神田伯山(神田松之丞改め)、爆笑問題が登場!
「第2回江戸まち たいとう芸楽祭」
クロージングイベント体験レポート

浅草公会堂

 

2019年8月18日のオープニングイベント『ボヘミアン・ラプソディ』の野外上映からスタートした、「第2回 江戸まち たいとう芸楽祭」は、大盛況のまま、クロージングイベント『芸がさね・舞がさね』を迎えました。
今回、2月15日に行われた当イベントの模様を取材してきましたので、ご覧ください。


オープニングセレモニー

 

「第2回江戸まち たいとう芸楽祭」のクロージングイベントは、オープニングセレモニーとともに幕を開けました。
セレモニーは、渡邉寧久 江戸まちたいとう芸楽祭実行委員長、服部征夫 台東区長、石塚猛 台東区議会議長の挨拶に始まりました。
出演者によるフォトセッションの後、各プログラムが始まります。

(写真左から) 石塚猛 台東区議会議長、(1人挟んで)服部征夫台東区長、(1人挟んで)渡邉寧久 江戸まちたいとう芸楽祭実行委員長、浅草花やしき花振袖のみなさん、藤山大樹さん、AUN J クラッシック・オーケストラ

花振袖の舞 浅草花やしき花振袖

 

クロージングイベントは、
浅草花やしき花振袖のみなさんによる花振袖の舞で始まりました。
浅草花劇場を中心に活躍する9人の舞踊家さん達が、ハンカチ、傘、扇子を使って、舞台の上をしなやかに舞います。
その動きは、春風にそよぐ花びらのよう。

大和楽に合わせて、扇子を手に舞う花振袖たち。
色彩豊かな振袖。後ろ姿も華やかです。
舞の終わりに、大輪の花を咲かせました。

 

講談  神田伯山

 

今年、2月11日に真打ちに昇進した、神田松之丞改め6代目神田伯山の登場です。
様々なメディアで取り上げられ、今、最もチケットの取れない注目の講談師、神田伯山。忖度なしの物言いも魅力です。
「超満員と聞いていたのですが、所々席が空いております」
「『源平盛衰記 扇の的』を30分くらいやらなけりゃいけないと言われています。そんなに、やりたくない。。。」
などと言うと、会場は爆笑の渦に。
少し長めのマクラで、お客さんの心を掴んだあと、
「なんで、こんなにマクラをしゃべったかというと、本編が短いから!」と、また、笑いを誘い、本編へ。
よどみなく畳みかける伯山の講談の勢いと迫力に、会場のお客さんも、息つく暇もなく、どんどん引き込まれていきます。
テンポのいい語り口で講談は進み、さあ!という時に、
「なんとなんとー!お時間がー、きてしまいましたー!」
と、言ったかと思うと、間髪入れずに、
「しかし、私に明日は御座いません!この続きを申し上げてもよろしいでしょうかー?」と会場のお客さんを煽(あお)ると、
大きな拍手とともに、講談を再開します。
そして、最後まで畳みかけ、
「みなさんのご健康やご多幸を記念して、みなさんの的(まと)も大当たりとなりますように!」
と、締めくくり、会場は大きな拍手に包まれました。

6代目・神田伯山
源平盛衰記「扇の的」をテンポよく演じます。
物語は、熱を帯びたまま、佳境を迎え、終了。

 

手妻(和妻)  藤山大樹

 

次は、藤山新太郎を師に仰ぎ、国の無形文化財・手妻(和妻)を継承する数少ない手妻師の1人、藤山大樹さんの登場です。
海外でも手妻を披露して、世界中に日本の伝統文化を広めています。
『手妻』は、手を稲妻のように素早く動かすことから、手妻というのだそうです。

こより(細長く切った和紙をひも状にしたもの)で、きつく結び付けられた両手の親指を小刀で切る手妻。
何度刀を通しても、こよりは不思議と切れません。
七変化。一瞬で起こる鮮やかなお面の変化を通して、舞踊の所作を見せます。
こんな表情も。
最後にキメのポーズ!

 

和楽器演奏  AUN J クラッシック・オーケストラ

 

各楽器の第一線で活躍する邦楽家が集結したユニットAUN Jクラッシック・オーケストラの和楽器演奏です。
アンコール・ワットやモン・サン・ミッシェル等の世界遺産でも演奏をするなど、海外でも高い評価を得ています。


息がピッタリと合った6人の和楽器のアンサンブルが、会場を揺らします。
尺八の音色が、AUN J クラッシック・オーケストラのメロディラインを支えます。
まるでギターのような三味線の早引き
和太鼓のソロパート。お腹の底から湧き上がるようなリズムに、気持ちが高ぶります。

 

漫才 爆笑問題

 

クロージングイベント、そして「第2回江戸まちたいとう芸楽祭」の大トリを飾るのは、爆笑問題のお2人です。
地上波では放送できないような今話題の時事ネタを、毒舌を交えてバッサリ斬り、会場の笑いを誘っていました。

爆笑問題のお2人
旬な芸能界の話題を毒舌交じりにネタにします。
社会情勢もバッサリ。

フィナーレ

 

最後は、出演者による手ぬぐいまきで、締めくくりました。

手ぬぐいまきの様子。

大きな拍手とともに、「第2回江戸まち たいとう芸楽祭」のクロージングイベントは、幕を閉じました。

まとめ

 

「第2回江戸まちたいとう芸楽祭」クロージングイベントの体験レポートをお伝えしました。
今話題の演者たちが集合して、踊りや話芸、和楽器演奏などを展開した舞台は、まさにクロージングイベントに華を添えるにふさわしい内容だったのではないでしょうか?
約半年間、多彩な芸能・芸術文化をもって台東区を盛り上げてきた「第2回江戸まちたいとう芸楽祭」は、ここに幕を閉じました。

 

 

その他のレポートを見る

 

 

【東京都美術館】『ハマスホイとデンマーク絵画』報道内覧会レポート

東京都美術館


(2020年3月26日(木)まで)上野の東京都美術館にて、『ハマスホイとデンマーク絵画』を開催しています。
開催に先立ち、先日報道内覧会がありましたので、その様子をレポート致します。


幸福の国/デンマーク

 
デンマークは、北ヨーロッパにある人口約581万人の立憲君主国です。
国名は、古ノルド語(=デーン人の土地)を意味するダンメルクから由来し、再生可能エネルギー先進国、高福祉国家としてもよく知られています。
国連の「世界幸福度ランキング」で何度も1位に輝くなど、近年、そのライフスタイルにも非常に注目が集まっています。
日本との関係では、2017年に外交関係樹立150周年を迎えました。
展覧会は、デンマーク出身のヴィルヘルム・ハマスホイ(1864-1916年)の作品の一部とその周辺の北欧芸術作品を紹介するものです。

「北欧のフェルメール」ハマスホイ

 

19世紀末のデンマーク絵画を代表する画家の1人、ヴィルヘルム・ハマスホイ(1864-1916年)。
ハマスホイは、8歳の時に素描(そびょう)のレッスンを始めます。
そして、15歳でデンマークの首都・コペンハーゲンの王立美術アカデミーにて絵画を学んだあと、21歳の時に『妹アナの肖像画』(1885年)でデビューしました。
作風としては、初期の頃は風景画や肖像画を好んで描いていましたが、1890年代以降には室内画を多く描くようになっていきます。
1898年34歳の時に移り住んだ、コペンハーゲン旧市街のストランゲーゼ30番地。
そのアパートを描いた静かで穏やかな一連の作品が、デンマークの国内外で高い評価を得ます。
その作品は、バレエ・リュスのディアギレフやドイツの詩人リルケを魅了し、
「北欧のフェルメール」と呼ばれて注目されました。

ヴィルヘルム・ハマスホイ

みどころ

 

ハマスホイとデンマーク絵画展のみどころは4つです。

①ハマスホイ作品 約40点が集結します

日本初公開作品を含め、約40点のハマスホイ作品が東京都美術館に集結。
2008年の展覧会から10年余りの時を経て、「北欧のフェルメール」とも呼ばれるハマスホイ作品が再び来日します。
その特異な才能の一面をご堪能下さい。

②日本初の本格的デンマーク絵画展

北欧美術の中心地、コペンハーゲンで、19世紀前半に華開いたデンマーク絵画の「黄金期」。
その時代の純粋で素朴な作品から、印象派風の光の描写を取り入れたスケーイン派の美しい作品、特徴的な室内画を描く世紀末の首都で活躍した画家たちの作品まで、デンマーク絵画を本格的に紹介します。

③デンマーク文化「ヒュゲ」に触れる

ヒュゲ(=hygge)とは、「くつろいだ」「心地よい雰囲気」という意味を持つ、デンマーク人が非常に大切にしている価値観。
そのデンマーク人の価値観に触れることができるのも、今展覧会のみどころ。
19世紀末のデンマークの画家たちが描き出す作品には、北欧の美しい自然やそこで暮らす人々、落ち着いた空間でプライベートを過ごす家族など、ヒュゲが息づいています。
作中のヒュゲに触れることによって、「私たちが人生で本当に大切にしたいこと」に改めて気付かされるでしょう。

注目作品を紹介!

 

各章ごとの注目作品を紹介します。

 

第1章 日常礼賛―デンマーク絵画の黄金期 注目作品

 

『果物籠を持つ少女』

肖像画家であったハンス・ハンソンの息子コンスタンティーン・ハンスンの作品。
この作品は、後にハマスホイが所有することになったことでも有名で、晩年を過ごしたストランゲーゼ25番に飾られていたそうです。
作品全体が、抑えられた色調ながらも、強烈な光を放つのは、真っ直ぐとこちらを見つめる少女のまなざしの強さによるものでしょうか?

コンスタンティーン・ハンスン『果物籠を持つ少女』1827年頃 油彩/カンヴァス デンマーク国立美術館

 

『フレゼレゲ・ラフェンベア(旧姓ヘーイロプ)の肖像』

コペンハーゲンに生まれ、王立美術アカデミーで学んだヴィルヘルム・マーストランが、デンマークの著名な税官吏であったミケール・ラフェンベアの妻を描いた作品。
背筋を伸ばし、真っ直ぐこちらを見つめるラフェンベアの妻。
その上品な姿には、強さと優しさが入り混じっています。
窓の外に見えるサン・ピエトロ大聖堂も、この作品を格調高いものにしています。

ヴィルヘルム・マーストラン『フレゼレゲ・ラフェンベア(旧姓ヘーイロプ)の肖像』 1846年 油彩/カンヴァス デンマーク国立美術館

 

 

第2章 スケーイン派と北欧の光 注目作品

 

『ボートを漕ぎ出す漁師たち』

スケーイン派を代表する画家として有名なミケール・アンガの作品。
険しい表情でボートを押して、海に出ようとする救命胴衣姿の漁師たち。
何が起こっているのでしょう?
漁師たちとともに、それを見つめる人々の目線の先にある緊迫した状況。
波の激しさもどんどん増しています。
見ているこちらまでハラハラ・ドキドキする、緊張感のある作品です。

ミケール・アンガ『ボートを漕ぎ出す漁師たち』1881年 油彩/カンヴァス スケーイン美術館

 

『スケーインの北の野原で花を摘む少女と子供たち』

こちらも、ミケール・アンガの作品です。
漁師たちの緊迫した状況を描いた作品と打って変わって、
草原には、いつまでものんびりと続く緩やかな時間が流れています。
どこまでも続く大きな青い空の下で、花を摘む少女たちとそれを見守る母親。
衣服の青、ピンク、黄色、草花の緑を、大きな空が包み込んでいます。

ミケール・アンガ『スケーインの北の野原で花を摘む少女と子供たち』1887年 油彩/カンヴァス
スケーイン美術館

 

第3章 19世紀末のデンマーク絵画―国際化と室内画の隆盛 注目作品

 

『居間に射す陽光、画家の妻と子』

アンデルセン童話の挿絵画家であった、父のヴィルヘルム・ピーダスンを父に持つ、ヴィゴ・ピーダスンの作品。
自宅の居間で幼い娘をあやす、ヴィゴの妻イリサベトを描いた作品です。
娘をあやす妻の和やかな顔、ママ大好きの幼い娘の顔が、とても愛おしいです。
その様子を微笑みながら描くヴィゴの表情までもが、こちらに伝わってくるようです。

ヴィゴ・ピーダスン『居間に射す陽光、画家の妻と子』1888年 油彩/カンヴァス デンマーク国立美術館

 

『花咲く桃の木、アルル』

フランス、オランダ、ベルギーに滞在し、アルルでファン・ゴッホと親交を結んだことでも有名なクレスチャン・モアイェ=ピーダスンの作品。
ファン・ゴッホの『マウフェの思い出に』と非常に似た構図で描かれており、親交のあったゴッホの描いた位置から数メートル離れた場所で描かれたと考えられています。
桃の花の華やかな色彩に、引き込まれてしまいました。
少し近寄ると、桃の花の優しい香りが、ほのかに伝わってくるようです。

クレスチャン・モアイェ=ピーダスン『花咲く桃の木、アルル』1888年 油彩/カンヴァス ヒアシュプロング・コレクション

 

第4章 ヴィルヘルム・ハマスホイ―首都の静寂の中で 注目作品

 

『室内-陽光習作、ストランゲーゼ30番地』

ヴィルヘルム・ハマスホイがストランゲーゼ30番地の中庭に面した部屋を描いた作品です。
細長い格子窓から差し込む室内の光は、ゆらゆらと漂っているように見えます。
窓を開け放つと、まぶしいほどの外の世界が待っているのでは、と想像してしまいます。
この明るい外の世界と閉じられた暗い扉の対比も絶妙です。
どちらが現実でどちらが非現実なのでしょう。

ヴィルヘルム・ハマスホイ『室内-陽光習作、ストランゲーゼ30番地』1906年 油彩/カンヴァス  デーヴィズ・コレクション


『寝室』

ラーベクス・アリのヴィルヘルム・ハマスホイの寝室を描いた作品。
部屋に掛かる二つのカーテン。
ここから差し込む光は、とても柔らかです。
その光のせいで、窓の外を見つめる女性の横顔もどこか微笑んでいるように見えます。何を見つめているのでしょうか?
窓の中央に置かれた紫の壺が、この室内画を引き締まったものにしています。

ヴィルヘルム・ハマスホイ『寝室』1896年 油彩/カンヴァス ユーテボリ美術館

まとめ

 
『ハマスホイとデンマーク絵画』の報道内覧会についてレポートしてきました。
10年余りの時を経て再び日本に集まった、ハマスホイ作品とその他デンマーク絵画の数々、デンマークの価値観「ヒュゲ」。
展覧会で、これらデンマークの作品や文化に触れることによって、新たな視点や価値観を発見することになるでしょう。
今回の展覧会は、日本で初めてのデンマーク絵画が一斉に紹介される貴重な機会です。
ぜひとも、東京都美術館の「ハマスホイとデンマーク絵画」に足を運んでみてはいかがでしょうか?

会場では、たくさんの方が熱心に作品を鑑賞していました

開催概要

 

■会期: 2020年1月21日(火)~3月26日(木)
■会場: 東京都美術館企画展示室
■開室時間: 9:30~17:30(入室は閉室の30分前まで)
■夜間開室: 金曜日、2月19日(水)、3月18日(水)は9:30~20:00(入室は閉室の30分前まで)
■休室日: 月曜日、2月25日(火)
※ただし、2月24日(月・休)、3月23日(月)は開室
■観覧料:
(当日券) 一般 1,600円/大学生・専門学校生 1,300円/高校生 800円/65歳以上 1,000円
(団体券) 一般 1,400円/大学生・専門学校生 1,100円/高校生 600円/65歳以上 800円

※団体割引の対象は20名以上
※中学生以下は無料
※3月20日(金・祝)~26日(木)は18歳以下(2001年4月2日以降生まれ)無料
※2月19日(水)、3月18日(水)はシルバーデーのため65歳以上は無料。
そのため混雑が予想されます。
※身体障害者手帳・愛の手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・被爆者健康手帳をお持ちの方とその付添いの方(1名まで)は無料
※いずれも証明できるものをご持参ください
■特設WEBサイト: https://artexhibition.jp/denmark2020/
問い合わせ先: TEL:03-5777-8600(ハローダイヤル)

 

その他のレポートを見る

【東京国立博物館】日本書紀成立1300年 特別展 出雲と大和 報道内覧会レポート

東京国立博物館

オリンピックイヤーの今年・令和2年(2020)は、日本書紀が編纂されてから1300年の記念すべき年でもあります。
それを記念して、上野の東京国立博物館 平成館では、1月15日(水)~日本書紀成立1300年 特別展「出雲と大和」を開催しています。
(※前期展示 1月15日(水)~2月9日(日)  後期展示 2月11日(火・祝)~3月8(日) )
展覧会開催に先立ち、先日、報道内覧会がありましたので、その様子をレポートいたします。


特別展「出雲と大和」とは?

 

神代(かみよ)から持統天皇11年(697)までを記した日本最古の正史・日本書紀は、
舎人親王(とねりしんのう、676~735)が中心となり編纂し、
養老4年(720)に元正天皇(げんしょうてんのう)に奏上された全30巻からなる歴史書です。
日本書紀の冒頭にある国譲り神話では、出雲大社に鎮座するオオクニヌシは、
人間の能力を超えた世界「霊」の存在、大和の地においての天皇は、目に見える現実世界「顕」の存在です。
古代における「幽」と「顕」を象徴する島根県と奈良県、そして、東京国立博物館の3者共同で行われるのが、この特別展「出雲と大和」。
特別展では、出雲と大和の名品が一堂に集まり、古代日本の成立やその特質に迫ります。
※鎮座(=神霊が一定の場所に鎮まること)

みどころ

 

特別展「出雲と大和」のみどころは4つです。

① 出雲大社のご神宝が東京でご覧いただけます

古くから、出雲大社に伝わる手箱や甲冑などのご神宝をはじめとして、境内から出土した巨大柱、社殿を飾っていた絵画など、出雲大社の歴史を物語る作品をご覧いただけます。
特に、48メートルもする出雲大社本殿を支えたとされる「心御柱」(しんのみはしら)と「宇豆柱」(うづばしら)の2本の柱は、史上初公開!
出雲大社本殿の存在を裏付ける貴重な資料となります。

② 大量の出土青銅器 東京では、およそ20年ぶりの出品

国宝・荒神谷(こうじんだに)遺跡出土の青銅器(銅剣・銅鐸・銅矛)からの展示189点、国宝・加茂井岩倉遺跡出土銅矛から、30個を展示します。
これだけ大量の出土青銅器が東京に集まるのは、およそ20年ぶりです。

③ 出土数最多の三角緑神獣鏡の出品

黒塚(くろづか)古墳の被葬者を護り、鎮めた33面の三角緑神獣鏡。
1つの古墳から出土した数としては、全国で最多の三角緑神獣鏡の全点が出品されます。

④ 初公開!門外不出の仏像

1300年もの間、大和の地でひっそりと守り伝えられてきた最古級の石仏が寺の外で初公開されます。
僅かに残る彩色や鋭い掘り口など、細部に注目してください。

注目の展示物を紹介!

 

注目の展示物を章ごとに紹介します。

第1章 巨大本殿 出雲大社 注目展示

「心御柱」と「宇豆柱」

平成12年(2000年)に出雲大社境内の地下1・3メートルから出土した柱材です。
よく見ると、柱には抉れた(えぐれた)様な跡があります。
これは、伐採して現地から展示室に運ぶ際にできた縄かけの跡や表面を調整した手斧の跡です。
地元でも、なかなか並べて展示されることがないとのことなので、
貴重な機会ですよ。
両方の柱をあらゆる角度から眺めてみました。
実際に手に触れることはできませんが、ざらざらしていたり、つるつると艶があったりと、触る場所によって感覚が異なるのではないか、と感じました。

「心御柱」 島根県出雲市 出雲大社境内遺跡 鎌倉時代 宝治二年(一二四八) 島根・出雲大社
「宇豆柱」 島根県出雲市 出雲大社境内遺跡 鎌倉時代 宝治二年(一二四八)
島根・出雲大社(島根県立古代出雲歴史博物館保管)

 

実際の出雲大社境内の様子を再現するため、2本の柱が設置されています。
柱の間に立ち、手を大きく広げたり、見上げたりして、実際の感覚を確かめてみましょう。

 

第2章 出雲 古代祭祀の源流 注目展示

国宝 「銅剣」 島根県出雲市 荒神谷遺跡

昭和59年(1984年)に発掘調査で出土した銅剣です。
展示されている全ての銅剣は、同じような大きさで規格化されているように見えますが、よくみると茎(なかご)部に✖の刻印が打ち込まれています。
これは、制作から埋納までを一括して行った形跡と考えられ、山陰を中心に分布する他の銅剣にはみられない特徴です。
日本人の繊細なモノづくりの技術は、古代からあるのだと感じさせます。

国宝 「銅剣」 島根県出雲市 荒神谷遺跡 弥生時代 前二~前一世紀 文化庁(島根県立古代出雲歴史博物館保管)

 

国宝 「銅矛」 島根県出雲市 荒神谷遺跡

一括出土された本数として全国最多を誇る、荒神谷遺跡の16本の銅矛です。
1本1本を見比べて見ると、発見があります。
ガタガタした刃先や、比較的綺麗な形をした刃先、
錆びて色褪せたもの、黒褐色でつやつやとしたもの、
と個性的な銅矛が並びます。

国宝「銅矛」 島根県出雲市 荒神谷遺跡 弥生時代 前二~前一世紀 文化庁(島根県立古代出雲歴史博物館保管)


国宝 「銅鐸」 島根県出雲市 荒神谷遺跡

荒神谷遺跡から出土した銅鐸です。
多様な型のものが揃っているのですが、ほぼ同じサイズなのが特徴的です。
銅鐸には、末端に傷がついているところが多く、かなり使い込まれた形跡が残っています。
当時の人は、どのような思いで、この銅鐸を見つめていたのだろうか?と想像力を掻き立てられます。

国宝「銅矛」 島根県出雲市 荒神谷遺跡 弥生時代 前二~前一世紀 文化庁(島根県立古代出雲歴史博物館保管)

 

第3章 大和 王権誕生の地 注目展示

国宝 「七支刀」

石上神宮に伝わる宝剣であり、御神体(ごしんたい)に準ずる神宝です。
かつては、本殿内に奉安されていました。
横に枝が生えているような非常に珍しい型が特徴的で、
中央61文字の銘文が刻まれています。
表面には、この刀を持っていると百変を退けるとの記述、
裏面には、朝鮮半島百済の王室から倭王に献上されたという記述があります。
7つ鞘(さや)の太刀として、日本書紀にも記されているこの七支刀が展示されるのは、滅多にない貴重な機会です!

国宝 「七支刀」 古墳時代・4世紀 奈良・石上神宮蔵

 

・重要文化財 「画文帯神獣鏡」(がもんたいしんじゅうきょう)

中央に展示されている「画文帯神獣鏡」は、奈良県ホケノ山古墳から出土した銅鏡です。
外側には、日輪を従えた車、その車を曳く獣、騎仙(きせん)などを浮き彫り表現しています。
小さいながらも非常に存在感があります。

・重要文化財 「三角縁神獣鏡」(さんかくぶちしんじゅうきょう)

左右に展示されている「三角縁神獣鏡」は、島根県雲南市加茂町にあった神原神社古墳から出土した銅鏡です。
外側には、神仙や霊獣の模様が刻まれています。
33面がずらりと並ぶ様子は、壮観です。

(写真中央)重要文化財 「画文帯神獣鏡」(がもんたいしんじゅうきょう)
(写真右・左)重要文化財 「三角縁神獣鏡」(さんかくぶちしんじゅうきょう) ともに奈良県天理市 黒塚古墳 古墳時代三世紀 文化庁(奈良県立橿原考古学研究所保管

 

第4章 仏と政(まつりごと) 注目展示


・十一面観音菩薩立像(じゅういちめんかんのんぼさつりゅうぞう) 2体

写真中央に位置する、2体の十一面観音菩薩立像。
当時は、力の絶大な観音様を祈ることによって、国の繁栄や人々の安全な生活を願いました。
観音菩薩立像の前に立つと、なにか見えない力で守られているような気持ちになるから不思議です。

・(四天王像のうち) 国宝「広目天立像」(こうもくてんりゅうぞう)※左
・(四天王像のうち) 「多聞天立像」(たもんてんりゅうぞう)※右

四天王は、国の政(まつりごと)の象徴。
2体の仏像ともに、太い眉と大きな目鼻立ちが印象的です。
はじめ、仏像の威圧感に圧倒されてしまいましたが、しばらく見つめていると、いつまでもその場を離れたくない自分がいることに気づきました。

(写真左から) 四天王像のうち・国宝「広目天立像」(こうもくてんりゅうぞう) 奈良時代  八世紀 奈良・唐招提寺/重要文化財 「十一面観音菩薩立像」(じゅういちめんかんのんぼさつりゅうぞう) 奈良時代 八世紀 奈良・世尊寺/ 「十一面観音菩薩立像」(じゅういちめんかんのんぼさつりゅうぞう) 奈良時代 八世紀 奈良・金剛山寺(矢田寺)/ 【四天王像のうち】多聞天立像(たもんてんりゅうぞう) 奈良時代  八世紀 奈良・唐招提寺

まとめ

「日本書紀成立1300年 特別展 出雲と大和」の報道内覧会についてレポートしてきました。
出雲大社の歴史を物語る作品群、20年ぶりに出品される大量の出土青銅器、
33面の三角緑神獣鏡、仏像の数々。。
これらの展示物全てが刺激にあふれ、1度だけでは物足りず、何度も何度も見たくなる充実の内容でした。
内覧会は本当にたくさんの方々で溢れ返り、展示物を見るのに待たなければならないほど、熱を帯びていました。

東京国立博物館 平成館にて現在開催中の「日本書紀成立1300年 特別展 出雲と大和」。古代日本の成立の過程を体感し、日本書紀成立1300年の年を祝いに来てはいかがでしょうか?

 

開催概要

 

展覧会名 日本書紀成立1300年 特別展「出雲と大和」
会期 2020年1月15日(水)~3月8日(日)
前期展示 1月15日(水)~2月9日(日)
後期展示 2月11日(火・祝)~3月8(日)
会場 東京国立博物館 平成館(上野公園)
開館時間 9:30~17:00
(入館は閉館の30分前まで、会期中の金曜・土曜は21:00まで開館)
休館日 月曜日、2月25日(火)
(ただし2月24日(月・休)は開館)
観覧料 一般1,600円(1,400円/1,300円)
大学生1,200円(1,000円/900円)
高校生900円(700円/600円)
中学生以下無料
*( )内は前売り/20名以上の団体料金
*障がい者とその介護者一名は無料です。
入館の際に障がい者手帳などをご提示ください
東京国立博物館キャンパスメンバーズ会員の学生の方は、当日券を1,000円(200円割引)でお求めいただけます。正門チケット売場(窓口)にて、キャンパスメンバーズ会員の学生であることを申し出、学生証をご提示下さい。
「東京・ミュージアムぐるっとパス」で、当日券一般1,600円を1,500円(100円割引)でお求めいただけます。正門チケット売場(窓口)にてお申し出ください。
*本展観覧券で、会期中観覧日当日1回に限り、総合文化展(平常展)もご覧になれます。
お問合せ ハローダイヤル 03-5777-8600

受付時間:全日午前8時~午後10時
日本語、英語、中国語、韓国語、ポルトガル語、スペイン語

公式HP https://izumo-yamato2020.jp/

 

 

その他のレポートを見る

【国立科学博物館】「絵本でめぐる生命の旅」報道内覧会レポート

国立科学博物館

2019年12月17日(火)~2020年3月1日(日)まで、東京上野の国立科学博物館で「絵本でめぐる生命の旅」が開催されています。
先日、プレス向け報道内覧会がありましたので、その様子をレポート致します。
展覧会の見どころ、注目の展示物などを紹介しますので、ご覧ください!


企画展「絵本でめぐる生命の旅」とは?

 

約38億年前に地球上に出現したとされる、最初の生きものから現代まで続く、進化の過程。
その進化が途切れずに続いたことで、人やさまざまな生き物は存在し続けているといっても過言ではありません。
絵本には、そのような生き物の進化の過程に着目した、科学や自然を題材にした作品がたくさんあります。
「科学や自然を題材にした絵本と博物館の展示を組み合わせることで、自然科学への興味をもつきっかけや、いつもと異なる国立科学博物館の楽しみ方を提供したい」。そうして考えられたのが、この企画展。
紙芝居形式で、生命の起源をわかりやすく展示します。

企画展は、46億年前~36億年前の生命を知る旅から始まります。

みどころ

企画展のみどころを紹介します。

①国立科学博物館で新しい絵本の体験ができる!?

企画展では、7つの絵本から選んだ場面を、化石やはく製などの標本とともに展示した構成になっています。
絵本の世界に楽しく触れながら、標本とともに生命進化の歴史をたどることができます。

②魚からヒトへと続く進化を実感できる!

企画展では、魚類から私たちヒトへと続く約5億年間の生命進化の主な出来事を、特にわかりやすく解説しています。
私たちの遠い祖先から現在まで続く生命のつながり、私たちの体の中に残る進化を感じ取って下さい。

③もっと知りたい人は・・

この企画展をご覧になって、もっとくわしく、もっと広く知りたくなった方は、常設展へ足をのばしてみて下さい。
国立科学博物館で行っている調査・研究や、関連する常設展示を紹介するコーナーがありますよ。

④新しい絵本と出会えるかも!

企画展の入り口付近には、自然科学や生命の進化に関連する絵本を100冊以上集めた読書コーナーを設けています。
懐かしい絵本との再会、お気に入りの新しい絵本と出会えるかもしれません。
日本語以外の言語の絵本も用意されています。

企画展で使われている主な絵本

 

企画展では、下記の7つの作品が使われています。

①『せいめいのれきし』 バージニア・リー・バートン 文・絵、岩波書店
② 『ながいながい骨の旅』 松田素子 文、川上和生 絵、講談社
③ 『わたしはみんなのおばあちゃん はじめての進化のはなし』 ジョナサン・トゥイート 文、カレン・ルイス  絵、岩波書店
④ 『とりになった きょうりゅうのはなし 改訂版』 大島英太郎 作、福音館書店
⑤ 『ダーウィンの「種の起原」 はじめての進化論』 サビーナ・ラデヴァ 作・絵、岩波書店
⑥ 『いのちのひろがり』 中村桂子 文、松岡達英 絵、福音館書店
⑦ 『13800000000ねんきみのたび』 坂井治 作・絵、光文社

主な展示物を紹介

 

約5億800万年前(カンブリア紀中期)に生息した捕食性動物アノマロカリス。
奇妙なエビとの意味で学名を与えられたといいます。

アノマロカリス・カナデンシス 所蔵:国立科学博物館

 

約3億6000万年前に生息した、古代魚ユーステノプテロン類と推測される頭部化石。モロッコでお土産物にするために、ツルツルに磨かれているところを発見したジャイカ職員の方が、国立科学博物館に寄贈してくれたもの。
実際に、触れることができますよ。

ユーステノプテロン類? 所蔵:国立科学博物館

 

こちらが、ユーステノプテロンの全身です。

ユーステノプテロン 所蔵:国立科学博物館

 

約1億1500万~1億1800万年前に生息した、デイノニクス。
映画やアニメに度々登場しています。

デイノニクス 所蔵:国立科学博物館

 

約3000万年前に生息した、肉食哺乳類ヒエノドンの化石。
恐竜までの哺乳類は、お腹のところに肋骨があり、子供を抱きしめたいと思っても抱きしめてあげられませんでした。
その後、横隔膜ができて、呼吸の仕方が変わったことで、哺乳類は、我が子を抱きしめて、母乳を与えたりすることができるようになりました。

ヒエノドン 所蔵:国立科学博物館

 

700万年前~20万年前の生命は、手足の指が長くなり、他の生き物と異なる動きをするものが出てきます。
手足で枝を掴んで、樹上生活をしたり、鳴き声でお互いにコミュニケーションを取ることもできるようになります。
それが、現在のわたしたち、人間の祖先です。

 

ダーウィンのビーグル号をイメージしたという絵本コーナー。
企画展を見終わった後には、この読書コーナーで、自然科学や生命の進化に関連する、お気に入りの絵本を探してみましょう。
企画展で取り上げた7冊の絵本もご覧になれます。

 

まとめ

国立科学博物館にて現在開催されている、企画展「絵本でめぐる生命の旅」の報道内覧会についてお伝えしてきました。
約38億年前から現代まで続く、生き物の歴史。
私たち人間は、当たり前のように生きているように思えますが、実は、この何十億年と続く歴史の過程があってこその生命だと、改めて気づかされます。
国立科学博物館へ、ご家族やご友人と絵本でめぐる生命の旅に出かけてみませんか?

今回の企画展の監修を務めた、国立科学博物館標本資料センターコレクションディレクターの真鍋真さん。生命の歴史について、楽しく解説していただきました。

 

開催概要

企画展「絵本でめぐる生命の旅」
開催期間:2019年12月17日(火)~2020年3月1日(日)
開催場所:日本館1階 企画展示室、中央ホール
開館時間:午前9時~午後5時
*金曜・土曜日は午後8時まで。
*入館は各閉館時刻の30分前まで
休館日:毎週月曜日(月曜日が祝日の場合は火曜日)および12月28日(土)~1月1日(水・祝)、ただし2月17日(月)は開館
入館料:一般・大学生:630円(団体510円)
高校生以下・65歳以上:無料
*常設展示入館料のみでご覧いただけます。
主催:国立科学博物館
公式HP: https://www.kahaku.go.jp/

 

 

その他のレポートを見る

【東京都美術館】『子どもへのまなざし』+松本力『記しを憶う』報道内覧会レポート

東京都美術館


母と子の物語 A Mother and Child’s Story 2013

 

2019年11月16日(土)~2020年1月5日(日)まで、上野の東京都美術館にて、上野アーティストプロジェクト2019「子どもへのまなざし」と松本力「記しを憶う」が同時開催されています。
先日、これらの展覧会の合同報道内覧会がありましたので、その様子をレポート致します。
それぞれの展覧会のみどころ、構成、注目作品を取り上げていますので、ご覧頂ければ幸いです。

 


「子どもへのまなざし」とは?

 

東京都美術館は、数多くの公募団体の作品発表の場として親しまれ、「公募展のふるさと」と呼ばれています。
2017年からは、毎年テーマを決めて公募団体で活躍する現代作家を紹介する「上野アーティストプロジェクト」シリーズを展開。
第3弾となる今年は、「子どもへのまなざし」をテーマに開催します。
現在、美術公募団体に所属する若手からベテランまでの6名の作家の作品を通じ、描かれた子どもに仮託される多層的なイメージを紹介。

 

構成と注目作品

 

「子どもへのまなざし」は、大きく分けて3章から構成されています。

 

第1章 愛される存在

第1章では、愛される存在をテーマに、新生加奈(日本美術院)と大久保綾子(一陽会)の作品を紹介します。

 

・新生加奈 SHINJO Kana

女性をモチーフに、温かな色彩を用い、やわらかなタッチの繊細な人物像を描き出す新生加奈。
今回展示される作品は、世の中の汚れを知らない純真な少女像、心の奥底の大事な部分に触れるような温かな母子像です。
子どもたちや母子の存在を通じて、命の尊さ、美しさ、愛おしさを描きたいと語る新生は、作品を描くことにより、自分自身が子どもの頃に周りから受けた優しさを再認識するといいます。

 

(新生さんコメント)

宇宙のように広がる少女の内面を表現したいと思い、作品を描いています」。

 

母と子の物語 A Mother and Child’s Story 2013

 

 

・大久保綾子 OKUBO Ayako

一貫して母子像を描き続ける作家、大久保綾子。
今回展示される作品は、動き回る子供の躍動感、母子の一体感を感じさせる母子像です。
大らかでどっしりとした母親は、守るべき存在である赤ん坊やエネルギー溢れる子供たちを大地のようにやさしく包み込みます。

 

(大久保さんコメント)

「いのちを紡ぐ」というテーマで、ここ10年くらいは作品を作っています。
周りを飛び回る子供たちを通して、生命のエネルギーのようなものを表現できたらと思います」。

 

生命(いのち)-海の音 Life₋Sound of the Sea 2002

 

 

 

第2章 成長と葛藤

第2章では、成長と葛藤をテーマに、志田翼(独立美術協会)と豊澤めぐみ(新制作協会)の作品を紹介します。

 

・志田翼 SHIDA Tsubasa

高校で教鞭をとりながら、現代の中学生や高校生をモチーフに描き続ける志田翼。
今回展示される作品は、大人が創り出す社会に葛藤を抱きながら攻撃的な内面をのぞかせる純粋な子どもたちや社会に反発する自身の内面を描いた自画像です。
現代の青年期を迎える子どもたちが直面するリアルな状況をあぶり出します。

 

(志田さんコメント)

「子どもの様々な心理を自分なりに絵画で表現し、いろいろな人たちと繋がりたいと思っています」。

 

まと Target  2012

 

・豊澤めぐみ TOYOSAWA Megumi

作品の中に自分を投影した女子高生を描き続ける、豊澤めぐみ。
豊澤が描くのは、自身が思春期の頃に抱えていた、自分を否定したい気持ち、周囲からの影響で揺れ続ける感情です。
若者の心のとげとげしい痛みを表現し、見ている者に若い頃感じたであろう、過去の様々な感情を呼び起こします。

 

(豊澤さんコメント)

「自分の作品を型にはめてマンネリ化していた時期があったんですが、そのマンネリを打破するために一回リセットして、新たな気持ちで作品を描きました。様々な素材を用いたり、工夫をして作品を作っていますので、そちらもお楽しみください」。

 

 

君が嫌い I Hate You  2017

 

 

第3章 生命のつながり

第3章では、生命のつながりをテーマに、山本靖久(主体美術協会)と木原正徳(二紀会)の作品を紹介します。

 

・山本靖久 YAMAMOTO Yasuhisa

物質と情報にまみれ、自然を破壊しようとする現代の私たちですが、自然との共生なくして人間は生きられません。
そんな現代へのアンチテーゼとして作品を描き続ける、山本靖久。
今回展示される作品は、豊かな自然の中で穏やかな時を過ごす子どもたちや家族を中心とした人間の交響です。
作品に触れることで、人間が持つ生命の根源的な記憶に共感するはずです。

 

(山本さんコメント)

「私は、豊かさをテーマに一貫して作品を描いています。今回、子どもへのまなざしというテーマを頂きまして、そのテーマに沿った新作も作りましたので、ご覧ください」。

 

木精-菩提樹の木の下で Spirit of the Tree-Under the Linden Tree  2019

 

・木原正徳 KIHARA Masanori

移り変わる自然と、豊かな量感を持つ人間本来の性質が絡み合う世界を描き続ける木原正徳。
今回展示される作品は、自然と人間が境界を隔てることなく共存し、生命が循環する世界。
独特な色彩感覚とリズム感を用いて、艶やかで透明感のある画面を生み出し、見ている者に本当の豊かさを問いかけます。

 

(木原さんコメント)

「私は、子供を直接的に描いているわけではありませんが、色彩の豊かさを通して、命を託したいと思い作品を制作しています。『人のかたち野のかたち―地に還る』という作品は、2年前に亡くなった父の弔いの作品です。
父が亡くなり、息子夫婦に子どもが宿っていたのですが、作品を通して、生命が大地に還り、新たな生命が生まれるということを、象徴的にかなり意識して描いた作品となっています」。

 

人のかたち野のかたち―地に還る-  Form of the Human,Form of the Field-Return to the Earth- 2017

 

 

同時開催 松本力『記しを憶う』-東京都写真美術館コレクションを中心に

 

「子どもへのまなざし」との連動企画として、松本力 『記しを憶う』(しるしをおもう)も同時開催しています。

 

・松本力(まつもとちから)

 

松本力(1967~)は、絵かき・アニメーション作家として、国内外で活躍している作家です。
トレースしないで、1コマずつドローイングを描き、透過光を加えてビデオ撮影した映像作品を制作。
映像のインスタレーションとして、立体作品、音声によるライブパフォーマンス、手製の映像装置を用いた独自のワークショップを学校や美術館、滞在する各地域で開催しています。

今回の展示は、東京都写真美術館で所蔵する作品を新たなインスタレーションと共にご覧いただけるものです。

 

構成と展示作品

 

展示の構成と展示作品を紹介します。

 

■6面インスタレーションアニメーション作品

 

会場には、6面のインスタレーションアニメがスクリーンに映し出されます。
1つ1つ、独立した作品で6作品が上映。

6作品は、以下のタイトルです。

①オワリ山の一日

②エレクトリック・スノー

③フォローミ―/美と出会う/まなざし

④カームウォーム

⑤山をわたる歌声

⑥山へ

 

(作品について)

オワリ山の一日から山への物語を、繋がりを持ちながら展開しています。
会場の真ん中には、ピラミッド型の見晴らし台が。
この見晴らし台に登り、山越しにオワリ山の一日の映像を見て、視点が変わる、視界が変わるということを意識してもらうように作られています。

 

 

 

会場に設けられた見晴らし台

 

 

6面のインスタレーション作品の原画やトーテムポール型の複数の映像も流されています。

 

 

 

映像作品 SA YONA RAも上映されています。
この作品は、松本さんの亡くなられたお父様が、1ページだけ書き残したままの未完の絵本の続きを描いたものが元となった映像。
作品の中に描かれているキャラクターは、オバケとも何ともわからない得体のしれない存在がモチーフになっています。

 

 

 

SAYONARAの楽曲のヴァージョン違いの映像をヘッドホンで鑑賞できるように映画館型の装置も設置されています。
ご自由にご鑑賞ください。

 

 

 

まとめ

 

『子どもへのまなざし』+松本力『記しを憶う』報道内覧会レポートをお伝えしてきました。

『子どもへのまなざし』では、自分にも当てはまる子ども時代の記憶、思春期の辛くとも輝いていた日々、生命の根源的な問いかけ、などに触れることができました。
松本力『記しを憶う』では、子ども時代の懐かしい日々に、少し寂しいような、切ないような気持ちになる自分を確認できました。
この2つの展示会を通して、自分の過去の記憶と未来への希望を探しに来てみませんか?

東京都美術館でお待ちしております。

 

開催概要

 

上野アーティストプロジェクト2019『子どもへのまなざし』

■会期:2019年11月16日(土)~2020年1月5日(日)
■会場:東京都美術館 ギャラリーA・C
■開室時間:9:30~17:30(入室は閉室の30分前まで)
■夜間開室:
金曜日、11月30日(土)、
12月7日(土)は9:30~20:00
(入室は閉室の30分前まで)
■休室日:11月18日(月)、12月2日(月)、
16日(月)、26日(木)~2020年1月3日(金)
■観覧料:当日券:一般 500円 / 65歳以上 300円 団体券:一般 400円
※団体割引の対象は20名以上
※学生以下は無料
※身体障害者手帳・愛の手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・被爆者健康手帳をお持ちの方とその付添いの方(1名まで)は無料
※いずれも証明できるものをご持参ください
※同時期開催の「コートールド美術館展 魅惑の印象派」
のチケット(半券可)提示にて入場無料
■主催:公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都美術館
■問い合わせ先:東京都美術館 交流係
TEL:03-3823-6921(代表)
■イベント情報: 東京都美術館HP『子どもへのまなざし』のページにてご確認ください。
https://www.tobikan.jp/exhibition/2019_uenoartistproject.html

 

松本力『記しを憶う』-東京都写真美術館コレクションを中心に

■会期:2019年11月16日(土)~2020年1月5日(日)
■会場:東京都美術館 ギャラリーB
■開室時間:9:30~17:30(入室は閉室の30分前まで)
■夜間開室:金曜日、11月30日(土)、
12月7日(土)は9:30~20:00
(入室は閉室の30分前まで)
■休室日:11月18日(月)、12月2日(月)、
16日(月)、26日(木)~2020年1月3日(金)
■観覧料: 無料
■主催:東京都、公益財団法人東京都歴史文化財団、東京都美術館
■問い合わせ先: 東京都美術館 交流係 TEL:03-3823-6921(代表)
■イベント情報: 東京都美術館HP 松本力『記しを憶う』
のページにてご確認ください。
https://www.tobikan.jp/exhibition/2019_collection.html

 

 
記事提供:ココシル上野


その他のレポートを見る

 

 

 

【国立西洋美術館】ハプスブルク展内覧会レポート

国立西洋美術館
マルティン・ファン・メイテンス(子)<<皇妃マリア・テレジアの肖像>>1745-50年頃 油彩/カンヴァス ウィーン美術史美術館

 

2019年10月19日(土)~、東京上野の国立西洋美術館にて、
日本・オーストリア友好150周年記念「ハプスブルク展 600年にわたる帝国コレクションの歴史」が開催されています。(2020年1月26日まで)
先日、開催に先立ち、プレス向けの内覧会が実施されましたので、その様子をレポート致します。


ハプスブルク家について

 

ハプスブルク家は、ライン川上流域の豪族として台頭し、13世紀末にオーストリアに進出、勢力を拡大。
オーストリアとその周辺の多様な民族や領土を統治し、第一次世界大戦後(1918年)に終焉を迎えるまで、数百年に渡り広大な帝国を築き続けた、ヨーロッパ随一の名門一族です。
具体的には、神聖ローマ帝国の位を15世紀以降に独占、16-17世紀にハプスブルク家がオーストリア系とスペイン系に分裂した際、スペイン系が南アメリカ、アフリカ、アジアに領土を拡大すると、”日の沈まない帝国”となりました。
ナポレオン戦争をきっかけに起こった、神聖ローマ帝国の解体後には、のちのオーストリア帝国を統治。
この長きに渡る統治の間、豊かな財力と人脈を生かして、世界有数の美術品や装飾品、工芸品、武具、歴史的記念品などの宝物を所有していきました。
「ハプスブルク展」は、一族によって建造され、1891年に開館した、ウィーン美術史美術館の協力により、絵画を中心として、武具、工芸品、タペストリー、版画など約100点を紹介する展覧会です。

ハプスブルク展の構成

 

ハプスブルク展の構成は下記のようになっております。

第1章
ハプスブルク家のコレクションの始まり

第1章では、15世後半から16世紀にかけてのハプスブルク家の美術品などの本格的な収集が行われ始めた時代の絵画、甲冑、工芸品など12点のコレクションを紹介します。
この時代のハプスブルク家の注目は、マクシミリアン1世(1459-1519年)。
巧みな政略結婚を行い、領土を拡大したことで有名ですが、マクシミリアン自身も美術の中心地フランドル ブルゴーニュ公国の後継者マリーと結婚し、ハプスブルク家のコレクションを豊かにするきっかけを作りました。

 

第2章
ルドルフ2世とプラハの宮殿

第2章では、稀代のコレクターとして有名な神聖ローマ帝国ルドルフ2世(1853‐1612年)に注目し、そのコレクションを含む、タペストリー、甲冑、絵画、彫刻など30点を紹介します。
ルドルフは、統治のセンスはありませんでしたが、芸術、学問の造詣の深さは、人並外れており、ウィ-ンからプラハに1583年に宮廷を移すと、絵画、武具、小型彫刻や工芸品、自然物の標本、時計などの多彩なコレクションを所有しました。

 

第3章
第3章は、3つのセクションに分かれています。

第3章の1 スペイン・ハプスブルク家とレオポルト1世

第3章の1では、ハプスブルク家が、オーストリア系とスペイン系の2系統に分裂し、つかず離れずの関係を保っていた時代のツールとなった肖像画など7点のコレクションを紹介します。
この時代の中心は、スペイン国王のフェリペ4世(1602-1644年)です。
彼は、若くして即位し、芸術や文化に情熱的で、若きベラスケスを宮廷画家に採用し、厚遇しました。

第3章の2
フェルディナント・カールとティロルのコレクション

3章の2では、オーストリア大公の一人で、重要なコレクターだった、ハプスブルク家系に属したフェルディナント・カールのコレクションを含む絵画6点を紹介します。

 

第3章の3

第3章の3では、ハプスブルク家の最重要コレクターの一人、レオポルト・ヴィルヘルム(1614-1662年)のコレクションを含む絵画24点を紹介します。

 

第4章 18世紀におけるハプスブルク家と帝室ギャラリー

第4章では、激動の18世紀を生き抜いた、ハプスブルク家の人々を、肖像画を中心に15点のコレクションで紹介します。
この時代の注目は、マリア・テレジア(1717-1780年)。
彼女は天性の聡明さ、政治手腕を発揮し、国難を乗り切って民を導いた「女帝」です。
もう一人の注目は、マリアテレジアの末娘のマリー・アントワネット(1755-1793年)。のちのフランス国王ルイ16世と政略結婚しますが、フランス革命でギロチンの露と消えた悲劇の王妃です。
第4章は、これらの人々を中心に展開します。

 

第5章 フランツ・ヨーゼフ1世の長き治世とオーストリア=ハンガリー二重帝国の終焉

新聖ローマ帝国は、ナポレオン戦争をきっかけに解体し、1804年にはオーストリア帝国が誕生します。(1867年以降、オーストリア=ハンガリー二重帝国)
しかし、第一次世界大戦の敗戦により、オーストリア帝国が崩壊。それとともに、ハプスブルク家も終わりを迎えます。
第5章では、ハプスブルク家の実質的な最後の皇帝として、有終の美を飾ったフランツ・ヨーゼフ1世(1830-1916年)ゆかりの作品、6点を紹介します。

編集部注目の作品

 

青いドレスの王女マルガリータ・テレサ

マルガリータ・テレサ8歳の頃を描いた、ベラスケス最晩年の作品。
華やかなシルクの青いドレスを身に纏い、真っ直ぐな瞳でこちらを見るその姿は、8歳とは思えないほど、落ち着いています。
ベラスケスは、このほか、3歳と5歳のマルガリータ・テレサを描いています。

ディエゴ・ベラスケス《青いドレスの王女マルガリータ・テレサ》1659年 油彩/カンヴァス ウィーン美術史美術館

皇妃マリア・テレジアの肖像

マリア・テレジアの治世初期に重用されたマルティン・ファン・メイテンス(子)によって描かれた、テレジアの肖像画。
作品からは、民を導いた「女帝」マリア・テレジアの自信にあふれた表情と、16人もの子供を設けたおおらかさが、感じられます。

マルティン・ファン・メイテンス(子)《皇妃マリア・テレジアの肖像》 1745-50年頃 油彩/カンヴァス ウィーン美術史美術館

フランス王妃マリー・アントワネットの肖像

マリー・アントワネットにその腕を見込まれて、宮廷画家として重用された、マリー・ルイーズ・エリザベト・ヴィジェ=ルブランの作品。
作品は、政略結婚でフランスに嫁いだ若きマリー・アントワネットを描いたものです。
華やかなサテン地のドレスを纏い、一輪のピンクのバラの花を持つ、マリー・アントワネットの姿は輝いていて、この作品からは、フランス革命で悲劇的な死を迎えることなど、想像すらできません。

マリー・ルイーズ・エリザベト・ヴィジェ=ルブラン 《フランス王妃マリー・アントワネットの肖像》1778年 油彩/カンヴァス ウィーン美術史美術館

薄い青のドレスの皇妃エリザベト

ハプスブルク家の最後の実質的皇帝フランツ・ヨーゼフ1世に見染められ、オーストリア帝国皇妃として嫁いだエリザト(=愛称シシィ)をヨーゼフ・ホラチェクが描いた、肖像画。その奔放な性格や美しい容姿、非業の死を遂げたことから、のちに神格化された彼女のオーラに吸い込まれそうです。
エリザベトが体系維持のために、日常的にコルセットを着用したり、食事制限を課していたという話は有名です。

ヨーゼフ・ホラチェク 《薄い青のドレスの皇妃エリザベト》1858年 油彩/カンヴァス ウィーン美術史美術館

井戸端のレべカとエリエゼル

旧約聖書のイサクとリベカの結婚にまつわる一場面を描いた、オッターヴィオ・ヴァンニーニの代表作です。絵画の中央で、レべカが従者エリエゼルの椀に水を注いでいる姿の他、その背後のラクダや井戸端会議をする女性たちの姿も生き生きと描かれています。

オッターヴィオ・ヴァンニーニ 《井戸端のレべカとエリエゼル》 1626/27年頃 油彩/カンヴァス ウィーン美術史美術館

聖母子

聖母マリアの膝の上で立ち上がる、幼児キリストを描いた作品。
バランスを取って立ち上がるキリストの手足の指の表情まで、繊細に描かれています。そして、キリストを支える聖母マリアの表情は、穏やかながら、今にも笑みがこぼれそうです。

カルロ・ドルチ 《聖母子》 1660ー70年頃 油彩/カンヴァス ウィーン美術史美術館

神聖ローマ皇帝レオポルト1世(1640-1705)と皇妃マルガリータ・テレサ(1651-1673)の宮中晩餐会

神聖ローマ皇帝レオポルト1世(1640-1705)と皇妃マルガリータ・テレサ(1651-1673)の宮中晩餐会の祝賀期間中、重用された画家の一人、ヤン・トマスによって描かれた作品です。
晩餐会には、仮装パーティの衣装に身を包んだ人々が、左奥に座る皇帝夫妻との宴を思い思いに楽しんでいます。
耳を澄ますと、晩餐会の歓声が聞こえてきて、自分もその宴に参加しているような気分になります。

ヤン・トマス《神聖ローマ皇帝レオポルト1世と皇妃マルガリータ・テレサの宮中晩餐会》1666年 油彩/カンヴァス ウィーン美術史美術館

まとめ

 

「日本・オーストリア友好150周年記念 ハプスブルク展 600年にわたる帝国コレクションの歴史」のプレス向け内覧会についてレポートしてきました。

会場には、ハプスブルク家の約100点にも及ぶ収集作品を1つも見逃すまいと、たくさんの方々が来場されていました。中には、1つの作品に数10分も費やして、その場から離れられずに熱心に鑑賞する方、マリーアントワネットを思わせるような衣装を着て来場される女性も見受けられました。

会場の作品は王家のコレクションだけに、全て華やか。
紹介した作品以外にも、絵画はもちろんのこと、武具、工芸品、タペストリー、版画など、数えきれないほどの展示物があります。

現在開催中の「日本・オーストリア友好150周年記念 ハプスブルク展 600年にわたる帝国コレクションの歴史」。
ぜひ、国立西洋美術館でその華やかな品々を確かめに来てください。

皆さん食い入るように作品を鑑賞していました。

 

開催概要

 

展覧会名 日本・オーストリア友好150周年記念 ハプスブルク展 600年にわたる帝国コレクションの歴史
会期 2019年10月19日(土)-2020年1月26日(日)
会場 国立西洋美術館(東京・上野公園)
開館時間 9:30〜17:30(金・土曜日は20:00まで。11月30日[土]は17:30まで)※入館は閉館の30分前まで
休館日 毎週月曜日(ただし11月4日(月・休)、1月13日(月・祝)は開館)、11月5日(火)、12月28日(土)~1月1日(水・祝)、1月14日(火)
観覧料  (当日) 一般 1,700円 大学生 1,100円 高校生 700円(前売・団体) 一般 1,400円 大学生 1,000円 高校生 600円
※団体料金は20名以上。
※中学生以下は無料。
※心身に障害のある方と付添者1名は無料(入館の際に障害者手帳をご提示ください)。
公式HP https://habsburg2019.jp/#/

 

その他のレポートを見る

【国立科学博物館】スペシャルサポーターのビートたけしさんも登場!特別展「ミイラ 永遠の命を求めて」内覧会レポート

国立科学博物館


2019年11月2日(土)から2020年2月24日(月・祝)にかけて国立科学博物館で特別展「ミイラ  永遠の命を求めて」が開催されています。メディア向け内覧会に参加してきましたので、今回はその様子をお伝えします!

 

国内最大級!ミイラを「科学する」展覧会

世界各地から貴重なミイラが集う

 

約5200年前の子どものミイラを、精巧なCGとともに展示

 

ミイラを収める棺も見どころのひとつ。エジプトの神々が鮮やかな彩色で描かれている

 

ネコのミイラ。ネコはエジプトでは愛の女神バステトの化身であり、尊重されていた

 

オセアニアの「肖像頭蓋骨」。頭蓋に粘土や樹脂で肉付けを行い、生前の顔を再現

 

珍しい日本のミイラも展示。こちらは江戸時代の兄弟ミイラ

「怖い」「気持ち悪い」・・・。ミイラを見て、思わず顔をしかめてしまう人もいるかもしれません。
しかし、少なくともこの記事を読んでいる人の多くはミイラに対してある種の興味、好き嫌いを超えた、根源的な「好奇心」を抱いているのではないでしょうか?

なぜ、人はミイラをつくったのか?そこには、当時生きていた人々を取り巻く環境や死生観、宗教観との深い関わりがあります。

ミイラはその希少性から長らく学術的な関心が向けられることはありませんでしたが、昨今の科学技術によって引き出すことのできる情報が飛躍的に増え、あらためてミイラの再調査や保存方法の開発などが行われています。
本展覧会では、世界各地のミイラとその背景にあるさまざまな文化や死生観、そして科学的に明らかになったミイラの実像を解説。南米、エジプト、オセアニア、日本・・・世界各地から集まった43体のミイラを通じ、人類がもつ多様な死生観と身体観を紹介しています。

 

世界中のミイラが“カハク”に集う!

《腕を交差している男性のミイラ》エジプト、出土地詳細不明 紀元前410年-紀元前250年頃

生殖器を取り付けられたミイラ?!

ギルシャ人やローマ人が支配したグレコ・ローマン時代。エジプト古来の宗教が異端とされた後も、より簡易な方法でミイラづくりは続けられていたそうです。こちらは「新王国時代」以降の傾向である腕を交差させたポーズが特徴的な男性のミイラ。保存状態が良く、間近で見ると顔の表情にも生々しさが感じられます。

CTスキャンの調査によると、このミイラは35-40歳の男性。脳は鼻から取り除かれ、内臓は左脇腹を切開して取り出され、体内にはリネンやナトロンを入れた袋などが詰められています。特徴的なのはリネンでつくられた男性生殖器が取り付けられている点で、これはオシリス神の神話にもとづいており、再生や復活の観念に関係しているそうです。

 

《ウェーメリンゲン》オランダ ドレンテ州 ブールタング湿原   紀元前40年-後50年頃

日本初公開!謎に包まれた二人のミイラ

ヨーロッパの文化には遺体をミイラとして保存する風習はほとんどなく、発見されたミイラの大部分は「自然ミイラ」(人工的な加工を施さず、自然条件によって遺体がミイラになったもの)。こちらは1904年、オランダのブールタング湿原で発見された2体の湿地遺体です。

手を取り合っているようにも思える二人のミイラ。極限状態の中、二人で身を寄せ合ったまま亡くなったカップルなのかも・・・と想像が湧いてきますが、実は二人とも男性であることが判明。残念ながらDNAの保存状態が悪いため二人の関係の解明には至らなかったようで、今なお多くの謎に包まれています。

 

《本草学者のミイラ》日本  1832年頃

自らを「実験台」にした国学者

容貌、体型、皮膚の質感まで生前の生々しい面影をとどめる日本人のミイラ。この人物は江戸時代の本草学者(現代の博物学・薬学)で、自らの研究成果を確かめるために、自分の遺体を保存する方法を考案し、「後世に機会があれば掘り出してみよ」と言い伝えていたそうです。いわば、学問的な探究心から自らの意志でミイラになった(!)ということですね。

皮膚が赤茶けた色をしていますが、これは亡くなる直前に「柿の種子」を大量に摂取していた可能性が判明したため、柿の種子に含まれるタンニンの影響ではないかということ。果たして、彼はどんな方法で自分をミイラ化することに成功したのか?残念ながら、その具体的な方法については伝えられていません。

 

スペシャルサポーターのビートたけしさんも登場!

また、内覧会には本展のスペシャルサポーターであるビートたけしさんも登場。学芸員と一緒に展示会場を見学したたけしさんは

「ミイラになると言ってミイラになった人(本草学者のミイラ)を見て震え上がった。すごい精神世界だよ。相変わらず人間は『神の存在』とか言ってるけど、(死後の世界は)人間にとっては未知で、ないがしろにできないものなんだよね」

と、古の時代の手がかりを残すミイラの文化的価値について熱弁。さらに過去にミイラを燃やす時代があったことについて言及し、早めに文化遺産を大切にするような教育を普及させることの重要性について訴え、

「やっぱり子どもたちに見てほしいね。何かに興味を持って『もっと知りたい』と思うのは大切なこと。今の時代はGoogleなどの検索があるけど、実物を見るのはやはり写真とは違う。妙な歯車があるよ」

と、本展開催の意義について語ってくださいました。


最新科学によって明らかになったミイラの実像。ミイラは私たちに過去を生きた人間たちの文化や歴史、そしてさまざまな「想い」を伝えてくれる、いわば「過去からの旅人」です。

「ミイラ 永遠の命を求めて」は2020年2月24日(月・祝)までの開催。ぜひ会場に足を運んで、あらゆる時代、あらゆる地域から集まったミイラが語りかける言葉に、耳を傾けてみてください。

 

開催概要

展覧会名 特別展「ミイラ 永遠の命を求めて」
会 期 2019年11月2日(土)から2020年2月24日(月・祝)
午前9時〜午後5時(金曜・土曜は午後8時まで)
11月3日(日・祝)午後8時まで
11月4日(月・休)午後6時まで
※入場は各閉館時刻の30分前まで
休館日 月曜日(月曜日が祝日の場合は火曜日)
および12月28日(土)〜1月1日(水・祝)
ただし2月17日(月)は開館
※開館時間や休館日等は変更になる場合があります。
会場 国立科学博物館
観覧料 一般・大学生  前売 1,500円  当日 1,700円
団体 前売 500円  当日600円
・未就学児は無料。障害者手帳をお持ちの方とその介護者1名様は無料。
・本展では金曜・土曜限定ペア得ナイト券は販売いたしません。
・本券で本展を観覧された方は、同日に限り常設展(地球館・日本館)もご覧頂けます。
公式サイト http://www.tbs.co.jp/miira2019/

その他のレポートを見る

第2回江戸まち たいとう芸楽祭~夏の陣~
ビートたけし~浅草を語る~体験レポート

浅草公会堂

 

8月18日(日)~10月26日(土)の期間、「第2回江戸まち たいとう芸楽祭~夏の陣~」が開催されています。このイベントは、豊かな人情、絆、進取の気性など、先人たちが育み、守り、現代へ継承してきた多彩な芸能・芸術文化を、肩肘張らずに楽しむことができるお祭りです。
10月15日には、「ビートたけし~浅草を語る~」が開催されました。
芸楽祭の実行委員会名誉顧問であるビートたけしさんが登場したこのイベント。
たけしさんは、何を語るのか?
今回、その様子を取材しましたので、ご覧ください。


今回のイベントは、第1部で漫才、お笑い、浪曲、落語、
第2部でたけしさんのトークショーと、2部構成となっています。

第1部トップバッターは、2017、2018年の2年連続でTHE MANZAI(ザマンザイ)たけし賞を受賞している流れ星(漫才)です。
客席に乱入したり、予想外の動きをする、ちゅうえいさんのギャグと瀧上 伸一郎(たきうえ しんいちろう)さんの落ち着いたツッコミで、お客さんのつかみは、OK。すっかり2人のペースに引き込まれてしまいました。

流れ星 ちゅうえいさん(左)、瀧上さん(右)

 

次に、2004年に大ブレイクした、ピン芸人ヒロシ(お笑い)の登場です。
伏し目がちに「ヒロシです・・・」と自虐ネタを繰り広げるヒロシさん。
悲しくもユーモラスなそのネタは、他の追随を許しません。
そのネタの一言一言に、会場は沸きあがります。

ヒロシさん

 

3番目は、玉川太福の浪曲です。
太福さんが舞台に上がると、会場からは、「だいふくー!」と大きな掛け声が。
浪曲の楽しみ方、盛り上がり方を、お客さんに分かりやすく説明したあと、現代風にアレンジした浪曲を披露。一体感のある笑いと拍手が会場を包み込みました。

玉川太福さん

 

最後に、古今亭菊之丞の落語です。
皮肉の効いた枕でお客さんの心を掴んだあと、古典落語「替り目」を披露。酔っ払いの男とその妻のとぼけた会話を洗練された話芸で聞かせます。菊之丞さんは、現在放送中の大河ドラマ「いだてん」で、たけしさんが演じる古今亭志ん生や他の出演俳優さんの落語指導もされています。

古今亭菊之丞さん

第2部

ついに、ビートたけしの登場です。
オープニングのMCの話では、たけしさんがテレビ番組の収録で、まだ会場に到着していないとのことで、トークショーの開催自体が危ぶまれていましたが、実はそれはネタ。初めから会場に来ていたたけしさん。
ご自身の子ども時代から慣れ親しみ、芸人になるきっかけとなった浅草。この地で出会った個性的な人たちについて、持ち前の毒舌を交え、元・付き人のアル北郷さんとともにテンポ良くしゃべり倒していきます。
たけしさんの止まらない毒舌に、お客さんが爆笑し続けていたのが印象的でした。

ビートたけしさん(左)、アル北郷さん(右)

 

エンディングは、たけしさんを交え、演者さんが舞台に集合。
そこでもたけしさんの毒舌は、止まりません。
お客さんも、演者さんも、たけしさんのテンポの良い語りに笑いっぱなしでした。

まとめ

 

第2回江戸まち たいとう芸楽祭~夏の陣~「ビートたけし~浅草を語る~」の体験レポートをお伝えしました。
テレビ画面では中々感じることができない、演者とお客さんの両方で作り出す舞台演芸ならではの笑いに、会場全体は一体感が生まれ、楽しい時間が流れていました。
第2回江戸まち たいとう芸楽祭の夏の陣は、10月26日(土)で終了しましたが、来年令和2年(2020年)1月~は、冬の陣が開催されます。
映画・芸能・演劇といった多種多様なイベントが目白押しの江戸まち たいとう芸楽祭。今後も目が離せません。

江戸まち たいとう芸楽祭概要

会期 2019年8月18日(日)~2020年2月15日(土)
会場 ○上野地区 上野恩賜公園噴水前広場・御徒町南口駅前広場ほか
○谷中地区 防災広場初音の森
○北部地区 山谷堀広場ほか
○南部地区 蔵前小学校
○浅草地区 東本願寺・浅草公会堂ほか
公式HP http://www.taitogeirakusai.com/

その他のレポートを見る

 

【上野の森美術館】「ゴッホ展」内覧会レポート

上野の森美術館
(手前)フィンセント・ファン・ゴッホ 《夕暮れの松の木》 1889年12月 クレラー=ミュラー美術館

2019年10月11日(金)から2020年1月13日(月・祝)にかけて上野の森美術館で「ゴッホ展」が開催されています。開催に先立って行われたメディア向け内覧会に参加してきましたので、今回はその様子をお伝えします!

 

「ゴッホ」を誕生させた、ふたつの出会い

会場風景

 

(手前)ヨゼフ・イスラエルス 《縫い物をする若い女》 1880年頃 ハーグ美術館

 

作品とともにゴッホの遺した言葉を紹介

 

フィンセント・ファン・ゴッホ 《サン=レミ療養院の庭》 1889年5月 クレラー=ミュラー美術館

強烈な作風を確立し、激しく濃密に生きた画家、フィンセント・ファン・ゴッホ(1853-90)
37年という短い人生のうち、画家として生きたのはわずか10年間。なぜゴッホはその短い画業にも拘わらず、唯一無二の表現を獲得できたのか?
本展覧会ではその背景となったふたつの出会い、「ハーグ派」「印象派」とゴッホの関わりに焦点を当て、ゴッホの類まれな創造の秘密に迫る試みです。

本展では、ゴッホ作品に加え、マウフェやモネ、ルノワールなど、ハーグ派と印象派を代表する巨匠たちの作品を展示。ゴッホが独自の画風にたどり着くまでの過程をわかりやすく紹介しています。

 

「ハーグ派」の自然主義的な眼差し

 

(手前)アルベルト・ヌーハイス 《ドレンテの家の中》 1894年 ハーグ美術館

 

フィンセント・ファン・ゴッホ 《器と洋梨のある静物》 1885年 ユトレヒト美術館

展覧会の前半部では、駆け出しのゴッホを導いた「ハーグ派」に焦点を当てて作品を紹介。
ハーグ派については耳慣れない人も多いかもしれませんが、オランダ南西部の海浜の町ハーグに集まった画家たちのことで、その自然主義的な風景・風俗画はヨーロッパ近代絵画の先駆けとされています。

ミレーを敬愛していたゴッホは自然を舞台に平穏な日常を描写したハーグ派に共感し、その中心的な人物であるマウフェに教えを請い、交流しました。ゴッホの「農民画家」としての第一歩は、ここから始まったと言ってもよいでしょう。

 

「印象派」との出会い〜自由を求めて〜

クロード・モネ 《ロクブリュヌから見たモンテカルロ、エスキス》 1884年 モナコ王宮コレクション

展示会場では、ゴッホが遺した味わい深い言葉の数々が紹介されていますが、その中に
「あぁ、クロード・モネが風景を描くように人物を描かなければ」という一節があります。それほどゴッホはモネの絵画を深く敬慕し、印象派の躍動する色彩に魅せられていました。
それまでは暗い色彩で農民の日常や内面を描いていたゴッホでしたが、パリで印象派と出会うことで、明るい色彩や多様な筆致を身につけ、個性的なスタイルを切り開いていくことになるのです。

展覧会の後半では印象派の巨匠たちの作品をゴッホの絵画と比較して紹介し、その画業の軌跡をたどります。

 

約40点のゴッホ作品が集結!

(手前)フィンセント・ファン・ゴッホ 《農婦の頭部》 1885年 スコットランド・ナショナル・ギャラリー

 

フィンセント・ファン・ゴッホ <薔薇> 1890年5月 ワシントン・ナショナル・ギャラリー

 

フィンセント・ファン・ゴッホ 《糸杉》 1889年6月 メトロポリタン美術館

本展で展示されるゴッホ作品は約40点。傑作《糸杉》《薔薇》をはじめ、初期から晩年まで、世界10ヶ国27ヶ所からゴッホの重要作が結集しています。

最後の展示室には、本展覧会の白眉とも言える《糸杉》を展示。ゴッホは「エジプトのオベリスクのように美しい」糸杉の美しい線と均衡、そして緑色の素晴らしさに魅せられ、サン=レミ療養院に入院してから数点の作品を描きました。ゴッホが疲れた精神の中に垣間見た、理想の「美」。圧倒的質感でせまる本作を、ぜひ会場で堪能してください。


フィンセント・ファン・ゴッホ <パイプと麦藁帽子の自画像> 1887年9-10月 ファン・ゴッホ美術館(フィンセント・ファン・ゴッホ財団)

《糸杉》に象徴されるような、強烈な色彩とうねるような筆致。その作風から「炎の画家」と呼ばれることもあるゴッホは、まさに自分自身を燃やし尽くすかのように、絵画に身を捧げました。

本展覧会はその「情熱」を伝えるとともに、彼のたどってきた画業の全体像を提示します。ハーグ派と印象派。それぞれの作品を通じて、より深くゴッホの世界に足を踏み入れてみてはいかがでしょうか。

 

 

ユニークな物販コーナーにも注目!こちらは人気イラストレーター・塩川いづみ氏によるオリジナルグッズ

 

ゴッホに扮したスヌーピーを使用したゴッホ展限定グッズも登場

 

開催概要

展覧会名
「ゴッホ展
会 期 2019年10月11日(金)~2020年1月13日(月・祝)
9:30〜17:00(金曜、土曜は20:00まで開館)
*最終入場はそれぞれ閉館30分前まで
休館日 12月31日(火)、1月1日(水・祝)
会場 上野の森美術館(東京都台東区上野公園1-2)
公式サイト go-go-gogh.jp

その他のレポートを見る

第2回江戸まち たいとう芸楽祭~夏の陣~
オープニングイベント 取材レポート

上野恩賜公園竹の台広場(噴水広場)

昨年、好評を博した「江戸まち たいとう芸楽祭」が満を持して今年も開催。
粋・豊かな人情・進取の気性といった先人たちが守り、育み、現代へ継承されてきた多彩な芸能・芸術文化を老若男女だれもが肌で感じることができる情趣あふれる文化イベントです。

名誉顧問は前回に引き続きビートたけしさん。

8月18日のオープニングイベントを皮切りに、夏の陣が2019年8月18日~10月26日、冬の陣が2020年1月~2月15日にかけて開催の2部構成です。
そこで今回はオープニングイベントを取材しましたので、その模様をご覧ください。

マッハスピード豪速球&モンローズ

イベントの先陣を切ったのは、2019年1月に開催された「ビートたけし杯 漫才日本一」で、見事に優勝をさらったマッハスピード豪速球。10秒、30秒、1分のショートコントを披露しました。持ち味の毒舌と、要所要所に自らの知名度に関する自虐を交えたテンポの良いボケとツッコミ、そしてトークが会場から心地よい笑いを誘います。

マッハスピード豪速球

そんな彼らと、ビートたけし杯で競り合った準優勝のモンローズも次いで登場。現代的な脱力感あるボケと熱量全開のツッコミを持ち合わせた対照的な二人は、鉄板ネタ『弱小野球部の監督』を披露し、独自の笑いを魅せつけます。

モンローズ

こうして今年波に乗る若手芸人二組が会場を盛り上げ、「江戸まちたいとう芸楽祭~夏の陣~」の口火がきられました。

尺八演奏(き乃はち さん)

江戸時代から続く「琴古流」という尺八の流派を継承するき乃はちさんは、台東区根岸出身。4歳にして尺八をおもちゃ代わりに吹き始め、後に三橋貴風に師事。
2003年のソロデビュー後、舞台・歌舞伎・映画などの作曲活動にもその才能を発揮され、さらには全国の寺社仏閣において、奉納演奏を実施することをライフワークにもされているようです。
国外に目を向ければ、これまでロンドン、モスクワ、ウクライナ、カザフスタン、クリミア、ニュージーランド、北京、上海をはじめとした海外公演にも精力的で、まさに日本文化の発信者のお一人です。
今回は故郷台東区でその音色を響かせます。

き乃はち さん(左) 竹内純さん(右)

竹内純さんのヴァイオリン演奏もあって、一層会場は敬虔で神秘的なムードに包まれていきます。大人ばかりではなく、その音色は、物心ついたばかりの小さな子供たちの足をも止めさせる力を持っていました。伝統や格式を重んじる一方で、現代的な遊び心も忘れないそんな魅力ある演奏でした。

ニューヨーク発ダンスパフォーマンス(国際芸術文化交流 舞)

「国際芸術文化交流 舞」は、アメリカ・ブロードウェイでも活躍されている舞台女優・井本美穂さんを中心に、ダンスというエンターテイメントを通じて、地域に密着した体験型ワークショップや、国際文化交流にも力を発揮されているパフォーマンス集団です。

国際芸術文化交流 舞

特にシアターダンスを得意とし、今回は手話をダンスに取り入れることにも挑戦しました。そして、なんといっても今回のダンスの目玉は、この後上映される映画 『ボヘミアン・ラプソディ』にちなんだロックバンド QUEENの曲にのせたダンスパフォーマンス。躍動感あふれる力強いダンスに皆さん夢中です。曲調に併せて手拍子も沸き起こり、会場は盛り上がりをみせます。

手話を取り入れたダンスパフォーマンス

ROLLY & 村治 佳織(トークショー)

こよなくQUEENを敬愛するミュージシャンのROLLYさんと、たいとう観光大使としても活躍しているクラシックギタリストの村治 佳織さんが映画『ボヘミアン・ラプソディ』、そしてQUEENについて熱く語ってくれました。

村治佳織さん(左)・ROLLYさん(右)

特に印象的だったのはブライアン・メイがギターを演奏するときに、ピックではなくコインを使ってギターを弾いていたというエピソード。
日本でいう1円玉にあたるイギリスのシックスペンスコインと彼のピッキングセンスが相まって数々の曲が生まれたとか。
お二人のQUEEN愛トークは尽きません。
そして、今回はなんとお二人セレクトのQUEENメドレーのセッションも披露してくれました。

『ボヘミアン・ラプソディ』映画上映

昨年、日本だけでなく世界で一大ムーブメントを巻き起こし、第91回アカデミー賞最多4部門を受賞した映画『ボヘミアン・ラプソディ』。
本作が、これ以上ない最高級のサウンド設備で、上野恩賜公園に設営された野外大スクリーンで上映されました。
上映に併せて、会場に集まった多くの観覧者の視線が、上映機材を積んだトラックから投影される光の先に注がれました。

日も沈み、暑さはコンクリートの地面がため込んだ熱を残すのみだったはずが、応援上映もOKとなった会場では場面が進むにつれて、QUEENファンによる熱い声援と歌声によって再び熱気がたちこもりました。
その様子は映画館というよりもライブ会場さながら。
この日の上野はいつも以上に熱くなりました。


こうして始まった「第2回 江戸まち たいとう芸楽祭」では、今後続々と映画・芸能・演劇といった多種多様な文化イベントが開催されます。
ぜひ周囲の皆様をお誘いの上、地域に根付き育まれてきた大衆芸能と、年月をかけ洗練された格式や伝統を観て、聴いて、笑いに、会場へ足を運んでみてはいかがでしょうか。
詳しくは、下記公式ホームページをご覧ください。

江戸まち たいとう芸楽祭概要

会期 2019年8月18日(日)~2020年2月15日(土)
会場 ○上野地区 上野恩賜公園噴水前広場・御徒町南口駅前広場ほか
○谷中地区 防災広場初音の森
○北部地区 山谷堀広場ほか
○南部地区 蔵前小学校
○浅草地区 東本願寺・浅草公会堂ほか
公式HP http://www.taitogeirakusai.com/

その他のレポートを見る