【東京藝術大学大学美術館】「買上展 -藝大コレクション展2023-」会場レポート。明治~令和まで、藝大の歴史に刻まれた優秀作品が一堂に

東京藝術大学大学美術館

東京藝術大学が卒業・修了制作の中から買い上げた優秀作品を厳選して紹介する「買上展 -藝大コレクション展2023-」が、東京藝術大学大学美術館で2023年3月31日から開催中です。(会期は5月7日まで)

※紹介する作品はすべて東京藝術大学所蔵です。

展示風景
展示風景
展示風景、荒川由美《ひろがる》2016(平成28)年//乾漆

東京藝術大学(以下、藝大)は、前身である東京美術学校が1889年(明治22年)に開校してから現在まで、多岐にわたる美術作品や資料の収集を行ってきました。その膨大なコレクションを広く公開する機会として、大学美術館では毎年テーマを設けて「藝大コレクション展」を開催しています。

2023年の「藝大コレクション展」は、戦後1953年(昭和28年)より始まった、藝大が卒業・修了制作の中から各科ごとに特に優秀な作品を選定し、大学が買い上げる“買上制度”に光を当てています。

東京美術学校時代にも卒業制作を買い上げて収蔵し、教育資料とする伝統は存在していたそうで、現在、藝大が所蔵する「学生制作品」は1万件を超えるとか。

本展「買上展」は、その中から約100件という過去類を見ない件数を蔵出しし、藝大の歴史とともに日本の近現代美術史が生まれてきた場を振り返るもの。明治の大スターの日本画から、令和の気鋭アーティストによるミクストメディアのインスタレーションまでがつながる異色の展覧会です。

第1部 展示風景

展示は2部構成。

第1部「巨匠たちの学生制作」では、明治から昭和前期までの東京美術学校卒業制作に注目。卒業後に美術界の各分野で主導的な役割を果たした作家たちを選りすぐり、彼らのデビュー作とでもいうべき卒業制作品や、慣習的に卒業制作と同時に取り組まれていた「自画像」を展示しています。

横山大観《村童観猿翁》1893(明治26)年//絹本着色
下村観山《熊野御前花見》1894(明治27)年//絹本着色

会場に入ると、さっそく東京美術学校第1期生である横山大観の《村童観猿翁》(1893)や下村観山の《熊野御前花見》(1894)、第3期生である近代陶芸の開拓者・板谷波山の《元禄美人像》(1984)など、そうそうたる顔ぶれがお出迎え。

板谷波山《元禄美人像》1894(明治27)年//木

板谷波山は陶芸家として大成しましたが、本格的に陶芸に取り組むようになったのは20代半ばごろ。在学中は近代彫刻における写実主義を掲げた高村光雲から彫刻の技を学び、《元禄美人像》ではその技量がいかんなく発揮されています。小袖の花唐草文が浮彫で表現されていて、これは後の波山の陶芸作品にも通じるところがあるなど、すでに大家の片鱗がうかがえます。ある意味で陶芸家・波山の原点の一つといえるでしょう。

菱田春草《寡婦と孤児》1895(明治28)年//絹本着色

筆者が注目したのは、数々の傑作を生みだしながらも36歳という若さで生涯を閉じた天才画家・菱田春草の《寡婦と孤児》(1895)。夫を戦で亡くした女性の表情は悲壮感に満ち、この先に待ち受ける運命を予感させます。

東京美術学校開設当時は、新しい日本画を模索するうえでの課題として、歴史上の出来事やそれを描いた物語を主題にした歴史画が位置付けられていたそう。本作も軍記物『太平記』をもとに描かれたとされていますが、勇壮な戦絵巻ではなくあえて戦に巻き込まれた者の悲劇を題材に選んだことは、日清戦争の最中にあった当時の制作背景が無関係ではないでしょう。

実は、本作はある教授に「化け物絵」だと酷評されたものの、校長であった岡倉天心の采配で主席となり、買上されたという曰く付きの作品。その作品をいま描くことに、どんな意味があるのか、どんな意味をもたせるのかを重視した、東京美術学校の教育方針や理念が垣間見えるエピソードです。

高村光太郎《獅子吼》1902(明治35)年//ブロンズ
左、赤松麟作《夜汽車》1901(明治34)年、キャンバス/油彩 右、小林万吾《農夫晩帰》1898(明治31)年//キャンバス、油彩
金観鎬《夕ぐれ》1916(大正5)年//キャンバス、油彩
上、萬鉄五郎《自画像》1912(明治45)年//キャンバス、油彩 下、李叔同《自画像》1911(明治44)年//キャンバス、油彩

1896年開設の西洋画科で教授を務めた黒田清輝の指導で生まれた「卒業時に自画像を学校に収める」という慣習は、今日の藝大まで断続的に続く伝統となっています。意外にも卒業制作が買上にならなかった萬鉄五郎、青木繁、藤田嗣治といった、卒業後に才能を開花した巨匠たちの学習成果についても自画像で確認することができました。

過去を発掘できる、この世界的にみてもほとんど類例のない伝統が、いまや日本の近現代美術史を通覧するうえで非常に役立つ一大コレクションを形成しているのだなと考えると、あらためて黒田清輝の功績の大きさを感じざるを得ません。

第2部 展示風景

さて、今年で創設70年を迎える藝大の買上制度ですが、現在では多くの科で首席卒業と位置付られているといいます。

第2部「各科が選ぶ買上作品」では、買上制度のある全12科(日本画、油画、彫刻、工芸、デザイン、建築、先端芸術表現、美術教育、文化財保存学、グローバルアートプラクティス、作曲、メディア映像)からそれぞれ数件ずつ、全52件の買上作品について選定意図などを添えて紹介。各科が特に優秀と認めてきた作品の傾向を浮かび上がらせています。

「油画専攻」展示風景
「日本画専攻」展示風景
「彫刻科」展示風景、山口信子《習作》1952(昭和27)年//石膏

各科ごとの展示を見ていると、「日本画専攻」はその時代の空気感や特徴をとくに表す作品をピックアップしていますが、「彫刻科」は買上作品に選ばれた女性作家を時代が古い順に5名選ぶという思い切った選定方法を取っていました。作品の選定や解説は各科の教授が独自の観点で行っているため、個性がでていて面白いです。

「デザイン科」展示風景、岩瀬夏緒里《婆ちゃの金魚》2011-2012(平成23-24)年//アニメーション
「建築科」展示風景、市川創太《なめらかな複眼(=super eye)表記方法による空間概念創出の試み》1995(平成7)年//木製パネル、トレーシングペーパー、ケント紙、インキングコピー、プロッタ出力、BJ出力、模型、テキスト
「美術教育研究室」展示風景、大小田万侑子《藍型染万の葉紋様灯籠絵巻》2018(平成30)年//藍、麻、綿、型染
「グローバルアートプラクティス専攻」展示風景、左がシクステ・パルク・カキンダ《Intimate Moments/Monologue》(一部)2019(令和元)年//映像、ドローイング、インスタレーション

2016年に新設された、藝大で最も新しい専攻である「グローバルアートプラクティス専攻」(GAP)の展示はとくに興味深かったです。文化の既存の枠を超えた領域横断的な現代アートの実践を探究しているGAPには、異なる言語、文化、ジェンダーを背景とする学生が世界中から集まり、中には藝大でありながらアートの分野以外からの入学者もいるとか。

GAPの買上作品からは、近年の藝大における研究領域や表現方法の多様化を感じることができました。たとえば、シクステ・パルク・カキンダによる《Intimate Moments/Monologue》(2019)ドローイングと映像によるインスタレーション作品が挙げられます。

作家のルーツであるコンゴ民主共和国の鉱山で採掘されたウランが米国に渡り、広島・長崎に投下された原子爆弾に使用されたという歴史的事実に向き合い、広島の被爆者へ丁寧なリサーチを実施。鉱山資源の採掘を巡る社会・経済的理由と、その使用による人類・自然への影響についての考察を促す内容の作品として仕上げています。

作家はコメントで、自身を日本とコンゴをつなぐ架け橋のように意識していたものの、広島で行ったドローイングパフォーマンスは日本人たちに気づかれず、「私は見えない橋だった」と失望をのぞかせました。日本人の人種的閉鎖性への気づきがあるという点でも、この作品がGAPの教育の成果として存在し、また買い上げられた意味は大きそうです。

「文化財保存学専攻」展示風景、山崎隆之《教王護国寺蔵重要文化財木造千手観音推定復元像》1967(昭和42)年//檜、漆箔、木彫
「作曲科」展示風景
「メディア映像専攻」展示風景、越田乃梨子《壁・部屋・箱─破れのなかのできごと》2008(平成20)年//映像

第2部の出展作品のうち、筆者がもっとも印象に残ったのは「工芸科」の丸山智巳《千一夜》(1992)でした。

「工芸科」展示風景、丸山智巳《千一夜》1992(平成4)年//銅、鍛金

彫金・鍛金・鋳金・漆芸・陶芸・染織・素材造形(木材・ガラス)の7分野からなる「工芸科」では、素材を通して高度な伝統技術の習得し、さらなる発展をなし得る能力を身に付けることが目指されています。

《千一夜》は山や森を吹き抜ける風を風神と捉え、人体をモチーフとして表現した優れた鍛金技法による作品。まるで水の中を泳いでいるようにも見える、張りのある伸びやかな身体の躍動感や、物語性を秘めた存在感に惹かれました。調べてみると、作家の丸山智巳は現在、藝大の工芸科で鍛金の教授を務めているそうで、近年でも本作と類似点の多い、ボクサーやレスラーをイメージしたたくましくも美しい人物像を制作しています。

解説によれば本作は「鍛金技法と溶接の融合により鍛金作品として表現の可能性を広げた」点が評価の大きな理由になったようです。アーティストとしても教育者としても鍛金作品の表現の可能性を広げ続けている氏の制作姿勢が、学生時代から一貫していたことが伝わる1作でした。

また、「先端芸術表現科」の岡ともみ《岡山市柳町1-8-19》(2017)の体験型インスタレーションも心に残るものでした。

「先端芸術表現科」展示風景、岡ともみ《岡山市柳町1-8-19》2017(平成29)年//ミクストメディア インスタレーション

1999年に新設された「先端芸術表現科」では、特定のメディアの枠組みを超えて多様な手法を用いて造形表現を追求。変化する情報や環境に対応する活動を目指すとともに、社会における芸術の可能性を探っています。

そんな「先端芸術表現科」で首席卒業が認められた岡ともみは、映像と空間設計により、個人の思い出や廃れている風習などをテーマにインスタレーション作品を制作している気鋭作家。《岡山市柳町1-8-19》は、岡山に実在する今は亡き祖母の家やそれにまつわる記憶をテーマにした部屋型インスタレーションです。

実在の家具や小物といったオブジェクトを散りばめた暗い部屋で、映像のプロジェクション、映り込み、照明、数枚のアクリル板を組み合わせることで、虚像と実像の間にレイヤーを重ね、作家の祖母に対する記憶のイメージを立ち上げています。そこには過去と現在、どちらともつかない時間軸の空間が存在していました。映像は約7分ですが、まるで1本の映画を見たような満足感。不気味に明滅する照明や妖しく浮かぶ祖母の写真など、やや演出に和風ホラーの趣きがあり、じっと見ているとまるで意識が異界に取り込まれていくような没入体験ができました。

本展に足を運んだ際はぜひ一度ご覧いただきたい作品です。


会場にはさまざまな時代・さまざまな表現方法のすばらしい作品が並んでいますが、いずれも制作された当時は、作者のほとんどが20代であったという事実は、よく考えるとなかなかすごいことのように感じられます。
のちに巨匠と呼ばれた人もいる一方で、卒業して創作から離れた人もいるかもしれません。それでもすべての作品が、この時点では何者でもなかった学生たちが美大の最高峰である藝大で学んだすべてを注ぎ込んだ集大成、情熱の塊であることは明らかです。

次に表に出てくるのが何年後になるかわからない作品も多いはず。ぜひこの貴重な機会に、藝大による教育の歩みを本展で振り返りながら、年月を経てもなお輝きを失わない作品のパワーを感じてみてはいかがでしょう。

 

「買上展 -藝大コレクション展2023-」開催概要

会期 2023年3月31日(金)~ 5月7日(日)
会場 東京藝術大学大学美術館 本館
開館時間 午前10時 ~午後5時(入館は午後4時30分まで)
休館日 月曜日(ただし、5月1日(月)は開館)
観覧料 一般 1200円、大学生 500円
※チケットは美術館チケット売り場および美術展ナビアプリにて販売中
※高校生以下及び18歳未満は無料
※障がい者手帳をお持ちの方(介護者1名を含む)は無料
主催 東京藝術大学、読売新聞社
問い合わせ 050-5541-8600(ハローダイヤル)
公式サイト https://museum.geidai.ac.jp/

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【上野の森美術館】台東区障害者作品展「森の中の展覧会」会場レポート。水彩画や切り絵など個性豊かな214作品がそろう

上野の森美術館

 

2023年3月8日~3月12日の期間、上野の森美術館では台東区障害者作品展「森の中の展覧会」が開催されました。

 

「森の中の展覧会」
会場風景
会場風景
会場風景
会場風景、吾妻 瑠華《黒猫ラム》(アクリル絵の具)
会場風景、濵田 理恵《蓮 池のつぼみ》(鉛筆、水彩絵の具)

台東区では、あらゆる人が文化・芸術を楽しめる機会をつくるとともに、文化・芸術活動への参画を支援し、障害への理解促進を図る「障害者アーツ」の取り組みを進めています。

「障害者アーツ」の一環で台東区と上野の森美術館が主催する「森の中の展覧会」は、今回で2回目の開催となりました。

同展開催のきっかけの一つは、台東区が障害者施設にヒアリングを行った際、「普段の施設での活動とは異なることをやりたい」「難しいことに挑戦する機会にしたい」という意見が寄せられたことだったとか。

また、障害のある方のなかには、心理的なハードルがあるために自らの作品をなかなか世に出せない方や、そもそもこれまで創作活動に触れてこなかった方も多くいます。そういった方々が美術館に作品を展示する機会を通して、主体的に芸術に携わる楽しさ、誰かに自分の作品を認めてもらう喜びを知ってもらおうと企画したとのこと。

出展者は台東区に在住、在勤、在学している障害のある方や、区内の障害者施設・団体等を利用している方などで、最終的に214点もの作品が集まりました。障害者施設に美術講師を派遣して開催した美術ワークショップで制作された作品や、区内小中学校の特別支援学級の授業で制作された作品も多く展示されました。

松葉小学校の生徒による、自分の好きな生き物を表現した版画作品。ビーズを貼り付けるなど、額にもこだわりが光っていました。

題材は自由。会場には水彩画や色鉛筆、版画といった絵画を中心に、自由な色使いと発想で生み出された個性的な作品が並んでいました。

みつはし じゅん《折り切り文字「東京」》(折紙・ダンボール)/ 折紙を折る過程も作品に昇華したユニークな作品。白と赤のコントラストが黒の背景に映えて、会場で特に目を引きました。
結ふるキッズ《ムーンウルフ》(折紙・ビニール・ラメ・アルミホイル)/多様な素材で立体感を出しています。月に千代紙が使用されていて、どことなく和の雰囲気も漂っているなど見どころが多い力作。
潤滑《軽作業》(墨)/「仲間と軽作業を楽しくやりたいからこの作品を作った」との作者コメント通り、飾らない字体が爽やかな気持ちにさせてくれます。「潤滑」というペンネームも洒落ていて作品とマッチしている気がします。

作品に添えられたキャプションには、タイトルと作者名(ペンネームも可)、そして短い作者コメントのみ。年齢も、これまでの創作経験も、もちろん障害の程度や種類もわかりません。障害者アートと聞くと「体が不自由なのに上手だ」「目が見えないのにすごい」というふうに、属性に引っ張られたモノの見方をしてしまう方もいるかと思いますが、同展ではアートそのものの魅力と向き合えるような構成になっていました。

 

また、同展は作品をただ展示する場ではありません。出展作品は美術の専門家の目に触れ、特に優秀な作品は台東区長賞、上野の森美術館賞、優秀賞、佳作のいずれかに選ばれ表彰されます。本年度は武蔵野美術大学油絵学科教授・造形学部長の樺山祐和さん、画家の西村冨彌さん、遊馬賢一さん、書道家の蕗野雅宣さんが審査委員となり、10点の作品が選出されました。

【台東区長賞】哘 博考《今日のご飯は何かな?》(色鉛筆)
【上野の森美術館賞】大橋 直樹《象(ゾウ)》(アクリル絵の具)

いくつか講評をお聞きすることができました。

台東区長賞を受賞した哘 博考(さそう ひろたか)さんの《今日のご飯は何かな?》は、「鳥を見た時の感覚の強さが絵に出ている。頭部だけの描写だが、鳥をこう見たこう感じたという思いがストレートに伝わる。緻密に書いていて充実感のある強い絵である」「構図が堂々としている。画面の広さ以上の構図が感動につながっている」とのコメント。

上野の森美術館賞を受賞した大橋 直樹さんの《象》は、「象らしくないようにも見えるが、一見して象とわかる。形や色が明快でストレートな感じがすごく良い」「象の黒色と背景の黄色との明暗が見事」「牙などを上から何回も手をかけているのが分かる。思い切りが良くいさぎよい絵が心を打つ」といったご意見があったようです。

こうしたプロが注目するポイントを知ることで、自分や他人の創作物への見方が変わり、より面白みや新しいアイデアが出てくる気がします。

作品を作ったのなら、誰でも人に見てもらいたい、そして認めてもらいたいという欲求が出てくるもの。同展への出展や受賞をきっかけに創作の楽しさを知った方の中から、もしかすると未来の大物アーティストが誕生するかもしれませんね!

物販のがま口やサコッシュ

最後に、ミュージアムグッズといえばたいてい展覧会会場の外で展開されているものですが、同展では会場内に物販があったことに驚きました。販売されていたのは台東区内の福祉作業所が製作した菓子や布製品、革製品など。

台東区の担当者にお話を聞くと、せっかく良い商品を作っても販路が限られているために知る人ぞ知る商品になっているのが現状であるため、この機会に場を提供し、認知度アップを目指しているとのことでした。


入場無料ということもあり、取材を行った会期初日は大変な賑わいで、校外学習で訪れた学生の団体客もチラホラと見かけました。多くの展覧会では私語が憚られるようなピリッとした空気が漂っているものですが、同展では作品について来場者が思い思いに意見を交わし、写真を撮る方も多くいるなど、とてもほのぼのとした雰囲気。中にはおそらく出展者だと思しき方もいて、自作品について生き生きと解説している姿が非常に印象的でした。

前回の展示作品は141点でしたが、今回は214点に増えるなど、規模が徐々に大きくなっている「森の中の展覧会」。良い意味で統一感のない展示作品を見ていけば、それぞれの心に残る作品が見つかるはずです。第3回は2024年に開催予定ですので、今後もぜひご注目ください。

 

「森の中の展覧会」概要

会期 2023年3月8日 (水) 〜 3月12日 (日)
会場 上野の森美術館
入場料 無料
WEBサイト https://www.city.taito.lg.jp/bunka_kanko/culturekankyo/events/shougaiarts/morinonaka.html

※記事の内容は取材日(2023/3/8)時点のものです。

 


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新しい音楽のパブリックアートSOUNDWALKが開園150年のメモリアルイヤーを迎える上野公園で始まる<3/6[月]スタート!>

【没入型音楽体験】ーーーGPSを活用し専用の無料アプリを介してイヤフォンで楽しむ

東京・春・音楽祭2023×上野公園 開園150年
「エレン・リード サウンドウォーク featuring クロノス・クァルテット & Kronos’ 50 for the Future」

 

音楽が万華鏡のように変化するーーー
自然の中で音楽を楽しむパブリックアート作品。 ピューリッツァー賞受賞歴もある若き作曲家、サウンドアーティストのエレン・リードがコロナ禍に立案し、 欧米を中心に数々の著名な公園(ニューヨーク・セントラルパーク、ロンドン・リージェンツ・パーク&プリムローズ・ヒル等)で実施されています。

東京・春・音楽祭では、2023年に開園150年を迎える上野公園を舞台に「Ellen Reid SOUNDWALK featuring Kronos Quartet and Kronos’ 50 for the Future」を実施します。
日本初上陸となる今回は、作曲家本人が実際に上野公園を歩き音響デザインがなされました。 歩いた場所や経路によって、ヘッドフォンやイヤフォンから聴こえてくる音楽が万華鏡のように変化するーー 新感覚の音楽散歩をぜひ体験してください!

「Kronos’ 50 for the Future Forest—クロノスの森」と題された特別なエリアでは、日本でも人気の高いクロノス・クァルテットによる「50 for the Future」から季節が移り変わるごとに、新しい音色が届けられます。春が過ぎても、1年中上野公園には音楽が溢れています。

◆エレン・リード:ピューリッツァー賞受賞 アメリカを拠点とする新進気鋭の作曲家、サウンドアーティスト
https://www.tokyo-harusai.com/artist_profile/ellen-reid/

◆クロノス・クァルテット:2023年に結成50年を迎える、現代において最も知名度と影響力を持つ弦楽四重奏団
https://www.tokyo-harusai.com/artist_profile/kronos-quartet/

SOUNDWALKをお楽しみいただくために、専用の無料アプリが必要です。

 

■アプリのダウンロードはこちら
App Store:https://apps.apple.com/us/app/id1528147837
Google Play:https://play.google.com/store/apps/details?id=xyz.echoes.ellenreid

【お楽しみいただくために】
・公園の通信状況は不安定なことがあります。お出かけ前に、携帯にアプリをインストールし、無線LAN(Wi-fi環境)で「Ellen Reid SOUNDWALK」をダウンロードいただくことをお勧めいたします。
・携帯電話の電波の強いところで「START」を押してください。電波の届かないところでもアプリは稼働しますが、始動には電波が必要です。
・携帯電話のバッテリーが十分残っていることを確認し、十分に音楽散歩を楽しめるように準備しましょう。

 

■​簡単な手順

1. 無料アプリ「Ellen Reid SOUNDWALK」をインストール
2. アプリ内「上野公園」ページ下部「OPEN WALK」を押し、ダウンロードをする
3. ヘッドフォン/イヤフォンを装着する
4.「START」を押す
5. 音楽散歩をお楽しみください

 

■Ellen Reid SOUNDWALK 開催概要
期間:2023年3月6日 [月]~(約1年間)
会場:上野恩賜公園
作曲・音響デザイン:エレン・リード
演奏:クロノス・クァルテット(弦楽四重奏)
シャバカ・ハッチングス(尺八、クラリネット、サクソフォン)
ナディア・シロタ(ヴィオラ)
SOUNDWALKアンサンブル
プログラム:エレン・リード作曲作品、クロノス・クァルテット「50 for the Future」より
▼詳細はこちらから
https://www.tokyo-harusai.com/sound-walk/

 

 

■クラウドファンディング
新たな取り組みを実施するため、東京・春・音楽祭では、クラウドファンディングに挑戦し、目標達成することができました。温かな応援をいただき、誠にありがとうございました。
▼クラウドファンディングページはこちらから ※募集終了
https://readyfor.jp/projects/SOUNDWALK

 

■上野の春の風物詩、東京・春・音楽祭
「東京・春・音楽祭」は、桜咲く上野を舞台に東京の春の訪れを音楽で祝う、国内最大級のクラシック音楽の祭典です。長い冬が終わり、桜前線の知らせが聞こえ始める3月中旬に始まり、街が桜色に染まり、花吹雪から新緑を感じるまでの間、街が華やかに変化するときの躍る心をクラシック音楽で祝いたいと、2005年に始まりました。
2023年もオペラやオーケストラ、国内外一流アーティストによる室内楽をはじめとする演奏会から、街角で気軽に楽しめる音楽との出会いの場まで、様々な音色で東京の春の訪れを彩ります。

 

「東京・春・音楽祭2023」の6つのポイント
❶ オペラ、オーケストラ、室内楽など、国内外一流アーティストの演奏による上質なクラシック音楽
❷ 東京春祭ならではの個性的なシリーズ企画の数々
❸ 上野公園の美術館・博物館での「ミュージアム・コンサート」
❹ 「東京春祭 for Kids」では春休みにお子様とオペラやクラシック音楽との出会いの場を
❺ 上野公園 開園150年!「桜の街の音楽会」など活気あふれるイベントが復活!
❻ 高画質・高音質でのライブ・ストリーミング配信(有料)を実施

 

 

■「東京・春・音楽祭2023」開催概要
期間:2023年3月18日 [土] ~4月16日 [日]
会場:東京文化会館、東京藝術大学奏楽堂(大学構内)、旧東京音楽学校奏楽堂、国立科学博物館、東京国立博物館、東京都美術館、国立西洋美術館、上野の森美術館、三井住友銀行東館ライジング・スクエア1階 アース・ガーデン/他
主催:東京・春・音楽祭実行委員会
共催:公益財団法人東京都歴史文化財団 東京文化会館
後援:文化庁、東京都、台東区
協力:一般社団法人 上野観光連盟、上野の山文化ゾーン連絡協議会、上野文化の杜新構想実行委員会
助成:公益社団法人企業メセナ協議会 社会創造アーツファンド
URL:https://www.tokyo-harusai.com

 

【東京・春・音楽祭実行委員会】プレスリリースより

 

記事提供:ココシル上野


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禅宗文化の精髄を体感する。
【東京国立博物館】特別展「東福寺」(~5/7)内覧会レポート

東京国立博物館

京都を代表する禅寺の一つである東福寺。

新緑や紅葉の名所として知られ、戦火に見舞われながらも古文書や書跡、典籍、肖像画など数多の宝物を守り継いできた名刹である。

東福寺の至宝をまとめて紹介する初の機会となる本展では、絵仏師・明兆による「五百羅漢図」など禅宗文化の優品が集う。

本記事では開催前日に行われた報道内覧会の様子をレポートする。

 

東福寺 三門

新緑や紅葉の名所としても知られる、京都を代表する禅寺の一つ「東福寺」。東福寺の名は奈良の東大寺と興福寺になぞらえて、その一字ずつを取ったことに由来します。

開山となったのは中国で禅を学んだ円爾(えんに)。東福寺は幾度も焼失の危機に遭いながらも、中世の面影を色濃く留める建造物の数々を現代に伝え、その巨大な伽藍は「東福寺の伽藍面(がらんづら)」の通称で知られています。

特別展「東福寺」は草創以来の東福寺の歴史を辿りつつ、大陸との交流を通した禅宗文化の全容を紹介。その意義と魅力を幅広く伝える展覧会です。

禅の神髄が宿る、東福寺の寺宝の数々。

展示会場入口
円爾の師である無準の姿を描いた国宝《無準師範像》(自賛 中国 南宋時代・嘉熙2年(1238) 京都・東福寺蔵 展示期間:3月7日(火)~4月2日(日))
2章展示風景。手前は《蔵山順空坐像》(鎌倉時代 十四世紀 京都・永明院蔵 通期展示)
4章展示風景より。中国仏教界との交流によりもたらされた書画の数々
《虎 一大字》(虎関師錬筆 鎌倉~南北朝時代・14世紀 京都・霊源院蔵 通期展示)

本展の展示会場は第1会場・第2会場に分かれており、

  • 第1章 東福寺の創建と円爾
  • 第2章 聖一派の形成と展開
  • 第3章 伝説の絵仏師・明兆
  • 第4章 禅宗文化と海外交流
  • 第5章 巨大伽藍と仏教彫刻

の全5章構成となっています。

東福寺は南北朝時代には京都五山の第四に列し、本山東福寺とその塔頭(たっちゅう)には中国伝来の文物をはじめ、建造物や彫刻・絵画・書跡など禅宗文化を物語る多くの特色ある文化財が伝えられています。国指定を受けている文化財の数は、本山東福寺・塔頭合わせて国宝7件、重要文化財98件、合計105件。
特に1章・2章では「南宋肖像画の極致」と称される《無準師範像》(国宝)など、円爾とその後継者・聖一派(しょういちは)ゆかりの禅宗美術の優品が並びます。

個人的に印象に残ったのは円爾の孫弟子で、東福寺第15代住職・虎関師錬(1278~1346)の書と伝えられる《虎 大一字》。「虎」の文字をあらわした書か、はたまた座した虎の絵か。まるでこれを見ている人間に「お前は何だと思う?」と問いかけているかのようです。

伝説の絵仏師・明兆の画力

明兆による五百羅漢図の展示風景
本展の注目作《五百羅漢図》(吉山明兆筆 南北朝時代・至徳3年(1386) 京都・東福寺蔵)。こちらは第1号(展示期間:3月7日(火)~3月27日(月))。隣にはユニークな漫画が添えられている
《円爾像》(吉山明兆筆 室町時代・15世紀 京都・東福寺蔵 展示期間:3月7日(火)~4月2日(日))
重要文化財《達磨・蝦蟇鉄拐図》(吉山明兆筆 室町時代・15世紀 京都・東福寺蔵 展示期間:3月7日(火)~4月9日(日))

本展の白眉となるのが、「画聖」とも崇あがめられた絵仏師・明兆による記念碑的大作《五百羅漢図》。現存全幅が修理後初公開となる本作は、水墨と極彩色が見事に調和した若き明兆の代表作で、1幅に10人の羅漢を表わし50幅本として描かれ、東福寺に45幅、東京・根津美術館に2幅が現存しています。本展はその全貌がはじめて明かされる貴重な機会となります(幅によって展示期間が異なります)。
隣には内容をユニークに解説した漫画が添えられており、トーハクならではの遊び心が発揮されているのもポイント。

また、明兆の円熟期の傑作として知られる《達磨・蝦蟇鉄拐図》も展示。シンメトリックな構成美と緻密な陰影描写、江戸絵画を先取りしたような明るく伸びやかな筆さばき・・・。中国絵画の名品を模写したものとされますが、明兆の類まれな画力と独創性を堪能することができる名品です。

巨大伽藍の圧倒的パワーに包まれる

5章へと続く通路には東福寺を代表する観光スポット・通天橋を実物大で再現
巨大伽藍にふさわしい特大の仏像が並ぶ第5章
四天王立像(通期展示)がそろい踏み。右手前の《多聞天立像》は鎌倉前期作で運慶風が強い
《仏手》(鎌倉~南北朝時代・14世紀 京都・東福寺蔵 通期展示)

「東福寺の伽藍面」を実物で体感できるのが第5章。巨大伽藍に相応しい特大サイズの仏像彫刻が立ち並び、そのスケールと荘厳さに圧倒されます。

修復後初公開となる四天王立像の《多聞天立像》や重要文化財の《迦葉(かしょう)・阿難(あなん)立像》をはじめ、手だけで2メートルという巨大さを誇る《仏手》にも注目。消失したという旧本尊の巨大さをしのべる貴重な遺例です。

 

本展の開催期間は5月7日(日)まで。禅宗文化の生彩、そして巨大伽藍の圧倒的パワーをぜひ会場で体感してみてください。

 

開催概要

会期 2023年3月7日(火)~5月7日(日)※会期中展示替えあり
会場 東京国立博物館 平成館(上野公園)
開館時間 9時30分~17時00分(入館は閉館の30分前まで)
休館日 月曜日
※ただし、3月27日(月)と5月1日(月)は開館
観覧料 一般  2,100円
大学生 1,300円
高校生  900円※本展は事前予約不要です。混雑時は⼊場をお待ちいただく可能性があります。
※混雑時は入場をお待ちいただく可能性があります。
※中学生以下、障がい者とその介護者1名は無料。入館の際に学生証、障がい者手帳等をご提示ください。
※本展観覧券で、ご観覧当日に限り総合文化展もご覧いただけます。
(注)詳細は展覧会公式サイトチケット情報のページでご確認ください
展覧会公式サイト https://tofukuji2023.jp/

※記事の内容は取材時のものです。最新の情報と異なる場合がありますので、詳細は展覧会公式サイト等でご確認ください。また、本記事で取り上げた作品がすでに展示終了している可能性もあります。


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2023年4月からリニューアル工事に入る下町風俗資料館、その魅力をあらためて振り返る。
最後の特別展「明治・大正・昭和の子供たち」も紹介

下町風俗資料館

東京・上野の不忍池のほとりに立つ台東区立下町風俗資料館

古き良き東京の下町文化を後世に伝えるべく昭和55年(1980)に開館して以来、多くの来館者を楽しませてきましたが、令和5年4月1月から、施設の大規模リニューアル工事のため令和6年度末(時期未定)までの休館が決定していることをご存じでしょうか。

リニューアル後は現在の展示の一部が見られなくなってしまうということで、期待と同時に寂しさを覚えます。

そこで今回は、約42年にわたり愛された下町風俗資料館の姿をあらためて紹介しようと、館内を取材させていただきました。

最後の特別展「明治・大正・昭和の子供たち ~資料でつづる下町の子供の世界~」についても記事の後半で触れていますので、残り約1か月の営業期間、ぜひ足を運んでみてください。

台東区立下町風俗資料館
館内の様子
特別展「明治・大正・昭和の子供たち ~資料でつづる下町の子供の世界~」展示風景

区民の声から生まれた下町風俗資料館

大正12年(1923)の関東大震災や昭和20年(1945)の第二次世界大戦での焼失、昭和39年(1964)の東京オリンピック開催を契機にした再開発などにより、江戸の風情を残していた古き良き下町の街並みや文化は急速に姿を消し、庶民の暮らしは様変わりしていきました。

昭和40年頃になると、そんな状況を憂いた下町文化を愛する人々から声が上がり始め、下町の記憶を次の世代へ伝えるための資料館設立の構想が生まれます。そして昭和55年10月1日、ついに下町風俗資料館が開館しました。

1階展示室では、関東大震災前(約100年前)の大正時代の下町風景として、商家や長屋、井戸端などをほぼ実物大で再現。2階展示室では、台東区を中心とした下町地域の歴史に関する資料や玩具などを紹介しています。

展示の魅力は、鑑賞するだけでなく実際に再現された座敷に上がれたり、展示物に触れられたり(※)と体験型のコンテンツになっている点。同館研究員の本田さんによれば、いわゆるハンズ・オン展示と呼ばれるこの手法は今でこそさまざまなミュージアムで使われていますが、実は下町風俗資料館がパイオニアなのだといいます。

(※コロナ禍のため、一部を除いた展示物は接触禁止となっています)

民間からの要望に応じて開館したという経緯から、収蔵品の多くが台東区内外から集まった寄贈品であることも大きな特徴といえるでしょう。実際に家庭にあった家具や日用品によって、よりリアルな下町の雰囲気を味わえるというわけです。

これまで300万人以上が訪れ、最近ではレトロな雰囲気を求める若者や、観光で訪れた外国人からも密かな人気を集めるスポットになっているそうですよ。

100年前の大正時代にタイムスリップ

自働電話ボックス

1階でまず目に入るのは、六角形の真っ赤な自働電話(のちに公衆電話と改名)ボックス
日本初の自働電話が東京の上野駅と新橋駅に登場したのは明治33年(1900)のこと。同館では、明治43年(1910)から用いられたボックス型の自働電話を復元展示しています。

自働電話ボックスの鮮やかな赤は、下町の街並みのなかで美しく映えていたに違いありません。

自働電話。木製のつくりがかわいいです。

中の電話機本体は実際に使われていた物。送受話器が分割されていて、ダイヤル式ではなく、まず交換手を呼び出して相手の電話につなげてもらうタイプです。

今やダイヤル式どころかプッシュ式の公衆電話すら目にする機会が減っていますが、そのさらに前の時代の骨董品ということで歴史を感じました。喋り口の位置がとても低く、背が高い人は腰をかがめて話さなくてはならないのが大変そう。当時の日本人の平均身長がこれくらいだったのかな、なんてことを想像させる展示です。

商家の店構え

こちらは大通りに面した大店(おおだな)の商家・花緒(※)の製造卸問屋の店先、という設定の再現展示。江戸時代から伝わる伝統的な「出桁造り(だしげたづくり)」や「揚戸(あげど)」といった商家建築が見られます。

(※下町風俗資料館の展示解説の表記にのっとり、鼻緒ではなく花緒としています)

入って左が花緒づくりの作業場、右が帳場兼商談スペース。

作業場の奥には色とりどりの花緒が下がっています。当時は履物といえば下駄や草履が一般的で、花緒は生活の必需品でした。季節や着物に合わせて、そのときどきの材質や形・柄の流行によって挿げ替えてオシャレを楽しんでいたのだとか。

珍しい展示品でいうと、作業場の上部に吊るされた「用心籠」があります。今でいう非常持ち出し袋のような存在なのだとか。

用心籠

「昔の江戸界隈は水害が多かったため、濡れてしまうのを避けようと、用心籠を設置して大切なものを全部投げ入れたり、いざというときは紐を外して外に持ち出したりしたようです」(本田さん)

一通りの展示品については解説シートが配布されていますが、用心籠のように、現代を生きる私たちにとって見慣れないモノも多いはず。まずは「あれは何に使う道具だろう」と予想しながら館内を回ってみるのも面白いかもしれません。

帳場兼商談スペース

こちらは帳場兼商談スペース。商家には必ず帳場(出納の書付けや勘定をする場所)があったそうで、帳場格子を結界として、その中には主人や番頭などの選ばれた人しか入ることが許されなかったとか。もちろん再現展示では自由に入ってOK 。そろばんや当時の金庫である「銭箱」、印鑑を入れる「印箱」などが置かれていました。

気軽に番頭気分を味わえます。

「こうした再現展示について、開館にあたり当時の館長や職員が泊まり込んで、どこにどんなモノがあれば便利か、実際に体験して配置を決めていったという資料が残っています。また、当時の人たちは右利き(左利きの人は矯正されることが当たり前の時代でした)ですから、右手でモノがつかめるような配置になっているなど、細かいこだわりがあります」(本田さん)

本田さんのお話からは、資料館の役割として、展示の見栄えよりも、あくまで当時のリアルの暮らしを伝えることに心を砕いていたことが伝わってきます。

商家の前には、浅草で発明され、自動車の普及以前に送迎手段の代表格だった人力車や、配達を行う商いには欠かせなかった箱車(はこぐるま)も置かれ、活気ある下町の雰囲気を演出していました。

人力車。提灯飾りには「赤岩」という屋号が見えます。

下町人情の温かさを育んだ長屋の暮らし

商家の向かい側には、狭い路地に囲まれた、時代劇でおなじみの集合住宅である長屋の再現展示があります。

長屋の路地の風景を再現。

取材したのは「初午(はつうま)」(2月最初の午の日)の時期でした。毎年初午には全国の稲荷社で五穀豊穣を祈る「初午祭」が催されています。同館にも小さな稲荷社が存在するため、江戸時代から初午祭に合わせて街で掲げられていた「地口行灯(じぐちあんどん)」が長屋に飾られていました。

地口行灯は今でも職人が作っています。

地口は、江戸時代に流行ったことわざや格言などをもじった駄洒落の言葉遊びのこと。地口に戯画をつけて行灯に仕立てたものが地口行灯で、初午祭に集まった人々を楽しませていたようです。

このように、同館は正月飾りや七夕飾りといった、季節の移ろいに合わせたこまやかな演出で来館者を迎えてきました。飾りは特別な日の楽しみでもあり、ゲンを担ぎ、神仏に祈りを捧げる手段の場合もあります。当時の人々の精神性や下町の四季の情景を体感できる粋な工夫ですね。

ちなみに、コロナ禍で展示物が接触禁止になる前は、密かにタンスの中の衣替えなど、気づいた人だけが楽しめる小ネタも仕込んでいたそう。

年老いた母と子が営む駄菓子屋。奥には居間が見えます。

関東大震災前まで数多く見られた平屋造りの長屋には、駄菓子屋銅壺屋(どうこや)が再現されています。

ベーゴマやおはじきなどのおもちゃなども取り扱っていた駄菓子屋は、子供たちの社交場でした。住居の一画で営業しているという設定で、台所や座敷も作り込まれています。

駄菓子売り場の向かい側にある台所。

なお、当時の下町のインフラですが、電気は通っているものの電化製品は普及しておらず、また水道やガスも一般的でなかったそう。そういった事情は、住人共有の井戸からくんだ水をためる水瓶が台所にあったことからも伝わってきます。

水瓶の下には木製の流しが見えますが、このように床の近くに流しを作り、しゃがんで炊事をする作業場を「座り流し」と呼びます。これも震災前の大正時代頃には一般的なものだったというから驚きました。今では考えられない配置ですね。

長屋の天井付近には、煙出しや明かり取りのための引き窓があります。
銅壺屋。左が居住スペース、右が作業場。

銅壺屋は湯沸かし器(銅壺)をはじめ、鍋ややかんなどの銅製品を作ったり、修理したりするお店のこと。下町にはさまざまな職人が暮らしていましたが、銅壺屋の職人はモノを修理しながら大切に使っていた時代の暮らしには欠かせない存在でした。

作業場の壁には神棚の一種で、火の神様を祀った「荒神棚(こうじんだな)」が作られています。

「銅壺屋は火を使う職業ですが、当時は電話一本で消防車を呼べるわけではないので、今よりずっと火事への恐れは強かったんだと思います。火事が起こらないようにお守りくださいと。信心深い方が非常に多かった時代だということがお伝えできればと考えています」(本田さん)

荒神棚

思い返せば、先ほどの駄菓子屋でも神棚を発見しました。昔はどの家庭、どの商家にも神棚が祀ってあったそうで、神仏への祈りは生活に密着した切実なものだったのでしょう。

信心深さを表す展示としては、長屋の奥に建てられた稲荷社も挙げられます。

長屋の奥に祀られた、小さな稲荷社。

稲荷は、江戸時代には土地や屋敷の守り神として盛んに祀られていて、長屋にはそれぞれ必ず建てられたとのこと。そのため、下町地域には現在も多くの稲荷社が名残として存在しています。

薄壁一枚で仕切られた住居。長屋は、現代を生きる私たちからすると、マンションやアパートなどとは比較にならないほどプライバシーの観念が薄い生活空間です。住人同士は必然的に気安い付き合いになるでしょうし、他人へ迷惑をかけないようにする心配りも今以上に必要だったのではないでしょうか。
下町の人々の人情の厚さは、こういう暮らしから形成されたのかもしれません。

長屋の脇には井戸も再現。井戸端は長屋の主婦たちの社交場でした。下町の井戸は湧水ではなく、「木樋(もくひ)」という水道管から水を引いていたそうです。

1階展示室の商家と長屋は、昭和55年の開館に合わせて建てられているため、築40年以上が経過しています。開館当初は真新しかっただろう床も柱も、長年毎日のように人が出入りした結果、本当に人が住んでいたかのように傷がつき、味わい深い風合いになっていたのが印象的でした。

みんなの憧れ?銭湯の番台に座って記念撮影も

昭和30年代の人々の暮らし

2階には常設展示として、昭和30年代の人々の暮らしが再現されています。下町のアパートの台所兼居間とのこと。真空管を使用した東芝製の白黒テレビをはじめ、日本初の自動式電気釜など当時の高級家電がいくつも揃っているため、裕福なお宅のイメージでしょうか。

戦前から引き継がれたであろうちゃぶ台やタンスなどの調度品と、最新家電が同居する光景から察せられるのは、使えるモノは長く使い続けようとする慎ましさと、便利さや快適さを求めたい気持ち。こうした生活も昭和40年代以降に少しずつ失われ、大量消費の時代になっていきました。懐かしさの裏で、同館設立のきっかけになった、下町文化の保存を考えた人々の危機感も理解できるのではないでしょうか。

かつては下町の風景に欠かせない存在だった銭湯。

その隣には、台東区で昭和25年(1950)~昭和61年(1986)まで営業していた銭湯「金魚湯」で実際に使用されていた番台がほぼそのままの形で置かれていました。同館最大の寄贈品であり、実際に番台に座れるということで、同館で最も人気のあるフォトスポットなのだといいます。

「特に大正~昭和世代の男性は昔からの憧れがあるのか、本当に楽しそうに番台を体験されていて、よっぽど座りたかったんだなあと。今の銭湯は番台ではなく受付が主流なので、お子さんたちの多くは番台と聞いてもわからないようですが、展示を見て『番台ってこういうのなんだ』『いいね』と言ってくれて。親御さんやおじいさんおばあさんが説明してあげるといった光景もよく見かけますし……。この番台に限らず、展示は来館者の皆さんの会話が生まれるきっかけになっているようです」(本田さん)

解説文ではなく、学芸員でもなく、一般人が展示物についてスラスラと説明する。そんな光景と出会えるのも同館の魅力といえそうです。

特別展「明治・大正・昭和の子供たち」が開催中(~令和5年3月31日まで)

特別展「明治・大正・昭和の子供たち」展示風景

2階展示室では、ご紹介した昭和アパートの再現展示や銭湯の番台のほか、通常は台東区を中心とした下町地域ゆかりの品々や、年中行事に関連する資料の展示などを行っていますが、この日はリニューアル前の最後の特別展「明治・大正・昭和の子供たち ~資料でつづる下町の子供の世界~」が開催中でした。(観覧料は入館料に含まれます)

同展は、明治~昭和時代に生きた下町の子供たちの日常に焦点をあて、当時の遊びや子供が成長する過程で通過していった儀式などについて、同館所蔵の資料を中心に紹介するもの。

街頭紙芝居の自転車。舞台の下の引き出しにお菓子を用意し、紙芝居を見に来た子供たちに売って商売していたそうです。
コロナ禍で休止を余儀なくされていた、大人気の昔の玩具体験コーナーも規模を縮小して復活。

特に子供の遊びにまつわる資料が非常に充実していて、おおまかにベーゴマやメンコなどの「外の遊び」と、おはじきやごっこ遊びなど「家の遊び」に分けて展示されていました。

子供たちが東西に分かれて相撲をとっている様子を描いた明治時代の錦絵。
左上の巨大なおはじきのような玩具は、ガラスのけり石(昭和時代)。文字通り石けりに使われたそうですが、その耐久性が気になるところです。
戦争期のベーゴマは物資不足から焼き物になっているなど、玩具から時代背景もうかがえます。
昭和20~30年頃のメンコ。絵柄は当時の有名なスポーツ選手や映画スターなどがモデルに。

本田さんのイチオシは、明治から大正時代にかけて発売されていたミニチュア勝手道具。木、竹、ブリキ、陶器など、本物と全く同じ素材で作られているという本格仕様がポイントです。その精巧さに大人でもワクワクしてしまいました。

ミニチュア勝手道具。子供たちはこういった玩具で家事を学んでいきました。
大人のマネをしたい女の子心をくすぐっただろう、昭和30年代の玩具の時計やアクセサリー。いま見ても非常にかわいいです。
昭和初期頃の雑誌の付録。保存状態がいい展示物が多く、持主にとってどれだけ大切なモノだったのか、寄贈されるまでの背景に思いを馳せました。

七五三やお食い初めなど、子供の成長の儀式にまつわる資料の展示の中で、本田さんが特に注目してほしいと話すのは「背紋帖(せもんちょう)」です。

子供の成長に関する儀式の展示
背紋帖の展示

背紋帖は、0歳から2歳くらいまでの子供が着る一つ身の産着の背中に色糸で縫い付けた、「背守り」の見本帖のことです。

一般的な着物には背中の中央に縫い目があり、その縫い目を「目」と捉え、背中からくる災いから身を守る効果があると考えられてきました。しかし、一つ身の産着には背中に縫い目がないため、背守りと呼ばれた「目」を色糸で刺繍して厄除けにしたそうです。展示されているのは昭和時代の背紋帖で、背守りの図柄の一つひとつに意味が込められていたとか。

「このように、子供の成長に関わる儀式の展示から、さまざまな手を尽くして子供たちを守ろうとしてきた親心が伝わればうれしいです」(本田さん)

下町風俗資料館の歴史を振り返る資料がズラリ

なお、特別展の同時開催企画として、同館42年間の歴史を振り返るため、これまで開催された企画展や特別展のポスターやチラシ、今では手に入らないミュージアムグッズなども紹介されていました。

リニューアル後の下町風俗資料館はどうなる?

気になるリニューアル後の下町風俗資料館について、本田さんに伺ってみました。

「まだ詳細を詰めているところですが、現在の展示の補修や改修などではなく、新しい時代に向けてガラリと印象を変える予定ではあります。リニューアル後は3階の一部も展示室として開放する予定(現在は2階までの展示)なので、まったく違った景色をお見せできるかなと。ただ、これまで通り“下町文化を後世に残す”という使命をもった施設であることに変わりはありませんので、その点はご安心ください」(本田さん)


下町風俗資料館がある上野駅周辺には、学術的価値が高い近現代の美術品を鑑賞できる施設が多くあります。そのなかで、かつて下町に暮らしていた人々の気配を身近に感じられる展示を42年間にわたり実直に続けてきた同館の存在は、地域の住人だけでなく、現代に生きる人々にとって、より特別な地位を占めていくように感じます。

下町文化を後世に伝えるだけではなく、その文化をリアルで体験した世代と知らない世代をつなぐ架け橋となっている下町風俗資料館が、新生のための準備に入るのは令和5年4月1日から。同館に行ったことがある方もない方も、リニューアル工事前にぜひ一度、その姿を記憶に留めるべく足を運んでみてください。

下町風俗資料館 概要

所在地 台東区上野公園2-1
JR上野駅 不忍口から徒歩5分
開館時間 午前9時30分~午後4時30分 (入館は午後4時まで)
休館日 月曜日(祝休日と重なる場合は翌平日)、12月29日~1月3日、特別整理期間等
入館料 一般 300円(200円)、小・中・高校生 100円(50円)

※( )内は、20人以上の団体料金
※障害者手帳、療育手帳、精神障害者福祉手帳、特定疾患医療受給者証をお持ちの方とその介護者の方は無料。
※毎週土曜日は台東区在住・在学の小、中学生とその引率者の入館料無料。

電話番号 03-3823-7451
公式サイト https://www.taitocity.net/zaidan/shitamachi/

※記事の内容は取材日(2023/2/3)時点のものです。最新の情報は公式サイト等でご確認ください。


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【書道博物館】書聖・王羲之の最高傑作「蘭亭序」を見比べて味わう企画展が開催中(~2023年4月23日まで)

台東区立書道博物館

約1700年前の中国で活躍し、のちに「書聖」とまで崇められた伝説的な書家・王羲之おうぎし(303~361、異説あり)と、彼のもっとも有名な作品である蘭亭序らんていじょに焦点を当てた展覧会『王羲之と蘭亭序』が、台東区立書道博物館で開催中です。

会期:2023年1月31日(火)~4月23日(日)
 ※期間中、下記の日程で展示替えが行われます。
前期:1月31日(火)~3月12日(日)、後期:3月14日(火)~4月23日(日)
※出展作品リストはこちら

※同展は東京国立博物館との連携企画です。
※掲載している画像は特別な許可を得て撮影したものです。

 

書道博物館入口
展示風景
《神龍本蘭亭序―山本竟山旧蔵―》王羲之/原跡:東晋時代・永和9年(353)/台東区立書道博物館/前期展示

もっとも有名な書家なのに真跡が一つもない?書聖・王羲之とは

中国の歴史上、書がもっとも盛行したのは、風雅な貴族社会が形成された4世紀の東晋時代。日常のあらゆる場面で瀟洒を極めようとした貴族たちが、実用一色だった書にもこぞって芸術性や批評性をもたせるようになったころに登場したのが王羲之です。

王羲之は当時過渡期の書体だった草書・行書・楷書を洗練させ、自らの感情を書の表現に落とし込みながら芸術性を飛躍させました。彼が獲得した普遍的な美しさを備えた先進的な新様式の書法は、奈良時代に王羲之の書が伝わった日本においても書法規範の源泉となり、今日に至るまで能書の代名詞的存在となっています。

「蘭亭序」(353)は、そんな王羲之の代表作であり、歴史に燦然と輝く名作。永和9年(353)3月、風光明媚な会稽(浙江省紹興市)山麗の蘭亭という土地で、王羲之が名士41名を招いて催した雅宴で詠まれた、詩集の序文の草稿です。

《蘭亭図巻―万暦本―》王羲之 他/明時代・万暦20年(1592)/五島美術館(宇野雪村コレクション)/前期展示 の拡大写真。蘭亭の宴の様子を描いています。

宴の楽しさや生命の儚さについて心のままにつづった情緒豊かな名文が、秀麗な行書で記された「蘭亭序」は王羲之が酒に酔ったまま即興で仕上げた草稿。何度清書しようとも結局、草稿以上の出来にはならなかったという逸話が残る、本人も認めた最高傑作です。現在でも行書を学ぼうとしている人々の必修作品として扱われているとか。

そんな「蘭亭序」をはじめとする王羲之の書は生前から高く評価され、貴族たちの間で収集の対象になっていましたが、実は真跡が一つも現存していないそう。

戦乱や天災などで徐々に失われていったほか、王羲之の死後から300年経って、彼の書をこよなく愛した唐の太宗たいそう皇帝(598-649)が徹底的に手元に集め、崩御の際に「蘭亭序」も一緒に埋葬してしまったのが大きな理由です。しかし、太宗皇帝は優れた書家たちに「蘭亭序」などの作品の模本や拓本などの「写し」を作らせて臣下に下賜しており、王羲之の先進的な書法は後世に受け継が継がれることになりました。

企画展『王羲之と蘭亭序』は、東京国立博物館・書道博物館の連携企画20周年を記念して企画されたもので、「蘭亭序」をはじめとする王羲之の書や、王羲之書法の後世への影響などを示す書画を両館で展示しています。

「蘭亭序」が次々登場。王羲之の神髄に迫るのはどれ?

展示の大きな特徴は、前後期あわせて10種類以上の「蘭亭序」の見比べができること。

「蘭亭序」は複製にさらに複製が重ねられてきました。そのため文字の強弱や緩急などがどれも微妙に異なる、複製に関わった人の技量や、王羲之へ抱いたイメージが反映されたさまざまな来歴の「蘭亭序」が伝わっているのでした。

前期展示で鑑賞できたのは《定武本蘭亭序―韓珠船本かんじゅせんぼん―》《神龍本蘭亭序―山本竟山やまもときょうざん旧蔵―》《潁井えいしょう本蘭亭序―王文治おうぶんち旧蔵―》《宣和内府せんなないふ旧蔵蘭亭序》など。ちなみに作品名の「〇〇本」などの語句は、拓本の元となる石が見つかった土地や作品ならではの特徴など、他の「蘭亭序」との区別のためにつけてあるものです。

《定武本蘭亭序―韓珠船本―》王羲之/原跡:東晋時代・永和9年(353)/台東区立書道博物館/前期展示
《定武本蘭亭序―韓珠船本―》王羲之/原跡:東晋時代・永和9年(353)/台東区立書道博物館/前期展示

《定武本蘭亭序―韓珠船本―》は、沈み込むような字粒で全体的にクールな趣き。太宗皇帝の命令で臣下たちが「蘭亭序」を臨書した際、もっとも優れていたのが「初唐の三大家」に数えられる欧陽詢おうようじゅん(557-641)という人物のもので、それを石に刻ませたのが「定武本」の元となったと伝わっています。同作は、数多い「定武本」系統の中でも特に古い宋時代の拓本とのこと。

次に目に留まったのは《神龍本蘭亭序―山本竟山旧蔵―》。「神龍本」とは、冒頭と末尾に唐時代の元号である「神龍」の半印が押してあることにちなんだものです。「神龍本」は他と比べて生き生きした華やかな字姿が楽しめるのが特徴で、その見やすさと学びやすさから、よく教科書などに取り上げられています。

《神龍本蘭亭序―山本竟山旧蔵―》王羲之/原跡:東晋時代・永和9年(353)/台東区立書道博物館/前期展示

しかし、同館の主任研究員である中村さんによれば、「神龍本」の字姿には唐時代の洗練された美意識が少なからず反映されているそうで、「王羲之(東晋時代)の書であればもう少し素朴さがあるはず」とのこと。たしかに同作を他と比べて見ると、ハネやハライが少し大げさに感じられました。

同じ系統でもかなり字姿が異なっていて見ごたえがあります。複製した人が無意識に自分の色を出してしまったのか、その時代の人にウケるように意図的に変えたのか、さまざまな背景がありそう。これも、「蘭亭序」の真跡が残っていない、答え合わせができないからこそ生まれた個性なのでしょう。

同展には「蘭亭序」以外にも王羲之の書(複製ですが)がいくつか出展されているので、書に詳しくない方でも「どの蘭亭序が王羲之の面影を残しているんだろう」と検討をつけながら楽しめます。

また、当たり前ですが「蘭亭序」は単体で鑑賞しても学びがあります。たとえば「蘭亭序」には「之」という漢字が頻出しているのですが、それぞれ独特な形と用筆で書かれていることに驚きました。

筆者はあまり書について詳しくないので、書が上手な人というのは、自分の中に文字の最良の字形というものが完成していて、いつでもその字形をブレなく出力している、となんとなく想像していました。しかし、「蘭亭序」で「之」は文脈に応じて異なる形で書き分けられています。展示室にあった「蘭亭序」の日本語訳文を読みながら鑑賞すると、情景のみならず作者の感情も伝えるような豊かな表現力が本作の魅力であることに気づきます。書道芸術の基本をつくった王羲之の偉大さの一端が理解できるような気がしました。

《十七帖―欠十七行本―》王羲之/原跡:東晋時代・4世紀/台東区立書道博物館/前期展示

「蘭亭序」のほか、王羲之が草書で書いた書簡や手紙29帖を集めた「十七帖」も前後期で複数展示されています。

「一見では地味な作品です。書かれている内容は体調不良を伝えるものなのですが、体調不良と言いつつ美しい字である点はさすが王羲之という感じですね。一文字一文字を切り取って鑑賞してもいいですが、字と字の間合いや大きさも見どころです。ドラマに主役と脇役がいるように、書にも映える文字そうでない文字があって、左右にハライをもつなど、華やかに見せられる字が強調されています。そうして完成した書全体の調和にもぜひ注目してください」(中村さん)

王羲之フォントで作品制作?王羲之人気は日本へも…

同展では王羲之が登場する以前・同時代・以後の時代の書の姿も展示。以後の作品では、王羲之の影響がどれほど大きいものであったのかを見ていけます。

《薦季直表(真賞斎帖―火後本―)》鍾繇/原跡:後漢~魏時代・2~3世紀/台東区立書道博物館/全期間展示

王羲之が尊敬していたという、後漢末期から三国志の魏にかけて活躍した楷書の名手・鍾繇しょうよう(151-230)の薦季直表せんきちょくひょう真賞斎帖しんしょうさいじょう―火後本―)》は、「長い年月をかけて隷書から楷書へと発達を始める第一歩の書」だと話す中村さん。隷書の名残があり、やや背が低く横に広い原始的な字姿が見られます。

《黄庭経》王羲之/原跡:東晋時代・永和12年(356)/台東区立書道博物館/全期間展示

同展には王羲之の黄庭経こうていきょうや《孝女曹娥碑こうじょそうがひ(原跡:東晋時代・升平2年(358)/全期間展示)といった楷書の作品も展示されています。鍾繇の書と見比べると歴然と洗練されていて、背は伸び、人間が筆で文字を書くという動作に寄り添った自然な字姿や用筆をしているように感じました。こちらもぜひ実際に見比べてみてほしいです。

《道行般若経巻第六・第七》西晋時代・永嘉2年(308)/台東区立書道博物館/前期展示
《道行般若経巻第六・第七》西晋時代・永嘉2年(308)/台東区立書道博物館/前期展示

王羲之とほぼ同時代の作品としては《道行般若経巻第六・第七》があり、なんとこちらは肉筆! 唐時代以前の肉筆は大変貴重なのだとか。王羲之が生きた時代の、本当の書の姿を確認できます。

《晋祠銘》唐太宗/唐時代・貞観20年(646)/台東区立書道博物館/前期展示

王羲之神話の立役者である唐の太宗皇帝の行書晋祠銘しんしめいもありました。いかにも皇帝といった、どっしりと堂々たる書きぶりが心地いいです。

「行書や草書は、スピード感を出すために線をつなげて書けば、それっぽくなると素人は思いがちですが、太宗皇帝の書はわざと切っています。そうすることで字の中に空気を取り込み、余裕を出しているんですね。余裕を出しすぎると、だらんとした字になりますが、たとえば『月』という字だったら1画目と2画目の向かい合う線をグッと引き締めています。そのバランス感覚を味わっていただければと思います」(中村さん)

《集王聖教序》王羲之/唐時代・咸亨3年(672)/台東区立書道博物館/前期展示

唐時代以降の王羲之人気を示すものとしては、集王聖教序しゅうおうしょうぎょうじょ《興福寺断碑》(王羲之/唐時代・開元9年(721))が面白いです。あたかも王羲之が書いたかのように、王羲之の書から一文字一文字集めて文章に仕立てた石碑から作った拓本とのこと。《集王聖教序》は線の太さがまちまちでいかにもコラージュした雰囲気ですが、《興福寺断碑》はかなり巧みに全体の調和をとっていました。

《淳化閣帖―夾雪本―》王著編/北宋時代・淳化3年(992)/台東区立書道博物館/前期展示

宋時代に作られて流行した歴代中国の書道全集である淳化閣帖じゅんかかくじょう夾雪きょうせつ本―》にも、当然のように王羲之の書が入っていました。話を聞くと、全10巻あるうち、王羲之が6~8巻、息子の王献之が9~10巻で紹介されているそうで、中国の書の歴史の半分は王親子が担っていたことがわかります。ここまで来ると影響力のあまりの大きさに笑ってしまいました。

展示の最後は、王羲之が日本でどのように受け止められたのかを紹介していました。平安時代では遣唐使らが持ち帰った王羲之の写しで学んだ空海や小野道風たちが台頭し、彼らの活躍の後に国風文化や和様と呼ばれる日本風の書が成立。江戸時代には唐様書の流行から王羲之尊重の風潮が強まったり、幕末には王羲之書法の法帖(拓本を書の形に仕立てたもの)も多く日本に届くようになったり……。中国だけでなく、日本の書の歴史でも常に圧倒的な存在感を示していたようです。

《蘭亭序額》中林梧竹/明治25年(1892)/台東区立書道博物館/全期間展示

日本の作品のなかでは、明治時代の大家・中林梧竹(1827~1913)の《蘭亭序額》が目を引きました。「蘭亭序」の文章を自分なりの書きぶりで仕上げた作品で、字線の変化の豊かさはそうそうお目にかかれるものではありません。


これまでは書聖・王羲之の書を見て「確かにきれいだけど、なんだか普通だなぁ」と注目すべき点がわからずにいました。しかし同展を巡ってみて、その「普通だな」と感じること自体、1700年経っても変わらず人々が王羲之のフォロワーであり続けている証明なのかもしれないな、とその偉大さを感じるようになりました。

書道博物館創設者・中村不折が描いた「蘭亭序」の新聞挿絵。《書聖王羲之 蘭亭記ヲ書ス(十二支帖)》大正元年(1912)/台東区立書道博物館/全期間展示

なお、同展には「世説新書」という、中国でもっとも美しい楷書が書かれた唐時代に作られた、王羲之が生きた時代の噂話を集めた書物に関連した作品3点が期間限定で登場します。いずれも肉筆で書かれた国宝です。

1月31日~3月12日には《世説新書巻第六残巻―規箴―》(唐時代・7世紀)
2月28日~3月26日には《世説新書巻第六残巻―規箴・ 捷悟―》(唐時代・7世紀)
3月28日~4月23日には《世説新書巻第六残巻―豪爽―》(唐時代・7世紀)
貴重な機会となりますのでお見逃しなく。

連携展示をしている東京国立博物館は徒歩圏内ですので、ぜひ両館合わせて足を運んでみてください。

 

■企画展『王羲之と蘭亭序』概要

会期 2023年1月31日(火)~4月23日(日)
※期間中、下記の日程で展示替えが行われます。
前期:1月31日(火)~3月12日(日)、後期:3月14日(火)~4月23日(日)
会場 台東区立書道博物館
開館時間 午前9時30分~午後4時30分(入館は午後4時まで)
休館日 月曜日(祝休日と重なる場合は翌平日)、特別整理期間等
入館料 一般500円 小、中、高校生250円

※障害者手帳、療育手帳、精神障害者福祉手帳、特定疾患医療受給者証をお持ちの方とその介護者の方は無料です。
※毎週土曜日は、台東区内在住・在学の小・中学生とその引率者の方は無料です。
その他、詳しくは公式サイトをご確認ください。

台東区立書道博物館公式サイト https://www.taitocity.net/zaidan/shodou/
出展作品リスト https://www.taitocity.net/zaidan/shodou/wp-content/uploads/sites/7/2023/02/kikakuten_20230131.pdf

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【会場レポ】「エゴン・シーレ展」が開幕。人間の内面を鮮烈に描いた夭折の天才、約30年ぶりの回顧展

東京都美術館

 

世紀末ウィーンを代表する最も重要な画家の一人、エゴン・シーレ(1890-1918)の大規模展「レオポルド美術館 エゴン・シーレ展 ウィーンが生んだ若き天才」が2023年1月26日、東京・上野の東京都美術館で開幕しました。

展示風景、会場入口
展示風景
エゴン・シーレ《悲しみの女》1912年、油彩、レオポルド美術館蔵
エゴン・シーレ《吹き荒れる風の中の秋の木(冬の木)》1912年、油彩、レオポルド美術館蔵
エゴン・シーレ《闘士》1913年、水彩、個人蔵
展示風景
展示風景

東京では約30年ぶりとなる、夭折の天才エゴン・シーレの回顧展

19世紀末から20世紀初頭、歴史上まれにみる芸術の爛熟期を迎えたウィーンにおいて華々しく活躍し、10年余りの短い画業にもかかわらず美術史にその名が燦然と輝く画家、エゴン・シーレ

幼少期から絵のセンスの片鱗をみせていたシーレは1906年、難関のウィーン美術アカデミーに学年最年少である16歳で特別入学。翌年に、同じく世紀末ウィーン美術を代表する画家であるグスタフ・クリムト(1862-1918)に見出され、大きな影響を受けます。

1909年にはアカデミーの保守的な体制に反発して自主退学し、友人らと「新芸術家集団」を結成。革新的な作品を世に送り続け、1918年には第49回ウィーン分離派展で成功を収めますが、同年、28歳でスペイン風邪に侵され病死しました。

当時の常識にとらわれないスキャンダラスな創作活動が批判を浴び逮捕、猥雑だと判断された作品が焼却処分されるなど、その生涯には失望や苦悩がつきまとったものの、圧倒的な表現力で人間の精神性、生と死、性を生々しく描き出したシーレの作品は、今も人々を惹きつけて止みません。

展示風景、自身のアトリエでポーズをとる20歳のエゴン・シーレ

「レオポルド美術館 エゴン・シーレ展 ウィーンが生んだ若き天才」は、シーレ作品の世界有数のコレクションをもち、「エゴン・シーレの殿堂」として知られるウィーンのレオポルド美術館の所蔵作品を中心に、シーレの油彩画、ドローイングなど合わせて50点を通して、シーレの生涯と作品を振り返る回顧展。

クリムト、モーザー、ココシュカなど、同時代の画家たちの作品65点もあわせて紹介されています。

コレクションは年代順、全14章のテーマごとに展示されていました。

人間の内面の探求を続けたシーレの代表作《ほおずきの実のある自画像》が来日!

出展作品をいくつかご紹介します。

本展の目玉は、シーレが22歳のときに制作した《ほおずきの実のある自画像》(1912)。シーレの自画像で最もよく知られた代名詞的作品です。

エゴン・シーレ《ほおずきの実のある自画像》1912年、油彩、レオポルド美術館蔵

ほおずきの蔓と人物の斜めの姿勢が織りなす構図が生み出す、引き絞るような緊張感。背景の白、服、髪、目の黒、ほおずきの赤の対比が凛とした美しさを構成する一方で、青ざめた顔には赤や緑といった色彩も大胆に配され、それが奇妙にいきいきと映ります。

鑑賞者へ向ける眼差しは挑発か拒絶か。つぐんだ口元は気取っているようにも、言葉を飲み込んでいるようにも感じられ、明確なナルシシズムと不安定な感情のゆらぎをナイーブな感受性で見事に表現しています。

1910年頃、シーレは師であるクリムトの影響から脱却し、不安定なフォルムや表情豊かな線描、鮮烈な色彩などを特徴とする表現主義的な無二の画風を確立していました。本作はその画風が円熟期を迎えた頃の名品です。

よく見ると、本作の画面の切り取り方とポーズは、現代の“自撮り” 文化でよく目にするものだと気づきます。

レオポルト美術館の館長によると、レオポルト美術館へシーレ作品を鑑賞しに来る若者が増えているとのこと。自撮りで自己表現を行う彼らにとって、人間のアイデンティティやセクシュアリティ、精神性といった「自我」に関する思索を、肉体と精神をさらけ出しながら視覚的に実践していったシーレによる自画像から受けるインスピレーションは鮮烈なものなのかもしれません。そういった意味で、シーレは極めて現代性をもつ画家と言えそうです。

なお、《ほおずきの実のある自画像》と、本展には出展されていませんが、シーレの当時の恋人でありミューズであった女性をモデルにした《ヴァリーの肖像》(1912)が対となるよう制作されているため、ご存じない方はぜひ調べてみてください。

エゴン・シーレ《自分を見つめる人II(死と男)》、1911年、油彩、レオポルド美術館蔵

きょうだいの死産や早世が度重なり、14歳のときに敬愛する父が亡くなるなど、シーレにとって死は幼い頃から身近なものだった影響もあるのか、シーレは「全ては生きながらに死んでいる」という死生観をもっていました。「死」はシーレの画業において重要なテーマであり、不穏な死の気配が取り入れられた作品も多いです。

《自分を見つめる人II(死と男)》(1911)は、そんなシーレがまさに「死」を正面から表現した作品。シーレの自画像はしばしば2人の人物として描かれている場合があり、本作も瞑想にふけるように目を閉じた画家本人を、死神や幽霊のような風貌の存在が囲い込むように立っています。近づく死の運命に焦っているようにも、運命をすでに受け入れているかのようにも感じますが、下から伸びる第三者の手が不気味な印象を強めています。

展示解説によると、本作は分裂のイメージを用いた自己内省を試みているとのこと。《ほおずきの実のある自画像》からもわかるように、シーレの自画像はほとんど背景が描かれていません。クリムト的な装飾的画風の逆をいく、ひたすら内へ内へ、徹底した自己探求や自己内省にシーレの関心が向かっていることをうかがわせます。

エゴン・シーレ《母と子》1912年、油彩、レオポルド美術館蔵
エゴン・シーレ《母と二人の子ども Ⅱ》1915年、油彩、レオポルド美術館蔵

また、シーレは「母と子」というモチーフも繰り返し用いています。一般的には愛や平和をイメージする母子像ですが、シーレの《母と子》(1912)、《母と二人の子ども Ⅱ》(1915)はいずれも愛や平和というより、こちらも死や恐怖、悲しみ、失意といった不穏さを強調。表情づけの巧みさだけでなく、激しい筆致と陰鬱な色彩に、一歩引いてしまうようなヒリつく凄みを感じました。伝統的な母子像のイメージを打ち破るシーレらしい展開といえるでしょう。

エゴン・シーレ《赤い靴下留めをして横たわる女》1913年、鉛筆、グワッシュ、レオポルド美術館蔵

そのほか、見逃せないのがシーレの類まれなデッサン力と線の表現力を堪能できる裸婦像のドローイングです。

エゴン・シーレ《しゃがむ裸の少女》1914年、黒チョーク、グワッシュ、レオポルド美術館蔵

「あらゆる肉体から発せられる光」を描こうとし、また美的に昇華しない過激な「性」を描写していたシーレにとって、裸婦像も極めて重要なモチーフでした。伝統的な裸婦像といえば、立つか横たわるかのポーズで描かれますが、シーレ作品の裸婦の多くは膝を抱えたり、うずくまったり、極端にねじったりと、バラエティに富んでいるのが特徴。

彼女たちの肉体はときに苦悶が伝わってくるほど追い詰められた態勢になりますが、それがいかにも美しく、生々しく映るのが不思議です。シーレの描く線の確信性は、自らの肉体を限界まで屈曲させるなど、シーレ自身が行った容赦ない身体性の探求が支えていることは疑いようもありません。

床や背景を排除し、人物の周りの余白を残すことで空間性を否定している画面構成も面白いところです。

エゴン・シーレ《リボンをつけた横たわる少女》1918年、黒チョーク、レオポルド美術館蔵

特に目を引きつけられたのは後年のドローイング。黒チョークによる表現力豊かな輪郭線とわずかなグラデーションによってモデルを探求していますが、その迷いのない線とシルエットの実に美しいこと。《リボンをつけた横たわる少女》(1918)のように複雑な姿勢も最低限と言えるレベルの筆致でスケッチしているのもかかわらず、これだけで一つの芸術作品といえるような完成度の高さです。

シーレが学年最年少でアカデミーに特別入学できたという、その才能の説得力がありますので、ぜひチェックしてみてください。

エゴン・シーレ《装飾的な背景の前に置かれた様式化された花》1908年、油彩、金と銀の顔料、レオポルド美術館蔵

正方形のカンヴァスや背景に金や銀を用いる手法といった、クリムトの影響が如実に表れている《装飾的な背景の前に置かれた様式化された花》(1908)や、それより以前のアカデミー時代など、シーレが独自の画風を確立する前の初期の作品もいくつか紹介されていました。画家が羽化する道程と、画風を確立した後も強迫観念的な探求心で絶え間なく様式を変化させていった様子をじっくり追っていけます。

クリムトやモーザ―など、世紀末ウィーンの美術を彩った画家たち

グスタフ・クリムト《赤い背景の前のケープと帽子をかぶった婦人》1897/98年、油彩、クリムト財団蔵

先述のように、本展はシーレ作品をメインに据えつつ、シーレの師であるクリムトはもちろん、クリムトとともにウィーン分離派を創設し、風景画やグラフィックアートを得意としたコロマン・モーザー(1868-1918)、オーストリア表現主義の最初の画家に位置付けられ、近年再評価が進んでいるリヒャルト・ゲルストル(1883-1908)、シーレと同じくウィーンの表現主義を代表する巨匠オスカー・ココシュカ(1886-1980)といった、シーレと関連性のあるウィーンの画家たちの作品が集結。ウィーン美術の黄金時代の流れのなか、いかにしてシーレが傑出したのか、その背景が見えてくるでしょう。

アルビン・エッガー=リンツ《祈る少女 聖なる墓、断片Ⅱ》1900/01年、油彩、レオポルド美術館蔵
カール・モル《ハイリゲンシュタットの聖ミヒャエル教会》1902年、多色木版、レオポルド美術館蔵
リヒャルド・ゲルストル《田舎の二人》1908年、油彩、レオポルド美術館蔵
コロマン・モーザ―《キンセンカ》1909年、油彩、レオポルド美術館蔵
グスタフ・クリムト《シェーンブルン庭園風景》1916年、油彩、レオポルト美術館寄託(個人蔵)

シーレ作品がもつ現代性は、100年経った今も損なわれていません。

あらためて、本展は夭折の天才画家エゴン・シーレの作品が50点集結した大変貴重な機会です。ぜひ足を運んで、シーレの震えるように挑発的で繊細な感性に触れるとともに、世紀末ウィーンに満ちていた創造のエネルギーを体感してみてください。

「レオポルド美術館 エゴン・シーレ展 ウィーンが生んだ若き天才」概要

会期 2023年1月26日 (木) ~ 4月9日 (日) ※会期は変更になる場合があります。
会場 東京都美術館(東京・上野公園)
開室時間 9:30~17:30、金曜日は20:00まで (入室は閉室の30分前まで)
休室日 月曜日
観覧料 【日時指定予約制】
一般 2,200円、大学生・専門学校生 1,300円、65歳以上 1,500円、平日限定ペア割 3,600円

※詳細は公式サイトのチケットページでご確認ください
https://www.egonschiele2023.jp/ticket.html

主催 公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都美術館、朝日新聞社、フジテレビジョン
後援 オーストリア大使館、オーストリア文化フォーラム東京
お問い合わせ ハローダイヤル 050-5541-8600 (全日/9:00~20:00)
展覧会公式サイト https://www.egonschiele2023.jp

※記事の内容は取材日(2023/1/25)時点のものです。最新の情報は展覧会公式サイト等でご確認ください。

 

記事提供:ココシル上野


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人気漫画を原作としたマーダーミステリーを舞台化 舞台「LIAR GAME murder mystery」公演決定!

全日、全て異なるキャストで公演 3月7日(火)~12日(日) 飛行船シアターにて現地公演/リアルタイム配信

株式会社バンダイナムコアミューズメント 、株式会社ABCアニメーションは、舞台「LIAR GAME murder mystery(ライアーゲーム マーダーミステリー)」を2023年3月7日(火)~12日(日)に東京・上野の飛行船シアターにて公演します。

【公式サイト】https://bandainamco-am.co.jp/event/others/liargame_murdermystery/
チケットは2月4日(土)10時より「カンフェティ」にて、現地公演チケットと配信チケットを販売します。
配信チケットの詳細は後日公式サイトにて発表します。

【チケット販売サイト】http://confetti-web.com/murdermystery/

 

株式会社ABCアニメーションがシナリオ・設定などの制作、株式会社バンダイナムコアミューズメントがコンテンツの舞台版製作やパブリッシングを担当し、IPやメディアとのコラボレーションによってリアルエンターテインメントの可能性を広げます。

「マーダーミステリー」とは、複数の参加者が事前に与えられた設定や配役にのっとり、メンバー全員での議論や少人数の密談を繰り広げながら架空の殺人事件の真犯人を探すゲームです。プレイヤーとして楽しむこともさることながら、第三者目線で「マーダーミステリー」を楽しみ、本公演後の感想戦で出演者の感想を聞くことができる舞台コンテンツとしても人気を集めています。2021年12月3日(金)~5日(日)には舞台版『マーダー☆ミステリー〜探偵・斑目瑞男の事件簿〜』を、浅草花劇場(東京都台東区)にて上演。現地公演とあわせてリアルタイム配信も行いました。今回の公演では人気漫画「ライアーゲーム」を原作として更にパワーアップした舞台版マーダーミステリーを上演します。

舞台「LIAR GAME murder mystery」は、ライアーゲームトーナメント事務局、通称、LGT事務局を名乗る謎の組織からの招待状を受けた者たちが集結するところから話が始まります。原作でお馴染みの騙し合いのゲームを行う中、殺人事件が発覚。「マーダーミステリー」へと進行していきます。台本なしセリフなし、キャストにあらかじめ用意されているのは配役の設定のみ・・・という演出のなか、議論を重ね推理をし、時間内に真犯人を見つけ出すべくゲームを進行していきます。「マーダーミステリー」のプレイヤー同士の心理戦や騙し合いといった本来の面白さに加え、キャストの表情や演技力、アドリブをリアルタイムで感じることができ、プレイヤー視点とは異なる広い視野で「マーダーミステリー」を楽しむことができるのが魅力の一つです。「マーダーミステリー」の前に行われる「ライアーゲーム」でも、プレイヤー同士の騙し合いや勝つための作戦、騙しだまされた際のリアクションにも注目です。

 

一度真犯人を知ってしまうと再びプレイすることはできない「マーダーミステリー」の特性上、前回公演と同じく全日すべて異なるキャストで上演します。また、昼と夜の公演ではそれぞれシナリオも異なるため、キャストはそのままに異なる舞台をお楽しみいただけます。

設定は同じでもキャストの演技やアドリブ、進行内容によって、毎回異なる舞台を楽しむことができ、真犯人を解き明かすことができるかどうかもさることながら、時には想定を超えた意外なエンディングを迎えることも??内容やセリフ、結末も、すべて当日のキャストによって作り上げられる舞台をぜひお楽しみください。

©️甲斐谷忍/集英社・舞台「LIAR GAME murder mystery」製作委員会

 

■公演概要
公演名 舞台「LIAR GAME murder mystery」
期間  2023年3月7(火) ~ 12日(日) 全12公演(昼・夜)
会場  飛行船シアター(東京都台東区東上野)※オンライン同時配信あり
公式サイトURL https://bandainamco-am.co.jp/event/others/liargame_murdermystery/

 

【公演スケジュール】
3月 7日(火)13時開演/18時半開演
3月 8日(水)13時開演/18時半開演
3月 9日(木)13時開演/18時半開演
3月10日(金)13時開演/18時半開演
3月11日(土)13時開演/18時半開演
3月12日(日)12時開演/17時開演
※全公演生配信(アーカイブあり)を予定しています。配信に関する詳細は後日公式サイトよりお知らせします。

 

【公演チケット】(本公演+感想戦)
SS席(前方1列目~3列目) 13,500
S席  11,000円
A席  8,800円
受付期間:2月4日(土) 10時~
※先着順での販売です。あらかじめご了承ください。
※お一人さま2枚まで申込み可能です。

【配信チケット 】
配信チケット(本公演+感想戦)3,500円 
受付期間:3月4日(土) 10時~

【チケットのお申し込み先】
http://confetti-web.com/murdermystery/

 

【グッズラインアップ】
●公演パンフレット:3,500円(フルカラー48P予定)
●2L判ブロマイドセット:1,200円(3枚入り)
●L判ブロマイドセット:2,500円(10枚セット)
※一部のキャストを除きブロマイドを販売します。
●Blu-ray:12,000円
昼公演・夜公演を1セットにした2枚組のBlu-rayです。
火曜日〜日曜日まで各曜日で1セットずつ販売、計6種類のBlu-rayを販売します。

 

■ストーリー(昼公演)
<廃遊園地の人形館殺人事件>
ライアーゲームトーナメント事務局、
通称、LGT事務局を名乗る謎の組織からの招待状を受けた者たちが、潰れた遊園地の『人形館』へと集まった。
夢や希望といった、光に満ちた遊園地の面影は、もはやない。
ここで、これから行われるのは、悪意とぎまんに満ちた騙し合いなのだ……。
そして今、ライアーゲームトーナメント事務局の指図によって、再び一同が集結したのだった。

 

■キャラクター(昼公演)
・園長    社長の実子。若くして園長を任されたが放漫経営で遊園地を潰した張本人。
・経理    遊園地の経理を担当。中間管理職として気苦労が絶えなかったマジメなタイプ。
・設備    遊園地の安全点検から蛍光灯の交換まで細かいところまで几帳面な気遣いの人。
・受付    遊園地のアトラクション受付のまとめ役。弾ける笑顔で好奇心旺盛な行動派。
・着ぐるみ  着ぐるみの”中の人“を担当するが、”中の人”などいないが信条。ユニークでムードメーカー。
・ダンサー  パレードダンサーを担当。奔放で夢見がちミステリアスで、夢みたいなことばかり言っている。
・人形師   遊園地からの依頼で、多くの人形や着ぐるみを制作してきた下請け業者。一途でひたむき。

・社長(被害者)  グループ会社の帝王。冷酷でいくつもの事業を見捨てて、多くの人に恨まれた。

 

■ストーリー(夜公演)
<ある孤島の洋館殺人事件>
目隠しされ、船に乗せられた先にあったのは、リゾート開発に失敗した絶海の孤島だった。
孤島に集められた者たちは皆この島に縁故のある者たちだ。
かつて、一族の家長が亡くなった時、一族の財産であったこの島を売り払ったのだ。
リゾート開発という華々しい未来図にのぼせて。のしかかる莫大な相続税にせまられて。一族の未来を想って。
皆が皆、それぞれの思いで、この島と決別したのだ。
そして今、ライアーゲームトーナメント事務局の指図によって、再び一族が集結したのだった。

 

■キャラクター(夜公演)
・長男/長女  若くして先代からリゾート開発を引き継いだが経営の才能がなく大失敗。すべてを失った。
・養子  控えめで世渡り上手。一族の誰にも恨まれずにやってきたつもり。もめ事は仲裁するタイプ。
・従弟/従妹 一族の財力で学業を積むも、一族の権力からは距離を置いてきた自由人。
・金庫番 一族の土地・財産などを管理してきた。失敗したリゾート計画には反対の立場だった。
・執事/メイド  洋館の雑務をこなし、一族から可愛がられていた。幸も不幸も、あるがままに受け入れてきた。
・弁護人  一族の顧問弁護士で、管財人として一族の資産の整理してきた。法がすべて、法こそ秩序。
・庭師 庭や館内の雑務をこなしてきた。役目を果たせばきっと報われると信じている。気は優しくて力持ち。

・先代当主(死去) リゾート開発事業で財を築き、皆から尊敬されていた。
長男/長女に事業を引き継ぐと持病で死んでしまった。
・次男(音信不通) 幼少期から家族に甘やかされてきた。お調子者無責任で能天気だが、行動力はある。

 

■出演キャスト(五十音順)

【3月7日(火)出演者(五十音順)】
礒部花凜/小泉萌香/西葉瑞希/佐藤日向/船戸ゆり絵/星守紗凪/吉宮瑠織

【3月8日(水)出演者(五十音順)】
天木じゅん/大和田南那/空野青空(でんぱ組.inc/ARCANA PROJECT)/中川美音/水野絵梨奈 /Leola/他

【3月9日(木)出演者(五十音順)】
石井陽菜/石飛恵里花/河内美里/白石まゆみ/他

【3月10日(金)出演者(五十音順)】
蒼井翔太/神尾晋一郎/少年T/髙木俊/他

【3月11日(土)出演者(五十音順)】
SKE48 チームKⅡ:青木莉樺/岡本彩夏/日高優月
SKE48 チームE:鎌田菜月/谷真理佳/林美澪
SKE48 11期研究生:原優寧

【3月12日(日)出演者(五十音順)】
明坂聡美/谷口賢志/富田翔/松崎史也/吉本実憂/他

【進行役】
青木たつや(全ステージ出演)

 

■スタッフ
原作:甲斐谷忍「LIAR GAME」(集英社 ヤングジャンプコミックス刊)
ゲーム企画・監修:眞形隆之
脚本:眞形隆之/しゃみずい
演出:扇田賢(ボブジャックシアター)
舞台監督:伊藤清一(イトウ企画)
演出部:尾花宏行
美術:石倉研史郎(TEN WORKS)
照明:樋口かほる(六工房)
照明オペレーター:秋谷優(六工房)
音響:長柄篤弘(ステージオフィス)/早川迪(ステージオフィス)/出口史歩(RESON)
映像製作:坂内友樹(ビッグバンバン)/Ume(ビッグバンバン)/吉田絢音(ビッグバンバン)
衣裳:沼崎和真(Revelten)
衣裳進行:田所莉奈/伊藤優理(GOSHIKI)
ヘアメイク:工藤聡美/黒田はるな
配信:murasaki(AgGraph)/鹿島有乃
映像収録:渡邉和弘 /安田慎 /田中亮平
スチール:小池博
宣伝美術:藤尾勘太郎
票券:カンフェティ
楽屋スタッフ:小野智美
当日運営:田中翔太/足立裕里/庭山美保/上城友幸/川崎歩(歩夢企画)/吉田爽香
制作進行・物販進行:秋山良介(De-LIGHT)
制作統括:林修司(ピウス)
キャスティング:北村かずや(ビーオネスト)/林修司(ピウス)/
夏樹弘(De-LIGHT)/篠原功(演劇集団SINK)
アソシエイトプロデューサー:西元魁(バンダイナムコアミューズメント)/龍川拓美(ABCアニメーション)
プロデューサー:大野聡(バンダイナムコアミューズメント)/安井一成(ABCアニメーション)
製作:ピウス
製作協力:De-LIGHT
企画・主催:バンダイナムコアミューズメント/ABCアニメーション

©甲斐谷忍/集英社・舞台「LIAR GAME murder mystery」製作委員会

 

【ライアーゲームとは?】
甲斐谷忍原作、週刊ヤングジャンプ誌上で2005年~2015年まで連載。
「ライアーゲーム」という名のギャンブルの賞金をめぐって登場人物たちの緊張感溢れる心理戦が描かれる。
テレビドラマは2007年にフジテレビで放映。その後映画化。リメイク版が韓国でも2014年に放映された。
現在まで続く「デスゲーム」ブームを作った作品のひとつ。
2011年にコミックス発行部数500万部突破 劇場版第一弾興行収入23億円 劇場版第二弾興行収入21億円

 

【マーダーミステリーとは?】
殺人などの事件が起きたシナリオが用意され、参加者は物語の登場人物となって犯人を探し出す(犯人役の人は逃げ切る)ことを目的として会話をしながらゲームを進めます。
それぞれの役柄のバックボーンや事件当日の行動などがシナリオとして用意されており、まさに自分自身が推理小説の世界に入ったような体験ができます。各シナリオは一度体験するとすべての謎が解けてしまうので一生に一度しかプレイできないことも特徴です。

 

※本記事の情報は、発表日現在のものです。発表後予告なしに内容が変更されることがあります。あらかじめご了承ください。
※画像はイメージです。
©Bandai Namco Amusement Inc.

 

記事提供:ココシル上野


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開園150年の上野公園で、誰でも楽しめる新しい音楽のパブリックアートを!!【 東京・春・音楽祭2023 】

【東京・春・音楽祭実行委員会】

2023年に開園150年を迎える上野公園を舞台に、日本初の音楽のパブリックアート「Ellen Reid SOUNDWALK featuring Kronos Quartet and 50 for the Future(エレン・リード サウンドウォーク featuring クロノス・クァルテット & 50 for the Future)」を実施するため、クラウドファンディングに挑戦することと致しました。

Ellen Reid SOUNDWALKは、GPS(現在位置情報)を利用し、自然の中で音楽を楽しむパブリックアート作品として、アメリカ出身、ピューリッツァー賞受賞歴もある若き作曲家、サウンドアーティストのエレン・リードによってコロナ禍に立案・製作され、欧米を中心に数々の著名な公園(ニューヨーク・セントラルパーク、ロンドン・リージェンツ・パーク&プリムローズ・ヒル等)で実施されています。ヘッドフォンやイヤフォンから聴こえてくる音楽が、それぞれが歩く場所や経路によって自然に移り変わります。五感をフルに使った新しい音楽との出会いが待っています。

 

<クラウドファンディング詳細>
【タイトル】上野公園でSOUNDWALKを実現したい!
【URL】https://readyfor.jp/projects/SOUNDWALK
【目標金額】150万円
【募集期間】2022年12月6日[火]11時~2023年1月31日[火]23時 56日間
【資金使途】SOUNDWALKで実働するアーティストの創作活動費、渡航滞在費、広告宣伝費、またクラウドファンディング手数料等雑費に使わせていただきます。
【形式】All or Nothing形式 ※All or Nothing形式は、期間内に集まった支援総額が目標金額に到達した場合にのみ、実行者が支援金を受け取れる仕組みです。
【リターン】5,000円~1,000,000円まで計12コース。
「WEBサイトにお名前掲載」、「クロノス・クァルテットサイン付CD」、「参加アーティストによる限定曲目解説動画」、「クロノス・クァルテット未公開演奏映像」など

 

「Ellen Reid SOUNDWALK featuring Kronos Quartet and 50 for the Future」
クラウドファンディングが成立した際には、日本初上陸のSOUNDWALKとして、東京・春・音楽祭が開催される上野公園を舞台に、エレン・リードの監修のもと、国内外で絶大な人気を誇り2023年には結成50周年を迎えるクロノス・クァルテットが手がける「50 for the Future」の作品を中心に製作。スマートフォン用の無料の専用アプリ内に日本語の上野公園用ページも用意され、多くの方に上野公園で新たな音楽散歩をお楽しみいただけるようになります。

 

<実施予定概要>

【期間】2023年3月~約1年間 ※調整中
【会場】上野恩賜公園
【アーティスト】エレン・リード、クロノス・クァルテット /他
【プログラム】SOUNDWALKアンサンブルによる作品、クロノス・クァルテット「50 for the Future」より

▼東京・春・音楽祭2023 WEBサイト
「Ellen Reid SOUNDWALK featuring Kronos Quartet and 50 for the Future」ページ
https://www.tokyo-harusai.com/sound-walk/

 

アーティスト紹介
●エレン・リード(作曲家・サウンドアーティスト)

同世代で最も革新的なアーティストの一人であり、オペラ、サウンドデザイン、映画音楽、アンサンブル、合唱等、幅広い作品を手がける作曲家、サウンドアーティストである。オペラ《プリズム》は、2019年のピューリッツァー賞・音楽部門を受賞した。
作曲家のミッシー・マッツォーリとともに、ルーナ・コンポジション・ラボを共同設立。これは若い女性やノンバイナリー、ジェンダー規範に抗する作曲家のための指導プログラムである。19年からは、ロサンゼルス室内管弦楽団のクリエイティブ・アドバイザー及びコンポーザー・イン・レジデンスを務めている。
コロンビア大学で学士(美術)、カリフォルニア芸術大学で修士を取得。世界各地の音楽からインスピレーションを受けており、お気に入りの2都市、ロサンゼルスとニューヨークで暮らす。作品はデッカ・ゴールドからリリースされている。ロサンゼルス・タイムズ紙いわく、「一言でいえば、リード到来」。
https://www.tokyo-harusai.com/artist_profile/ellen-reid/

●クロノス・クァルテット(弦楽四重奏)

サンフランシスコのクロノス・クァルテット――デイヴィッド・ハリントン(ヴァイオリン)、ジョン・シャーバ(ヴァイオリン)、ハンク・ダット(ヴィオラ)、サニー・ヤン(チェロ)――は、50年近くにわたり、弦楽四重奏で何が体験できるかを考え続けてきた。現代において最も知名度と影響力を持つアンサンブルの一つとして、世界中で数千回に及ぶコンサートを行い、70以上の録音をリリースし、世界で最も洗練された多くの作曲家や演奏家と様々なジャンルを跨いだコラボレーションをしている。また、非営利団体「クロノス・パーフォーミング・アーツ・アソシエーション」(KPAA)を通じて、弦楽四重奏のために1000以上の作品や編曲を委嘱しており、ポーラー音楽賞、エイヴリー・フィッシャー賞、エディソン・クラシック作品賞等、40以上の賞を受賞している。
https://www.tokyo-harusai.com/artist_profile/kronos-quartet/

●50 for the Future 

サンフランシスコを拠点とするクロノス・クァルテットの非営利公共会社クロノス・パーフォーミング・アーツ・アソシエイション(KPAA)が立ち上げた「50 for the Future」は、弦楽四重奏の委嘱、演奏、教育、及びレガシー・プロジェクトで、前例のない規模と潜在的な影響力を持つものです。
クロノス・クァルテットは、45年以上にわたる世界中の著名な作曲家や若手作曲家とのコラボレーションをもとに、アマチュアやプロの弦楽四重奏団が21世紀のレパートリーを演奏するために必要なスキルを身につけられるよう、50の作品からなるライブラリーを委嘱しています。
全ての作品はそれぞれ芸術的に完成されたもので、クロノス・クァルテットによって6回の公演シーズン(2015/2016から2020/2021)にわたって初演され、「50 for the Future」全体がクロノス自身のレパートリーの中核となる予定です。 各作品のスコアとパート譜のデジタル版、録音、その他の教育的資料は、ウェブサイトから無料でアクセスできます。
https://50ftf.kronosquartet.org/
 

「東京・春・音楽祭2023」 開催概要
期間:2023年3月18日[土]~4月16日[日]
主催:東京・春・音楽祭実行委員会
共催:公益財団法人東京都歴史文化財団 東京文化会館
会場:東京文化会館、東京藝術大学奏楽堂(大学構内)、旧東京音楽学校奏楽堂、国立科学博物館、東京国立博物館、東京都美術館、国立西洋美術館、上野の森美術館 /他
後援:文化庁(※申請中)、東京都(※申請予定)、台東区
協力:一般社団法人 上野観光連盟、上野の山文化ゾーン連絡協議会
助成:公益社団法人企業メセナ協議会 2021 芸術・文化による社会創造ファンド
URL: https://www.tokyo-harusai.com

 

 

記事提供:ココシル上野


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