「プラド美術館展 ベラスケスと絵画の栄光」

国立西洋美術館
ディエゴ・ベラスケス《王太子バルタサール・カルロス騎馬像》
1635年頃 マドリード、プラド美術館蔵 © Museo Nacional del Prado

2018年2月24日(土)から5月27日(日)にかけて国立西洋美術館では「プラド美術館展 ベラスケスと絵画の栄光」が開催されます。

世界屈指の「美の殿堂」と称えられるプラド美術館。本展覧会は、西洋美術史上最大の画家の一人、ディエゴ・ベラスケスの作品7点を主軸に、プラド美術館の至宝70点を展示します。

17世紀スペインの国際的なアートシーンを再現し、幅広いプラド美術館のコレクションをお楽しみいただけます。

開催概要

展覧会名 日本スペイン外交関係樹立150周年記念
プラド美術館展 ベラスケスと絵画の栄光
会期 2018年2月24日(土)~5月27日(日)
会場国立西洋美術館
東京都台東区上野公園7-7
休館日 月曜日
※3月26日(月)、4月30日(月)は開館
開館時間 午前9時30分 – 午後5時30分
(金曜日、土曜日は午後8時まで)
※入館は閉館の30分前まで
観覧料金 一般1,600円(1,400円)、大学生1,200円(1,000円)、高校生800円(600円)
※括弧内は団体料金。団体料金は20名以上。
※中学生以下は無料。
URL http://prado2018.yomiuri.co.jp
巡回展 2018年6月13日(水)~10月14日(日)
兵庫県立美術館

情報提供:ココシル上野
https://home.ueno.kokosil.net/

俳優・水谷豊さん登場!「プーシキン美術館展ー旅するフランス風景画」内覧会レポート

東京都美術館

2018年4月14日(土)から2018年7月8日(日)の期間、『プーシキン美術館展ー旅するフランス風景画』が東京都美術館にて開催されます。開幕に先立ち、4月13日にプレス内覧会がおこなわれましたので、その模様をお伝えいたします。

文豪アレクサンドル・プーシキンの名を冠する国立美術館、プーシキン美術館。1912年に開館したモスクワ中心部の国立美術館で、古代エジプトから近代までの映画、版画、彫刻などを収蔵しており、特に印象派を中心とするフランス近代絵画コレクションは世界屈指と言われています。
『プーシキン美術館展ー旅するフランス風景画』では、その珠玉のクレクションから17世紀〜20世紀の風景画65点が来日。神話の物語や身近な自然、パリの喧騒、果ては想像の世界まで、さまざまな情景を舞台にフランス近代風景画の流れをたどります。

報道内覧会では、本展のスペシャル・サポーター、および音声ガイドのナビゲーターを務める俳優・水谷豊さんが登場!本展の「旅の案内人」として、見どころを語っていただきました。

-ひと足先に本展をご覧になられたそうですが、ご感想をお願いいたします。

プーシキン美術館展のテーマは「旅する風景画」ということですが、見終わった後に素晴らしい旅をした気持ちになりました。モネの『草上の昼食』から『白い睡蓮』への流れが素晴らしいですね。すっと絵の中に引き込まれていくような感動もありましたし、まさにそこに自分がいるような気持ちを味わわせていただきました。

-今回初来日となる、水谷さんの後ろにありますクロード・モネの『草上の昼食』ですが、実際にご覧になって、やはり感じるものは違いますか?

そうですね。色々と想像していたのですが、写真で見るよりはるかに感動があります。これがモネの青春時代の作品だということを聞きますと、若い時から才能が花開いていたことが実物を見るとよくわかりますね。

-他に印象に残った絵はありましたか?

面白かったのはアンリ・ルソーの『馬を襲うジャガー』という作品です。私が聞いたところでは、ルソーはパリの植物園に通い、そこで熱帯植物を観察しながら思いをはせて描いたということで、つまり想像の作品なんですね。われわれもどちらかといえば「妄想」が仕事ですが(笑)、イマジネーションでここまで描けるのはすごい。不思議なオーラがある作品だと思います。

「ぜひたくさんの方にこの旅の感動を味わっていただきたい」と聴衆に語りかける水谷さん。ぜひ、音声ガイドで水谷さんの「推理」の世界・・・ではなく、叙情あふれる「旅の風景画」の世界に足を踏み入れてみてください!


それでは、会場風景と展示作品の中から一部をご紹介いたします。

第1章 近代風景画の源流

第2章 自然への賛美

第3章 大都市パリの風景画

第4章 パリ近郊-身近な自然へのまなざし

第5章 南へ-新たな光と風景

第6章 海を渡って/想像の世界

『プーシキン美術館展ー旅するフランス風景画』は全6章構成となっています。神話の世界から都市、郊外、そして想像の世界へと。ロラン、コロー、ルノワール、セザンヌら巨匠たちの珠玉の絵画65点を、「旅」というキーワードを軸に紹介します。

また、風景画が絵画ジャンルとして自立していく過程を振り返る第1部(第1章・第2章)、大都市パリを起点に風景画の広がりを展観する第2部(第3章以降)とに大きくセクションが分けられています。

会場風景

17世紀に始まる風景画の黎明期では、聖書や神話にその主題が求められ、その背景に広がる自然は理想化して描かれていました。しかし、19世紀になる頃、絵画の受容者が王侯貴族から新興市民階級へと移ることで、その風潮に変化が生じます。身近に広がる自然を描くバルビゾン派の出現により風景画は現実的な表現へと歩みを進め、19世紀半ばの「パリ大改造」以降、印象派の画家たちは近代都市の情景を数多く描いていきました。
さらに、メディアの発達によりもたらされる世界各地の情報は、画家たちをさらに遠い、想像の世界へと導いていきます。

本展で体験できるのは、そうした風景画の創造と発展の物語。
まるで世界各地を旅するように、楽しみながら風景画の歴史をたどることができます。

展示作品

フェリックス・フランソワ・ジョルジュ・フィリベール・ジエム《ボスポラス海峡》 19世紀前半

まさに本展のテーマである「旅」を象徴するような絵画。描かれているのはヨーロッパとアジアの境界線、トルコのボスポラス海峡です。対岸に霞むイスタンブルの街並み、そして岸辺に佇むターバン姿の男たちが異国情緒をかきたてます。

もともと建築家を志していた画家ジエムは18歳で画家に転向。その後、パリに居を構えながらも積極的にヨーロッパ各地を旅してまわり、数多くのエキゾチックな風景画、とりわけ海景を描いた作品を残しました。

ギュスターヴ・クールベ《水車小屋》 1864年頃

フランス近代絵画を代表する画家のひとりであるギュスターブ・クールベは、農民や労働者の日常を題材とした絵画を数多く描き、物語画偏重であった当時のアカデミスムに対して「写実主義(レアリスム)」の枠組みを打ち立てました。

本作で描かれているとされるのは、クールベの生まれ故郷であるフランス東部の村オルナン。水車小屋の周りに茂る木々と、勢いよく流れる川の流れを躍動感あふれるタッチで描き、自然の生命力を感じさせます。

アンリ・ルソー《馬を襲うジャガー》 1910年

画家として専門の教育を受けなかった異色の画家、アンリ・ルソー。本作ではジャングルを舞台に、獰猛なジャガーに襲われる馬の姿を描いています。凄惨な場面のはずなのに、どこか非現実的で奇妙な静寂を感じさせます。こちらを向いた馬の表情からは一切の感情が読み取れず、どこか居心地の悪さを感じてしまうのは自分だけでしょうか?

本作の制作にあたってルソーは「植物園の温室より遠くへ旅行したことはない」と述べています。つまり、動物園や植物園、そして入手できる資料を頼りにこの作品を生み出したということですね。20世紀のおけるメディアの発達、博物館や資料の拡充は、こうした芸術家たちの想像力を下支えし、さらなる遠い世界へと導いていきました。

クロード・モネ《草上の昼食》 1866年

本展覧会で初来日となる作品。印象派の誕生前夜、26歳となる若きモネの魅力があふれる絵画です。

本作ではパリから訪れた若者がピクニックを楽しむ様子が描かれており、最先端のファッションに身を包んだ若者たちと郊外のみずみずしい自然が見事に調和しています。光の反射と木漏れ日のつくりだす効果が清新な色彩と筆触で描かれており、まさにレアリスムと印象主義のあわい境界に立つ当時のモネの表現をよく伝えています。

舞台となったシャイイ=アン=ビエールはパリの南東60キロメートルほどにあるフォンテーヌブローの森にありますが、交通網の発達により、若者たちや芸術家がこぞって訪れる場所となっていました。本作は、もともと王侯貴族の狩場であったフォンテーヌブローの森の、この時代ならではの様子を伝えてくれます。

《草上の昼食》の作品解説をおこなう三浦篤氏

東大教授・三浦篤氏は《草上の昼食》を「印象派の出発点であり、歴史的にも、またモネの個人史においても転換点となる重要な作品」と評し、「初期のモネが試行錯誤するなかでこうした充実した作品を描いていたということを、多くの方々に知っていただきたい」と語りました。

《草上の昼食》は他にもモデルとなった男女、木の幹に刻まれたシンボルなど、さまざまな謎と驚きに満ちています。
滅多に館外に貸出されることがないという《草上の昼食》。この貴重な機会に、ぜひご鑑賞ください!

開催概要

「プーシキン美術館展――旅するフランス風景画」

会期 2018年4月14日(土)~7月8日(日)
会場 東京都美術館 企画展示室
開室時間 9:30~17:30(金曜日は 20:00 まで)
※入室は閉室の 30 分前まで
休室日 月曜日(ただし 4 月 30 日は開室)
問合せ ○公式サイト
http://pushkin2018.jp
○ハローダイヤル
03-5777-8600
観覧料 一般 1,600 円(1,400 円)、大学・専門学校生 1,300 円(1,100 円)、高校生 800 円(600 円)、65 歳以上 1,000 円(800 円)※( )内は前売・団体(20 名以上)料金、中学生以下は無料
※その他各種割引適応あり

記事提供:ココシル上野
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1カ月限定で名品ずらり!書道博物館の特別企画展を取材しました

台東区立書道博物館

企画展「みんなが見たい優品展パート14中村不折コレクションから 休館前の1ヶ月限り!書道博物館の名品ずらり」

かつて正岡子規が居住した「子規庵」の隣に佇む書道博物館。洋画家であり書家でもあった中村不折(1866-1943)が蒐集した、中国や日本の書道史における貴重なコレクションが所蔵されています。

書道博物館は設備工事のため、2018年4月16日(月)~9月25日(火)までの約5カ月間、全館休館となります。この休館を前に特別企画として、2018年3月16日(金)~4月15日(日)の期間、所蔵する名品の数々が公開されています。本企画展を取材いたしましたので、ご紹介いたします。

祭祀に用いられた漢字、王からの褒美に用いられた漢字

甲骨文
小克鼎

本企画展では、現存最古の漢字資料となる「甲骨文(こうこつぶん)」が展示されています。殷時代(前13世紀頃)に、亀のおなかの甲羅や牛の肩の骨に刻まれた甲骨文。神の意志を占うために使用されました。甲骨文の時点で既に偏とつくりが見られます。

西周時代(前9世紀)に作られた「小克鼎(しょうこくてい)」は、王の近侍職に務める克という人物が任務を果たし、それを記念して造られた青銅器です。内側には功績に関する文が鋳込まれています。正面から眺めると、器が曲線を描いているにも関わらず、文が真っ直ぐに並んでいるように見えます。文字の長さを微妙に調節しているのです。当時の技術の高さを伺うことができます。

「篆書体」から「隷書体」へ。次第に書きやすい漢字に

神様に関わる場所で使われていた「篆書(てんしょ)」と呼ばれる漢字は、象形文字のような書体をしており、非常に書きづらい文字でした。漢の時代に入ると、曲線が減って書きやすくなった「隷書(れいしょ)」と呼ばれる書体へと推移していきました。

乙瑛碑
後漢・永興元年(153)
張遷碑
後漢・中平3年(186)

「張遷碑(ちょうせんひ)」は、中村不折が非常に好んだ作品でした。本作品を臨書し、その趣を学んでいます。実は、「新宿中村屋」の看板文字や清酒「真澄」のラベルには不折の書が使われています。それらの作品からは、「張遷碑」に似た風格を感じ取ることができます。

西嶽華山廟碑-長垣本-
後漢・延熹8年(165)

数多くのコレクションのうち、不折の自慢の一品は「西嶽華山廟碑-長垣本-(せいがくかざんびょうひ ちょうえんぼん)」でした。形の良さと力強さ、そして古意の味わいを持つ本作は、約1000年前に石碑から取られた拓本です。碑石はすでに失われ、拓本も4本しか現存していません。非常に価値の高い名品です。

砂漠が守った文書

荘子知北遊篇 第二十二
重要文化財
唐・8世紀頃

紙は非常に保存が難しい素材です。古いものほど肉筆は少なく、唐以前のものは絶無に近いと考えられていました。しかし1900年、中央アジアのタクラマカン砂漠から中国へ入る際の玄関口に位置する敦煌莫高窟(とんこうばっこうくつ)内で壁が崩れ、中から4~6万の肉筆文書が発見されました。湿度が一定で虫の少ない砂漠の気候が、文書を守ったのです。本企画展では、この地域で出土し重要文化財に指定された肉筆文書が展示されています。

書の神様、王羲之

蘭亭序-張金界奴本-
秋碧堂帖所収
王羲之 筆 東晋・永和9年(353)

書の神様と称される王羲之(おうぎし 303~361)。肉筆は現存していませんが、その趣は複製で伝えられています。本企画展では、中国の書の歴史上で最高傑作とされる「蘭亭序-張金界奴本-(らんていじょ ちょうきんかいどほん)」を始め、王羲之の書の複製が展示されています。

ユネスコ「世界の記憶」の日本の古代碑

昨年、群馬県の「上野三碑(こうずけさんぴ)」がユネスコ「世界の記憶」に登録されました。本企画展では三碑の拓本が公開されています。書を堪能するだけではなく、拓本技術に注目して「どの拓本が一番上手だろう?」という視点でご覧になっても面白いかもしれません。

ここまでご紹介した作品は全て「中村不折記念館」に展示されているものですが、本館にも貴重なコレクションが展示されています。

今回の取材では、書道博物館 研究員の中村 信宏(なかむら のぶひろ)さんに作品の解説をおこなっていただきました。同博物館の様々な場所には、くすっと笑ってしまう注意書きが貼られてあるのですが、それらは中村さんが書いたもの。訪れた際には、ぜひ探してみてください。

私たちの生活に欠かせない漢字。書道博物館では、その歴史を味わうことができます。皆様も足を運んで、書の魅力に触れてみてはいかがでしょうか。

中村 信宏さん。素敵な注意書きとツーショット
こちらは本館に置かれたもの。その心は…ぜひ本博物館で確かめてください。

開催概要

会期 2018年3月16日(金)~4月15日(日)
所在地 書道博物館 中村不折記念館
東京都台東区根岸2丁目10番4号
開館時間 午前9時30分~午後4時30分(入館は4時まで)
休館日 月曜日
ただし3月26日(月)、4月2日(月)はサクラ特別開館
入館料 一般500円(300円)
小、中、高校生250円(150円)
※( )内は、20人以上の団体料金
※障害者手帳をご提示の方及びその介護者は無料
※毎週土曜日は台東区在住・在学の小、中学生とその引率者の入館料が無料
※特定疾患医療受給者証提示者及びその介護者は無料
問合せ 03-3872-2645
URL https://www.culture.city.taito.lg.jp/eventdetails/show/00001c000000000000020000005400ab

 
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特別展「人体 -神秘への挑戦-」内覧会レポート

国立科学博物館

国立科学博物館では、2018年3月13日(火)~6月17日(日)までの期間、特別展「人体 -神秘への挑戦-」が開催されます。3月12日に内覧会が開催されましたので、その様子をレポートいたします。

私たちの体は神秘に満ちています。私たちはなぜ生きることができ、動くことができるのか。人類はルネサンスの時代からこの謎に挑んできました。本展覧会では、レオナルド・ダ・ヴィンチを始めとする先人の功績を振り返りながら、人体の構造と機能を解説。さらに最新技術で明らかになった事実が紹介されます。

人類はどのように「人体」に挑んできたか

絵画のために解剖を行ったレオナルド・ダ・ヴィンチ

画家として名をなしたレオナルド・ダ・ヴィンチ(1452-1519)は、「アンギアリの戦い」に登場する極限の戦士の姿をよりよく描き出すために、病院で承諾を得て人体解剖を行いました。いざ解剖を始めると、関節の機能や、心臓の動きを解剖学者以上に考察し、人体の構造を自らの方法で把握したといいます。

レオナルドは解剖で得た所見と、先人の文献から得た知識を合わせ、多数の紙片に記述。それらは後代になってまとめられ、「解剖手稿」と名付けられました。

レオナルド・ダ・ヴィンチが考えた脳の構造

レオナルド・ダ・ヴィンチ「解剖手稿」より頭部断面、脳と眼の結びつき部分 1490-92年頃
ウィンザー城王室コレクション所蔵
Royal Collection Trust/© Her Majesty Queen Elizabeth II 2018

頭の内部の中央に3つの丸い脳室が描かれています。当時は脳室こそが生命精気に満たされた脳機能の中枢と考えられていました。この図においてもそこに視神経が走行する様子が描かれています。また左側には頭の層構造の比喩としてタマネギが描かれています。

解剖学の普及に貢献した人体模型

蝋による人体模型、ワックスモデル

古来より彫刻の材料とされてきたワックス(蝋)。それを解剖学的に用いたワックスモデルは、17世紀末のボローニャの職人、ガエタノ・ジュリオ・ズンボ(1656-1701)によって作成が始まりました。しかし17世紀には死体を保存する方法が無かったため、継続的に観察を行うためには常時鮮度の良い死体を解剖する必要がありました。1体のワックスモデルを作成するにあたり、およそ200体以上の死体が用いられたといいます。

頭頸部のワックスモデル 19世紀
日本歯科大学 医の博物館所蔵

教材として生まれた人体模型、キンストレーキ

19世紀に入って解剖学教育が重視され、教育用の人体模型の需要が高まりました。それまで模型といえばワックスモデルでしたが、高価かつ脆いため教材としては不適切でした。そこで、フランスの解剖学者ルイ・トマ・ジェローム・オヅー(1797-1880)は張り子製の人体模型を考案。耐久性に富み、解体および組み立てが可能だったので、大いに流行しました。日本には江戸後期にオランダを経由して輸入されています。

「キンストレーキ」(男性)19世紀
金沢大学医学部記念館所蔵
「キンストレーキ」(女性)19世紀
福井市立郷土歴史博物館所蔵
(※3月13日(火)~5月17日(木)までの期間限定展示)

人を人たらしめるもの、脳

進みゆく脳の理解

網状説…脳の神経はつながっている?

イタリア人医師カミッロ・ゴルジ(1843-1926)は1873年、硝酸銀を用いたゴルジ染色法を開発し、脳の神経細胞を観察することに成功。この観察からゴルジは、脳の神経は連続的につながり網状の構造を呈しているとする「網状説」を主張しました。

「脳の神経線維模型」 スイス、ブシ社製 1893-1910年
ブールハーフェ博物館所蔵
©Rijksmuseum Boerhaave, Leiden V25313

ニューロン説…脳の神経はつながっておらず、何らかの情報伝達が行われる

スペインの医師であり神経解剖学者のサンチャゴ・ラモン・イ・カハール(1852-1934)は、光学顕微鏡を用いた詳細な観察から、「脳の神経は非連続的に配置され、隣接した細胞間で何らかの情報伝達が行われる」とするニューロン説を主張しました。

1906年、ゴルジとカハールはノーベル賞を同時に受賞したものの、その席での講演内容は両者相反するものでした。両名の死後、電子顕微鏡を用いてシナプス間隙が確認されたことで、ニューロン説に軍配が上がりました。

網状説とニューロン説の対比 サンチャゴ・ラモン・イ・カハール 1923年
カハール研究所所蔵
Cajal Institute, “Cajal Legacy”, Spanish National Research Council (CSIC), Spain.
※ゴルジの網状説(図中左)とニューロン説(右)の差を説明するためにカハールが描いた模式図

21世紀の人体研究

”脳が司令塔”という概念を覆す、新たな人体観

技術の進歩によって、体内で起こる現象が分子や原子のレベルで理解される現在。最新研究では、脳が全身の司令塔であるという既成概念が覆されつつあり、あらゆる臓器同士が脳を介さず直接情報をやりとりしながら助け合っていることが明らかになってきています。

本展覧会では4Kスーパーハイビジョンによる体内の映像が紹介されているほか、臓器たちの”メッセージ”が飛び交っている体内を色や音で表現した空間が用意されています。

腎臓の糸球体
©甲賀大輔・旭川医科大学/日立ハイテクノロジーズ/NHK
※画像はラットで撮影。白黒画像にイメージで色を付けています。
精巣の精細管
©甲賀大輔・旭川医科大学/NHK
※画像はラットで撮影。白黒画像にイメージで色を付けています。

最も身近であり、同時に壮大なテーマである「人体」。皆さまも本展覧会に足を運び、私たちの体が持つ神秘について思いを巡らせてみてはいかがでしょうか。

開催概要

展覧会名 特別展「人体 ー神秘への挑戦ー」
会場 国立科学博物館
会期 2018年3月13日(火)~6月17日(日)
休館日 ※3月26日(月)、4月2日(月)、4月30日(月・振替休日)、6月11日(月)は開館
時間 午前9時~午後5時(金・土曜は午後8時まで)
※入場は各閉館時刻の30分前まで
夜間延長 ゴールデンウィーク中の夜間延長について
【午後8時まで】4月29日(日)、30日(月・振替休日)、 5月3日(木・祝)
【午後6時まで】5月1日(火)、2日(水)、6日(日)
料金 一般・大学生:1,600円
小・中・高校生:600円
URL http://jintai2018.jp

記事提供:ココシル上野
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その他のレポートを見る:https://www.culture.city.taito.lg.jp/ja/reports

「プーシキン美術館展ー旅するフランス風景画ー」

東京都美術館
クロード・モネ
『草上の昼食』
1866年
© The Pushkin State Museum of Fine Arts, Moscow.

2018年4月14日(土)から2018年7月8日(日)にかけて、東京都美術館では「プーシキン美術館展ー旅するフランス風景画ー」が開催されます。

ロシアの首都モスクワに位置し、約70万点を超える収蔵作品を誇るプーシキン美術館。印象派からマティス、ピカソまで、珠玉のフランス近代絵画を揃えていることで知られます。

本展では、大都市パリの喧騒から想像の世界にいたるまで、描かれた場所と時代を軸にフランス近代風景画の流れが紹介されます。

開催概要

展覧会名 プーシキン美術館展ー旅するフランス風景画ー
会場 東京都美術館
会期 2018年4月14日~2018年7月8日
公式サイト http://www.tobikan.jp/exhibition/2018_pushkin.htmltline-en/”>https://artexhibition.jp/prado2018/outline-en/

情報提供:ココシル上野
https://home.ueno.kokosil.net/

特別展「名作誕生―つながる日本美術」

東京国立博物館

2018年4月13日から5月27日までの期間、東京国立博物館 平成館では、特別展「名作誕生―つながる日本美術」を開催します。

日本美術史に数多く存在する「名作」。それらは、同時代や過去の作品、あるいは海外作品の影響を受けることで生まれ、そしてまた別の作品へ影響を与えています。

本展覧会では、こうした作品同士の影響関係や共通する社会背景に着目し、名作の数々を展示します。

開催概要

展覧会名 名作誕生―つながる日本美術
会場 東京国立博物館 平成館
会期 2018年4月13日~2018年5月27日
公式サイト http://meisaku2018.jp/

情報提供:ココシル上野
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特別展「人体―神秘への挑戦―」

国立科学博物館
アンドレアス・ヴェサリウス
『ファブリカ』ファクシミリ版1964年より

2018年3月13日(火)から2018年6月17日(日)にかけて国立科学博物館では特別展「人体ー神秘への挑戦ー」が開催されます。

本展は、NHKスペシャル「人体〜神秘の巨大ネットワーク〜」の放送と連動した特別展です。

先人たちの努力の歴史と功績を振り返りながら、人体の構造と機能を解説するともに、それが最先端の研究でどのように変わりつつあるのかを紹介します。


公式サイト

情報提供:ココシル上野
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「ブリューゲル展 画家一族 150年の系譜」内覧会レポート

東京都美術館

2018年1月23日(火)から2018年4月1日(日)まで、東京都美術館では、「ブリューゲル展 画家一族 150年の系譜」が開催されています。1月22日に内覧会が開かれましたので、その様子をレポートいたします。

ピーテル・ブリューゲル1世は、16世紀のフランドル(現在のベルギーにあたる)を代表する画家です。その画家としての才能は脈々と一族に受け継がれ、息子のピーテル・ブリューゲル2世、ヤン・ブリューゲル1世、そして孫、ひ孫まで、150年に渡って優れた画家を輩出し続けました。

本展は、およそ100点を通じて一族の画業を辿るものとなります。画家ごとに区切って作品を展示するのではなく、テーマごとに一族の作品を並べて展示しているので、画家たちを比較して、それぞれの独自性や共通点が発見しやすくなっています。また、展示される作品のほとんどが日本初公開となっており、その点においても、是非とも足を運びたい展覧会となっています。

展示構成

第1章 宗教と道徳
第2章 自然へのまなざし
第3章 冬の風景と城砦
第4章 旅の風景と物語
第5章 寓話と神話
第6章 静物画の隆盛
第7章 農民たちの踊り

ブリューゲル一族 略図

ピーテル・ブリューゲル1世(1525/30-1569)
息子 ピーテル・ブリューゲル2世(1564-1637/38)
ヤン・ブリューゲル1世(1568-1625)
ヤン・ブリューゲル2世(1601-1678)
アンブロシウス・ブリューゲル(1617-1675)
ひ孫 ヤン・ピーテル・ブリューゲル(1628-1664)
アブラハム・ブリューゲル(1631-1697)

それでは、会場風景と展示作品の中から一部をご紹介いたします。

第1章 宗教と道徳

ピーテル・クック・ファン・アールストと工房
『三連祭壇画 東方三博士の礼拝(中央)受胎告知(左翼)とキリストの降誕(右翼)』
1540-1550年頃
マールテン・ファン・ファルケンボルフ ヘンドリク・ファン・クレーフェ
『バベルの塔』
1580年頃

今日多くの研究者が美術史上初のシュルレアリストと見なす、ヒエロニムス・ボス。彼の描く幻想的なヴィジョンに憧れたピーテル1世は、同じ様式で絵画や版画を制作し、「第二のボス」と呼ばれるようになりました。ピーテル1世の作品には、ボスが描いたような異形のものや、おどけたものが見られます。

ピーテル・ブリューゲル1世[下絵]フィリップス・ハレ(帰属)[彫版]
『希望』
1560年

一方で、ピーテル1世とボスには相違も存在します。人間の善良さと邪悪さを対比して描くボスの作品は、死後に救済されるか地獄へ落されるかは現世での振る舞い次第であることを、人々に自覚させるものでした。それに対し、ピーテル1世は、人間の邪悪さへの批判や非難を目的とするのではなく、人の営みを冷静に観察し、作品に落とし込んでいます。

第2章 自然へのまなざし

ピーテル・ブリューゲル1世 ヤーコプ・グリンメル
『種をまく人のたとえがある風景』
1557年
ヤン・ブリューゲル1世
『エジプト逃避途上の休息』
1602-1605年頃
ヤン・ブリューゲル2世
『市場からの帰路につく農民たち』
1630年頃

ヤン1世や2世が鳥瞰で描く自然。そこには不思議な奥行きがあり、鑑賞者を絵画空間へ引き込みます。

16世紀、イタリアではミケランジェロやレオナルド・ダ・ヴィンチといった画家たちが理想的な人体を描いていた一方で、ネーデルラント(※)では宗教改革により、聖書の物語や人体よりも、自然の偉大さに関心が移っていきます。かつて絵画の一部分にすぎなかった自然ですが、本章で展示される作品では、自然こそがテーマとなっています。

※現在のオランダ、ベルギー、ルクセンブルクに、フランスとドイツの一部を含めた地域

第3章 冬の風景と城砦

ピーテル・ブリューゲル2世
《鳥罠》
1601年

風景画の一分野として冬の農村風景を初めて描いたのはピーテル1世でしたが、冬の風景を広め、一分野にまで高めたのはピーテル2世でした。冬景色は、ピーテル2世のおかげで普及し、フランドル芸術を象徴するようになります。それらの作品は、厳しい寒さや北方の風景に結びつくあらゆる感覚を伝えています。

内覧会での解説において、美術評論家のセルジオ・ガッディさんは、《鳥罠》こそ、ブリューゲル一族の象徴的な作品だと話していらっしゃいました。《鳥罠》には、いつ割れてもおかしくない川でスケートをする人々の命の危うさと、罠につられている鳥の無自覚さが相似となっています。教訓的な絵画を、宗教画ではなく、日常的な風景画として描いているのです。

『鳥罠』を解説するセルジオ・ガッディさん

第4章 旅の風景と物語

16世紀の中頃までには、アウトウェルペンは新しい商業の中心地となり、貿易や旅行、大航海の要となっていました。船は、富や未知の品と情報をもたらす象徴となり、画家たちにとって、旅や貿易、行商は新たな画題となりました。

ヤン1世や、ヤン・ブリューゲル2世もまた、旅人や商人たちが行きかう街道を描いています。そして描くだけではなく、一族の画家のほとんどが、文化の中心であるイタリアを目指した旅人でもあったのです。

ピーテル・ブリューゲル1世[下絵]フランス・ハイス[彫版]
『イカロスの墜落の情景を伴う3本マストの武装帆船』
1561-1562年頃
ヤン・ブリューゲル1世
『橋のある運河沿いの家屋と馬車』
1615年頃

第5章 寓話と神話

実体のない概念を理解するために、寓意画は有効な手段だと見なされていました。寓話画や神話画を得意としたヤン・ブリューゲル2世は、エキゾチックで風変わりな情景に真実味を添えるため、オウムやライオンなど、外来の動物を付け加えています。また、ブリューゲル一族による寓意画の特徴として、草花の描写など細部への意識が強い点が挙げられます。

ヤン・ブリューゲル2世
『地上の楽園』
1620-1625年頃
ヤン・ブリューゲル2世
『嗅覚の寓意』
1645-1650年頃
(左から)
アンブロシウス・ブリューゲル『四大元素-火』1645年頃
アンブロシウス・ブリューゲル『四大元素-大気』1645年頃
アンブロシウス・ブリューゲル『四大元素-水』1645年頃
アンブロシウス・ブリューゲル『四大元素-大地』1645年頃
室内のディスプレイでは、絵画の細部を拡大して表示する映像が流れています

第6章 静物画の隆盛

17世紀中頃のネーデルラントでは、花や静物画は儚さという観念を含んだ、道徳的なメッセージを伝えるものでした。また、新大陸や東方から到来する新種の花に、人々は興奮しました。特に、チューリップは歴史上初の投機バブルの対象として知られており、静物画においても主役として描かれることが多くなります。ブリューゲル一族の画家たちも、好んでチューリップを描いていました。

ヤン・ブリューゲル1世 ヤンブリューゲル2世
『机上の花瓶に入ったチューリップと薔薇』
1615-1620年頃
アブラハム・ブリューゲル
『果物の静物がある風景』
1670年

第7章 農民たちの踊り

ブリューゲル一族の画家たちは、事実や物語の語り手でした。彼らの作品は、現実を再現し、日常生活を実際のとおりに伝えています。最終章となる本章で展示される作品では、農民や酔っ払いや物乞いの営みが主題とされ、人生の多様性や、沸き立つ陽気さが描かれます。

ピーテル・ブリューゲル1世[下絵]ピーテル・ファン・デル・ヘイデン[彫版]
『春』
1570年
ピーテル・ブリューゲル2世
『野外での婚礼の踊り』
1610年頃

ブリューゲル一族の作品を注意深く鑑賞すると、花の近くに虫が描かれていたり、貝が顔の形に並べられているなど、愉快な驚きや奇妙な発見がたくさんあります。

ヒエロニムス・ボスからピーテル1世が受け継ぎ、その後の一族へと継承された「ブリューゲル様式」。その特徴は、綿密に描かれた細部にこそ表れています。残念ながら写真と文章では、その緻密さの全てをお伝えすることが難しいため、ぜひ本展に足を運んで体感してみてください。

開催概要

展覧会名 ブリューゲル展 画家一族 150年の系譜
Brueghel: 150 Years of an Artistic Dynasty
会期 2018年1月23日(火)~4月1日(日)
開室時間 9:30‐17:30
金曜日は20:00まで
(入室は閉室の30分前まで)
休室日 月曜日、2月13日(火)
※ただし2月12日(月)は開室
会場 東京都美術館
公式サイト http://www.ntv.co.jp/brueghel/

記事提供:ココシル上野
https://home.ueno.kokosil.net/
 
その他のレポートを見る:https://www.culture.city.taito.lg.jp/ja/reports

「ブリューゲル展 画家一族 150年の系譜」

東京都美術館

2018年1月23日(火)から2018年4月1日(日)にかけて、東京都美術館では「ブリューゲル展 画家一族 150年の系譜」が開催されます。

本展は、貴重なプライベートコレクションを中心に、厳選されたおよそ100点の資料を通じて、類い稀なる画家一族、ブリューゲル一族の画業をたどるものです。

ピーテル1世からひ孫のアブラハムらに至る4世代の画家たちと同時代のフランドルの画家たちが描いた宗教画、風景画、寓意画、静物画など多岐にわたる作品を展示し、16、17世紀フランドルにおけるブリューゲル様式の全体像にせまります。

開催概要

展覧会名 ブリューゲル展 画家一族 150年の系譜
Brueghel: 150 Years of an Artistic Dynasty
会期 2018年1月23日(火)~4月1日(日)
開室時間 9:30‐17:30
金曜日は20:00まで
※入室は閉室の30分前まで
休室日 月曜日、2月13日(火)
※ただし2月12日(月)は開室
会場 東京都美術館
公式サイト http://www.ntv.co.jp/brueghel/

情報提供:ココシル上野
https://home.ueno.kokosil.net/