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下谷龍泉寺町にある台東区立一葉記念館は、明治時代の女流作家・樋口一葉がかつて荒物・駄菓子屋を開いたゆかりの地にあります。
一葉はこの地で過ごした約10カ月の間に名作『たけくらべ』の構想を得たとされています。
今年は一葉が下谷龍泉寺町に転居して125年。
これを記念して、一葉記念館では2018年11月10日(土)~2019年1月27日(日)の期間、下谷龍泉寺町転居125年記念特別展「下谷龍泉寺町(ものがたりのまち)の樋口一葉」が開催されています。
特別展を取材してきましたので、その様子をお伝えします。
展示室は2つに分かれており、第一展示室では「巻きの一」で下谷龍泉寺町に来る前の一葉の生活を、「巻きの弐」でこの地での一葉の生活を紹介しています。
巻きの一 下谷龍泉寺町へ
17歳で父を亡くした一葉は、一家の大黒柱として母と妹の生活を担っていました。
小説を発表して稿料を得ていたものの、生活が立ち行かなくなり、新たに商売を始めるべく下谷龍泉寺町に越してきます。
展示品の借用書や書簡が一葉の当時の生活が厳しかったことを物語っています。また、当時の下谷龍泉寺町の写真はほとんど残されていないため、絵画でその様子を伺い知ることができます。
樋口家の女3人で営む荒物・駄菓子屋には近隣に住むこどもや吉原遊郭で働く人々が訪れますが、一葉はそうした交流を通して人々を観察し、「社会の片隅で生きる人々の声なき声をすくいあげる」というその後の小説のテーマが形成されていくことになります。
一葉の名作『たけくらべ』は下町の少年少女の淡い恋を取り上げたもので、下谷龍泉寺町近辺が舞台となっており、作品に千束稲荷神社や鷲神社が登場します。
巻きの弐 現実と志のはざまで
当地での一葉の生活を紹介しています。
一葉は、野々宮起久子という女性と下谷龍泉寺町在住時に深く交流をしていました。一葉から野々宮さんに宛てた直筆の手紙が展示されています。達筆です。
一葉は当地に越してくる以前、「萩の舎」という歌塾にて和歌や古典文学を学んでおり、そこで書の素養も身につけました。
一葉が亡くなるまで使用していた文机のレプリカも展示されています。象牙がはめ込んである豪華なもので、父親から買い与えられたものだそう。
幼少期の裕福な暮らしがしのばれます。文机の実物は目黒区の日本近代文学館に保管されています。
第二展示室では、下谷龍泉寺町での生活が『たけくらべ』にどのように影響したのか、7つのファクターに焦点を当て解き明かしています。
一葉は当初、小説家ではなく和歌の先生を志望していました。
一葉が和歌を学んだ「萩の舎」には名家の令嬢が多く通っていました。その中で爵位を持たない一葉には時に苦労もあったと考えられています。ある時など一葉はつぎはぎだらけの着物を着用して「萩の舎」を訪れました。
その着物のレプリカが展示されています。上から羽織を着ればつぎはぎが見えないよう、一葉の妹・くにさんが苦心して縫い上げたものだそう。
一葉は下谷龍泉寺町での約10カ月の生活ののち、店をたたみ本郷丸山福山町に転居します。
そして、そこで死去するまでの14カ月の間に『たけくらべ』を含む多くの作品を書き上げます。この期間は「奇跡の14カ月」と呼ばれています。
生活のために下谷龍泉寺町へとやってきた一葉ですが、当地で出会った人々との交流からその後の執筆生活の糧となるインスピレーションを得ました。
今回の特別展示によって一葉の創作熱がどのように刺激されたのかが明らかとなることでしょう。
常設展では、主に一葉亡き後の作品を紹介しています。
一葉の生前、作品は雑誌に掲載されており、小説等の単行本は販売されていませんでした。
一葉の最後の著作であり、生前に発表された唯一の単行本がこちらの『日用百科全書第12編 通俗書簡文』。一葉の筆による手紙の例文集です。
右・『日用百科全書第4編 家政案内』明治28年(1895)8月20日 博文館
一葉の妹・くにさんは一葉の死後も作品の保存に熱心でした。戦時下でも一葉の作品の原稿や短冊を持って疎開されたそうです。
現在わたしたちがこうして一葉の原稿等を目にすることができるのは、くにさんに負うところが大きいのです。
そのくにさんが雑誌「婦人世界」に「賃仕事までした我が姉一葉の面影」というエッセイを寄稿しています。
近親者から見た等身大の一葉の姿をいまに伝える、大変貴重な資料となっています。
1984年に蜷川幸雄氏の演出によって舞台化された一葉原作の「にごり江」。舞台美術を担当された朝倉摂さん自らが手掛けた舞台模型が展示されています。
特別展では一葉の『たけくらべ』創作の土台となった下谷龍泉寺町での生活が包括的に紹介されているので、観覧後はより一層興味深く作品に接することができるように思いました。
下谷龍泉寺町転居125年記念特別展「下谷龍泉寺町(ものがたりのまち)の樋口一葉」は2019年1月27日まで開催されています。記念館にお越しの際は、周辺を散策して『たけくらべ』の世界に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。
展覧会名 | 下谷龍泉寺町転居125年記念特別展「下谷龍泉寺町(ものがたりのまち)の樋口一葉」 |
会期 | 2018年11月10日(土)~2019年1月27日(日) |
会場 | 台東区立一葉記念館(台東区竜泉3-18-4) 第1・2展示室 |
開館時間 | 9:00~16:30(入館は16:00まで) |
休館日 | 毎週月曜日(祝休日と重なる場合は、翌平日)、年末年始 12/29~1/3 |
入館料 | 個人/大人 300円、小・中・高校生 100円 団体/大人 200円、小・中・高校生 50円 ※団体は20名以上 ※障がい者手帳および特定疾患医療受給者証をお持ちの方とその介助の方は無料です。 ※毎週土曜日は、台東区内在住・在学の小・中学生とその引率者の入館料が無料です。 |
TEL | 03-3873-0004 |
公式HP | http://www.taitocity.net/zaidan/ichiyo/ |
上野公園の向かい、東京国立博物館のわきにぽつんと佇むこちらの建物。
かつては東京帝室博物館(現・東京国立博物館)や恩賜上野動物園の最寄り駅として利用されてきた京成電鉄 旧博物館動物園駅です。
利用者の減少に伴い、1997年には営業を休止していましたが、2018年4月には景観上重要な歴史的価値を持つ建造物として、鉄道施設としては初めて「東京都選定歴史建造物」に選定されました。
これを機に改修工事が実施され、さらに東京藝術大学美術学部長であり、UENOYES※総合プロデューサーの日比野克彦氏がデザインした出入り口が新設されました。
京成電鉄 旧博物館動物園駅駅舎の一部が一般公開されます。それにあわせ、駅舎内ではUENOYESのプロジェクトの一環である「歴史的文化資源活用プログラム」として期間限定のインスタレーション作品『アナウサギを追いかけて』が展示されます。
それに先立ち行われたプレスツアーに参加しましたので、その様子をお伝えします。
新設された扉を開けて、いざ中へ。
扉を開けると、そこには巨大なアナウサギが!
旧博物館動物園駅の改札が地下にあることから、本作では土を掘って巣穴をつくる習性を持つアナウサギをモチーフとしているそうです。
演出の羊屋白玉さんが上野についてのリサーチを基に書き下ろした物語を美術のサカタアキコさんが形にし、そして国立科学博物館・動物研究部 支援研究員理学博士森健人さんの技術協力によって実現した今回の展示。
羊屋さんもサカタさんも、この駅舎は「アーティストにとってインスパイアされる空間」であると言います。
森さんは普段骨格標本を3Dスキャン・プリンタしたものを作成していますが、それを人の目に触れることができたらと考えていたときに羊屋さんから声がかかったそうです。旧博物館動物園駅が営業を休止したのは1997年のことでしたが、森さんの発案により、同年に亡くなったジャイアントパンダのホァンホァンの頭蓋骨の実物展示が叶いました。
こうして出来上がったインスタレーション作品『アナウサギを追いかけて』。扉を開けた瞬間から見るものを引き込んでしまう、独特の世界観が漂います。
入口のアナウサギや本、頭蓋骨のレプリカには実際に触れることができますし、ガラスには落書きをすることもできます。
旧博物館動物園駅を利用したことのある方でもない方でも、駅舎の歴史に思いをはせつつ作品を楽しめることでしょう。
2019年2月24日までの期間限定の展示となるので、この機会に旧博物館動物園駅に足を運んでみてはいかがでしょうか。
会期 | 2018年11月23日(金・祝)~2019年2月24日(日)までの毎週金・土・日曜日 ※12月28日~30日を除く計39日間 |
時間 | 11:00~16:00 ※最終入場は15:30まで(定員制・混雑時は入れ替え制) |
場所 | 旧博物館動物園駅 駅舎 |
入場料 | 無料 |
関連イベントも開催されます。詳しくは公式サイトでご確認ください。
記事提供:ココシル上野
東京都美術館では2018年10月27日(土)~2019年1月20日(日)の期間、「ムンク展ー共鳴する魂の叫び」が開催されます。
世界で最もよく知られる名画の一つ《叫び》を描いた西洋近代絵画の巨匠、エドヴァルド・ムンク(1863-1944)。本展は、愛や絶望、嫉妬、孤独など人間の内面が強烈なまでに表現された代表作の数々から、ノルウェーの自然を描いた美しい風景画、明るい色に彩られた晩年の作品に至るまで、ムンクの生涯を辿りながら約60年にわたる画業を振り返る大回顧展です。
展覧会名 | ムンク展ー共鳴する魂の叫び |
会 期 | 2018年10月27日(土)~2019年1月20日(日) |
休室日 | 月曜日(但し、11月26日、12月10日、24日、1月14日は開室) 、12月25日(火)、1月15日(火)【年末年始休館】12月31日(月)、1月1日(火・祝) |
開室時間 | 午前9時30分~午後5時30分 ※金曜日、11月1日(木)、11月3日(土)は午後8時まで(入室は閉室の30分前まで) |
会 場 | 東京都美術館 企画展示室 東京都台東区上野公園8-36 |
観覧料 | ※12月は高校生無料 ※11/21(水)、12/19(水)、1/16(水)はシルバーデーにより65歳以上の方は無料。当日は混雑が予想されます。 |
公式サイト | https://munch2018.jp |
「ムンク展ー共鳴する魂の叫び」内覧会レポートを見る
記事提供:ココシル上野
東京都美術館では、2018年10月27日(土)~2019年1月20日(日)の期間、「ムンク展ー共鳴する魂の叫び」を開催しています。
開催に先立ち行われた報道内覧会に参加しましたので、その様子をお伝えします。
ムンクの「叫び」と言えば誰もが知る超有名絵画です。実は「叫び」は連作で複数描かれており、版画以外に4点が現存しています。
今回、日本初来日となるのはムンクの故郷・ノルウェーのオスロ市立ムンク美術館が所蔵するテンペラ・油彩画のもの。繊細な素材を用いていることから、ムンク美術館でも常設はされていません。
本作がムンク美術館外で展示されることは稀であり、本展は実物を日本で目にすることができる非常に貴重な機会となります。
しかし、ムンクの魅力は「叫び」だけではありません。
本展はオスロ市立ムンク美術館のコレクションを中心に、油彩画約60点、版画を合わせた約100点を展示するムンクの大回顧展となります。
以下でそのうち数点をご紹介します。
ムンクは生涯に80点以上に上る自画像を手掛けており、描かれた表情や背景が当時の心境を読み解くよすがとなっています。
画家として駆け出しのころの作品。端正な顔立ちに自信の溢れる表情を浮かべています。
このころ恋人とのトラブルやアルコール依存、放浪生活によって引き起こされた妄想症に悩まされていたムンク。
背景の地獄の炎やおどろおどろしい影に、当時のムンクの鬱憤が投影されているようです。
ムンクの人生のターニングポイントとなった年に描かれた1枚。
ムンクはこの年、神経衰弱のためにコペンハーゲンの診療所に数カ月入院します。その後にようやく長年に渡る欧州での放浪を終えることを決意し、翌年祖国ノルウェーに戻ります。明るい色彩が、その後の平穏な生活を予感させます。
ムンクの作品の特徴として、大胆なストロークによる綿密な内面描写が挙げられます。
《メランコリー》と題された本作。
人物の鬱々とした感情が、その表情にのみならず、背景にもにじみ出ているかのよう。
こちらは《叫び》と同じ構図を用いて制作されています。
《叫び》、《絶望》ともオスロのフィヨルドに沈む夕日を背景としていますが、《叫び》が背景と相互に呼応しているように見えるのとは対照に、本作の人物は絶望に深く沈み、周囲から隔絶しているようです。
背景にちらりと映る窓外の明るさとは対照的な暗い屋内。強い愛により男女間の輪郭は破壊され、ふたりは一体化します。
孤独や憂鬱、嫉妬といった負の感情を押し出した作品を多く描いているムンクですが、男女をモチーフとした作品も多数残しています。
内覧会では、オスロ市立ムンク美術館で展覧会・コレクション部長を務めるヨン=オーヴェ・スタイハウグ氏による特別解説がありました。
「(連作《叫び》について)120年前には、ばかばかしい、醜い、品がない、という人すらいましたが、現在こうして世界中で注目を集めているのがとても興味深いと思います。《叫び》はムンクが非常に過激であると同時に、実験的な試みをしていたことを表しています。自身の経験に基づいた、不安や絶望といった感情を伝えるために、通常では使用されないような素材(パステルやテンペラ、鉛筆に厚紙)を用いて作成しています。」
「ムンクの多くの作品に共通して言えることですが、人物やその顔を通して、観ている者と対決しているような印象を与え、また一方では遠近法を通して観ている者を引き込むような要素も見られます。自分の感情をドラマチックに表しています」
また、イチオシの作品も教えてくださいました。
「(《叫び》と同室に展示されている)《赤い蔦》は、《叫び》と同じくらい強く、激しい感情を伝えています。素晴らしく、力強い作品です。」
ムンクの作品のみで構成されている、見ごたえたっぷりの「ムンク展ー共鳴する魂の叫び」は東京都美術館で2019年1月20日まで開催されています。
どっぷりとムンクの世界に浸ってみてはいかがでしょうか。
※作品はすべてオスロ市立ムンク美術館蔵 All Photographs ⓒMunchmuseet
展覧会名 | ムンク展ー共鳴する魂の叫び |
会 期 | 2018年10月27日(土)~2019年1月20日(日) |
休室日 | 月曜日(但し、11月26日、12月10日、24日、1月14日は開室) 、12月25日(火)、1月15日(火)【年末年始休館】12月31日(月)、1月1日(火・祝) |
開室時間 | 午前9時30分~午後5時30分 ※金曜日、11月1日(木)、11月3日(土)は午後8時まで(入室は閉室の30分前まで) |
会 場 | 東京都美術館 企画展示室 東京都台東区上野公園8-36 |
観覧料 | ※12月は高校生無料 ※11/21(水)、12/19(水)、1/16(水)はシルバーデーにより65歳以上の方は無料。当日は混雑が予想されます。 |
公式サイト | https://munch2018.jp |
記事提供:ココシル上野
その他のレポートを見る:https://www.culture.city.taito.lg.jp/ja/reports
上野公園の片隅に佇む台東区立旧東京音楽学校奏楽堂。
当館は、明治23年に東京音楽学校(現・東京藝術大学音楽学部)の施設として建てられた「日本最古の洋式音楽ホール」です。後に東京藝術大学から台東区が譲り受け、昭和62年に現在の地に移築・復原、翌年に重要文化財の指定を受けます。
老朽化が進んでいたため、平成25年4月より休館し、建物の耐震補強及び保存修理のほか、舞台正面のパイプオルガンの修理が実施されました。
11月2日、約5年半にわたる休館を経て、旧奏楽堂がリニューアルオープンしました。
それにともない開催された記念式典の様子をお伝えします。
素晴らしい秋晴れのなか開催された落成式。開会前には、東京藝術大学音楽学部の学生の方々による演奏がありました。
多数の来賓が出席されました。 挨拶をする服部征夫・台東区長。
祝辞を述べる澤和樹・東京藝術大学長。
ご自身も東京藝術大学を卒業された澤学長は、旧奏楽堂の歴史の目撃者でもあります。
澤学長「私が在学時にはキャンパス内に奏楽堂がありましたが、老朽化が進み、300人が入るとその重みで1階のドアが開かなくなるほどでした。オルガンも音が出ませんでした。大学4年生の時に卒業試験をこの奏楽堂で受けましたが、それを最後に本堂は使用されなくなりました。
その後、明治村へ移築するといった話も出ましたが、上野に残したいという声が多く、台東区により1987年にここ上野公園に移築されました。その際に開催された記念公演にも私は参加しています。今回、また記念公演に参加することができて光栄です。」
来賓の方々によるテープカットにより、旧奏楽堂が落成しました。
落成したばかりの旧奏楽堂のホールにて、澤学長を中心とした弦楽アンサンブルのミニコンサートが開催されました。
修理を経た舞台正面のパイプオルガンも、東京藝術大学大学院オルガン専攻を修了し、現在同大音楽学部オルガン専攻教授・主任をされている廣江理枝さんによって演奏されました。比較的小ぶりなオルガンながら、迫力のある音色が特徴です。
2曲目で第一バイオリンを務めた岡本誠司氏は、東京藝術大学の卒業生で、現在ベルリンで腕を磨いています。
ミニコンサートの最後には、旧奏楽堂でピアノを弾いたこともある瀧廉太郎氏作曲の「花」をアンコール演奏。歌詞に「春のうららの隅田川」とあるように、台東区とゆかりのある曲です。
「花」演奏の様子は以下の動画でご覧いただけます。
ミニコンサートののちには館内を見学することができました。
5年半ぶりにリニューアルオープンした旧東京音楽学校奏楽堂。歴史的建造物としてだけではなく、生きた文化財として演奏会や音楽資料の展示を楽しむことができます。
11月2日から建物が公開されていますので、上野にお越しの際に覗いてみてはいかがでしょうか。
公開日 | 日・火・水曜日(木・金・土曜日はホールの使用が無い場合) |
公開時間 | 9:30~16:30(最終入場 16:00) |
休館日 | 毎週月曜日(月曜日が祝休日にあたる場合は、その翌平日) 年末年始(12月29日~翌年1月3日) 特別整理期間 |
入館料一般300円(200円)
小・中・高校生100円(50円)
※()内は20名以上の団体料金
※障害者手帳、療育手帳、精神障害者福祉手帳、特定疾患医療受給者証をお持ちの方とその介護者の方は無料
※毎週日曜日は、台東区内在住・在学の小・中学生とその引率者の方は無料(第5日曜日を除く)
住所
台東区上野公園8-43
TEL
03-3824-1988
公式HP
http://www.taitocity.net/zaidan/sougakudou/
2018年10月16日(火)~2019年1月20日(日)の期間、国立西洋美術館で 「ルーベンス展-バロックの誕生」が開催されます。10月15日に内覧会が開催されましたので、その様子をお伝えいたします。
17世紀バロック美術を代表する画家、ペーテル・パウル・ルーベンス(1577ー1640)。
動きの多い劇的な構図、華麗な色彩、豊満にして魅惑的な裸体表現。その作風に魅せられた人々によって「王の画家にして画家の王」と最高の賛辞を送られたルーベンスは、諸外国にまでその名を轟かせました。
ルーベンスが工房を構えて活動の拠点としたのは現在のベルギーの町アントウェルペンですが、画家として独立した直後の8年間、イタリアで過ごしていたことは日本ではあまり知られていません。ルーベンスはヴェネツィアやマントヴァ、特にローマでさまざまな表現を吸収して画風を確立させ、帰郷後にそれを発展させていったのです。
本展は、ルーベンスとイタリアの関わりに注目し、その創造の秘密を解き明かそうとする試みです。ルーベンスと古代美術、イタリアの芸術家たちの作品計71点を展示し、ルーベンスがイタリアの作品からいかに着想を得、そして与えたのかについて探ります。
本展覧会は7部構成。時系列ではなくテーマ別に作品を展示し、ルーベンスとイタリア、双方向の交流からその着想の源を探ります。序章となる本章では、彼の代表的な肖像画作品が展示され、イタリアの画風を貪欲に吸収したその技法の特徴や、家族への愛情あふれる眼差しを垣間見ることができます。
こちらは《クララ・セレーナ・ルーベンスの肖像》という作品。最初の妻イザベラ・ブラントとの間に生まれた長女クララ・セレーナを描いたものです。背景や襟の部分などは大まかに捉えていますが、その表情は非常に丹念に描きこまれており、モデルの顔を真正面にとった構図も印象的です。
クララはこの時およそ5歳でしたが、その後12歳の若さで亡くなりました。ルーベンスはクララを愛し、彼女が亡くなった後も彼女の肖像画を何度も描いていたようです。
第二章では「過去の伝統」と題して、ルーベンスの作品のみならず、古代彫刻やルーベンスによるヴェネツィア派の模写などを紹介しています。
《セネカの死》はその題の通り、皇帝ネロへの陰謀の疑いをかけられて自殺を命じられた哲学者セネカの最後を描いた作品です。画中のセネカはルーブル美術館にある有名な古代彫刻を元にしており、ローマでこの彫刻を目にしたルーベンスは6点もの素描を残しています。ルーベンスによる古典学習の成果を示す好例といえるでしょう。
ルーベンスはイタリア滞在中、マントヴァやジェノヴァ、ローマのために宗教画を描きました。古代彫刻のような理想的な身体像を示したルーベンスの宗教画は若い世代を魅了し、カラヴァッジョ以降のローマにおける最大の革新を示したのです。
第三章では、彼が参考にした作品、影響を与えた作品とともにルーベンスの宗教画が展示されています。
ルーベンス晩年の大作《聖アンデレの殉教》が初来日。この作品はマドリードのサンタンドレス・デ・ロス・フラメンコス王立病院の礼拝堂に寄贈されたもので、鑑賞することも滅多に叶わない、大変貴重なものだそうです。
《聖アンデレの殉教》が描くのは、ヤコボス・デ・ウォラギネの『黄金伝説』に記述された聖アンデレの殉教場面。ローマ総督によって磔にされた聖アンデレは、彼を取り巻く2万人の群衆に教えを説きました。群衆は怒って総督に十字架から下ろすように脅しましたが、アンデレは生きたまま十字架から下りることを拒否し、そのまま祈りを唱えて昇天したということです。
一条の光が射す天上を仰ぐ聖アンデレ、暗い空からアンデレの元に飛んできた天使、口々に何か叫び、懇願する人物たち。非常に劇的で、躍動感のある迫真の描写が胸に迫ります。
著名な彫刻である《ファルネーゼのヘラクレス》に魅了され、その造形を深く学び取ったルーベンス。そんな彼の想像力は、特に神話の世界を描く時、最も生き生きと発揮されました。この章では、ルーベンスとルーベンス以降のイタリア画家たちによる男性ヌードを多く展示しています。
一方こちらの章では、ヴィーナスに象徴される理想の女性美を描いたヌードを特集。ヴィーナスを描く際にも古代彫刻に範をとったルーベンスでしたが、晩年はより現実的かつ豊穣さを象徴するような、ふくよかな女性を描くようになっていきました。
鮮やかな色彩と、それを画面に与える素早い筆使い。17世紀の美術理論家ベッローリは「絵筆の熱狂」という言葉でルーベンスの絵画を説明しました。第六章では、こうしたルーベンス芸術の性格が最もわかりやすい形で表現された戦いの場面などの絵画を取り上げ、その特徴に注目しています。
イタリア滞在中の1605年頃に描かれた《パエトンの墜落》。太陽神アポロの息子、パエトンが乗る太陽の戦車が最高神ユピテルの放った雷を受け、まさに墜落しそうになるその瞬間を捉えた絵画です。翻るマントや逆立つ馬のたてがみ、空に走る稲妻が画面全体の暴力的な躍動感を高めています。
高い教養を持つ外交官として活躍し、成功を収めたルーベンス。ルーベンスはその教養と知識を生かし、しばしば象徴の組み合わせを駆使した寓意画を描きました。最終章では、寓意的な仕掛けが施されたルーベンスの神話主題を、古代彫刻とともに展示しています。
軍神マルスがウェスタ神殿の火を守る巫女レア・シルウィアを見初める場面を描いた《マルスとレア・シルウィア》。レア・シルウィアとマルスの間に生まれた双子が成長し、ローマの建設者ロムルスとレムスとなったことは有名ですね。
通常は水汲みに行ったレア・シルウィアが森の中でマルスに犯されるのに対し、本作の舞台は神殿となっているため、ルーベンスは伝統的な解釈に大胆な変更を施しています。しかし同時にルーベンスは、マントの裾を握るキューピッドやマルスの武具や足元の雲など、この神話に関する古代文献の記述を非常に几帳面に取り入れていることもうかがえます。
「ルーベンスの作品には、彼の人となりが非常に良く反映されていると思います。寛大で、愛情にあふれていて、偉大である。そんな彼の姿が絵からもにじみ出てきていると感じます。ある伝記作家は彼のことを『マエストーゾ・ウマーノ(威厳がある人)であると同時に、人間味にあふれている』と表現しましたが、実際ルーベンスは家族や友人などに非常に深い愛情を注ぐ人でした」
そう語ってくださったのは、美術史家にして本展監修者のアンナ・ロ・ビアンコ氏。
「また、ルーベンスは『どちらの出身ですか?』と聞かれた時、『私は世界市民だ』と答えていたそうです。今でこそそうした言葉は使われるようになりましたが、17世紀の時点でルーベンスがそう考えていたということ。いかに彼が進んだ考えの持ち主で、友愛の素晴らしさを理解していかたが、この発言からもわかりますね。この展覧会では、そんな彼の人間性にもフォーカスして楽しんでいただけたらと思っています」
「画家の王」と呼ばれ、一時代を築いた巨匠の画業と人間性を、イタリアとの関わりの中で解き明かす。
「ルーベンス展-バロックの誕生」は、2019年1月20日(日)までの開催です。
この機会にぜひ、足を運んでみてはいかがでしょうか?
展覧会名 | ルーベンス展-バロックの誕生 |
会 期 | 2018年10月16日(火)~2019年1月20日(日)
9:30~17:30 |
休館日 | 月曜日(ただし12月24日、1月14日は開館)、2018年12月28日(金)~2019年1月1日(火)、1月15日(火) |
会場 | 国立西洋美術館 |
観覧料 | 当日:一般1,600円、大学生1,200円、高校生800円 団体:一般1,400円、大学生1,000円、高校生600円 ※団体料金は20名以上。 ※中学生以下は無料。 ※心身に障害のある方および付添者1名は無料(入館の際に障害者手帳をご提示ください)。 |
公式サイト | http://www.tbs.co.jp/rubens2018/ |
記事提供:ココシル上野
オランダ絵画黄金時代の巨匠ヨハネス・フェルメール(1632-1675)。技巧を凝らした作風や、現存作がわずか35点ともいわれる希少性もあり、国内外で不動の人気を誇っています。
上野の森美術館にて2018年10月5日(金)~2019年2月3日(日)の期間開催されている「フェルメール展」は、彼の作品が9点来日するという、日本美術展史上最大のフェルメール展として大きな話題を呼んでいます(一部展示替えあり)。
開催に先立ち行われたプレス内覧会に参加してきましたので、その様子をお伝えいたします。
本展では入場者全員に無料で音声ガイドが提供されます。ガイドを務めるのは、本展のナビゲーターでもある女優の石原さとみさん。柔らかい声で、わたしたちを17世紀オランダ絵画の世界へと誘います。
また、こちらの小冊子も無料配布されますが、本展の展示作品全49点の解説が収録されています。
じっくりと絵画の背景を理解しながらの鑑賞が叶います。
本展は6章で構成されており、1章~5章はフェルメールと同時代のオランダの画家による絵画がテーマごとに展示されています。
静粛な宗教画から当時のオランダの市井の人々の日常を捕らえた風俗画まで、幅広いジャンルの作品が揃います。テーマはそれぞれですが、どの作品も対象物を細密に描き出しており、見入ってしまいます。
こちらに描かれているのは実在する建造物ではないそうですが、絵の前に立つと奥へ奥へと引き込まれていきそうです。
写真左の《本を読む老女》は老女の開いている本のページにも細かく文字が書き込まれており、内容を読み取ることさえできます。
これら2作品は対となっています。一方の作品で男性が書いた手紙を、もう一方の作品で女性が読んでいます。
ぱっと見は幸せな恋人たちのように思われますが、人物の仕草や作中画に込められた意味を知ると、2人の関係が浮かび上がってきます。音声ガイドや小冊子をたよりに読み解いてみてください。
また、本作はフェルメールの影響を顕著に表していることでも知られています。本作の背景となっている部屋や女性の黄色いジャケットなど、フェルメール作品との共通点を多々見出すことができます。
第6章はフェルメールの作品のみが揃う「フェルメール・ルーム」で展開されています。
通常、欧米の主要美術館にそれぞれ所蔵されているフェルメールの作品を一度に観覧できるという贅沢な空間です。
なかでも注目作は、フェルメールの代表作のひとつとして知られる《牛乳を注ぐ女》。本展では至近距離でまじまじと鑑賞することができます。
中央に立つ人物に注目しがちですが、細部に目を向けてみると、点描によって光の粒子を表していたり、壁の汚れやシミをひとつひとつ描いていたりと、フェルメールが子細に対象を観察し、いかにそれをカンヴァスの上で表すかに心を砕いていたかを見て取ることができます。
こちらの《ワイングラス》は日本初公開。
作中の壁にかかる絵やステンドグラスに描かれる女性像によって、男性による女性の誘惑を示唆し、女性に注意を促しているそう。
このように、この時代のオランダ絵画では、絵の中に道徳的な意味や訓戒を表したものが多々見られたそうです。
フェルメールの作品中、《赤い帽子の娘》は2018年10月5日~12月20日、《取り持ち女》は2019年1月9日~2月3日までの期間限定で展示されます。予めお目当ての作品をチェックして、お見逃しのないようご注意ください。
作中の暗い部屋のなかに差す光がまぶしいほどに感じられます。本作は他の作品と比較するとだいぶサイズが小さいのですが、赤とフェルメール・ブルーと呼ばれる青の色彩に目を引かれます。日本初公開。
本展開催1カ月前に追加出展が決まった本作は、フェルメールの初期作のひとつであり、初めて手掛けた風俗画です。日本初公開。
ドイツ生まれの玩具・プレイモービルが「牛乳をそそぐ女」を再現!
ミュージアムショップには、他にも本展ならではのアイテムが多数揃っていますので、隅々までチェックしてみてください。
多数の観覧客の来館が予想されていますが、本展では待ち時間緩和のため日時指定入場制を導入しています。日本美術展史上最大のフェルメール展、ぜひ足を運んでみてください。
展覧会名 | フェルメール展 |
会 期 | 2018年10月5日(金)~2019年2月3日(日) ※12月13日(木)は休館。 |
会場 | 上野の森美術館(東京都台東区上野公園1-2) |
開館時間 | 9:30~20:30(入館は閉館30分前まで、開館・閉館時間が異なる日もあり) |
日時指定入場制 | 待ち時間緩和を目的とし、入場時間を6つの時間帯に分けた前売日時指定券(当日日時指定券料金は+200円)での入場を原則としており、当日日時指定券は前売販売に余裕があった時間枠のみ販売。 一般2500円、大学・高校生1800円、中学・小学生1000円、未就学児は無料。 |
公式HP | https://www.vermeer.jp/ | インフォメーションダイアル | 0570-008-035(9:00~20:00) |
記事提供:ココシル上野
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2018年10月2日(火)から12月9日(日)まで、東京国立博物館では、特別展「京都 大報恩寺 快慶・定慶のみほとけ」が開催されています。10月1日に内覧会が開かれましたので、その様子をお伝えいたします。
鎌倉時代、1220年に義空(ぎくう)上人によって発願された真言宗智山派の古刹、大報恩寺。近くに京都を南北に縦断する千本通りがあることから「千本釈迦堂」の名で親しまれ、釈迦信仰の中心地として、貴族から庶民まで幅広い信仰を集めてきました。
応仁の乱をはじめとする幾多の戦火を免れたその本堂は国宝に指定されており、また、「おかめ」発祥の地として、縁結び、夫婦円満などの福徳があることでも知られています。
その本尊は、快慶の一番弟子である行快が制作した釈迦如来坐像。そして、その釈迦如来坐像に侍り立つのは、快慶最晩年の作である十大弟子立像です。
本展覧会では、これら大報恩寺に伝わる「慶派」の名品の数々がそろい踏み。運慶同世代の快慶、そして運慶次世代の名匠による鎌倉彫刻の豪華共演が実現します!
本展の開催場所は東京国立博物館 平成館 特別第3・4室。同館の第1・2室では特別展「マルセル・デュシャンと日本美術」(10/2〜12/9)が開催されており、ふたつの展覧会が同時に、隣接しておこなわれているということになります。現代的なアート作品が並ぶデュシャンの展示会場と異なり、こちらの会場は仏像が放つ静謐な雰囲気で満ちており、そのコントラストも興味深く思えます。
特別展「京都 大報恩寺 快慶・定慶のみほとけ」は三部構成となっており、冒頭の「大報恩寺の歴史と寺宝-大報恩寺と北野経王堂」では大報恩寺に伝わる北野経王堂ゆかりの文化財、そして洛中(京都市内)最古の木造建築物として国宝に指定された本堂とその歴史が紹介されています。
北野経王堂とは、大報恩寺のほど近くに足利義満によって建てられた仏堂で、当時は洛中・洛外を含む京都市中最大の巨大建造物でした。経王堂では歴代の室町将軍が主導する「北野万部経会」がおこなわれるなど大変賑わいましたが、神仏分離の影響で解体され、収蔵されていた文化財や経などはあらためて大報恩寺へと移されました。
第一章では、平安時代の仏像を含む北野経王堂ゆかりの品々が展示され、在りし日の姿を今にそのまま伝えています。
続く「聖地の創出-釈迦信仰の隆盛」では、寺内で現在では別々に安置されている本尊「釈迦如来坐像」と「十大弟子立像」を同じ空間で展示。年に数回しか公開されない秘仏である釈迦如来坐像、そして十大弟子立像が10体そろって寺外で公開されるのは初めてです。
大報恩寺が建立された13世紀前半は、度重なる戦乱により「末法」(悟りを得られなくなる時代)の世相が強く感じられていました。義空上人は、この世に常住して説法する釈迦を造ることによって、末法の世を生きる人を救う場を生み出そうとしたのです。
最後を飾る第三章「六観音菩薩像と肥後定慶」の中心となるのは、運慶一門の慶派仏師、肥後定慶作の「六観音菩薩像」。暗く、燃えるような真紅を背景に立ち並ぶ六観音の姿は、壮観のひとこと。六観音とは、地獄道や餓鬼道などの六道から人々を救い出してくれる仏さまです。
本像が持つ生々しい実在感は、末法の世に人々が仏さまに求めた切実な念や願いを感じさせてくれます。
京都の中心地にありながら戦火をまぬがれた大報恩寺。そのために大報恩寺には周辺の古刹に収められていた文化財が多く集められました。その中でも、こちらは平安時代の名品「千手観音菩薩立像」。膝下の翻波式衣文と呼ばれる衣の表現は、平安時代前期に流行したもので、このことからも本作が大報恩寺建立以前のものであることがわかります。
大報恩寺の秘仏本尊である釈迦如来坐像。像高は89.3センチ(約三尺)で、背面の下には「法眼行快」と朱書銘があり、行快が「法眼」という僧位にあった時に制作されたことを伝えています。
横にふっくらと張り出した頬、きりりと上がった目尻などに行快らしさがあらわれており、その力強い表情には、師である快慶の死後、自分の作風を模索し始めたことを感じさせます。
六観音菩薩像の中では比較的作例が少ない准胝(じゅんでい)観音。慈悲の心を体現している女性像です。像内から発見された墨書銘に「肥後別当定慶」の署名があり、運慶次世代の実力派仏師、定慶作であることが明らかになりました。また、六観音にはいずれも針葉樹のカヤが用いられていますが、これは本来白檀で作られる「壇像」を意識しているためです。
結いあげた髪の毛の柔らかな質感や、空気をはらむ衣の描写など、非常に緻密な細部の表現には驚かされます。ぜひ会場に足を運んで、間近で定慶の彫技をご堪能ください!
光背や台座などが造像当初のまま残されているのも大きな特徴。特に光背(仏さまが発する光を具象化したもの)は脆いため破損しやすく、造像当初のものがここまで完全に残っているのは大変希少だということです。
また、六観音菩薩像は10月28日(日)までは光背付きの姿で、後期の10月30日(火)からは光背を取り外し、その後ろ姿を間近に鑑賞できます。なだらかな背中の曲線や、優美な背中の衣の文様など、普段とは違った角度から観音様の魅力を堪能できる機会ですね。
新しい時代の表現を切り開いた巨匠、運慶と快慶。大報恩寺が建立された1220年代は、その二人が相次いで表舞台を去り、行快、定慶ら次世代の仏師たちが活躍しはじめた時代でした。大報恩寺に残る珠玉の名作からは、そうした次世代の仏師たちの創作上の悩みや試行錯誤、さらに当時の人々の真剣な「祈りのかたち」を感じ取ることができます。
本展の会期は2018年10月2日(火)から12月9日(日)まで。
慶派の“スーパースター”たちが集う会場で、鎌倉時代の京都に思いをはせてみてはいかがでしょうか?
展覧会名 | 特別展「京都 大報恩寺 快慶・定慶のみほとけ」 |
会 期 | 2018年10月2日(火)~12月9日(日) |
会場 | 東京国立博物館(台東区上野公園13-9) 平成館 特別第3・4室 |
開館時間 | 9:30~17:00 ※金曜・土曜日、10月31日(水)、11月1日(木)は21:00まで ※入館は閉館の30分前まで |
休館日 | 月曜日 ※ただし10月8日(月・祝)は開館、10月9日(火)は休館 |
観覧料 | 一般 当日1400円 団体1200円 大学生 当日1000円 団体 800円 高校生 当日 800円 団体 600円 ※中学生以下無料 ※団体は20名以上 ※障がい者とその介護者1名は無料(入館の際に障がい者手帳などを要提示) |
TEL | 03-5777-8600(ハローダイヤル) |
展覧会公式サイト | https://artexhibition.jp/kaikei-jokei2018/ |
記事提供:ココシル上野
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社会包括をイメージしたアートプロジェクト「UENOYES(ウエノイエス)」は、2018年9月28日(金)~30日(日)の3日間、上野恩賜公園を舞台に「UENOYES バルーン DAYS 2018(ウエノイエス バルーンデイズ)」を開催します。
「UENOYES」というタイトルの中には、「NO」と「YES」が含まれています。障害のあるなし、また子どもから大人まで、人種や国を超えた様々な人々の「NO」と「YES」すべてを包括していくという意味が込められています。「UENOYES」は年間を通して多彩なプログラムを展開して上野から世界に発信していくというプロジェクトですが、今回の「UENOYES バルーン DAYS 2018」はそのキックオフイベントとして開催されます。
初日の28日に実施された報道関係者向けのオープニングガイドツアーに参加しましたので、その様子をレポートいたします。
快晴のなかスタートしたガイドツアー。UENOYES総合プロデュ―サーの日比野克彦氏(写真右)がガイドとしてプログラムを紹介してくださいます。文化庁長官の宮田亮平氏(写真左)も参加されました。参加者はそれぞれ小型ラジオ、今回のイベントのモチーフであるバルーンを身に着けます。日比野氏によると、「バルーンはどこかに連れて行ってくれるという象徴であるとともに、バルーンをどこかに連れていくこともできる。そして、このイベントでバルーンを着けたもの同士がすれ違うことで、何か感じるものがあるはず」だそうです。
スタチューを囲んでイーゼルに向かう人々。いつもの上野公園では見慣れない風景です。しかも、よく見ると、スタチューが動いています。路上パフォーマーが彫刻に模しています。
東京藝術大学の在校生や卒業生が講師として参加者にアドバイス。子どもを対象とした午前の部(10:00~12:00)は事前予約が必要ですが、午後の部(13:00~17:00)はどなたでも空いている席でスケッチに参加できます。
画用紙、コンテ、イーゼル、画板、椅子は無料で貸し出しをしているので、手ぶらで来てもふらっと立ち寄ることができます。
広場に賑やかな音が響き渡ります。音のアーティスト西原尚氏と画家の藤田龍平氏によるパフォーマンス&ワークショップです。アーティストが目や耳に障害を持つ方と対話を重ね、事前に公募した参加者とともに目や耳、手足や体の使い方を見つめなおすワークショップを実施。バルーンデイズ期間中は、ワークショップの参加者とともにパフォーマンスを披露します。
手押し車を大人用に改造したもの。押すと音が出ます。
海外からきたご家族も興味津々。初めて訪れた上野を楽しんでいらっしゃるようでした。
こちらの楽器は東日本大震災の際に宮城県の南三陸町の役場で流されたスピーカーで作られています。
バルーンをつなげたスティックを掲げて公園中を走り、空に絵を描くというパフォーマンス。風の流れによって変化する風景。この瞬間にしか楽しめない絵画です。
広場の一角に設けられたこちらのテントの下では、なんと移動式の屋台が造られています。
そもそもFIVE LEGSとは、インドネシアの移動式屋台「KAKI LIMA(カキリマ)」から来ています。インドネシア語の「KAKI」は屋台、「LIMA」とは足という意味。屋台に付属する3つの支点と、それを引く人の足2本を足して、FIVE LEGS。異国の文化を上野という都市の日常として翻訳してゆくという試みのもと、北澤潤氏により3日がかりで「KAKI LIMA」が作成されます。最終日には完成したKAKI LIMAを引いて上野公園中を移動される予定です。
綺麗なハーモニーを奏でるのは佐藤公哉氏が率いるアーティストユニット・トーラスヴィレッジを中心とした、参加型合唱パフォーマンス。簡単なメロディーの繰り返しによってハーモニーが作られていきます。イベント当日はその場で配布される楽譜を見ながら、どなたでも飛び入りで参加することができます。
アーティストの方、事前ワークショップに参加された方がリードしてくださるので、メロディーを真似て口ずさむだけでパフォーマーの一員になることができます。特設ステージはなく、公園内の様々な場所で実施されるようです。どこかでハーモニーが聞こえたら、参加してみてはいかがでしょうか。
少し汗ばむほどの快晴のなか、一歩木陰に足を踏み入れるとひんやりとしてとても気持ち良く感じられます。そんななか地面に寝そべっている方々がいらっしゃいました。
路上生活経験者からなるダンスグループ「新人Hソケリッサ!」の皆さんです。率いるのはアーティストのアオキ裕キ氏。アオキ氏は2001年、NY留学中にテロと遭遇して以来、「今を生きる身体から生まれる踊り」を追求。日々生きるということに真剣に向き合う路上生活経験者と接触し、ともに肉体表現作品を作り上げていきます。2ヶ月半に渡る噴水前広場での公開稽古を経て、バルーンデイズ中に新作パフォーマンスを披露します。今回はたまたまリラックスしているところを見学させていただきましたが、パフォーマンスでは切れのあるダンスを見せてくださるそうです。
スペイン出身のアーティストであるホセ・マリア・シシリア氏は2011年の東日本大震災発生から今日に至るまで、東北で被災者の方々とアートを通した交流を続けてこられました。
この「星屑屋台」はシシリア氏の東北での活動を紹介し、その活動に携わった人々や震災を経験した人々とともに震災や作品について語り、また出会いの場を創出するという目的で作られました。紙粘土で3.11のイメージで和菓子を作ったり、被災地の和菓子職人が作った和菓子を提供したりといった活動が行われます。
また、上野公園近辺に位置する国立国会図書館国際子ども図書館では、シシリア氏の作品の展覧会「アクシデントという名の国」が2019年2月24日(日)まで開催されます。
シシリア氏は近年、音を分析して二次元、三次元に形象化する作品を多く発表していますが、本展では東日本大震災の際の津波の音の轟音を基に制作された作品や、宮城県三陸町で住民に警報を発し続け亡くなった遠藤未希さんの声や、その死から発想した連作「数千年にわたる遠藤未希への想い」などを紹介しています。
美術家の小山田徹氏がゲストとともに公園内を散歩し、「防災」をテーマに地域の防災や食などに関するトークを展開するプログラム。参加者もラジオを身に着け、園内を一緒に散歩しながら語り合います。
上野公園は憩いの場として日々多くの人々を惹きつけていますが、敷地内には貯水タンクを有しており、災害時には避難所となります。本プログラムは、避難所としての視点から上野公園を見つめなおし、何が起きるのか、どのように生き延びるのかを語り合あうきっかけを与えてくれるものとなります。
上記でご紹介したプログラムのほかにも、気軽にアート体験に参加できる企画が充実しています。アートを楽しみながらも、震災について、また人とのつながりについて、何らかの気づきが得られるのではないでしょうか。
会期 | 2018年9月28日(金)~30日(日) |
時間 | 10:00~17:00 |
会場 | 上野恩賜公園竹の台広場(噴水広場)、国立国会図書館国際子ども図書館 |
参加費 | 無料 | 公式ウェブサイト | https://uenoyes.ueno-bunka.jp/ |