 

ポール・セザンヌ《プロヴァンスの丘》1839-1906年

 

日本初公開となるゴッホの4番目の《ひまわり》(1888年)

今回来日する作品は全61点。本展は全7章構成となっており、ルネサンスからポスト印象派にいたるまでの名品が一挙に公開されています。英国とヨーロッパ大陸の相互関係の歴史を紐解きながら西洋絵画史を俯瞰することができ、まさに教科書的に楽しめるので、西洋絵画初心者の人も、そのコレクションの質の高さから美術ファンの人も幅広く堪能できる展覧会になっています。

時代の幅もさることながら、ゴッホ、フェルメール、レンブラント、ターナー・・・絵画史に名を刻む画家たちの作品が一堂に会しているさまはまさに「美の殿堂」「西洋美術界のオールスター」。
特に第7章で展示されているゴッホの《ひまわり》は自らその出来を認め、サインを記したという特別な作品。会場の中で燦然とした輝きを放つ《ひまわり》の力強さを、ぜひ会場で直接ご鑑賞ください!

 

鑑賞時間や注意点などは?

鑑賞時間は、ひと通り観て回るだけなら一時間程度。それぞれの作品をじっくり鑑賞したいなら、もう少し見込んでおくと良いでしょう。
新型コロナウィルス感染症の影響で、人数制限や予約入場制などの対応があるかもしれませんが、そうなれば鑑賞スペースには余裕があるはず。
事前に公式サイトで美術館の対応をチェックしておきましょう。

展示作品紹介

ヨハネス・フェルメール
《ヴァージナルの前に座る若い女性》 1670-72年頃

時を超え、見る者を誘う少女の眼差し。

近年、日本における「フェルメール・ブーム」も記憶に新しい世界屈指の画家。本展で出品されているこちらの作品は、ヴァージナル(小型撥弦鍵盤楽器)の前に座り、こちらに眼差しを送る若い女性を描いたものです。大理石の床、美しく飾られたヴァージナル、金の額縁で飾られた絵画・・・その内装の豪華さから、それなりに高い身分の女性であることがうかがえます。

やはり目を引くのは「フェルメール・ブルー」とも呼ばれる鮮やかな発色の青色。そして背後の絵画に見られるような、入念に描き込みすぎない、自由闊達なタッチです。左下に置かれた弦楽器ヴィオラ・ダ・ガンバは、観ている私たちに「さあ、一緒に演奏しましょう」と語りかけているようにも思えます。

 

カナレット(本名:ジョヴァンニ・アントニオ・カナル)
《ヴェネツィア:大運河のレガッタ》1735年頃

描いたのは風景ではなく、市民たちの活況(ドラマ)。

カナレット(本名:ジョヴァンニ・アントニオ・カナル)は、18世紀の欧州における最も重要な景観(風景)画家として知られています。

この《ヴェネツィア:大運河のレガッタ》は画家の故郷ヴェネツィアの大運河でおこなわれるゴンドラ競漕の景観を描いた作品ですが、その並外れた描写力、そして瑞々しい大気と水の表現には驚かされます。画面中景には華やかなゴンドラ、そして画面の大部分を占める大運河の両側には大勢の観客が描かれ、まるで市民たちの歓声が聞こえてくるかのよう。

現在、新型コロナウィルス感染症の影響により制限のある生活を強いられているイタリア。この絵画に描かれているような、活気のある情景が戻る日を祈るばかりです。

 

ディエゴ・ベラスケス《マルタとマリアの家のキリスト》1618年頃

ニンニク、卵、オリーブオイル・・・庶民のリアルな台所事情。

台所と思われる質素な室内で、乳棒と乳鉢を手にした若い女性。彼女がちょっと不機嫌そうに見えるのは、せっかく自分がイエス様をもてなすための料理を作っているのに、妹のマリアが手伝いもせず、ずっとイエス様のお話を聞いているから。

この絵画は新約聖書「ルカによる福音書」に書かれた物語を下敷きにした作品で、若き日のベラスケスが故郷セビーリャで描いたもの。注目すべきは、最も重要であるはずのイエスとマリアの問答が画面隅に追いやられ、その代わりに圧倒的な質感と写実性をもって前景を描いていること。いわば、「宗教画のかたちを借りた風俗画」といえるかもしれません。

滑らかな光沢を放つ白身魚、テーブルのニンニクや卵の質感・・・ぜひ、「手前のテーブルの上の静物」に注目して鑑賞してみてください。

 

フィンセント・ファン・ゴッホ《ひまわり》1888年

世界中で愛される、ゴッホの代表作。

ゴッホは共同生活を送る予定の友人ポール・ゴーガンのために、1888年から花瓶に生けたひまわりの絵を4点描きました。ロンドン・ナショナル・ギャラリーの《ひまわり》はその4点目にあたり、ゴッホ自らがゴーガンの寝室を飾るにふさわしいと認め、サインをした2点のうち1点。つまりゴッホ自身の「お墨付き」というわけですね。

太陽へと向かい、黄金色に花を咲かせるひまわり。パリ時代に新印象派から学んだ技法、そして日本の浮世絵などから着想を得て、ゴッホは日常を超えた、内面世界のイメージのようなこの強烈なひまわりの図像を表現しました。

ゴッホの死後、なぜひまわりは世界中の人たちに愛されてきたのか。彼の作品に込められた「生命」の力を、ぜひご自身で体感してみてください。

開催概要

展覧会名 「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」
会 期 開幕日未定~2020年6月14日(日)
9:30~17:30
毎週金・土曜日:9:30~20:00
※入館は閉館の30分前まで
休館日 月曜日
会場 国立西洋美術館
観覧料 当日:一般1,700円、大学生1,100円、高校生700円
※開幕が延期となりました。開幕後も混雑対策のためチケットの販売方法や展示室への入場方法が変更となる場合がございます。
最新情報を展覧会公式サイト(https://artexhibition.jp/london2020/)で必ずご確認ください。
※中学生以下は無料。
※心身に障害のある方および付添者1名は無料(入館の際に障害者手帳をご提示ください)。
公式サイト https://artexhibition.jp/london2020/

 
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神田伯山(神田松之丞改め)、爆笑問題が登場!
「第2回江戸まち たいとう芸楽祭」
クロージングイベント体験レポート

浅草公会堂

 

2019年8月18日のオープニングイベント『ボヘミアン・ラプソディ』の野外上映からスタートした、「第2回 江戸まち たいとう芸楽祭」は、大盛況のまま、クロージングイベント『芸がさね・舞がさね』を迎えました。
今回、2月15日に行われた当イベントの模様を取材してきましたので、ご覧ください。


オープニングセレモニー

 

「第2回江戸まち たいとう芸楽祭」のクロージングイベントは、オープニングセレモニーとともに幕を開けました。
セレモニーは、渡邉寧久 江戸まちたいとう芸楽祭実行委員長、服部征夫 台東区長、石塚猛 台東区議会議長の挨拶に始まりました。
出演者によるフォトセッションの後、各プログラムが始まります。

(写真左から) 石塚猛 台東区議会議長、(1人挟んで)服部征夫台東区長、(1人挟んで)渡邉寧久 江戸まちたいとう芸楽祭実行委員長、浅草花やしき花振袖のみなさん、藤山大樹さん、AUN J クラッシック・オーケストラ

花振袖の舞 浅草花やしき花振袖

 

クロージングイベントは、
浅草花やしき花振袖のみなさんによる花振袖の舞で始まりました。
浅草花劇場を中心に活躍する9人の舞踊家さん達が、ハンカチ、傘、扇子を使って、舞台の上をしなやかに舞います。
その動きは、春風にそよぐ花びらのよう。

大和楽に合わせて、扇子を手に舞う花振袖たち。
色彩豊かな振袖。後ろ姿も華やかです。
舞の終わりに、大輪の花を咲かせました。

 

講談  神田伯山

 

今年、2月11日に真打ちに昇進した、神田松之丞改め6代目神田伯山の登場です。
様々なメディアで取り上げられ、今、最もチケットの取れない注目の講談師、神田伯山。忖度なしの物言いも魅力です。
「超満員と聞いていたのですが、所々席が空いております」
「『源平盛衰記 扇の的』を30分くらいやらなけりゃいけないと言われています。そんなに、やりたくない。。。」
などと言うと、会場は爆笑の渦に。
少し長めのマクラで、お客さんの心を掴んだあと、
「なんで、こんなにマクラをしゃべったかというと、本編が短いから!」と、また、笑いを誘い、本編へ。
よどみなく畳みかける伯山の講談の勢いと迫力に、会場のお客さんも、息つく暇もなく、どんどん引き込まれていきます。
テンポのいい語り口で講談は進み、さあ!という時に、
「なんとなんとー!お時間がー、きてしまいましたー!」
と、言ったかと思うと、間髪入れずに、
「しかし、私に明日は御座いません!この続きを申し上げてもよろしいでしょうかー?」と会場のお客さんを煽(あお)ると、
大きな拍手とともに、講談を再開します。
そして、最後まで畳みかけ、
「みなさんのご健康やご多幸を記念して、みなさんの的(まと)も大当たりとなりますように!」
と、締めくくり、会場は大きな拍手に包まれました。

6代目・神田伯山
源平盛衰記「扇の的」をテンポよく演じます。
物語は、熱を帯びたまま、佳境を迎え、終了。

 

手妻(和妻)  藤山大樹

 

次は、藤山新太郎を師に仰ぎ、国の無形文化財・手妻(和妻)を継承する数少ない手妻師の1人、藤山大樹さんの登場です。
海外でも手妻を披露して、世界中に日本の伝統文化を広めています。
『手妻』は、手を稲妻のように素早く動かすことから、手妻というのだそうです。

こより(細長く切った和紙をひも状にしたもの)で、きつく結び付けられた両手の親指を小刀で切る手妻。
何度刀を通しても、こよりは不思議と切れません。
七変化。一瞬で起こる鮮やかなお面の変化を通して、舞踊の所作を見せます。
こんな表情も。
最後にキメのポーズ!

 

和楽器演奏  AUN J クラッシック・オーケストラ

 

各楽器の第一線で活躍する邦楽家が集結したユニットAUN Jクラッシック・オーケストラの和楽器演奏です。
アンコール・ワットやモン・サン・ミッシェル等の世界遺産でも演奏をするなど、海外でも高い評価を得ています。


息がピッタリと合った6人の和楽器のアンサンブルが、会場を揺らします。
尺八の音色が、AUN J クラッシック・オーケストラのメロディラインを支えます。
まるでギターのような三味線の早引き
和太鼓のソロパート。お腹の底から湧き上がるようなリズムに、気持ちが高ぶります。

 

漫才 爆笑問題

 

クロージングイベント、そして「第2回江戸まちたいとう芸楽祭」の大トリを飾るのは、爆笑問題のお2人です。
地上波では放送できないような今話題の時事ネタを、毒舌を交えてバッサリ斬り、会場の笑いを誘っていました。

爆笑問題のお2人
旬な芸能界の話題を毒舌交じりにネタにします。
社会情勢もバッサリ。

フィナーレ

 

最後は、出演者による手ぬぐいまきで、締めくくりました。

手ぬぐいまきの様子。

大きな拍手とともに、「第2回江戸まち たいとう芸楽祭」のクロージングイベントは、幕を閉じました。

まとめ

 

「第2回江戸まちたいとう芸楽祭」クロージングイベントの体験レポートをお伝えしました。
今話題の演者たちが集合して、踊りや話芸、和楽器演奏などを展開した舞台は、まさにクロージングイベントに華を添えるにふさわしい内容だったのではないでしょうか?
約半年間、多彩な芸能・芸術文化をもって台東区を盛り上げてきた「第2回江戸まちたいとう芸楽祭」は、ここに幕を閉じました。

 

 

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【東京都美術館】『ハマスホイとデンマーク絵画』報道内覧会レポート

東京都美術館


(2020年3月26日(木)まで)上野の東京都美術館にて、『ハマスホイとデンマーク絵画』を開催しています。
開催に先立ち、先日報道内覧会がありましたので、その様子をレポート致します。


幸福の国/デンマーク

 
デンマークは、北ヨーロッパにある人口約581万人の立憲君主国です。
国名は、古ノルド語(=デーン人の土地)を意味するダンメルクから由来し、再生可能エネルギー先進国、高福祉国家としてもよく知られています。
国連の「世界幸福度ランキング」で何度も1位に輝くなど、近年、そのライフスタイルにも非常に注目が集まっています。
日本との関係では、2017年に外交関係樹立150周年を迎えました。
展覧会は、デンマーク出身のヴィルヘルム・ハマスホイ(1864-1916年)の作品の一部とその周辺の北欧芸術作品を紹介するものです。

「北欧のフェルメール」ハマスホイ

 

19世紀末のデンマーク絵画を代表する画家の1人、ヴィルヘルム・ハマスホイ(1864-1916年)。
ハマスホイは、8歳の時に素描(そびょう)のレッスンを始めます。
そして、15歳でデンマークの首都・コペンハーゲンの王立美術アカデミーにて絵画を学んだあと、21歳の時に『妹アナの肖像画』(1885年)でデビューしました。
作風としては、初期の頃は風景画や肖像画を好んで描いていましたが、1890年代以降には室内画を多く描くようになっていきます。
1898年34歳の時に移り住んだ、コペンハーゲン旧市街のストランゲーゼ30番地。
そのアパートを描いた静かで穏やかな一連の作品が、デンマークの国内外で高い評価を得ます。
その作品は、バレエ・リュスのディアギレフやドイツの詩人リルケを魅了し、
「北欧のフェルメール」と呼ばれて注目されました。

ヴィルヘルム・ハマスホイ

みどころ

 

ハマスホイとデンマーク絵画展のみどころは4つです。

①ハマスホイ作品 約40点が集結します

日本初公開作品を含め、約40点のハマスホイ作品が東京都美術館に集結。
2008年の展覧会から10年余りの時を経て、「北欧のフェルメール」とも呼ばれるハマスホイ作品が再び来日します。
その特異な才能の一面をご堪能下さい。

②日本初の本格的デンマーク絵画展

北欧美術の中心地、コペンハーゲンで、19世紀前半に華開いたデンマーク絵画の「黄金期」。
その時代の純粋で素朴な作品から、印象派風の光の描写を取り入れたスケーイン派の美しい作品、特徴的な室内画を描く世紀末の首都で活躍した画家たちの作品まで、デンマーク絵画を本格的に紹介します。

③デンマーク文化「ヒュゲ」に触れる

ヒュゲ(=hygge)とは、「くつろいだ」「心地よい雰囲気」という意味を持つ、デンマーク人が非常に大切にしている価値観。
そのデンマーク人の価値観に触れることができるのも、今展覧会のみどころ。
19世紀末のデンマークの画家たちが描き出す作品には、北欧の美しい自然やそこで暮らす人々、落ち着いた空間でプライベートを過ごす家族など、ヒュゲが息づいています。
作中のヒュゲに触れることによって、「私たちが人生で本当に大切にしたいこと」に改めて気付かされるでしょう。

注目作品を紹介!

 

各章ごとの注目作品を紹介します。

 

第1章 日常礼賛―デンマーク絵画の黄金期 注目作品

 

『果物籠を持つ少女』

肖像画家であったハンス・ハンソンの息子コンスタンティーン・ハンスンの作品。
この作品は、後にハマスホイが所有することになったことでも有名で、晩年を過ごしたストランゲーゼ25番に飾られていたそうです。
作品全体が、抑えられた色調ながらも、強烈な光を放つのは、真っ直ぐとこちらを見つめる少女のまなざしの強さによるものでしょうか?

コンスタンティーン・ハンスン『果物籠を持つ少女』1827年頃 油彩/カンヴァス デンマーク国立美術館

 

『フレゼレゲ・ラフェンベア(旧姓ヘーイロプ)の肖像』

コペンハーゲンに生まれ、王立美術アカデミーで学んだヴィルヘルム・マーストランが、デンマークの著名な税官吏であったミケール・ラフェンベアの妻を描いた作品。
背筋を伸ばし、真っ直ぐこちらを見つめるラフェンベアの妻。
その上品な姿には、強さと優しさが入り混じっています。
窓の外に見えるサン・ピエトロ大聖堂も、この作品を格調高いものにしています。

ヴィルヘルム・マーストラン『フレゼレゲ・ラフェンベア(旧姓ヘーイロプ)の肖像』 1846年 油彩/カンヴァス デンマーク国立美術館

 

 

第2章 スケーイン派と北欧の光 注目作品

 

『ボートを漕ぎ出す漁師たち』

スケーイン派を代表する画家として有名なミケール・アンガの作品。
険しい表情でボートを押して、海に出ようとする救命胴衣姿の漁師たち。
何が起こっているのでしょう?
漁師たちとともに、それを見つめる人々の目線の先にある緊迫した状況。
波の激しさもどんどん増しています。
見ているこちらまでハラハラ・ドキドキする、緊張感のある作品です。

ミケール・アンガ『ボートを漕ぎ出す漁師たち』1881年 油彩/カンヴァス スケーイン美術館

 

『スケーインの北の野原で花を摘む少女と子供たち』

こちらも、ミケール・アンガの作品です。
漁師たちの緊迫した状況を描いた作品と打って変わって、
草原には、いつまでものんびりと続く緩やかな時間が流れています。
どこまでも続く大きな青い空の下で、花を摘む少女たちとそれを見守る母親。
衣服の青、ピンク、黄色、草花の緑を、大きな空が包み込んでいます。

ミケール・アンガ『スケーインの北の野原で花を摘む少女と子供たち』1887年 油彩/カンヴァス
スケーイン美術館

 

第3章 19世紀末のデンマーク絵画―国際化と室内画の隆盛 注目作品

 

『居間に射す陽光、画家の妻と子』

アンデルセン童話の挿絵画家であった、父のヴィルヘルム・ピーダスンを父に持つ、ヴィゴ・ピーダスンの作品。
自宅の居間で幼い娘をあやす、ヴィゴの妻イリサベトを描いた作品です。
娘をあやす妻の和やかな顔、ママ大好きの幼い娘の顔が、とても愛おしいです。
その様子を微笑みながら描くヴィゴの表情までもが、こちらに伝わってくるようです。

ヴィゴ・ピーダスン『居間に射す陽光、画家の妻と子』1888年 油彩/カンヴァス デンマーク国立美術館

 

『花咲く桃の木、アルル』

フランス、オランダ、ベルギーに滞在し、アルルでファン・ゴッホと親交を結んだことでも有名なクレスチャン・モアイェ=ピーダスンの作品。
ファン・ゴッホの『マウフェの思い出に』と非常に似た構図で描かれており、親交のあったゴッホの描いた位置から数メートル離れた場所で描かれたと考えられています。
桃の花の華やかな色彩に、引き込まれてしまいました。
少し近寄ると、桃の花の優しい香りが、ほのかに伝わってくるようです。

クレスチャン・モアイェ=ピーダスン『花咲く桃の木、アルル』1888年 油彩/カンヴァス ヒアシュプロング・コレクション

 

第4章 ヴィルヘルム・ハマスホイ―首都の静寂の中で 注目作品

 

『室内-陽光習作、ストランゲーゼ30番地』

ヴィルヘルム・ハマスホイがストランゲーゼ30番地の中庭に面した部屋を描いた作品です。
細長い格子窓から差し込む室内の光は、ゆらゆらと漂っているように見えます。
窓を開け放つと、まぶしいほどの外の世界が待っているのでは、と想像してしまいます。
この明るい外の世界と閉じられた暗い扉の対比も絶妙です。
どちらが現実でどちらが非現実なのでしょう。

ヴィルヘルム・ハマスホイ『室内-陽光習作、ストランゲーゼ30番地』1906年 油彩/カンヴァス  デーヴィズ・コレクション


『寝室』

ラーベクス・アリのヴィルヘルム・ハマスホイの寝室を描いた作品。
部屋に掛かる二つのカーテン。
ここから差し込む光は、とても柔らかです。
その光のせいで、窓の外を見つめる女性の横顔もどこか微笑んでいるように見えます。何を見つめているのでしょうか?
窓の中央に置かれた紫の壺が、この室内画を引き締まったものにしています。

ヴィルヘルム・ハマスホイ『寝室』1896年 油彩/カンヴァス ユーテボリ美術館

まとめ

 
『ハマスホイとデンマーク絵画』の報道内覧会についてレポートしてきました。
10年余りの時を経て再び日本に集まった、ハマスホイ作品とその他デンマーク絵画の数々、デンマークの価値観「ヒュゲ」。
展覧会で、これらデンマークの作品や文化に触れることによって、新たな視点や価値観を発見することになるでしょう。
今回の展覧会は、日本で初めてのデンマーク絵画が一斉に紹介される貴重な機会です。
ぜひとも、東京都美術館の「ハマスホイとデンマーク絵画」に足を運んでみてはいかがでしょうか?

会場では、たくさんの方が熱心に作品を鑑賞していました

開催概要

 

■会期: 2020年1月21日(火)~3月26日(木)
■会場: 東京都美術館企画展示室
■開室時間: 9:30~17:30(入室は閉室の30分前まで)
■夜間開室: 金曜日、2月19日(水)、3月18日(水)は9:30~20:00(入室は閉室の30分前まで)
■休室日: 月曜日、2月25日(火)
※ただし、2月24日(月・休)、3月23日(月)は開室
■観覧料:
(当日券) 一般 1,600円/大学生・専門学校生 1,300円/高校生 800円/65歳以上 1,000円
(団体券) 一般 1,400円/大学生・専門学校生 1,100円/高校生 600円/65歳以上 800円

※団体割引の対象は20名以上
※中学生以下は無料
※3月20日(金・祝)~26日(木)は18歳以下(2001年4月2日以降生まれ)無料
※2月19日(水)、3月18日(水)はシルバーデーのため65歳以上は無料。
そのため混雑が予想されます。
※身体障害者手帳・愛の手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・被爆者健康手帳をお持ちの方とその付添いの方(1名まで)は無料
※いずれも証明できるものをご持参ください
■特設WEBサイト: https://artexhibition.jp/denmark2020/
問い合わせ先: TEL:03-5777-8600(ハローダイヤル)

 

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