【報道発表会レポ】特別展「国宝 東京国立博物館のすべて」 所蔵する国宝89件をすべて公開するメモリアルな展覧会!

東京国立博物館
報道発表会 解説スライドより

東京・上野にある東京国立博物館(東博)が今年で創立150周年を迎えたのを記念して、2022年10月18日~12月11日、同館が所蔵する国宝89件をすべて公開する東京国立博物館開館150年記念 特別展「国宝 東京国立博物館のすべて」が開催されます。

5月20日に報道発表会が行われ、東京国立博物館 列品管理課登録室長の佐藤寛介さんが特別展の見どころを解説してくれましたので、詳しくご紹介します!

特別展「国宝 東京国立博物館のすべて」の見どころ

1.史上初!所蔵する国宝89件をすべて公開!
2.国宝刀剣19件が集結!「国宝刀剣の間」出現!
3.明治から令和まで、東博150年の歩みを追体験!

報道発表会

史上初! 所蔵する国宝89件をすべて公開!

明治5年(1872年)の発足以来、日本で一番長い歴史をもつ博物館として、日本の文化を未来や世界へ伝えていく役割を果たしてきた東京国立博物館。特別展「国宝 東京国立博物館のすべて」は、そんな東博の全貌を紹介するべく、約12万件という膨大な所蔵品の中から国宝89件すべてを含む名品と、明治から令和にいたる150年の歩みを物語る関連資料を展示するものです。

「第1部 東京国立博物館の国宝」、「第2部 東京国立博物館の150年の歩み」の2部構成となっている本展。

「第1部 東京国立博物館の国宝」はその名前のとおり、日本最大の国宝コレクションを誇っている東博が史上初、89件の国宝を一つの展覧会で一挙公開(※)するというもの。メモリアルイヤーにふさわしい気合の入りぶりです!

(※)会期中、一部作品は展示替えが行われます。1度訪れるだけでは全件を鑑賞できないのでご注意ください。

配布されたプレスリリース資料より。大判の用紙に展示される89件の国宝がズラリと並び壮観! 本来なら1件1件が展覧会の目玉になるような作品です。
配布された国宝一覧(1)右側の丸印が展示期間。絵画系と書跡系は前期(10月18日〜30日、11月1日〜13日)と後期(11月15日〜27日、11月29日〜12月11日)でガラッと入れ替わるようです。
配布された国宝一覧(2)錚々たる顔ぶれに震えが走ります。

国宝一覧は公式サイトでも確認できます⇒https://tohaku150th.jp/

ちなみに、89件は現在国宝に指定されている美術工芸品902件のうちの約1割に当たる数。本展に足を運ぶだけで国宝の10分の1と出会えてしまうなんてすごすぎます……!

佐藤さんたち東博の研究員の方々も、国宝89件すべてを勢ぞろいさせた光景は今まで見たことがないそう。その理由について次のように話します。

「私たちは通常、文化財の保存と公開の両立を図るために展示期間を制限して、1年~数年間のサイクルで、分野ごとに数点ずつ計画的に公開しています。一度にまとめて公開するためには、数年前から数年後までを見越して展示計画を調整する必要がありました。これが一番大変なことでしたが、各分野の研究員の理解と協力を得まして実現できることになりました。

本当に奇跡的な、創立150年だからできたこと。もしかしたら次は創立200年、50年後になるかもしれません」

ふむふむ……。つまり本展は東博の歴史を動かす一大イベントというわけですね。佐藤さんの言うとおり、一生に一度のチャンスとなるかもしれません。今から期待が高まります!

報道発表会 解説スライドより

国宝89件の内訳は、絵画21件、書跡14件、東洋絵画4件、東洋書跡10件、法隆寺献納宝物11件、考古6件、漆工4件、刀剣19件

佐藤さんは「それぞれの作品に最適な展示デザインや照明を追求し、理想的な展示空間と最高の環境体験を提供したいと考えています」と開催への意気込みを語りました。

報道発表会 解説スライドより
報道発表会 解説スライドより
報道発表会 解説スライドより
報道発表会 解説スライドより

各分野の国宝の紹介の中で、特に目を引いたのは21件と一番数の多い絵画の分野です。

報道発表会 解説スライドより

《孔雀明王像》のような平安仏画から、雪舟等楊《秋冬山水図》のような室町水墨画もあれば、狩野永徳《檜図屛風》のような桃山絵画、渡辺崋山《鷹見泉石像》のような江戸肖像画まで……。誰しも見覚えがあるだろう、まさに日本美術の教科書のような豪華なラインナップになっています。

その中でも佐藤さんが注目してほしいというのが《平治物語絵巻 六波羅行幸巻》。

報道発表会 解説スライドより

「鎌倉時代に描かれた現存する最古の合戦絵巻で、武士たちが身につけた甲冑や刀剣のリアルな描写が見どころです。本展では展示期間が2週間と限られていますが、そのぶん全長9m50cmにおよぶすべての場面を広げてご覧いただくようにします」とのこと。

普段の展示ではスペースの都合で一部しか見られない作品も、メモリアルイヤーだからこその大サービスで展示してくれるようですね。

国宝刀剣19件が集結!「国宝刀剣の間」出現!

報道発表会 解説スライドより
報道発表会 解説スライドより

東博所蔵の国宝の刀剣は19件と絵画に次いで数が多く、一つの博物館の所蔵数としては日本最多とのこと。今回はその19件を「国宝刀剣の間」と名付けた展示室に集め、全期間(うれしい!)を通じて展示するそうです。

「ちなみに、国宝刀剣19件のうち、刀剣をテーマにした某ゲームで男性キャラクターになっています6振の国宝刀剣も勢ぞろいして、ファンの皆様をお待ちしています」と佐藤さん。

某ゲームとはもちろん人気ゲーム『刀剣乱舞』のことですね。三日月宗近、大包平、厚藤四郎、亀甲貞宗、大般若長光、小龍景光……ファンの方々垂涎の空間になりそうです。

報道発表会 解説スライドより

佐藤さんは刀剣や甲冑を中心とする武器・武具を専門に研究されているということで、刀剣については特に熱を込めて魅力を語ってくれました。

「《太刀 銘 三条(名物 三日月宗近)》と《太刀 銘 安綱(名物 童子切安綱)》、この2つは日本刀成立初期の名刀として有名なのですが、実は刀身の刃の部分の寸法がまったく同じなんです」

報道発表会 解説スライドより

「刃の長さが80cm、反りが2.7cmあります。しかしながら刀身のシルエットはずいぶん違うことにお気づきになられたでしょうか。

三日月宗近は刀身が細身で手元の部分が強く沿って先が細くなっています。全体的に優美な印象を与えるわけですね。一方で童子切安綱は刀身が全体的にカーブを描いていて、がっしりとした力強さがある。これは京の都を拠点とした宗近に対し、伯耆の国(現在の鳥取県)を拠点とした安綱という作者の居住地の地域文化が刀の姿に反映されているのではないかと思います」

なかなか写真や言葉では伝えきれない違いも、「国宝刀剣の間」で実物を見比べることで感覚的に理解できるといいます。

「この19件の展示にあたり、刀剣の見どころである刃紋や地金をより美しくご覧いただくためにケースの形状や照明にもこだわっています。時代や地域のによる違いを見比べたり、一振りずつじっくり鑑賞したり、それぞれの刀剣がもつ物語に思いを馳せたり。この国宝刀剣の間で日本刀の魅力にどっぷり没入していただければ」

明治から令和まで、東博150年の歩みを追体験!

「第2部 東京国立博物館の150年」では、日本の博物館の歴史ともいえる東博の150年を、三つの時代に分けて各時代の収蔵品や関連資料を紹介。明治〜令和までの歩みを「追体験」できるような展示構成になる予定とのこと。

報道発表会 解説スライドより

東博は明治5年(1872年)に旧湯島聖堂大成殿で開催された博覧会をきっかけに誕生した「文部省博物館」をルーツとし、10年後の明治15年(1882年)に上野に拠点を移して活動を本格化させたという歴史があります。

「第1章 博物館の誕生」では、初期の東博のコレクションとともに、東博の始まりである湯島聖堂博覧会で展示された実際の作品の一部を紹介。博覧会で最も人気を集めた名古屋城の金のシャチホコの実物大のレプリカも展示して、当時の雰囲気を再現するそうです。

報道発表会 解説スライドより

明治19年(1886年)に博物館は旧宮内省の所管になり、3年後に「帝国博物館」、さらに11年後に「東京帝室博物館」と名前を変えます。

もともと博物館に植物園、動物園、図書館などの機能を備えた総合博物館を目指していた同館ですが、次第に国家の文化的象徴、皇室の美の伝統と位置付けられ、歴史・美術の博物館としての性格を強めていったそうです。

「第2章 皇室と博物館」では、皇室とのゆかりを物語る作品や、「帝国博物館」「帝室博物館」時代の東博コレクションを紹介します。特にユニークなのが、「帝室博物館」時代に天産(自然史)資料として展示されていたキリンの剥製標本。

報道発表会 解説スライドより

このキリンは、明治40年(1907年)に日本に生きたままやって来た初めてのキリンで、上野動物園の人気者だったとか。大正12年(1923年)の関東大震災のあとお隣にある国立科学博物館の所蔵品になりました。本展で約100年ぶりに同館に里帰りする形です。

報道発表会 解説スライドより

約100年前の展示ケースなども活用し、当時のレトロな展示空間を再現するということで、作品以外にも注目すべき点がたくさんありそうですね。

「第3章 新たな博物館へ」では、終戦後、国民のための開かれた博物館として新たな一歩を踏み出た東博が、時代の変化や社会の要請に応じて取り組んできたさまざまな博物館活動を代表的な戦後のコレクションとともに紹介。

報道発表会 解説スライドより
報道発表会 解説スライドより

展示の最後には「令和の東博コレクション」として、昨年あらたに東博の所蔵品となった《金剛力士立像》が初公開されます。数少ない平安時代末期、12世紀の金剛力士立像で、かつて滋賀県の寺院に安置されていたもの。2体とも高さは2m80cm近くあり、東博の所蔵する仏像の中では最大のものだとか。たくましい肉体と怒りの表情が見どころです。

最後に、佐藤さんは次のようにメッセージを寄せました。

「このように本展は、89件の国宝と150年の歴史を通して東博のすべてを紹介する、創立150周年だからこそ実現したメモリアルイヤーにふさわしい展覧会です。東博の国宝と歴史をまとめて見ることができるので、東博が初めての方にはデビューするのにもってこいですし、これまで何度もお越しいただいているリピーター方にとっても新発見や再発見がきっとあると思います。

展覧会の具体的な準備はこれからが本番。より充実した内容になるよう、そして展覧会ポスターのように祝祭間の溢れた展覧会になるよう努めてまいります。どうぞご期待ください!」

展覧会ポスター

国宝89件だけでなく、重要文化財24件を含む計150件と、150周年にちなんだ盛りだくさんの内容で来場者を迎える特別展「国宝 東京国立博物館のすべて」は2022年10月18日から開幕予定。楽しみに待ちましょう!

東京国立博物館創立150年記念 特別展「国宝 東京国立博物館のすべて」開催概要

会期 2022年10月18日(火)~12月11日(日)
会場 東京国立博物館 平成館2階 特別展示室
主催 東京国立博物館、毎日新聞社、NHK、NHKプロモーション、独立行政法人日本芸術文化振興会、文化庁
お問い合わせ 050-5541-8600(ハローダイヤル)
公式サイト https://tohaku150th.jp/
注意事項 ※会期中、一部作品の展示替えが行われます。
※開館時間、休館日、入館方法、観覧料金、その他最新情報は公式サイトでご確認ください。
※展示作品、会期、展示期間等については今後の諸事情により変更となる場合があります。

※記事の内容は取材日(2022/5/20)時点のものです。最新の情報は公式サイト等でご確認ください。

 

記事提供:ココシル上野

 


その他の展覧会情報を見る

【鑑賞レポ】上野にアートの動物園が登場!企画展「Art Jungle〜藝大動物園〜」が藝大アートプラザで開催中 (~6月26日まで)

東條 明子《春を待つ》樟に彩色

東京藝術大学 上野キャンパスにあるギャラリーショップ「藝大アートプラザ」では、50名を超える藝大関連アーティストによる企画展「Art Jungle〜藝大動物園〜」が開催されています。入場無料、会期は2022年4月23日(土)~6月26日(日)まで。

愛らしかったりちょっと不気味だったりと、さまざまな魅力をもった生き物たちに出会える本展。実際に鑑賞してきましたので、出展作品の一部をご紹介しますね。

長久保 華子 (前)《ふくら文鳥》ヒノキ、漆、乾漆粉、金粉、顔料/木彫、彩色、蒔絵  (奥)《碧色の瞳》ヒノキ、漆、乾漆粉、顔料/木彫、彩色
大崎 風実《Sink》乾漆/漆、麻布
中莖 あかり (左)《frog》、(右)《frog》セラミック
岩崎 拓也 (左)《秘密の花園》、(右)《秘密の花園》キャンパスに油彩

上野にアートの動物園が出現!「Art Jungle〜藝大動物園〜」

JR上野駅から徒歩10分ほどの場所にある藝大アートプラザ。ここでは、東京藝術大学の学生、卒業生、教員など、藝大に関わるアーティストたちによるさまざまなジャンルの作品を展示・販売しています。

藝大アートプラザ

家に飾りやすいサイズ感の絵画や立体作品が多く、価格帯は数万~数十万が中心ですが、なかには日常使いできる数千円のアクセサリーやうつわなども。誰でも気軽に「アートを買う」という体験ができるスポットです。

企画展「Art Jungle〜藝大動物園〜」展示風景

4月23日から始まった企画展「Art Jungle〜藝大動物園〜」は、「藝大アートプラザをアートのジャングルに!」を合言葉に、57名のアーティストが日本画、油画、彫刻、工芸などで思い思いに創造した動植物を展示。上野動物園のすぐそばで、「アートでできたもうひとつの動物園=藝大動物園」を出現させています。

お持ち帰りしたくなる!かわいい生き物たち

本展ではたくさんのかわいい生き物たちと出会えます。

東條 明子《春を待つ》樟に彩色

あらあらあら……! と愛らしさに思わずにっこりしてしまった東條 明子さんの《春を待つ》という作品。筆者のイチオシです。

遠目には布か粘土かと予想していましたが木彫りで驚きました。毛並みのふわふわ感が彫り跡で見事に表現されていますね。木彫りならではの温もりを感じます。下腹部のたゆんとしたフォルムからちょこっとのぞく爪先がたまりません。

東條 明子《春を待つ》樟に彩色

360度どの角度から見てもかわいいのですが、実は左手に毛布と人形(?)を持っているのに気づいて最高にハッピーな気分に。あまりにキュートすぎる……。

そっと吹く春の風のように身体を包み込んでいる。孤独はいつもそこにあるもの。待ち続ける子供は凛として愛おしい。(東條 明子)

本展の作品には上記のようなアーティストコメントがついているものが多く、制作意図や作品に込めた想いを知ることができます。このペンギンちゃんは親を待っているのでしょうか? 意図したものなのか、会場でこの子がわりとポツンとしたところに展示されていたこともあり、思わずギュッと抱きしめてあげたくなりました。

小林 佐和子《はねうさぎ》陶芸、磁器、練込

小林 佐和子さんの《はねうさぎ》のように、架空の生き物も多く登場しています。キリッと上を向いた眉毛、ツンとした口元が小生意気な感じでこちらも本当にかわいい。足元にいくにつれてほっそりしていく体型バランスが、胸毛のモフモフ感を強調していていいですね。

「はねうさぎ」と「はねひつじ」は一緒に暮らしたいと思う架空動物です。哺乳類ですが羽毛を纏い、飛べませんが跳躍します。胸に赤いハートの羽毛を蓄え、人に懐き甘い匂いがします。体温は人より高く寒い日に重宝します。冬は羽毛を広げて温まるので丸く、夏はスリムになります(小林佐和子)

アーティストの愛がたっぷり感じられるコメントを読むと、途端にリアリティーが増して思わずだっこしてみたくなりました。この子が実在したら家族に迎える人が大勢いそう。

内田 亘《眠る鳥》張り子、和紙、アクリル
内田 亘《食うぞ》張り子、和紙、アクリル

内田 亘さんの《眠る鳥》と《食うぞ》はゆるっとしたフォルムと脱力した表情が魅力的。眺めているこちらもホッと肩の力が抜けていく、ぜひ枕元に飾りたい動物たちです。筆者は特に《眠る鳥》の形の“サツマイモ感”が気に入りました。

杉山 佳 (右)《ツキノワグマ》麻紙、岩絵具、膠、クレヨン など

杉山 佳さんはツキノワグマやフクロウの特徴をクレヨンで大胆に抜き出して、シンプルにデフォルメしています。塗り部分には岩絵具が使われているそう。かなり厚塗りしているのか、ふっくらと存在感のあるザラザラマットな質感がシンプルなデザインに個性をつけています。洋室にも和室にもマッチしそうなすてきな作風でした。

森 聖華《ダラダラ自然釉フグ貯金箱》陶土、石膏型張り込み、穴窯焼成

森 聖華さんの《ダラダラ自然釉フグ貯金箱》はこの見た目で貯金箱という意外性がグッド。ぷっくりつやつやしたお腹に癒されます。自然釉ならではの不規則な模様が味わい深く、ふとした瞬間に手に取って眺めたくなる風情がありました。

松田 剣《シリグロカエル》陶土、手びねり

松田 剣さんの《シリグロカエル》は手のひらサイズの作品で、だ円形の平べったい体からちんまりと伸びる足と、獲物を観察しているのかただほんやりしているだけなのか、なんともいえない瞳がかわいいです。よく見ると背中の模様が細かい! 光沢を感じるグレーの色使いが両生類っぽさを演出していますね。ぬるりぬるりと移動しそう。

ねがみ くみこさんの独特すぎる世界観から目が離せない

ねがみ くみこ《スーパーカー》石粉粘土

本展でひときわ異彩を放っていたのは、ねがみ くみこさんの作品。特に《スーパーカー》はインパクトがすごかったです。動物園のかわいい動物たちにキャッキャしていたところに突然変質者が現れました。「ど、どういうこと!?」と困惑しながらアーティストコメントを読むと、

おまるごと移動ができたら無敵なのではというコンセプトの元に制作をしました。 一生のうちでトイレで過ごす時間は3年という話もあります。人生の大問題がこれで解決。おまるの定番はアヒルさんですが、ちょっとだらしのない顔をしたバクのおまるに私は乗りたい。(ねがみ くみこ)

とのことでした。なるほど……(なるほど?)

おまるでスッキリしている人間の上半身も脱がせていることで、より一層の開放感を感じさせてくれます。

おまるのバクはだらしないというかキマッてる感じですね。人間のほうも形こそ微笑んでいるようですが、ちょっと喜怒哀楽、どの感情なのかわからない謎めいた表情を浮かべていて……。ねがみさんのその他の作品と合わせて鑑賞すると、見る人によっていかようにも受け取れる、絶妙な表情づくりが上手な方なのだなとわかりました。

ねがみ くみこ《革張り風ワンコ》テラコッタ
ねがみ くみこ (左)《クーズーぶらん》、(右)《シカぶらん》陶

《革張り風ワンコ》は今にもしゃべりだしそうなくらい生き生きとしています。間抜けな表情にも見えますが、油断するとパクリといかれそうな信用ならなさも感じました。

壁に展示してあった《クーズーぶらん》と《シカぶらん》は、お金持ちの家にありがち(?)なシカの頭部の剥製を、前足を出す形にアレンジして作ったのかしらと想像していました。しかし、アーティストコメントを読むと、どうやら元から2本足の動物のよう。知ると途端に未知との遭遇感、不気味さを笑顔のなかに見出してしまいます。センスの塊だ……。すっかりねがみさんのファンになってしまいました。

時間を忘れて引き込まれる美麗な作品も

須澤 芽生 (左)《Brilliance》、(右)《Glimmer》絹、膠、墨、岩絵具、箔、泥

パステル調の淡い色で描かれた須澤 芽生さんの《Brilliance》と《Glimmer》は本展でひときわ美麗で華やか。

江戸時代の絵師・円山応挙の孔雀図の制作技法を研究したきたという須澤 芽生さん。自然界の装飾美を極めたような孔雀の美しさを、日本画の伝統的な素材を使用してなんとか表現しようとした応挙の姿勢を追体験しながら、自由に孔雀や鳥の優美な姿を表現したそう。非現実的な色彩が孔雀のもつ幻想性をさらに高めています。

須澤 芽生《Glimmer》絹、膠、墨、岩絵具、箔、泥

一般的な日本画は格調高いというか、親しみづらさを感じることが多いのですが、こちらはふんわりと見る者を慰めるような温もりがあり、日本画のイメージを覆された作品。自分の羽毛にくちばしを埋める姿が愛らしく、インコへの愛情に満ちた眼差しを感じます。

岩崎 広大《かつて風景の一部だったものに、風景をプリントする。-Idea blanchardii-(1°20’38.4″N 124°51’14.4″E)WGS84-》昆虫標本、UVプリント

岩崎 広大さんの、昆虫の身体に昆虫のいた土地の風景写真をプリントするという斬新でおしゃれな作品も目を引きます。昆虫標本にもプリントできるという事実にまず驚き!

個体はインドネシアで採られたものだとか。風景がうっすらとぼやけているのが、この蝶が見ている風景を羽根ごしに見ているような感覚になる効果を生んでいます。旅先でこんなにすてきな作品を見かけたら反射的に買ってしまいそう。時間を忘れて見入りました。


ご紹介したのはほんの一部。会場では、他にも魅力的な生き物たちがまだまだたくさんいます! 撮影可能、入場無料ですので、上野動物園を訪れた際は、ぜひ藝大アートプラザのもう一つの動物園にも足を運んでみてはいかがでしょうか。

企画展「Art Jungle〜藝大動物園〜」概要

会期 2022年4月23日(土)~ 2022年6月26日(日)
会場 藝大アートプラザ
東京都台東区上野公園12ー8 東京藝術大学美術学部構内
開館時間 11:00-18:00
休館日 月曜日(祝日は営業、翌火曜休業)
観覧料 無料
URL 公式Webサイト:https://artplaza.geidai.ac.jp
公式Twitter:https://twitter.com/artplaza_geidai
お問い合わせ https://form.id.shogakukan.co.jp/forms/artplaza-geidai
注意事項 ※新型コロナウイルスの状況により、営業日時が変更になる場合がございます。最新情報は公式Webサイト・SNSをご確認ください。

※記事の内容は2022/5/15時点のものです。最新の情報は公式サイト等でご確認ください。

記事提供:ココシル上野


その他のレポートを見る

【東京国立博物館】特別展「琉球」内覧会レポート。島人の想いを、未来に紡ぐ(~6/26)

東京国立博物館
黒漆首里那覇港図堆錦螺鈿衝立 (1928年・鹿児島県歴史・美術センター黎明館蔵)

令和4年(2022)、沖縄県は復帰50年を迎える。

かつて沖縄が琉球王国であったころ、アジアの海を舞台に諸国との貿易や外交を繰り広げ、世界の架け橋となることを目指していた。

有名な「万国津梁」という言葉にはそうした琉球の崇高な理想が込められている。

琉球王国がその後歩んだ道のりは平坦なものではなかったが、その土壌で育まれた独自の文化の煌めきは、今なお私たちの心を捉えて離さない。

琉球文化の形成や継承の意義、その美意識に着目する特別展「琉球」が東京国立博物館で幕を開けた。

※(2022/5/19)作品の展示期間について画像下部に追記。

今ここに蘇る、琉球王国の技と美。

展示会場(第一会場入口)

会場構成は「万国津梁(ばんこくしんりょう) アジアの架け橋」「王権の誇り 外交と文化」「琉球列島の先史文化」「しまの人びとと祈り」「未来へ」の全5章。会場は第一会場・第二会場に分かれており、それぞれでひとつの展覧会を構成できるほどのボリュームだ。

本展では王国時代の歴史資料・工芸作品、国王尚家に伝わる宝物に加え、考古遺物や民族作品などさまざまな文化財が一堂に会する。また、展覧会の終盤では平成27年より取り組まれてきた琉球王国文化遺産集積・再興事業を紹介し、事業によって復元された文化財を展示する。

過去から未来へと、貴重な琉球文化を次の世代へと手渡していきたいという主催者側の思いが感じられる。

展示会場風景
手前《戌秋走小唐船方陣賦〔東恩納寛惇文庫〕》(1874年・沖縄県立図書館蔵)展示期間:5/3- 5/29
《琉球使節江戸登城行列図》(19世紀・九州国立博物館蔵)展示期間:5/3-5/29
重要文化財《銅鐘 旧首里城正殿鐘》(万国津梁の鐘)藤原国善  (1458年・沖縄県立博物館・美術館蔵)

第一会場に鎮座する《銅鐘 旧首里城正殿鐘》(万国津梁の鐘)は琉球王国が世界の架け橋ならんとした気概を示した「万国津梁」の言葉が刻まれた梵鐘だ。

15~16世紀、琉球王国は自らアジアの海に雄飛し、各地を結ぶ中継貿易の拠点となって大いに繁栄した。その存在は16世紀にアジアに進出したヨーロッパの国々にも重視され、「琉球」の名は世界に知られるようになる。
現代のグローバリゼーションにも通じる思想だが、人間そのもののスケール、野心の大きさは現代の日本人とは隔絶しているといってもいいだろう。

第一会場ではこうした琉球王国の歩みを辿る貴重な歴史資料の数々が展示されている。

朱漆が鮮やかな足付盆が会場に映える
沖縄県指定文化財《聞得大君御殿雲龍黄金簪》(15~16世紀・沖縄県立博物館・美術館蔵)
(左)国宝・黒漆脇差拵(号 治金丸)(沖縄・那覇市歴史博物館蔵)(右)国宝・青貝螺鈿鞘腰刀拵(号 北谷菜切)(沖縄・那覇市歴史博物館)展示期間:5/3-5/29

会場には名匠・名工の手がけた琉球漆芸、茶器、絵画といった琉球文化の至宝が集う。国宝60件、重要文化財17件、県市指定重要文化財24件と約3分の1が指定文化財であり、琉球・沖縄をテーマにした展覧会では質・量ともに最大規模といえるだろう。

中でも《青貝螺鈿鞘腰刀拵》を含む尚家に伝わる三宝刀の公開は注目を集めている。刀身や装飾の美しさはもちろんだが、大ヒットオンラインゲーム『刀剣乱舞』において三宝刀が取り上げられたこともあり、特に若い世代への訴求力が高まっている。展覧会グッズコーナーでは『刀剣乱舞-ONLINE-』とのコラボ商品も販売されているので、興味のある方はぜひ立ち寄ってみてほしい。

琉球染織の豪華競演 ※こちらの作品はすでに展示を終了しています
国宝《玉冠(付簪)》(18~19世紀・沖縄・那覇市歴史博物館蔵)展示期間:5/3-5/15 ※こちらの作品はすでに展示を終了しています
《緋色地波濤桜樹文様紅型木綿衣裳》(19世紀・神奈川・女子美術大学美術館蔵)展示期間:5/3-5/29

会場を見回すと、琉球国王の正装をはじめ、中国産の更紗地を用いた衣装や琉球で織られた浮織物など、素材や技法も多種多様な琉球染織が目を引く。ここまで琉球染織が幅広く展示された展覧会は筆者の記憶する限りはなく、非常に貴重な機会だといえるだろう。

《緋色地波濤桜樹文様紅型木綿衣裳》は背中全体に大きく波濤が上がる風景画のようなデザインが特徴的。日本の遠山桜文様と中国の波濤山水文を合わせた意匠の妙は、国際色豊かな琉球文化の特徴を色濃く映し出している。

第4章では「しまの人々の祈り」として、土地に根差した宗教観に注目する
神女が村落祭祀で身につける装身具。中央が《玉ハベル》、右が《玉ダスキ》、左が《玉ガーラ》(ともに東京国立博物館蔵)

沖縄と聞いて多くの人が連想するのが「ノロ」に代表されるような祭祀のイメージではないだろうか。女性が祭祀を司るという特徴は姉妹が兄弟を霊的に守護するという「おなり神信仰」に通じるもので、琉球ではこうした美意識と宗教観を豊かな自然の中で育んできた。

展覧会終盤ではこうした琉球文化の「信仰」という側面に焦点を当て、私たちの胸中に沖縄の人々の祈りの姿を喚起する。そう、今も昔も沖縄は祈りの島なのだ。

模造復元《朱漆巴紋沈金御供飯》 (原資料17~18世紀・沖縄県立博物館・美術館蔵) 展示期間:5/3-5/29

朱漆塗が鮮やかな模造復元《朱漆巴紋沈金御供飯》は琉球の王家・王族家の祭祀道具として王府内で使用されていたものを復元した作品。木工、沈金などの漆工技術が結集された琉球漆工史上でも重要な祭器で、琉球王国文化を考えるうえでも貴重な作品とされている。

開催概要

《大龍柱》(旧首里城正殿前)(1711年・沖縄県立博物館・美術館蔵)
会期 2022年5月3日(火・祝)~6月26日(日)
会場 東京国立博物館 平成館(上野公園)
開館時間 9時30分~17時00分(入館は閉館の30分前まで)
休館日 月曜日
観覧料 一般  2,100円
大学生 1,300円
高校生  900円
(注)本展は事前予約不要です。オンラインもしくはご来館時に東京国立博物館正門チケット売り場でチケットをご購入ください。
(注)混雑時は入場をお待ちいただく可能性があります。
(注)中学生以下、障がい者とその介護者1名は無料。入館の際に学生証、障がい者手帳等をご提示ください。
(注)本展観覧券で、ご観覧当日に限り総合文化展もご覧いただけます。ただし、総合文化展の混雑状況によっては、入場をお待ちいただく場合があります。
(注)会期中、一部作品の展示替えを行います。
(注)詳細は、展覧会公式サイトチケット情報のページでご確認ください
展覧会公式サイト https://tsumugu.yomiuri.co.jp/ryukyu2022/

 

その他のレポートを見る

【会場レポ】「スコットランド国立美術館 THE GREATS 美の巨匠たち」レイバーンにグラント、珍しい英国絵画も来日(東京都美術館で7月3日まで)

東京都美術館

ルネサンス期から19世紀後半にかけての西洋絵画史を彩る巨匠たちの作品を紹介する「スコットランド国立美術館 THE GREATS 美の巨匠たち」が、東京都美術館で4月22日(金)から開催されています。会期は7月3日(日)まで。

開幕に先立って行われた報道内覧会に参加しましたので、会場の様子や展示作品についてレポートします。

スコットランド国立美術館が誇る美の至宝が一挙来日。

展示風景
展示風景
エル・グレコ《祝福するキリスト(「世界の救い主」)》1600年頃
デイヴィッド・ウィルキー《結婚式の日に身支度をする花嫁》1838年

スコットランドのエディンバラで1859年に開館したスコットランド国立美術館。ラファエロ、エル・グレコ、ルーベンス、ベラスケス、レンブラント、ブーシェ、コロー、ルノワールなど、西洋絵画史において重要な画家の作品を多くコレクションにもつ、世界屈指の美術館として知られています。

「スコットランド国立美術館 THE GREATS 美の巨匠たち」では、そんな巨匠たち(THE GREATS)の作品を時代順に紹介。

さらに、同館のコレクションを特徴づけている、ゲインズバラ、レノルズ、ミレイといったイングランド出身の画家や、日本ではなかなか見ることのできないレイバーン、ラムジー、グラント、ウィルキーなどスコットランド出身の卓越した画家たちの魅力あふれる名品も多数出品しています。

約90点の油彩画・水彩画・素描を通じて、ルネサンス期から19世紀後半にかけての西洋絵画の流れのなかで、英国絵画の流行や変遷の歴史も知ることができる展覧会です。

プロローグ

会場入り口

本展は、「ルネサンス」「バロック」「グランド・ツアーの時代」「19世紀の開拓者たち」と時代ごとに分けられた4章と、プロローグ+エピローグという展示構成になっています。

まずプロローグでは、スコットランド国立美術館について紹介。

アーサー・エルウェル・モファット《スコットランド国立美術館の内部》1885年

作品を貸し出している美術館を写真やムービーで紹介する展覧会は数多いですが、本展のプロローグでは、同館のコレクションが現在も展示されている館内の様子や、その新古典主義様式の素晴らしい建築、美術館を取り巻くエディンバラの印象的な街並みを絵画で見ていけるのが面白いです。

ジェームズ・バレル・スミス《エディンバラ、プリンシズ・ストリート・ガーデンズとスコットランド国立美術館の眺め》1885年

「神殿かな?」と思ったらこれが美術館とは……。奥に見えるエディンバラ城とあわせてまるでファンタジーの世界のような非日常感に満ちた、精緻でロマンティックな水彩画。普段は「ふーん」で流してしまう美術館情報がばっちり記憶に焼き付きました。

チャプター1. ルネサンス

次に「チャプター1. ルネサンス」の展示エリアへ。フィレンツェ、ヴェネツィア、ローマを中心に花開いたルネサンス時代の、創造性に富んだ絵画や素描を展示しています。

アンドレア・デル・ヴェロッキオ(帰属)《幼児キリストを礼拝する聖母(「ラスキンの聖母」)》1470年頃

レオナルド・ダ・ヴィンチの師であるヴェロッキオは《幼児キリストを礼拝する聖母(「ラスキンの聖母」)》で廃墟の神殿を描いていますが、それはこの時代の聖母子像の背景としては異例のこと。「古代世界の再発見と分析」というルネサンスの特徴を宗教画のなかで示した重要な作例といえるそう。

パリス・ボルドーネ《化粧をするヴェネツィア女性たち》1550年頃

一方で、肌を見せる高級娼婦という官能的な主題を神話的、寓意的な暗喩によって上質なものにしたボルドーネの《化粧をするヴェネツィア女性たち》のように、それまでなかった世俗的な作品も描かれるようになったことを取り上げて、この時代の芸術家の活動機会の広がりや、依頼主の興味や嗜好の多様性を紹介しています。

ラファエロ・サンツィオ《「魚の聖母」のための習作》1512-14年頃
コレッジョ(アントニオ・アッレーグリ)(帰属)《美徳の寓意(未完)》1550-1560年頃

ラファエロやティツィアーノの美しい素描や、コレッジョによるとされる、ある意味で完成品より貴重な(?)見事に中心部だけ抜けた未完成作品《美徳の寓意(未完)》の展示も。画面右側にいる女性のCGのような立体感を見るにつけ、「ここで止めるなんてなんともったいない……」と惜しく思うと同時に、完成した「もしも」を想像させてくれる魅力的な作品です。12点と作品数は少ないながらも見ごたえがありました。

チャプター2. バロック

「チャプター2. バロック」では、ベラスケスやレンブラントといった、従来の世界観を覆そうとした17世紀ヨーロッパの革新的な画家たちの作品が並びます。

ディエゴ・ベラスケス《卵を料理する老婆》1618年

日常のささやかな題材を偉大な芸術の域にまで高め、かつてないリアリズム絵画を制作したスペインの画家・ベラスケスの初期の傑作《卵を料理する老婆》は本展で初来日。

少年と老婆の肌や衣服はもちろん、前景の食器や食材の質感が巧みに描き分けられ、ドラマティックな明暗描写によって庶民の平凡なモチーフが厳かな雰囲気をまとっています。これが18歳か19歳のときに描いた作品というから驚くばかり……。

レンブラント・ファン・レイン《ベッドの中の女性》1647年

聖書や神話の登場人物に深い人間性を与えて見る者の共感を誘った、17世紀オランダの最も偉大な芸術家・レンブラントの《ベッドの中の女性》という謎めいた作品も注目です。

主題を特定する要素は避けられていますが、旧約聖書に登場する、結婚初夜に新郎を7度悪魔に殺されたサラが新たな夫トビアと悪魔の戦いを見守る場面を描いたのではないかといわれているそう。顔に影を落として浮かべる、期待と不安、なにより切実さが伝わる複雑な表情に感情表現が巧みなレンブラントらしさを感じます。

アンソニー・ヴァン・ダイク《アンブロージョ・スピノーラ侯爵(1569-1630)の肖像》1627年

肖像画の分野で後の英国美術に大きな影響を与えたヴァン・ダイクの《アンブロージョ・スピノーラ侯爵(1569-1630)の肖像》なども印象的でしたが、この「バロック」エリアで特に興味深かったのはイタリアの画家・レーニの《モーセとファラオの冠》でした。

グイド・レーニ《モーセとファラオの冠》1640年頃

優美な人体、明快な輪郭、均衡ある構図が持ち味でアカデミズムでは「ラファエロに次ぐ画家」、ゲーテからは「神のごとき天才」とも評されたレーニの作品。妙な仕上がりというか、「いくらなんでも女性の肌が緑色すぎるのでは? 男性と比べて女性は全体的にぼやけているし……」と違和感が。きっと何か意図があるはずだと公式図録を開いてみました。

すると「晩年のレーニは、大ざっぱで一見未完成に見える技法で作品を制作していたが、本作は本当に未完成の可能性がある」といった内容のことが書いてあり、少しずっこけました。紛らわしさが研究家泣かせですね。レーニの伝記を書いた人物は「慌てて描いたようなぞんざいなテクニック」と辛らつに評していたそうで……。晩節を汚したタイプだったとは知りませんでした。ですが、これはこれで神秘的な雰囲気があってすてきです。

チャプター3. グランド・ツアーの時代

18世紀はパリやロンドン、ヴェネツィアなどの都市で、芸術的才能が爆発的に開花した時代。そして、英国のコレクターたちが美術品の購入や文化的教養を深める目的で、「グランド・ツアー」と呼ばれる大規模なヨーロッパ旅行をした時代でもありました。「チャプター3. グランド・ツアーの時代」では、この二つの視点から作品を紹介しています。

ジャン=アントワーヌ・ヴァトー《ツバメの巣泥棒》1712年頃
フランソワ・ブーシェ《田園の情景》 左から「愛すべきパストラル」1762年 / 「田舎風の贈物」1761年 / 「眠る女庭師」1762年

展示エリアに入ってすぐ、「雅宴画」というジャンルを確立し、幻想的な理想郷を想像した革新者・ヴァトーの魅力がつまった《ツバメの巣泥棒》や、彼の流れを受け継いだブーシェによる牧歌的でロマンティックな三つの大作などを展示。18世紀パリを象徴する華やかなロココの世界に引き込まれます。

一方、この頃の英国では肖像画の表現が発展していったため、本展でも英国の三大肖像画家と称されるラムジー、レノルズ、ゲインズバラが紹介されています。

アラン・ラムジー《貴婦人の肖像(旧称「フローラ・マクドナルドの肖像」)》1752年
ジョシュア・レノルズ《ウォルドグレイヴ家の貴婦人たち》1780-81年

特に注目してほしいのは、ロイヤル・アカデミーの初代会長をつとめたイングランド出身のレノルズ。

代表作《ウォルドグレイヴ家の貴婦人たち》は、通常の肖像画のように正面を向いていないため、一見肖像画とわかりづらい作品です。三人の女性が手仕事をしていますが、まるでサロンのように優雅。三人の女性が並ぶ構図は古典美術の「三美神」という伝統的な主題になぞらえているもので、そのおかげか時代を超越した美しさがあります。これは、「グランド・マナー(歴史画の様式)」を取り入れて肖像画の地位を高めようとしたレノルズを象徴する作品なのだとか。

トマス・ゲインズバラ《ノーマン・コートのセリーナ・シスルスウェイトの肖像》1778年頃

また、レノルズのライバルで、互いに尊敬しあう関係だったゲインズバラの《ノーマン・コートのセリーナ・シスルスウェイトの肖像》は、スカートのあたりの非常に大胆で素早い筆致をぜひ間近で鑑賞してください。少し雑な仕上がりにすら思えるのに、離れて見るとつややかな素材感が見事に表現されていて、まるで魔法のように感じられるはず。

ゲインズバラは肖像画で成功しましたが、実は風景画家になりたかったそう。風景に対する高い関心が画面に独特の空気感を生まれさせるのでしょうか。人物と風景を融合させる彼の作品はどこか叙情的です。

フランチェスコ・グアルディ《ヴェネツィア、サンタ・マリア・デッラ・サルーテ聖堂》1770年頃
フランチェスコ・グアルディ《ヴェネツィア、サン・ジョルジョ・マッジョーレ聖堂》1770年頃

イタリアは「グランド・ツアー」で英国のコレクターたちが熱心に訪れた場所であり、18世紀ヴェネツィアで最も有名な画家の一人だったグアルディによる、都市の景観を精密に描いた「景観図(ヴェドゥータ)」も大変人気だったとか。

現代のように楽しい旅の思い出を写真に残せないですから、みんなお土産で買っていったのだろうと思うと親近感がわきますね。それまでの正確に輪郭をとった地誌的な景観画と一線を画し、印象派を思わせる素早い筆致や、光と空気感を意識的に取り込んだ作風が魅力です。

ジョン・ロバート・カズンズ《カマルドリへの道》1783-1790年頃

イングランド出身の画家・カズンズがイタリア旅行のスケッチから制作した《カマルドリへの道》も、目立たないですが美しい作品でした。ナポリのポッツオーリ湾を描いた水彩画で、スケッチと完成品では景色が変わっているそう。

柔らかな緑と青みがかった灰色の抑制された色調によって哀愁漂う雰囲気を醸し出していますが、遠い海と空はうっすらバラ色の光が降り注いでいて幻想的です。この風景は単なる記録ではなく、画家のなかで詩的に再構築されたものなのでしょう。芸術家たちにとっても、この時代のイタリアという土地がどれほど特別なものだったのかが伝わってくるようでした。

チャプター4. 19世紀の開拓者たち

19世紀の英国やフランスは肖像画や風景画などが引き続き好まれた一方で、世紀半ばに活躍したバルビゾン派や、その後の印象派、ポスト印象派など、革命的な画家たちが大きな変革をもたらした時代だったことを紹介する「チャプター4. 19世紀の開拓者たち」。

左から、フランシス・グラント《アン・エミリー・ソフィア・グラント(“デイジー”・グラント)、ウィリアム・マーカム夫人(1836-1880)》1857年 / ヘンリー・レイバーン《ウィリアム・クルーンズ少佐(1830年没)》1809-1811年頃

華麗で伝統的な「グランド・マナー」の肖像画の例として、日本で見る機会の少ないスコットランド出身の画家、レイバーンとグラントの大作をハイライト的に展示しています。

ジョン・エヴァレット・ミレイ《「古来比類なき甘美な瞳」》1881年

先ほど紹介したレノルズやゲインズバラの影響を受けた、イングランド出身の画家・ミレイの《「古来比類なき甘美な瞳」》は、物憂げながらこれから訪れる厳しい現実をしっかり見据えるような澄んだ瞳が印象的。バッチリおめかしした人物画が多い中で、服装も髪型も飾り気がなく素朴で逆に新鮮に映りました。

鋭い観察力に基づきつつ、とても感傷的な雰囲気の作品で、タイトルは女性詩人エリザベス・バレット・ブラウニングの詩から引用したもの。摘み取られたスミレの花とともに、成長していく少女の純真さと儚さの輝きを表現しているといいます。このように、この時代の主要な画家には、文学や物語のテーマを個人的に解釈する傾向があったのだとか。

ジョン・コンスタブル《デダムの谷》1828年

19世紀英国の風景画の巨匠・コンスタブルの《デダムの谷》も見逃せません。彼が愛した生まれ故郷の田園風景を描いた作品で、雲が落とす影や、触れたときの感触や冷たさが伝わってきそうな植物が、いかに細心の注意を払って描かれているか。彼ならではの見事な自然主義を感じる、自身が「おそらく私の最高傑作」と評したといわれる名画です。

ベルト・モリゾ《庭にいる女性と子ども》1883-84年頃

フランスでは、対象を直接写生し、色や光を賛美する画家たちが登場しました。物議をかもしながらも時代をつくり、広く愛好されていった革命的な画家たちの表現の変遷を、本展ではコロー、シスレー、ルノワール、マネ、ゴーガンなどの巨匠たちを中心とした作品で追っていけます。

ピエール=オーギュスト・ルノワール《子どもに乳を飲ませる女性》1893-94年
クロード・モネ《エプト川沿いのポプラ並木》1891年

エピローグ

エピローグには1作だけ、アメリカの画家チャーチの大作《アメリカ側から見たナイアガラの滝》がドンっと置かれています。

フレデリック・エドウィン・チャーチ《アメリカ側から見たナイアガラの滝》1867年

よく見ないと気づかないですが、画面左の崖に展望台があり、そこには滝をのぞき込む小さな人影が。この人影と対比して、ナイアガラの滝の驚異、崇高で劇的なスケールが見事に表現されている本展で一番大きな作品です。(257.5×227.3cm)

ラストを飾るにふさわしい圧巻の迫力ですが、ここまでイングランドやスコットランドの画家を意識的に取り上げてきたにもかかわらず、なぜ急にアメリカの自然を描いたアメリカの画家の作品が登場するのかと疑問も。その理由を、東京都美術館の髙城靖之学芸員は次のように解説してくれました。

「スコットランドの貧しい家庭に生まれ、アメリカに渡って成功し、財を成した実業家が、故郷のためにスコットランド国立美術館へ寄贈した作品です。スコットランド国立美術館は開館当初、絵画購入の予算を与えられませんでした。では、なぜ現在、これだけの質の高いすばらしいコレクションを形成できたのかというと、地元の名士たちや市民から寄贈を受け、また寄付金などで作品を購入してきた歴史があります。本作は、そういったスコットランド国立美術館のコレクション形成の歴史を象徴するような作品であり、記念碑的な作品として本展の最後を飾っています」


ルネサンス期から19世紀後半までの西洋絵画の巨匠たちの作品を紹介しつつ、スコットランドやイングランド出身画家たちの名画にスポットを当てた「スコットランド国立美術館 THE GREATS 美の巨匠たち」。開催は2022年7月3日(日)までとなっています。

「スコットランド国立美術館 THE GREATS 美の巨匠たち」開催概要

会期 2022年4月22日(金)~7月3日(日)
会場 東京都美術館 企画展示室
開館時間 9:30~17:30、金曜日は9:30~20:00(入室は閉室の30分前まで)
※夜間開室については展覧会公式サイトでご確認ください。
休館日 月曜日(ただし5月2日は開室)
観覧料 一般 1900円 / 大学生・専門学校生 1300円 / 65歳以上 1400円
※日時指定予約制です。その他、詳細は展覧会公式サイトをご確認ください。
主催 公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都美術館、毎日新聞社、NHK、NHKプロモーション
お問い合わせ 050-5541-8600(ハローダイヤル)
展覧会公式サイト https://greats2022.jp

記事提供:ココシル上野


その他のレポートを見る

【東京都美術館】オープン・レクチャー募集開始 上野の文化施設発!「こどもと大人のためのミュージアム思考」のススメ

東京都美術館

 

5月5日(木・祝)午後2時~ オンライン開催

東京都美術館と東京藝術大学、そして上野公園に集まる9つの文化機関が連携し、すべてのこどもたちが、文化やアートを介して「社会に参加しつながりを持つこと」を推進するラーニング・デザイン・プロジェクト「Museum Startあいうえの」。約10年間の取組みをまとめた『こどもと大人のためのミュージアム思考』(左右社刊、2022年)の出版を記念し、『上野の文化施設発!「こどもと大人のためのミュージアム思考」のススメ』をテーマに、5月5日(木・祝)にオンラインにて、オープン・レクチャーを開催します。

 

「Museum Startあいうえの」の理念や実践例を紹介しつつ、社会におけるアート・コミュニケータの役割とともに、これからのミュージアムのあり方を考えていきます。登壇は、著者の稲庭彩和子氏、伊藤達矢氏、鈴木智香子氏ほか。多様な文化や人々が関わり合い、豊かなコミュニケーションが生まれるミュージアムを舞台に、どんな学びが育まれてきたのでしょうか。市民とともにつくりだす新しい学びの姿について思考を深めていきたいと思います。オンライン開催ですので、みなさまぜひお気軽にご参加ください。

 

・オープン・レクチャー開催概要

日時|2022年5月5日(木・祝)14:00~16:30
会場|オンライン(Zoomウェビナー使用)
定員|300名(事前申込制、先着順、※定員になり次第締め切ります。)
参加費|無料
登壇者|稲庭彩和子(独立行政法人国立美術館 主任研究員)
伊藤達矢(東京藝術大学社会連携センター特任教授)
鈴木智香子(独立行政法人国立美術館 特任研究員)ほか
その他|手話通訳、UD トークによる文字表示支援あり
申込方法|下記フォームよりお申込みください。申込みアドレス宛に招待URLをお送りします。
申込みフォーム|https://tobikan.jp/form/294
オープン・レクチャーの詳細|https://tobira-project.info/openlecture12
問い合わせ先|「とびらプロジェクト」運営チーム p-tobira@tobira-project.info

 

・書籍紹介

 

編著:稲庭彩和子
著:伊藤達矢、河野佑美、鈴木智香子、渡邊祐子
装幀:松田行正+杉本聖士
定価:本体1800円+税
四六判並製/296ページ
2022年3月31日 第一刷発行
978-4-86528-079-1 C0070
オンライン販売:http://sayusha.com/catalog/books/paiueno

 

・「Museum Start あいうえの」とは…

東京都、公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都美術館、東京藝術大学が主催し、国立科学博物館、国立国会図書館国際子ども図書館、上野の森美術館、国立西洋美術館、東京国立博物館、恩賜上野動物園、東京文化会館が共催する、ラーニング・デザイン・プロジェクトです。

上野公園に集まる9つの文化機関が連携し、すべてのこどもたちが、文化やアートを介して「社会に参加しつながりを持つこと」を推進するプロジェクトです。文化を介して人々のコミュニケーションの機会を作り、人々の平等性、多様性を肯定し、人々の関わり合いを育み、人々のウェル・ビーイング(well-being : 心身ともに健康で幸福感がある状態)を高めることを目的としています。
「Museum Start あいうえの」ウェブサイト:https://museum-start.jp/

 

 

記事提供:ココシル上野


その他の展覧会情報を見る

【取材レポ】国立西洋美術館がリニューアルオープン!コルビュジエが設計した前庭や無料開放される19世紀ホールなど見どころを紹介

国立西洋美術館


施設整備のため約1年半の間休館していた国立西洋美術館(東京・上野)が、2022年4月9日にリニューアルオープンしました!

本記事では「近代建築の父」と称されるフランスの建築家ル・コルビュジエ(1887-1965)が設計した、1959年の開館当時に近い姿に戻された前庭や、無料開放される「19世紀ホール」など、リニューアル後の変化を詳しくレポート。

あわせて、新たに開幕した小企画展「調和にむかって:ル・コルビュジエ芸術の第二次マシン・エイジ ― 大成建設コレクションより」、「新収蔵版画コレクション展」についてもご紹介します。

開館当時の姿に近づいた国立西洋美術館

リニューアルオープン前日に行われた記者発表会・リニューアル内覧会で、ひと足はやく工事後の国立西洋美術館を拝見してきました。

国立西洋美術館 南側の入り口からの光景

2020年10月から行われた工事では企画展示館の空調や防水設備の更新なども実施されましたが、リニューアルを目に見えて実感できるのは前庭の外観です。

同館の前庭は1959年の開館以来、さまざまな改変が加えられてきました。これは美術館としての機能や利便性を向上させるためでしたが、2016年に本館と前庭を含む敷地全体がユネスコ世界文化遺産に登録された際には、当初の前庭の設計意図が一部失われていると指摘を受けてしまったそうです。

そこで同館では、ル・コルビュジエが設計した意図が正しく伝わるよう、また建物としての価値を高めるよう、施設整備にあわせて前庭を開館当時の姿にできる限り戻すことを決定しました。

園路から敷地内がよく見えるように。

リニューアル後の同館に足を運んでまず気づくのは、南西側にあった植栽がほぼ撤去されていることと、上野公園の園路から同館の敷地がよく見えるようになったことです。

敷地南西の端からの光景。ほとんど植栽が消えています。

リニューアル前の姿をご覧になったことがある方は、ぜひそのときの光景を思い出してみてください。

上の写真は、リニューアル前は小道つきの植栽エリアがあった場所です。ずいぶんスッキリしましたよね!

植栽や敷地を囲う柵によりやや閉鎖的な雰囲気があった前庭ですが、このたび開館当時の開放的なオープンスペースらしい姿を復原。上野公園との連続性をもたせるために、開館当時のように透過性のある柵にしたことで、園路側からも美術館側からも視線が通るようになりました。

向かい側の東京文化会館もよく見えるように。

ル・コルビュジエが考えた本館へのアプローチと彫刻作品の配置も、開館当初の姿にできる限り近づけられました。

まず、かつて正門として扱われていた西側(噴水広場側)の入り口が当初の状態に近い形に。あわせて、この西側の入り口から来館者を誘導するように引かれた床のラインも復活しました。

西側の入り口から《地獄の門》方向にのびるグレーのライン。

床のラインはまっすぐ東側にある《地獄の門》の方向にのびています。ラインに沿って右手にロダンの《考える人(拡大作)》、左手に《カレーの市民》を鑑賞しながら進むと、ラインは左に分岐して人々を本館の中へ誘います。

ラインの先にある《地獄の門》/ オーギュスト・ロダン《地獄の門》松方コレクション
オーギュスト・ロダン《考える人(拡大作)》松方コレクション / 西側の入り口から入った来館者のほうを向いて設置されています。
オーギュスト・ロダン《カレーの市民》
ラインは途中で本館のほうへ分岐。

設計の際、ル・コルビュジエはまず中心に核となる部屋をつくり、コレクションの増加とともにぐるぐる外側に螺旋を描く形で展示スペースを増築していくという「無限成長美術館」を構想していました。

同館の福田京専門員は、「前庭から無限成長美術館のコンセプトであるピロティ(柱だけで構成された吹き抜けの空間)へ、そして中央のホールへと流れるように動線が続いていく。歩きながら視線を移すと次々に光景が変わっていき、矢印などのサインなどを使わなくても自然に進む方向へ誘うという手法を、ル・コルビュジエは本館の中でも多く用いています」と話します。

また、前庭の床には動線のラインのほかにも、細い目地があみだくじのように広がっていることに気づきます。

前庭一面に広がる目地。

こちらは、ル・コルビュジエが人体の寸法と黄金比をもとに考案した尺度である「モデュロール」で割り付けられたもの。リニューアル前にもありましたが、もともとのデザインとしての目地と、コンクリートのパネルを分割する目地が混在して、デザインが分かりづらい状態でした。また、デザインとしての目地の一部も開館当時とは位置が変わっていたそうです。

今回のリニューアルでコンクリートのパネルの目地も美観を損ねないようモデュロールで割り付け、細部にわたって復原されました。

ちなみにこの前庭の床の目地ですが、向かいにある東京文化会館の窓のサッシの割り付けと幅も位置も完全に呼応しているそうですよ!

東京文化会館の設計は、ル・コルビュジエの弟子であり、国立西洋美術館の設計にも関わった前川國男が手掛けていますから、師匠へのオマージュということでしょうか? 足を運んだ際は見比べてみてください。

本館の吹き抜け空間「19世紀ホール」が無料開放!

19世紀ホール

リニューアルオープンにあたり、これまで有料エリアだった本館の中央にある吹き抜け空間「19世紀ホール」が当面の間、無料で開放されます!(2階展示室へ続くスロープから先は観覧券が必要)

三角形の天窓からやわらかな自然光が入っている様子が印象的な「19世紀ホール」は、空間自体がひとつの彫刻作品のような場所。常設展の起点であり、スロープを上って2階に進むと、ホールをぐるりと取り囲むように回廊型に配置された展示室をめぐることができます。

19世紀ホール スロープからの光景

こうした「19世紀ホール」を起点とした螺旋状の動線は、まさにル・コルビュジエの「無限成長美術館」のアイデアが反映されたもの。傾斜のゆるいスロープを上れば柱の奥に2階の絵画がチラリ……ここでも移動する間に移り変わる光景を楽しむことができます。リニューアルした前庭とあわせて「19世紀ホール」でル・コルビュジエの世界を体験しましょう。

常設展にも新しい仕掛けが!

常設展 展示風景

実業家・松方幸次郎が築いた「松方コレクション」を核とした、中世から20世紀にかけての西洋絵画やフランス近代彫刻が鑑賞できる常設展についても変化があります。

常設展は、《睡蓮》のモネをはじめ、ドラクロワ、ルーベンス、セザンヌ、ルノワール、ゴッホ、ピカソなど、時代を代表する巨匠たちの作品が目白押し。500円で入れるのが信じられないほど見どころ満載の展示となっています。

常設展 展示風景

田中正之館長によれば、リニューアルにあわせて常設展の展示方法を考え直し、いままでとは少し違った作品の並べ方をしているそう。

「古い時代の絵画の中に近代の作品が混じっているなど、隠し味的な展示になっている。なぜそこに近代の作品が混ざっているのか、何を見せようとしているのかを考えながらご覧いただければ」とのことでした。新たに「Collection in FOCUS」という作品のピックアップ紹介のコーナーも設けられていましたので、ぜひチェックしてみてください。

新収蔵作品や初展示作品など、常設展の新顔であろう作品を内覧会でいくつか見つけましたのご紹介しておきます。

(写真左)【新収蔵作品】ベルナルド・ストロッツィ《聖家族と幼児洗礼者聖ヨハネ》 1640年代前半、油彩、カンヴァス
(写真右)【新収蔵作品】ジョン・エヴァレット・ミレイ《狼の巣穴》  1863年、油彩、カンヴァス
(写真左)【初展示作品】フランク・ブラングィン《木陰》 油彩、カンヴァス
(写真左)【初展示作品】ヨゼフ・イスラエルス《煙草を吸う老人》 油彩、カンヴァス

せっかくなので常設展をゆっくり巡ってみました。個人的にこの常設展の展示室は、出口のない森に迷い込んだように「あれ、いま自分はどこにいるんだろう」とソワソワした気持ちになる瞬間があるのが楽しい場所です。ところどころに目隠しのように壁が設置されていることが、予想がつかない感じと迷路感を出しているのでしょうか。こんなところでも「無限成長美術館」のエッセンスを感じました。

常設展 展示風景

2種類の小企画展が同時に開幕!

リニューアルオープンにあわせ、4月9日からル・コルビュジエが晩年に制作した絵画と素描を紹介する小企画展「調和にむかって:ル・コルビュジエ芸術の第二次マシン・エイジ ― 大成建設コレクションより」が開催されています。

ル・コルビュジエ《奇妙な鳥と牡牛》 1957年、タピスリー 大成建設株式会社所蔵(国立西洋美術館寄託)

世界有数のル・コルビュジエのコレクションを所蔵する大成建設の寄託作品を中心とした約20点(展示替え含め約30点)を展示。

初期のピュリスム様式から大きく方向性を変え、自然界の形象と厳格な幾何学的構図の融合、そして人間と機械、感情と合理性、芸術と科学の調和を目指したとされる作品が並び……ということらしいのですが、筆者のレベルでは、そのあたりのことはちょっとよくわかりませんでした……。(動物の絵が愛嬌があってかわいいなーと思いながら鑑賞していました)

建物と絵画とであまりイメージも重ならないなと。ただ、国立西洋美術館をぐるりと一周してきた後にこの小企画展を鑑賞したところ、わからないなりに「ああ、たしかにこの建物と作品の作者は同じなんだろうな」と不思議と納得できました。

(写真左から)ル・コルビュジエ《静物》1953年、油彩、カンヴァス 《牡牛XVIII》1959年、グアッシュ、カンヴァス いずれも大成建設株式会社所蔵(国立西洋美術館寄託)

聞けば、前庭だけでなく本館の各所にも先ほど話題に出した「モデュロール」の寸法が使われているとか。そのために空間には独特のリズムと調和が生まれている気がします。規則性と意外性が同居する建築と、秩序がないようで全体として調和がとれている絵画は重なる部分があるのかな? などと考える展示でした。

「新収蔵版画コレクション展」展示風景

同時に開幕した「新収蔵版画コレクション展」では、4,500点以上にもなる同館の版画コレクションの中から、2015年度以降に新規収蔵された作品を紹介。時代順、地域ごとに作品をまとめ、15世紀末から20世紀初頭まで、デューラーやレンブラントといった巨匠の作品をはじめ、多様な版画表現が楽しめます。

ポスタービジュアルにはアルブレヒト・デューラーの『黙示録』より《書物をむさぼり喰う聖ヨハネ》が使われています。
(写真右)エドヴァルド・ムンク《魅惑II》 1895年、エッチング、ドライポイント、バーニッシャー/紙

6月4日からは「国立西洋美術館リニューアルオープン記念 自然と人のダイアローグ フリードリヒ、モネ、ゴッホからリヒターまで」が開催予定

記者発表会の様子

記者発表会では2022年6月4日より開催予定の、ドイツ・フォルクヴァング美術館との共同プロジェクトから生まれた企画展「国立西洋美術館リニューアルオープン記念 自然と人のダイアローグ フリードリヒ、モネ、ゴッホからリヒターまで」の紹介も。

両館のコレクションから、印象派とポスト印象派を軸にドイツ・ロマン主義から20世紀絵画までの100点を超える絵画や素描、版画、写真を展示。自然と人の対話(ダイアローグ)から生まれた近代における自然に対する感性と芸術表現の展開を紹介するものです。

ファン・ゴッホが晩年に取り組んだ風景画の代表作《刈り入れ(刈り入れをする人のいるサン=ポール病院裏の麦畑)》が初来日するほか、世界的に注目を集めているフィンランドの画家ガッレン=カッレラの作品も本邦初公開。マネ、シニャック、ムンク、ホドラー、エルンストといった巨匠たちの共演による多彩な自然表現が楽しめるとのこと。


新たなスタートを切った国立西洋美術館。観覧の前には、ル・コルビュジエの思想をじっくり感じられる前庭もぜひゆっくり楽しんでみてください。

 

■国立西洋美術館 インフォメーション

所在地:東京都台東区上野公園7-7
開館時間:9:30〜17:30(金・土曜日は20:00まで) ※入場は閉室の30分前まで
公式サイト:https://www.nmwa.go.jp/jp/

・小企画展「調和にむかって:ル・コルビュジエ芸術の第二次マシン・エイジ ― 大成建設コレクションより」
会期:2022年4月9日(土)~9月19日(月・祝)
会場:国立西洋美術館 新館1階第1展示室

・小企画展「新収蔵版画コレクション展」
会期:2022年4月9日(土)~5月22日(日)
会場:国立西洋美術館 新館2階版画素描展示室

・企画展「国立西洋美術館リニューアルオープン記念 自然と人のダイアローグ フリードリヒ、モネ、ゴッホからリヒターまで」
会期:2022年6月4日(土)~9月11日(日)
会場:国立西洋美術館

※休館日、観覧料等については公式サイトでご確認ください。

 

記事提供:ココシル上野


その他のレポートを見る

第四十三回 上野東照宮 春のぼたん祭

上野東照宮

“ジパング”“赤胴の輝”など希少品種を始め、開苑当時からの大株や珍しい緑色のボタンなど110種500株以上が春を彩ります。

1980年に日中友好を記念に開苑し、江戸の風情を今に残す上野東照宮のぼたん苑では、2022年4月9日(土)~5月8日(日)の間、110種500株以上が彩る春のぼたん祭を開催します。

※当苑では新型コロナウイルス感染拡大防止の取り組みとして、苑内の定期消毒や現金授受の撤廃、従業員の健康管理などの対策を行っています。ご来苑いただく皆様に安心して庭園を鑑賞していただくため、ご来苑者様には手指の消毒とマスク着用のご協力をお願いしています。

 

開苑当時からの大株や、緑色に咲く『まりも』など110種500株以上

期間中、日本、中国、アメリカ、フランスなど110種500株以上のボタンが咲き誇ります。中には開苑当時から咲き続ける大株や、中国品種と日本品種の自然交配による緑色の花が珍しい『まりも』などもお楽しみいただけます。

[苑内風景※昨年のイメージ]

[まりも]

今回ご覧いただける希少品種
[ジパング]

黄色の千重咲きのボタンで上向きに咲く唯一のボタン。とても上品な香りと共にお楽しみいただけます。

[赤銅の輝]
黄色に桃色がかった橙色の花弁でとても珍しい品種のボタンです。花弁一枚一枚が際立ち、上向きに咲くのも特徴です。

 

■『ボタン』とは
ボタンの花は「富貴」の象徴とされ、「富貴花」「百花の王」などと呼ばれています。
日本には奈良時代に中国から薬用植物として伝えられたとされ、江戸時代以降、栽培が盛んになり数多くの品種が作り出されました。中国文学では盛唐(8世紀初頭)以後、詩歌に盛んに詠われるようになり、日本文学でも季語として多くの俳句に詠まれ、絵画や文様、家紋としても親しまれてきた花です。

[紫紅殿(しこうでん)]
[黄冠(おうかん)]

 

『旧寛永寺 五重塔』をはじめとする本格的な江戸建築とボタンを楽しむ
苑内からは旧寛永寺五重塔や東照宮の参道に並ぶ石灯籠を見る事ができ、枯山水の日本庭園とあわせて他では味わえない江戸風情の中でボタンを見る事ができます。

■他にも写真撮影スポットが充実!
ボタンの撮影を楽しまれるお客さまが多く訪れる当苑では、季節感のある撮影をお楽しみいただける色鮮やかな鯉のぼりや、苑内の随所に寄せ植えや盆栽などをご用意しています。
500株以上が咲くボタンとの撮影をお楽しみください。

 

■ボタンと共に咲くお花達
苑内にはボタンの他にシャクナゲや約20品種のシャクヤクなどが随時開花しボタンとの艶やかな共演をお楽しみいただけます。

[シャクナゲ(4月初旬~下旬)]
[シャクヤク(4月下旬~5月中旬)]
[シャクヤク(4月下旬~5月中旬)]

 

[上野東照宮 春のぼたん祭]概要
名称:第四十三回 上野東照宮 春のぼたん祭
期間:2022年4月9日(土)~5月8日(日)※期間中無休
開苑時間:9:00~17:00(入苑締切)
入苑料:大人(中学生以上)700円、団体(20名以上)600円、会期入苑券2,000円、小学生以下無料
主催:一般社団法人 上野観光連盟 後援:台東区
住所:〒110-0007 東京都台東区上野公園9-88 TEL:03-3822-3575(ぼたん苑)
アクセス:JR上野駅 公園口より徒歩5分
京成電鉄京成上野駅 池之端口より徒歩5分
東京メトロ根津駅 2番出口より徒歩10分
URL:https://uenobotanen.com/
公式Instagram:https://www.instagram.com/utbotanen_official/

 

記事提供:ココシル上野


その他の展覧会情報を見る

藝大コレクション展2022 ー春の名品探訪 天平の誘惑ーが、4月2日(土)から開催。

東京藝術大学大学美術館
《浄瑠璃寺吉祥天厨子絵》「弁財天及び四眷属像」 建暦2年(1212) 頃 重要文化財 東京藝術大学蔵

 

藝大ならではのさまざまな分野が混在したコレクションを鑑賞できる、年に一度の貴重な機会。

東京藝術大学は、前身である東京美術学校の設立から135年の長きにわたって作品や資料の収集につとめてきました。その内容は古美術から現在の学生制作品まで多岐に及びます。当館では、この多彩なコレクションを広く公開する機会として、毎年藝大コレクション展を開催しています。
2022年の藝コレは、「春の名品探訪」と題して約3万件の所蔵品の中から選りすぐった名品を中心に展示します。さらに今回は、天平の美術に思いを馳せた特集展示も見どころとなっています。
著しい損傷を被りながらも威風を伝えている《月光菩薩坐像》は、天平彫刻を代表する仏像のひとつです。また今回の展示では所蔵する乾漆仏像の断片や東大寺法華堂天蓋残欠に新たな光を当てています。最新の研究成果により南都仏師たちの技法が解き明かされます。

《月光菩薩坐像》 奈良時代 東京藝術大学蔵

そして特集の白眉は、《浄瑠璃寺吉祥天厨子絵》(重要文化財)です。今回の展示では、厨子とその内側四方に描かれた合計7面全て、さらに吉祥天像(模刻)によって立体的な展示を試みます。鎌倉時代に制作されたこの名品にも、天平の面影を見ることができます。

《浄瑠璃寺吉祥天厨子絵》「弁財天及び四眷属像」 建暦2年(1212) 頃 重要文化財 東京藝術大学蔵

 

◆みどころ◆

1. 浄瑠璃寺吉祥天厨子を大展開

《浄瑠璃寺吉祥天厨子絵》(重要文化財)は、もとは京都・浄瑠璃寺の木造吉祥天立像を収めた厨子の扉および背面板で、明治22 年(1889)に東京美術学校の所蔵となりました。今回の展示では当初はめられていた厨子(模造)および吉祥天像(模刻)とあわせ、全7面を一挙公開します。目前に開かれた厨子のなかに足を踏み入れていくようなイメージをご覧いただける立体的な展示を試みます。

 

2. ぐるっと名品、一巡り

本学が所蔵する約3万件の作品や資料のなかから、古美術から現代美術に至る名品を展示空間をぐるりと取り囲むように陳列します。《小野雪見御幸絵巻》(重要文化財)や狩野常信《鳳凰図屏風》などの古美術からはじまり、藝コレでは約 10 年ぶりの出品となる長原孝太郎《入道雲》、初公開の白川一郎《不空羂索観音》といった近代洋画の逸品、そして狩野芳崖《悲母観音》(重要文化財)や橋本雅邦《白雲紅樹》(重要文化財)などの近代日本画の名品までご覧いただけます。

長原孝太郎 《入道雲》 明治42 年(1909) 東京藝術大学蔵

3. 近代の天平探求

フェノロサや岡倉天心らの奈良古社寺調査に同行した狩野芳崖は、31 社寺で調査した所蔵品や建築物などをスケッチに描き留めました。本展に出品する《奈良官遊地取》はこのスケッチを後世、12 巻の巻子装にしたものです。そこには当時の調査で再発見された天平美術が写し取られています。また芳崖の弟子たちの証言によれば、この時の古美術研究が芳崖の絶筆《悲母観音》の面貌表現につながったといいます。《奈良官遊地取》との同時展示により《悲母観音》の淵源に思いを馳せる旅へとご案内します。

狩野芳崖 《悲母観音》 明治21 年(1888) 重要文化財 東京藝術大学蔵

 

◆開催情報◆

会期:2022 年4月2日(土)~5月8日(日)
休館日:月曜日(ただし、5 月2 日は開館)
開館時間:午前10 時~午後5時(入館は午後4時30 分まで)
※本展は事前予約制ではありませんが、今後の状況により変更及び入場制限を実施する可能性がございます。
会場:東京藝術大学大学美術館 本館 展示室1
(〒110-8714 東京都台東区上野公園12-8)
交通案内:JR上野駅(公園口)、東京メトロ千代田線根津駅(1 番出口)より徒歩 10 分
京成上野駅(正面口)、東京メトロ日比谷線・銀座線上野駅(7 番出口)より徒歩 15 分
当館に駐車場はございません 。
観覧料:一般440(330)円、大学生:110(60)円
※高校生以下及び18 歳未満は無料
※( )は20 名以上の団体料金
※団体鑑賞者20 名につき1 名の引率者は無料
※障がい者手帳をお持ちの方(介護者1 名を含む)は無料

主催:東京藝術大学

お問合わせ:050-5541-8600(ハローダイヤル)
ホームページ:https://museum.geidai.ac.jp/

 

記事提供:ココシル上野


その他の展覧会情報を見る

【国立科学博物館】第9回 ヒットネット(HITNET) ミニ企画展「音の誘惑-日本の産業技術-」開催について

国立科学博物館


国立科学博物館では、2022(令和4)年3月23日(水)~5月8日(日)までの期間、第9回 ヒットネット(HITNET) ミニ企画展「音の誘惑-日本の産業技術-」を開催します。
【詳細URL:https://www.kahaku.go.jp/event/2022/03hitnet/ 】

国立科学博物館では、日本の産業系博物館等の資料を検索できる共通データベース(ヒットネット=HITNET)を構築し、公開してきています。産業技術に関する資料を所蔵・展示している多くの産業系博物館が日本各地に存在することを紹介するために、このたび、ヒットネットに登録している161館から、「音楽」に関連する4館を紹介するミニ企画展を開催します。各館に展示されている音に関するエピソードなどをお楽しみください。パネルや展示を見ながら、日々の生活を支え、豊かな文化を育んできた産業技術の面白さや、技術の歴史を見る楽しさを感じていただければ幸いです。

第8回 HITNET ミニ企画展「香りの魅力-日本の産業技術-」開催時の様子(2020年)

 

第9回ヒットネット(HITNET)ミニ企画展 「音の誘惑-日本の産業技術-」 開催概要

【会場】国立科学博物館 地球館2階(東京都台東区上野公園7-20)
【開催期間】2022(令和4)年3月23日(水)~5月8日(日) 47日間
【料金】常設展示入館料のみでご覧いただけます。
【休館日】毎週月曜日(月曜日が休日の場合は火曜日) ※ただし3月28日(月)、5月2日(月)は臨時開館
【開館時間】9:00~17:00 ※現在、入館時間は予約制
【主催】国立科学博物館
【共催】新冠町聴体験文化交流館 レ・コード館(北海道新冠町)、津軽三味線会館(青森県五所川原市)
浜松市楽器博物館(静岡県浜松市)、ブラザーミュージアム(愛知県名古屋市)

【詳細URL:https://www.kahaku.go.jp/event/2022/03hitnet/ 】
※入館にはオンラインによる事前予約が必要です。ご来館前に必ず公式ホームページをご確認ください。

 

・ヒットネット(HITNET)とは…

【ヒットネット=HITNET】では、日本全国の登録した産業系博物館等が収蔵・展示する資料を横断的に検索・閲覧することができます。ホームページ( http://sts.kahaku.go.jp/hitnet/ )から、関心のあるキーワードを入力すると、データベース内の該当する情報が表示されます。私たちの生活を豊かにしてきた産業技術のルーツや、技術者・職人たちの創意工夫の跡を見ることができます。

 

・国立科学博物館

※入館にはオンラインによる事前予約が必要です。ご来館前に必ず公式ホームページをご確認ください。

【所在地】〒110-8718 東京都台東区上野公園 7-20
【開館時間】9:00 ~17:00
【休館日】毎週月曜日(月曜日が祝日の場合は火曜日)※ただし、本展開催期間のうち3月28日(月)、5月2日(月)は臨時開館
【入館料】一般・大学生 630円、高校生(高等専門学校生含む)以下および65歳以上 無料
【問い合わせ】ハローダイヤル:03-5777-8600

< 国立科学博物館 >
ホームページ:https://www.kahaku.go.jp/
産業技術史資料情報センター: http://sts.kahaku.go.jp/
第9 回ヒットネット(HITNET)ミニ企画展 「音の誘惑-日本の産業技術-」:https://www.kahaku.go.jp/event/2022/03hitnet/ 

YouTube:https://www.youtube.com/user/NMNSTOKYO/
Twitter:https://twitter.com/museum_kahaku
Facebook:https://www.facebook.com/NationalMuseumofNatureandScience/
Instagram:https://www.instagram.com/kahaku_nmns/

 

記事提供:ココシル上野


その他の展覧会情報を見る