「いきもの超ワールド展 国立科学博物館×ダーウィンが来た!」取材レポート。科博の標本×NHKの貴重映像が融合、驚きの生存戦略に迫る

国立科学博物館
会場風景

東京・上野の国立科学博物館では、NHKの自然番組『ダーウィンが来た!』との共同企画による特別展「いきもの超ワールド展 国立科学博物館×ダーウィンが来た!」が開催中です。会期は2026年10月12日(月・祝)まで。

先立って行われた報道内覧会には、本展のナビゲーターを務めるタレントの相葉雅紀さんも登壇しました。当日の様子をレポートします。


本展は、太古から現在まで続く絶え間ない環境変化に適応し、進化してきたいきものたちが磨き上げた「生存戦略」にスポットを当てる展覧会です。国立科学博物館が所蔵する標本や最新の研究成果に加え、NHKの撮影スタッフが長年挑んできた大自然を生き抜くいきものたちの迫力の映像を紹介しています。

会場風景

イントロダクションでは、草原や山岳、森林、砂漠、海洋といった地球上の多様な生息環境を代表する大型哺乳類から小さな昆虫までが勢ぞろい。剥製や骨格標本を組み合わせた圧巻のパノラマ展示が来場者を出迎えます。

標本×映像の相乗効果で、生存戦略のリアルを体感

展示は、いきものの「五感」「エネルギー補給」「サイズ」「移動」「集団」「命のバトン」をテーマにした全6章構成。第1章では、生存に不可欠なセンサーである「五感」に着目しています。

会場風景、ヒトももつレンズ眼の仕組みや「鳥目」の誤解についてなど視覚に関する展示

たとえば「味覚」のエリアでは、必要なエネルギー源を得るために甘味(糖分)やうま味(エサ生物)を検知する必要があり、生存を脅かす危険なもの(毒:苦味、腐敗:酸味)を回避するために味覚が備わってきたことを紹介。舌に限らず、いきものたちがどのような体の部位で「味わって」いるのかを学べます。

驚いたのは、わたしたちヒトは、舌でうま味(グルタミン酸やイノシン酸)を感じることで幸福感や満足感を得られますが、実のところ、他のいきものにとっては必ずしも重要な味覚ではないという点。厳しい自然環境では、うま味で食物を選ぶことがかえって不利益になる場合があるからです。

会場風景、左はジャイアントパンダ/剥製、右はカリフォルニアアシカ/剥製、国立科学博物館蔵

ヒトと同じ哺乳類でいえば、肉食から竹食へと進化したジャイアントパンダや、捕まえたエサ生物を丸呑みするカリフォルニアアシカなどは、うま味を感じる機能が乏しいそう。ジャイアントパンダはともかく、うま味たっぷりの魚類を主食としながらその味に頓着しないカリフォルニアアシカの生態には、魚が大好きな日本人としてはどうしても「もったいない!」と感じずにはいられません。

続く第2章は「エネルギー補給」をテーマに、狩りの戦略やエネルギーの消化方法に迫ります。

会場風景

見どころの一つは、緊迫感あふれる捕食シーン集を上映している大型モニターです。魚が水面に姿を現すまで何時間も辛抱強く待ち伏せるハシビロコウ。時速110kmにも達する俊足で獲物を追うチーター。カニなどを狙って陸に上がり、まさかの豪快なジャンプを披露するアナダコ。どのシーンからも、決定的瞬間を追い続けた撮影者たちの粘り強さが伝わってきました。

標本や解説パネルだけでは捉えきれない実際のスピード感や身体の使い方を、『ダーウィンが来た!』の臨場感あふれる映像が補完することで、一層理解を深められる。こうした展示構成こそ、本展の魅力といえるでしょう。

会場風景、ハシビロコウ/剥製、我孫子市鳥の博物館蔵

本章では「偏食」についても扱っています。それは単なる好き嫌いではなく、毒性のユーカリを食べるコアラのように、他者が敬遠する食物に適応できれば、ライバルと争わずに独り占めできるという立派な生存戦略なのです。

会場風景、左はハチクマ/剥製、右はレッサーパンダ/剥製、国立科学博物館蔵

タカの仲間であるハチクマの生態も実にユニーク。凶暴なスズメバチなどの巣を襲って食べる彼らは、巣に突き入れる頭部にハチの毒針を通さないよう、うろこ状に密集した羽毛構造で守っています。「偏食」を極めた結果として頭部の構造まで変えてしまう徹底した合理性に、「そこまでするか」と思わずうならされます。

シロナガスクジラから砂粒サイズまで、スケールの幅広さに圧倒される

会場でひときわ存在感を放っていたのが、「サイズ」がテーマの第3章に展示された、絶滅した最大級のナマケモノ類メガテリウムの近縁種「ピラミオドンテリウム」のレプリカ復元骨格標本です。(実物化石の展示もあります)併置された現生のノドチャミユビナマケモノの骨格標本と比較すれば、その巨大さは一目瞭然。大きな個体では、なんと体長4m、体重1.8tにも達したといいます。

会場風景、中央はピラミオドンテリウム/レプリカ復元骨格標本、右はノドチャミユビナマケモノ/骨格標本、国立科学博物館蔵

大型の陸上性ナマケモノ類が絶滅したのに対し、現生のナマケモノ類はすべて体長1m以下の小型で、樹上性の種であるとのこと。体が大きければ力も強く優位に立てそうですが、生存においてはそれがすべてではありません。環境に適したサイズであることが、生き残るための大切な戦略だということがうかがえます。

ピラミオドンテリウムの上空には、謎のアーチ状の物体が浮かんでいます。てっきり装飾かと思いきや、最大体長約33mに達する地球上最大の現生動物・シロナガスクジラの巨大な「下あごの骨」だとわかり驚きました。陸上では自重を支える負担が大きい一方、水中では浮力によって負担が軽くなるため、ここまでの大型化が可能になるといいます。骨の下に立ち見上げれば、その規格外のスケールを全身で感じられます。

会場風景、シロナガスクジラ/乾燥標本、国立科学博物館蔵

巨骨に圧倒された次の瞬間には、現生最小級の海洋無脊椎動物群「メイオベントス」(0.031~1mmほどの微小生物の総称)の展示が目に入ります。砂浜の砂一握りに100匹以上も生息するという超ミクロな世界であり、この極端すぎるスケールの振れ幅も、種のジャンルを横断した本展ならではの醍醐味といえそうです。

会場風景、「大自然超体感シアター」

第4章との間には、足元まで広がる4面の大型モニターを使った「大自然超体感シアター」(2分05秒)が登場。高精細映像で捉えられた大自然と、野生で躍動するいきものたちの美しさには、しばし言葉を失います。まるで空を飛んでいるような感覚が心地よく、とても癒やされる空間になっていました。

第4章は「移動」がテーマ。歩く、飛ぶ、泳ぐなど自力で移動するいきものが多い一方で、「他者に便乗する」というユニークな戦略も紹介されています。

会場風景

たとえば節足動物のカニムシは、ネズミの体に乗って巣から巣へと移動していることが近年の研究で判明したそう。さらに、移動先の巣穴でマダニやノミ、ムカデといったネズミにとっての寄生虫・害虫を捕食しているといいます。単なる一方的な「便乗」ではなく、互いに利益をもたらし合う共生関係の可能性が示唆されるという点でも興味深い展示です。

会場風景、岩礁に生息するサンゴ類などの固着生物たち/一部レプリカ、国立科学博物館蔵

また、大量のプランクトン類や有機物が漂う海洋は、いわば栄養満点のスープのようなもの。そのため、展示されるサンゴ類のように、「移動しない」という思い切った選択を取るいきものも少なくありません。しかし、一度固着すると移動はできず、どこに住み着くかはまさに死活問題。人気の場所ではライバルとの争いも起こるため、「動かない=楽」ではないことがよくわかる内容でした。

「かわいい」も生存戦略? 繁殖という大命題に向けて

第5章はいきものの「集団」の意義を問い、第6章は次世代を育む「命のバトン」の諸相を見ていく内容ですが、どちらにも共通するキーワードは「繁殖」です。

会場風景、上はスナメリ/レプリカ(FRP造形)、国立科学博物館蔵

第5章で登場する小型のイルカの仲間・スナメリは、繁殖期のみ遺伝子の多様性を求めて集団で行動する場合があるそう。「夏から秋にかけて100頭近い個体が一堂に会し、さながらスーパーお見合いの様相を呈し、交尾が終了すると解散する」という直截的すぎる紹介文には思わず笑ってしまいました。本展のキャプションは専門的な用語も登場しますが、このように肩ひじ張らずに楽しめるものばかりです。

会場風景、上段中央はラッコ/剥製、国立科学博物館蔵

第6章で登場するラッコのメスは、海の上でお腹に赤ちゃんを乗せながら、授乳や毛づくり、さらには睡眠まで行うといいます。狩りの最中は子どもが流されないよう海藻に絡めておくという有名な生態も、目の前の剥製と重なると愛おしさが倍増しました。

その流れで、隣にいるホッキョクグマの赤ちゃんにも思わず「かわいい!」という視線を向けてしまいますが、じつは彼らの愛らしい顔つきや鳴き声も、親の保護本能を刺激し、世話をしてもらうための巧みな戦略なのだとか。

会場風景、ホッキョクグマ/剥製、国立科学博物館蔵
会場風景、ミズダコ/プラスチネーション標本、国立科学博物館蔵

他方、ミズダコなどのタコ類のメスには、我が子の成長する姿を見届ける余裕がありません。一生に一度の繁殖のために、産卵後は卵が孵化するまでの数ヶ月間、絶食状態で卵の世話をし、すべての卵が孵化した直後にその命を終えるといいます。ヒトの感覚ではせつなく映りますが、これも長い進化の中でたどり着いた生存戦略。命のバトンをつなぐために彼らが導き出した答えの数々に、ただ思いを巡らすばかりでした。

出口付近では、科博の研究者や『ダーウィンが来た!』の撮影スタッフの「知るための工夫」を取り上げています。

会場風景

極地から熱帯まで世界中を舞台に、約1ヶ月間のロケを行う撮影スタッフの舞台裏を知る展示では、最新の撮影機材のほか、迷彩柄が施されたブラインドテントも紹介。大人1~2人が入れば満員の狭さで、小さな窓からレンズを出し、暑さや寒さ、ときには痒みに耐えて静かに決定的瞬間を待つ過酷さには頭が下がる思いです。

しかしスタッフにとっては、都会の喧騒を離れ、野生の息吹に包まれて待つその時間こそ、何物にも代えがたい贅沢であるとのこと。本展の迫力ある映像に魅了され、この仕事に憧れる子どもたちもいるはずです。締めくくりに、未来へつながるバトンもしっかりと感じられました。

相葉雅紀さん「体験型アトラクションのよう」

右から3人目が総合監修の田島木綿子研究員、4人目が相葉雅紀さん、左端が『ダーウィンが来た!』マスコットキャラクターのヒゲじい

報道内覧会では、本展総合監修を務めた国立科学博物館の田島木綿子研究員が登壇。「国立科学博物館が誇る標本と『ダーウィンが来た!』の貴重な映像が融合した、最高のコラボレーションになりました」と手応えを語ります。

多様な環境に適応し、がむしゃらに、そして忖度なく生存戦略を磨き上げてきたいきものたちの姿。それは全力でプレーするアスリートに感動するのと同様に、私たちの胸を打つものがあるとし、それを共有したいという想いから本展を企画したといいます。そうした点を踏まえつつ、「私たちも自然の一員であることを心に留めながら展示を楽しんでいただけたら」と期待を寄せました。

続けて、本展のナビゲーターを務める相葉雅紀さんがインタビューに応えました。

相葉雅紀さん

会場を巡った感想を聞かれると、「『ダーウィンが来た!』の4Kのきれいな映像がたくさん散りばめられているんです。一つひとつ撮影するのに何時間、何十時間とかかっただろうという捕食や捕獲の瞬間の映像も、もったいぶらずにガンガン出てくるので、剥製や標本と照らし合わせながら、体験型アトラクションのように楽しめました」と笑顔を浮かべます。

なかでも印象に残った展示として挙げたのは、第3章に展示されている巨大なナマケモノ「ピラミオドンテリウム」です。「(ピラミオドンテリウムが)めちゃくちゃデカかったです! 進化の過程で今のナマケモノのサイズになったのか、小さくなったほうが生き残りやすかったのかと、そういうことを考えるのも楽しかったです」と語り、好奇心を刺激された様子でした。

相葉雅紀さん

また、相葉さんは本展の音声ガイドも担当しており、「楽しんで展覧会を観てもらいたいので、あまり邪魔をしないように、そっと情報をお渡しできたらという思いで収録させていただきました」とコメント。何度も訪れているという国立科学博物館の仕事に携われたことへの喜びを語り、最後に本展に関心を寄せる方々にメッセージを送りました。

「見終わった後、子どもだけでなく、大人も深く考えさせられる展覧会だと感じました。僕自身も、ダンゴムシがコンクリートを食べたり、ヘビが電信柱を上ったりと、人間の身近で共存している生きものがたくさんいることに驚かされました。知らないことをたくさん知れる場所ですので、皆さんぜひお越しください」

特別展「いきもの超ワールド展 国立科学博物館×ダーウィンが来た!」概要

会期 2026年7月11日(土)~10月12日(月・祝)
開館時間 9:00~17:00(入場は16:30まで)
※8月9日(日)~8月15日(土)は18:00まで開館(入場は17:30まで)
休館日 9月7日(月)、14日(月)、24日(木)、28日(月)
会場 国立科学博物館(東京・上野公園)
入場料(税込) 一般・大学生 2,300円、小・中・高校生 600円

※未就学児は無料。
※土日祝日および8月10日(月)~8月14日(金)の期間については、日時指定予約を実施します。
※本展を観覧された方は、同日に限り常設展示(地球館・日本館)もご覧いただけますが、常設展示の開館時間内に限ります。
※そのほか、詳細は公式サイトでご確認ください。

主催 国立科学博物館、NHK、NHKプロモーション
お問い合わせ 050-5541-8600(ハローダイヤル)
展覧会公式サイト https://ikimonoworld.jp

※最新の情報と異なる場合がありますので、詳細は展覧会公式サイトでご確認ください。

 


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